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〔Ⅵ〕温故知新
中村文平博士の近況
著者: 宇山安夫
所属機関:
ページ範囲:P.109 - P.110
文献購入ページに移動 中村先生は一昨年3月の大阪大空襲の前に東區伏見町の診療所を引拂はれて,吹田の御自宅へ移られました。それから間もなく伏見町のあの界隈は灰爐になつてしまひましたから,今から思ふとよくも早く引さ上げられたものだと思ひます。あそこの診療所は内科の福島教授が住んでゐた家で,先生の師匠の水尾博士が住んでゐられた診療所跡から1町と距てぬ距離にあつたことも,洵に不思議な因縁であります。吹田のお家は庭も廣く餘程先生のお氣に入つたと見えて,庭のそここゝに咲く草木の花日記をつけて,時には醫局の書飯時に披露されたり,同窓會誌に書かれたり,あの家が僕の死に場所だなど洩らされたことを記憶してゐます。そこで暫く來る患者を勃々診て居られた樣でしたが,空襲が日に増し烈しくなつたので,到々長野の御郷里へ引き上げてしまはれました。
當時は空襲の烈しい最中であつたので,私も御郷里へ歸られた模樣は詳しく知ることが出來ませんでした。幸ひ吹田の御自宅は戰災から免れ,それ以來ずつと弟さんがそこの留守居をしてゐられます。
當時は空襲の烈しい最中であつたので,私も御郷里へ歸られた模樣は詳しく知ることが出來ませんでした。幸ひ吹田の御自宅は戰災から免れ,それ以來ずつと弟さんがそこの留守居をしてゐられます。
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