icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科10巻12号

1956年12月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・28

眼瞼皮膚異常

著者: 中村康

ページ範囲:P.1467 - P.1468

解説
1)眼瞼皮膚瘢痕
 25歳女,幼時上眼瞼に腫物が出来,其が崩れて後に皮膚の表面凸凹になり今日の状態になつた。平坦な皮膚にして欲しいとの整形手術要求で来る。凸凹した皮膚表面の表層剃除法手術で治癒す。

綜説

トラコーマ專門委員会 第二回報告

ページ範囲:P.1469 - P.1476

議題
1.トラコーマに対する研究室内研究の現状
2.トラコーマと非トラコーマ性濾胞性結膜炎との原因,診断,鑑別診断

「いわゆる軽症慢軸」の説について

著者: 桑島治三郎

ページ範囲:P.1477 - P.1483

 中心視力が正常もしくは正常以上で,眼精疲癆その他の眼症状を訴える青少年のあるとき,それらを,「軽症慢性軸性視神経炎」と診断するというわが国一部の人の説に対し,私は症例をあげて疑義を明らかにした1)
 鈴木教授は私の主張に対し,「賛意を表する点もあるが,その根底において反駁のやむを得ない事情も多々ある」として,自説を擁護された2)

臨床実験

無莖辨移植による翼状片手術179眼の遠隔成績について

著者: 北島勲

ページ範囲:P.1485 - P.1486

 翼状片手術は成書に種々の方法が記載されているが,我々の経験によれば何れもその何%かに再発を免れぬ様である。
 予は約25年前より無茎弁移植法によつてすべてを処理して来たが,その結果再発が非常に少ないと思われるのでその遠隔成績について報告したい。

女性性週期と関係ある動眼神経麻痺性偏頭痛

著者: 森寺保之

ページ範囲:P.1487 - P.1490

 本症に関してはGubler (1860),Mobius (1884)以来本邦にては三宅,清水,鈴木,田上,南,祖谷以来多数の報告例があるが,予は最近女性性週期と関連して発症した比較的典型的な本疾患を経験したので追加報告する。女性性週期と関係した本症例はMorgano (1920)の報告がある。

化学療法の一般臨床的応用

著者: 榊真弥

ページ範囲:P.1490 - P.1496

緒言
 私は,今回,化学療法のその他一般臨床的応用と云う,テーマを頂いたが,化学療法と云う言葉は,意味が広く,且つ人によつて見解に,稍々相違がある。桐沢氏は,次の如く解しておられる。即ち化学療法と云う言葉は,時代により,又人によつて,多少その内容が異なつているが,自分は,特定の病原体に対し,撰択的に働いて,その生体の感染を原因的に治し得る様な化学製剤による治療と。
 私は,臨床的応用と云う点から,我々の教室の診療において,興味のあつたと思われる。次の5つの問題について,その成績を述べる。

前頭洞ピオケーレの眼症状に就いて

著者: 藤生敬介

ページ範囲:P.1497 - P.1499

緒言
 副鼻腔疾患時には種々な眼症状を呈する事が知られているが,一般に前頭洞は他の副鼻腔に比して炎症を起す事が少いと云われており,其の理由として解剖学的に見て排泄口が底部に存在しているためとされているが,併し一旦炎症を起すと他の副鼻腔に比して神経症状は著明で,殊に眼症状が多く見られ,急激に経過する場合には重篤な合併症を起す事もあるとされている。私は最近種々な眼圧症状を呈し,併も比較的早期であつたため重篤な合併症もな手術に依り全治せしめ得た前頭洞ピオケーレの一例を経験したので報告したいと思う。

Succus Cineraria Maritimaの点眼による白内障の治療

著者: 藤山英寿 ,   松本剛一 ,   加藤道夫

ページ範囲:P.1499 - P.1504

 嘗て,本誌第8巻,第11号に,本剤の点眼による外傷性白内障治療の2例を発表した。1例は非常によく吸収され,他の1例は少も吸収されないものであつた。そのとき,この2例を比較検討して,吸収された1例は,窓ガラスの破片によつて水晶体嚢が大きく破砕され,溷濁した水晶体は花菜状に前房内に膨隆していたのに反し,吸収されなかつた他の1例は1mgという小さい鉄片によつて水晶体嚢が穿通され,溷濁した水晶体は原形のまま嚢内に閉じ込められて居つたという事実から次の如き考察を下したのであつた。即ち,溷濁した水晶体質が本剤の作用を受けるためには,これが前房内に膨隆していることが必要であると思われると。しかし,水晶体嚢が充分に破砕されてさえ居れば,敢て前房内膨隆がなくとも,殆んど完全に吸収されることが,本報にとり扱つた実験例によつて明かになつた(第1例参照)。しかし,溷濁した水晶体質が前房内に花菜状に膨隆し,或は浮雲状に遊出して居れば,本剤との接触が最も佳良であると考えられるので,この前房内膨隆が望ましい状体であることは勿論なのである。

