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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科10巻11号

1956年11月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・27

眼瞼及び球結膜色素異常

著者: 中村康

ページ範囲:P.1377 - P.1378

解説
眼瞼及び球結膜には屡々斑状を呈した色素増殖が見られる。其に1)母斑
2)血管腫(血管母斑)
 がある。いずれも先天性のものである。

綜説

糖尿性及び低血糖性眼症状と其治療補遺

著者: 樋田敏夫 ,   G.B.

ページ範囲:P.1379 - P.1391

 私は糖尿病と低血糖の眼症状の領域における我々の研究を寄稿し,この領域における最も新しい解釈に対して解明せんとするものであります。糖尿病は疑いもなく諸器管に対して影響を与える所の全身疾患であります。
 我々は,糖尿病の経過中眼附属器の化膿性炎症,角膜の変化,血管の変化,変性,(色素上皮),水晶体の透明度及屈折度の変化,その他典型的網膜変化(網膜症と珍らしい網膜性脂肪血症等)が来る事を知つています。その結果,Fie-genbaum氏が観察した通りXanthoseや黄斑部色素症Jensen u Lundbackが続き,そして内外眼部のMotilitatをおそう所の神経的変化を来し視神経や視路を障害しそして遂には眼球の軟化の結果Comaの状態に陥ち入る事を知つている。

第6回線合医学賞入選論文

近視眼の遺伝機構に関する研究

著者: 古庄敏行

ページ範囲:P.1393 - P.1403

 近視眼の原因に関しては古来唱えられる学説極めて多く,多数の統計的観察や実験的研究の鍵を以てしても,猶容易にこの原因を極め得ざる状態にあつて,その論容易に盡くる所をみなかつたが近時各方面よりの研究が綜合的に検討せられた結果,成因解明の上に一筋の光明が認められる様になつて来たようである。
 近視眼の発生に近業が関与するということは古い問題で既にKeplerの唱えるところであるがCohnは広汎なる統計を基に,近視眼は学生に多く発生し近業がその原因であるとする後天的発生説を唱えた。近視眼ではその眼軸が長いことが多くの学者に認められていたが,この点についてはGraefe-Saemisch (1903)に次の様な記載がなされている。すなわち,長く存在する毛様筋収縮はついに持続的の水晶体膨隆を起し,一種の水晶体近視を生ずるという意見は,最初Jagerに依り,その後もしばしば発表されているが事実の証明は未だないようである,と。

臨床実験

眼部帯状疱疹の一例

著者: 須田栄二

ページ範囲:P.1405 - P.1407

緒言
 眼部帯状疱疹は発疹と共に又は之に続き屡々眼球に種々の合併症を発する事があり,之が為に視力障碍を遺すことが多く予後が不良の疾患であつたがコーチゾンの臨床的応用によつて極めて良好な経過が報告されているが最近経験した一例を追加する。

原子爆弾によると思われる火傷性中心性網膜炎の一症例

著者: 徳山和宏

ページ範囲:P.1407 - P.1409

 原爆が広島,長崎に投下されて10年,原水爆の問題が漸く世界の真剣な問題として取り上げられつつある時,偶ろ広島で被爆,右顔面全体及び右上半身に火傷を受けた当時現役軍人の右眼に火傷によると思われる中心性網脈絡膜炎の後遺症を検し得た。然るに最近アメリカ,Nevada州の原爆実論の成績の中,実験家兎に同様な症状を起す事が多いとの報告に接したので1),稀有のものながら,罹災者の中にはかかる症例の見られることを追加報告する。

先天性瞼板形成不全症

著者: 藤生敬介

ページ範囲:P.1409 - P.1410

 眼瞼欠損症は比較的稀ではあるが,かなり報告されている。私は最近外傷又は手術等を受けた事のない先天性と思考される上眼瞼瞼板の一部欠損,即ち瞼板形成不全の一例に遭遇した。非常に稀らしいものと思われるので報告し度いと思う。

"人間ドック"検査の眼科所見(第一報)

