文献詳細
特集 トラコーマ
文献概要
Ⅰ.緒言
従来のトラコーマ治療剤と云えば,硫酸亜鉛,硝酸銀,硫酸銅等である。この限られた薬剤を技巧的にうまく所謂ト手術法と併用して,結膜瘢痕化を最小限度に止めつつ,如何に早くト病変を払拭するかがその医術の優劣を決定したのである。従つて現下に行われているような徹底的な集団治療は望み得なかつた。処が鮫皮による結膜擦過器が出現して以来,ト手術法にある一定の標準が与えられ,集団治療も,不完全乍ら有望になつた。然し,この結膜擦過器による集団治療法も,余りに多くの医員とその労力が要求され,而もその術式如何によつては,軟弱な学童の結膜が過剰に傷けられる点から,学童治療に不向であることは勿論である。そこにスルフアミン剤が登場し,云わば旱天に慈雨の面持で,本剤による簡易な集団治療法が普及したのは当然であつて,従来の方法に比較して,学童集団治療としては方法の安易さと効果の優秀さに於ては確かに驚異的であつた。次で各種薬剤,殊に抗生物質の登場によつて愈々ト治療に希望が持てるようになつたことは周知の通りである。
一方斯る薬剤の出現によるトの即決撲滅可能の如き安易感と薬剤の乱用による弊害とに対しては充分警戒しなければならないが,少くとも過去に於ては夢としか考えられなかつた単一薬剤の点入によるト治療法が集団治療にとりあげられたことは正しく画期的と云うも過言ではない。
従来のトラコーマ治療剤と云えば,硫酸亜鉛,硝酸銀,硫酸銅等である。この限られた薬剤を技巧的にうまく所謂ト手術法と併用して,結膜瘢痕化を最小限度に止めつつ,如何に早くト病変を払拭するかがその医術の優劣を決定したのである。従つて現下に行われているような徹底的な集団治療は望み得なかつた。処が鮫皮による結膜擦過器が出現して以来,ト手術法にある一定の標準が与えられ,集団治療も,不完全乍ら有望になつた。然し,この結膜擦過器による集団治療法も,余りに多くの医員とその労力が要求され,而もその術式如何によつては,軟弱な学童の結膜が過剰に傷けられる点から,学童治療に不向であることは勿論である。そこにスルフアミン剤が登場し,云わば旱天に慈雨の面持で,本剤による簡易な集団治療法が普及したのは当然であつて,従来の方法に比較して,学童集団治療としては方法の安易さと効果の優秀さに於ては確かに驚異的であつた。次で各種薬剤,殊に抗生物質の登場によつて愈々ト治療に希望が持てるようになつたことは周知の通りである。
一方斯る薬剤の出現によるトの即決撲滅可能の如き安易感と薬剤の乱用による弊害とに対しては充分警戒しなければならないが,少くとも過去に於ては夢としか考えられなかつた単一薬剤の点入によるト治療法が集団治療にとりあげられたことは正しく画期的と云うも過言ではない。
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