外傷性硝子体前房内脱出の二例

著者: 朝蔭武司 ,   小野冨士郎

ページ範囲:P.1505 - P.1507

 硝子体前房内脱出を細隙燈顕微鏡で最初に観察報告したのはErggeletで有り,Hesseは之を詳細に観察記載した。我国でも中村,諌山,加藤,豊島,田野辺,樋田氏等の他数氏の症例報告はあるが其の数は比較的少い。本症の発生機転には諸説があるが,水晶体とZinn氏帯が硝子体前面と眼房との間の障壁を成しているので,硝子体の前房への脱出には此の障壁の全体又は一部分の欠損によつて脱出路が形成されることが前提となり,更に外力の加わつた場合に起つて来るので手術,打撲等の外力の加わる事によつて発生する事が多い。我国の報告例も殆んどが打撲に原因している。硝子体前房内脱出は其の臨床所見より硝子体前境界層が破れずに硝子体を包んだまま脱出した場合は脱出部が嚢状又は茸状を呈し,前境界層が断裂を起した時は絮状を呈するとHaitz (1930年)は述べている。我々は最近定型的な嚢状を呈する症例及び硝子体が累状を呈し角膜後面に附着した症例を経験したので報告する。

眼球突出症と脳腫瘍

著者: 大沼倫彦 ,   堀野愛雄 ,   佐藤広芳

ページ範囲:P.1507 - P.1512

緒言
 過去15年間に脳腫瘍症状を呈して桂外科教室を訪れた症例中に11例の眼球突出症を経験したが,中9例は頭蓋内の腫瘍其の他の器質的変化によるものであつた。かかる事実は従来余り注目せられざる問題と思はれるので,茲に症例を紹介し,あわせて臨床的考察を試みた次第である。

歯髄除去用拔髄針,クレンザーを用いる硝子体排出法に就て—原発性緑内障手術としての後鞏膜切除術の1変法

著者: 周々木三千太郎

ページ範囲:P.1512 - P.1513

1.はしがき
 原発性緑内障手術,特に其予備的手術としての後鞏膜切開術(Mackenzie)は,今日殆んど歴史的位置しか与えられないかに見受けられるが,其理由の一部は,原発性緑内障では特に其粘稠な硝子体ゲルが排出困難であるのと,其排出量の秤量(dosieren)が出来ないので,一時的の減圧目的すら遂げられぬ場合が多いためと思われる。
 即ち現在,固定鑷子で眼球を圧迫し乍ら,線状刀又はスパーテルを廻転して創口を拡げて硝子体を圧排するのであるが,時にはゲル状の硝子体が創口に篏入したり,逆流する危険もあり,確実に硝子体を排出する事が出来ないのであつて,其操作は稚拙でprimitiveの域を出ないのである。

点眼麻酔剤Cornecain (Hoechst)の使用効果

著者: 後藤卓彌 ,   丹羽泰仲

ページ範囲:P.1514 - P.1516

 「コルネカイン」に就いては,東大岡田氏,慈大飯塚氏等によりその使用成績が発表されているが,私共も興和化学よりFarbwerke Hoechst社の1%コルネカイン液の試用を依頼され使用効果を認めたので,第147回名古屋眼科集談会に報告発表した。

再発前房蓄膿性葡萄膜炎の症状を呈したBehcet症状群の4例について

著者: 神足実 ,   岡田甫 ,   浜野巖

ページ範囲:P.1517 - P.1523

Ⅰ.緒言
 所謂ベーシエツト症状群及びその類似疾患については,1895年Neumannが重篤なアフタ様口内潰瘍,全身の多形滲出性紅斑,又は結節性紅斑様発疹,陰部潰瘍を主徴とする症状群をNeuman-n's Aphthosisとして発表して以来多数の報告があり,その本態は未だ不明である。
 最近眼科領域でも注目されて来ているが,余等も本症の4例を経験しその症状,経過,治療,特に眼底所見についていささか興味ある知見を得たので報告する。

