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黒水仙を見て—映畫評
著者: 懸田克躬1
所属機関: 1順天堂醫科大學
ページ範囲:P.250 - P.251
文献購入ページに移動しかし,この書面の美しさは類ないくらいである。おそらく,この映晝の作者には,物語の筋の面白さ,または,このスートリーの内容の投げかける問題を追求するというよりも,この原作から,あの高いヒマラヤの高原がイメーヂとして晝かれており,これをセツトとテクニカラーで表現してみることに,第一の興味をひかれたものではないであろうか。いつてみれば,この映晝では,何をいおうかというwhatは問題ではなくて,さまざまの意味の美しさ──自然の姿もあり,人の姿もあろう──をどのように表現するかということ,howにこそ問題があつたのではないかと思う。「蛇の穴」や,「失われた週末」などが,問題になるというような意味での問題はない。問題がhowにあるのだとするとこの映晝には非常な物足りなさがある。それは臭いのない世界であるということ。きつと,この映晝の作者が大きい意味をもたせたに違いない。
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