著者: 河東陽

ページ範囲:P.1410 - P.1413

 我々の病院で所謂る"人間ドック"(短期入院綜合精密身体検査)を始めてから,昭和30年9月8日で滿一年ヵとなる。我々は其の検査を始めるに当つて,世の中の第一線に働く,比較的高齢者で,人生の幾航海かを経て,ドツク入りする人々の損傷程度は,どの様であろうか,即ち健康の限界と,これからの人生航海に,健康上の如何なる示唆を助言し得るかに多大の関心を持つた。各科の検査綜合判定は種々の興味ある結果を得ている。
 本院の一ヵ年間の検査総数は170名(男148名,女22名)であるが,ドツク入院検査に於ては,入院前の病歴聴取で,現在,疾患,或は療養中の明かな者は,ドック入院としては取扱わない。然し何等かの健康上の不安を持ち,精密検査を希望する者の多い傾向はあるが,約三分の一の人々は全く主訴の無い者で,殆どが現在第一線で活躍している人々である。

眼球脱臼を来たした原発性視束腫瘍の一例

著者: 中山恭四郞 ,   石橋千秋

ページ範囲:P.1415 - P.1417

 硬膜内原発性視束腫瘍は本邦に於ては,小柳教授の報告を嚆矢としてより今日まで38例の報告があり,比較的稀な腫瘍であるが,私は最近,数年来視束腫瘍による眼球突出の患者が患眼を殴打されたことにより眼球脱臼を来たし,これを摘出して病理組織学的検索を行つたので茲に報告する次第である。

健康管理を目的とする眼底所見による高血圧症の分類並びに統計(1)

著者: 進藤晋一

ページ範囲:P.1417 - P.1421

 高血圧症に関する眼科領域の研究は,此処に説くまでもなく多数あるが,高血圧症を眼底所見によつて分類し,統計したものは,予想外に少く,僅かに飯塚(昭8)中泉1)(昭12)池田2)(昭15)楠井3)(昭18)樋渡4)(昭26)中島5)(昭29)松崎6)(昭29)小林7)(昭30)他数氏を数えるに過ぎない。しかも,その過半数は大学もしくは,大病院に来診した高血圧者を対象としたもので,多少に拘らず自覚症状をもつ者を基にした統計であり,いわゆる健康人として社会に働いている者を対象にとつた。それは,樋渡,中島,小林氏の他2,3あるに過ぎない。

Pas-Ca. Streptomycin併用療法中の結核患者のErythroderma Exfoliativaに先駆した鱗屑性眼炎

著者: 小原博亨 ,   阿久津澄義

ページ範囲:P.1421 - P.1424

1.緒言
 Dermatitis Exfoliativaは比較的稀な疾患である,亦,其の成因も明かにされていない。或は薬物の投与によつて,或は中毒によつて起きる事があるとされている。尚,眼の合併症も比較的少い。私共はPas-CaとStreptomycin併用療法中の肺結核患者に先ず鱗屑性瞼炎を生じ,殆んど時期を同うして全身に剥脱性皮膚炎を生じて来た症例に遭遇したので報告する。

酒皶第Ⅲ度に合併せる酒皶性角膜炎の一例に就て

著者: 高山博世

ページ範囲:P.1425 - P.1427

 酒皶に合併せる結膜炎及び角膜縁部より発生せるフリクテン性パンヌスに類似せる定型的,酒皶性角膜結膜炎の一例に遭遇しましたので臨床的経過及び治療に就て報告します。此の酒皶に由来する眼合併症は既に1864年,Arlt氏がHeidelbergの学会で報告され,我が国では大正6年増田氏の報告が初めてである。酒皶性眼疾では眼瞼皮膚,眼瞼の丘疹,鱗屑性眼瞼縁炎,結膜炎,鞏膜炎等がありますが,角膜疾患が最も多く合併症の約90%を占めて居り,我が国でも殆どが角膜に変化を呈している。最近昭和22年に副腎皮質ホルモンなるインテレニンを使用して約一ヶ月で治癒したと云う報告があり,私もコーチゾンを使用し治癒せしめた経験を追加報告します。

周囲の明暗と瞬間中心視力

著者: 本田博

ページ範囲:P.1427 - P.1429

1.緒言
 古来,視力と時間に関する実論報告は極めて狭い範囲に限られている.高氏は同調応で,大山氏は一定照度に調応して視標輝度を変え,私は暗調応眼で実験して,夫々異つた結果を得ている。私は此の間の推移を知ろうとして室内照度を変えて実験を行つたので茲に報告する。