眼窩骨折を来したスポンヂボールによる眼外傷の一例

著者: 戸松靖治 ,   河東陽

ページ範囲:P.1523 - P.1525

 戦後野球熱が盛んになり,その為に最近スポンヂボールによる外傷が多くなつて来た。
 而して,この疾病の原因及び統計に関しては,今迄多数の報告があるが,うつ血乳頭をおこした例は,伊藤氏の他,数氏の報告があるのみで極めて少い。

妊娠腎性網膜炎に対するDepot-Kallikreinの効果に就て

著者: 三国政吉 ,   荊木良夫 ,   樋浦英子

ページ範囲:P.1525 - P.1529

 妊娠腎性網膜炎(娠妊中毒性網膜症とも呼ばれる)は適当の処置を講ずれば全身的には勿論眼科的にも予後は一般に良好とされるところである。分娩が最良の治療法で分娩により多くは速かに回復するものであるが,時にはかなりの視力障碍を残すものもあることは間々経験されるところである。
 私共は最近Kallikrein筋注により視力の回復を著しく促進し得たと思われる症例を経験したのでここにその経過を簡単に記載する。

臨床講義

家族性進行性黄斑部変性症と網膜色素変性症

著者: 菅一男 ,   横山実

ページ範囲:P.1530 - P.1534

 家族性進行性黄斑部変性症と網膜色素変性症との関係については,Stargardt以来,その遺伝関係,臨床像及び治療等の見地から種々論ぜられて来たが,現在では,網膜に原発するHeredode-generative Erkrankungなる範疇に属すべき疾患として,両症の間に本態的な同一性,或は,近似性を認めようとする説が主流をなしている。
 茲に述べる症例は,第1図に示す如く,8人兄妹中,長男に両症の合併を,長女及び次女に黄斑部変性症を認めた三例であつて,両症の関係の密接なることを示しているものと思われる。この家系には眼疾のある者はなかつたとのことであるが父親が既に死亡している為,確実な遺伝関係は不明である。両親の間に血縁関係はない。

談話室

『眼科保険診療要覧』に就て

著者: 南熊太

ページ範囲:P.1535 - P.1537

 私は昭和24年以来福岡県社会保険審査員等をしており且つその間久留米大学医学部に於て附属病院各科医員,医学部学生の保険に関する教育の一部にも関係しており,其の間に修得し得た知識を基として次の本を書いた。
   『眼科保険診療要覧』  南 熊太著    頒価150円,送料16円(久留米市通町8丁    目291南熊太あて申し込まれても結構です)    久留米市西町花畑 ツル印刷合名会社発行に就て書いてみよう。勿論自画自讃でなく,即ち自分で自著の批評でなく,約500名位の方から頂いた批評を書きまとめたものである。(批評して下さつた方の姓名は特に書かなかつたが,手紙その他,控は確実に保管してあります。)

日本トラホーム予防協会会誌

結膜炎罹患の記憶に関する統計的研究—Trachomaの急性発病説に関連して

著者: 竹田静香

ページ範囲:P.1539 - P.1540

 Trachomaが急性に発病するか慢性に発病するかと云う事に関しては尚多く論ぜられているが,三井1)はTr.患者にその発病の前に「はやりめ」をしたことの有無を尋ねると大抵その経験がありその時が恐らく急性Tr.の時期だつたのではなかろうかと云い,鈴木2)3)等の慢性発病説を唱える人はTr.に罹患している子供の母親に尋ねて見てもTr.の初めに急性結膜炎があつたと云う様な事は殆んど無く母親は子供の病気に対しては非常によく注意しているので間違はないと云つている。私はこうした患者の記憶によつてTr.が急性発病するか慢性発病するかと云う事を論ずる事が科学的にどれ位意義があるか一応検討して見るためにこの統計をとつて見た。

1%オーレオマイシン眼軟膏のトラコーマ集団治療成績について

著者: 佐々徳順 ,   谷口幸次郞

ページ範囲:P.1541 - P.1542

 難治な慢性結膜疾患として諸々論議されているトラコーマの治療法は戦後多くの抗生物質の発見でその有効性は確認された。他薬剤は実験外として私達はオーレオマイシンについて,即ち現在迄その有効濃度は0.5%が適当なりと云われて来たが今回さらに濃度を1%とし,その点眼により集団治療をしたので記載したい。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?