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特集 トラコーマ
トラコーマ固定毒について
著者: 荒川清二1
所属機関: 1東京大学医学部
ページ範囲:P.1607 - P.1622
文献購入ページに移動 トラコーマ(以下トと略称する)ウイルスのマウス接種を試みた人としてはWeiss (1933)がまずあげられる。彼は野口英世先生のBacterium Gr-anulosisを支持した人で,猿に接種を試みた序にやつている。しかしこれは成功しなかつた。その後Julianelle (1937)がト材料をマウス脳に接種して2週間後に之を殺し,その材料を猿の結膜に接種したが,これも成功しなかつた。この際同時に家兎の脳内にも接種したのであつたが,家兎の脳材料では猿に接種して病原性をみとめたという。つまりマウスの感受性は甚だ悲観視されていたわけである。わが国では後藤氏(1941)がSzily(1935)のモルモツト脳内接種に刺戟されてマウスにト材料を接種して組織学的に変化を起すことを見ているが,分離固定などの努力はしていないようである。その後Bralay (1948)が包括体性結膜炎ウイルスをマウスに分離したといつだが,中和試験その他による確認試験は行つていない。Juli-anelleの場合はNicolle (1921)が家兎睾丸にト材料を接種して37日後のものが猿に病原性をもつていたという記載や,名大の大庭教授(1935)がRaynardの因子と共にト材料の睾丸接種を試みたことに刺戟されたかと思われる。
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