Succus Cineraria maritima点眼に依る外傷性白内障治療の一例

著者: 佐伯讓

ページ範囲:P.1429 - P.1431

緒言
 さきに藤山教授は外傷性白内障2例に対しSuc-cus Cineraria Maritima (以下S.C.M.と略す)なる薬剤の使用御経験例を報告されましたが私も今回外傷性白内障に本剤を使用する機会を得ましたので追加御報告申上げます。

調節グラフの試み及びその実際的応用

著者: 渡部通英

ページ範囲:P.1431 - P.1437

 屈折異常の矯正の実際は他覚的方法の外,自覚的には矯正視力検査,眼鏡処方等検眼レンズを取り換えて最も視力の出る所を探せばよいのであるから一見簡単なようであるがそれがなかなかに難しく,視力の出ない時など文字通り暗中模索の思いがして眼科医を志した当初には一応誰もが苦労する所であると思う。併し之は被検眼の屈折及び調節状態を理解把握すれば自ら解決される所であつてその手段として調節状態を図示すること試みたが,それ以来之を実地に応用してかなり便利を感じているのでここに発表し,諸賢諸先輩の御批判を抑ぎたいと思う。

連続調節持続時間測定法による凝視時間の基礎的研究(第3報)—連続調節持続時間測定法(水川・高木氏凝視法)と調節近点測定法,及びフリツカー値測定法との比較について/連続調節持続時間測定法による凝視時間の基礎的研究(第4報)—小円孔板装用及びレンズ装用と凝視時間に就て

著者: 岡田昌三

ページ範囲:P.1437 - P.1445

1.緒言
 水川・高木氏凝視法による凝視時間は,眼よりの視標の距離,視標の大きさ,照度の変化,視標の色彩の変化,及び対比の差違によく反応して其の値の変動する事を実論的に証明したが,現在広く用いられている疲労測定法の中,実験の都合上,調節近点測定法,及びフリツカー値測定法とを選び比較を行い,次の様な成績を得たので,此処に報告する。

談話室

Euthyscopによる弱視の治療

著者: 秋山晃一郎

ページ範囲:P.1446 - P.1448

 佐藤勉教授殿
 ライン河畔を流し歩いているDrehogelの音が妙に冴えわたると思いましたら,そろそろここボンの町にも秋がやつて参りました。河べりの芝生の上にねころんで懸命に日光を吸収して居る御婦人の姿をよそにSiebenge-birgeの山々はやや黄味がかつて来たようです。それにしてもライン河というのはどうしてこう人々に親しみを与えてくれるのでしようか。この頃は私もAugenklinikよりはついライン河畔へと歩いて来てしまいます。
 今日は先生にGiessen大学のDoz.Dr. Cupperの始めたEuthyocopによる弱視の治療法について御報告いたします。Bangerterの影響をうけて,ドイツおよびスイスで近頃盛んに弱視の治療が行われて居ます。その波にのってCupperの方法も新しい問題を呈示しているようです。Euthyscopというのは通常のVisusscopによく似ている小さな機械(写真参照)で,彼の着想は中々面白く概ね次のようなアイデイアによるものです。黄斑部を除いた眼底周辺部に光刺激を与えてやれば,その部は残像のためにしばらく物が見えないが,黄斑部のみは光から保護されて居たので,機能は障碍されず物が見えるわけです。周辺部の残像がなくならない間に色々なものを読ませて黄斑部を訓練するというわけです。この時は丁度中心外固視のある部は一時機能停止となるから絶好のチヤンスというわけです。

集談会物語り

九州眼科集談会に就て

著者: 南熊太

ページ範囲:P.1449 - P.1453

九州眼科集談会が初めてその第1回が熊本医大に於いて開かれたのは昭和2年であるが当時熊本医大予科の生徒であつた筆者はその第1回会合の時から関心を持つていた。依つて筆者とも長い間関係深き九州眼科集談会に就て紹介したいと思う。記録によれば『九州眼科集談会第1回を熊本医科大学眼科教室に於いて開催することとせり。而して次の如く案内状を発す。其範囲は全九州在住の眼科專門医97名並に他科とを兼診せられつつある諸氏326名なり。(各県医師会名簿により調査す)』
 謹啓大正15年10月長崎に於いて開催せられました九州医学会席上に置きまして御出席諸賢の御賛同のもとに成立致しました九州眼科集談会の第1回を当熊本医科大学眼科教室に於いて開催することになりましたので,何卒万障御繰合せの上奮つて御出席下さる様に願上げます。尚序ながら一般の御了解を得ます為に本会設立の目的に就きまして蛇足を加えて置きたいと思います。元来我が眼科学界には中央に於いて,既に日本限科学会なるものがありまして毎年1回総会が開催せられ,毎回多数の研究業績が発表されつつありますのは,真に慶賀すべきことであります。併し本会に於いて発表さるる業績は主として深遠なる学理や,精細なる実験報告でありまして,余りに特殊的なるもの多く,吾人臨牀家の日常応用との間に可成りの間隔がある様に感じられます。

