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〔Ⅴ〕外國文獻抄録
著者: 樋渡正吾1
所属機関: 1東大
ページ範囲:P.97 - P.108
文献購入ページに移動1.結膜のBowen氏病V.R.Khanolkar.
70歳男子,1937年1月頃より3-4月に一度急性結膜炎を患ふ,1937年7月結膜炎の後角膜縁と外眥の中間に充血斑を殘し周圍より太い血管が侵入し輕い異物感あり。3月後に表面より少し隆起し赤味を帶び境界不規則となり,數週後に急に擴がり初め角膜縁に近附いた爲結膜乳頭種の診斷の許に19・8年1月腫瘍を切徐し鞏膜を掻爬,腫瘍は深部と癒着なし。その組織際は薄化せる健康結膜より急に數層の上皮細胞に移行し此の部では上皮表面は多少角化し上皮の排列は亂され巨大細胞が一個乃至數個不規則に分布す,巨大細胞は通常の多角形細胞の6-10倍,核には不定型分裂像を示すもの,數個の核,細胞質の中央に集れるもの,核周圍に透明なる一層を認むるもの等あり。上皮細胞の境界に明瞭なる線を認め厚化せる上皮層に多數の有絲分裂儀を見,上皮下組織は血管に富む結合組織よりなり淋巴球,組織球よりなる炎性滲出物を見,總じて前癌性變化を思はしむる像なり。以上の所見はBowen氏病に定型的にして結膜に生じたるものとしては最初の報告なり。其後2度再發その都度切除す。3囘目の再發の組織像は紡錘状細胞癌と診斷されラヂウム療法を受け以後死亡迄再發せざりき。
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