日本トラホーム予防協会会誌

学童のTrachoma Control (第1報)

著者: 徳田久弥 ,   多田桂一 ,   小関茂之 ,   橋本秀子

ページ範囲:P.1455 - P.1459

 トラコーマの統計や集団治療については,夥しい報告があるが,どこにTrとしての診断の限界を置くかと云うことが判然としないため,学校衛生の面やその他で色々混乱が起きているようである。我々も東大衛生看護学科と共同して,東京近県の小中学校児童についてTrと環境衛生の関係を昭和30年夏から調査しており,引続き本年も行う予定であるが,その際行つた集団治療においてその感を新らたにした。ここにその結果を報告すると共にTr検診について2〜3考察を試みてみたい。
 我々はなるべく眼科医のいない地域の学校を対象として選ぶよう努力したが,実際には検診した5校のうち,それ迄全く眼科医にかかつたことのない児童が大部分を占めていたのは埼玉県のO小学校のみで,他ではすべてそれ迄に,Trと云われて治療や手術を受けたもの,或いは現在加療中のものを可成りの数に見受けた。但しこれらは今回の成績からは除外してある。

トラコーマのパンヌスの研究—其の2 パンヌスのトラコーマ診断上における意義について

著者: 木村一雄 ,   大林孚雄 ,   岩域忍 ,   北村政信

ページ範囲:P.1460 - P.1463

Ⅰ.まえがき
 ト・パは角膜のトである。従つて,この意味に於てパをトの診断の一助とするのは正しい。但しMac Callanが,ト・パのないトはあり得ないとしたことについては私共は先報に於て否定した。パの当面の問題はむしろその非特異性にある。即ちパをト診断の支柱とするかぎり如何なる結膜所見までをト性病変とするかに就てはかなり疑義があり,従来のト性結膜変化の概念は再検計せざるを得ない結論に到達する。既往の検査法によるパではト残余症を除外し之ないと思われるが,そこに混乱をもたらす大きな因があることを指摘し度い。そこがパのト診断に於ける意義を明かにするためにも,先ずト・パを正しく把握する必要がある。

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中村康博士の死を悼む

著者: 中泉行正

ページ範囲:P.1375 - P.1376

 君は明治31年5月10日浜松市三組町125番地に於て父君中村磨瑳夫氏の長男として生れ,幼にして俊才の誉高く,金沢の第四高等学校を経て大正12年3月東京帝国大学医学部医学科を卒業し,直ちに同大学眼科教室に入り石原忍教授につき眼科学を研究し業跡大いにあがり,大正13年千葉医科大学より迎えられて同大学眼科教室に伊東彌恵治教授のもとに講師となり,さらに昭和3年5月迎えられて日本医科人学眼科教授となり現在に至る。其間財団法人日本眼科学会の評議員理事,ついで会長となり眼科学界の為につくしたる其の功績は莫大なり。其の間眼鏡学の研究,トラコーマ,黄斑部疾患の研究,又近年は緑内障,眼球の胎生学的研究に努め各研究の発表論文は実に枚挙にいとまあらず,実に無数というも決して過言にあらず。又角膜移植手術,盲人の開眼手術は其の名声日本全国にあまねく遠く海外より来りて君の手術を受くるもの亦多数,又著書に於ても眼鏡学,眼鏡技工学,近視,眼鏡の選定法,トラコーマ,老視,中村臨床眼科学其の他多数にして絶筆として目下印刷中の緑内障及未完成の図説黄斑部疾患等の名著あり。君は筆の立つ事眼科学界第一名文滔々としてほとばしり出で各著書はいずれも斯界の人歓迎を受けて数版を重ね洛陽の紙価を高からしめたるものなり。又若くして無医村の診療盲人検診,トラコーマ検診等につくされ無医村巡廻診療については全国に足跡あまねく,名著無医村診療はユーモアに富み随筆としても読者を魅了して止まず。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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