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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科10巻13号

1956年12月発行

文献概要

特集 トラコーマ

長期観察(10年間)によるトラコーマの臨床的並びに疫学的研究

著者: 萩野鉚太郞1

所属機関: 1名大環研所

ページ範囲:P.1637 - P.1649

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緒論
 この研究は,名古屋大学環境医学研究所が,終戦直後の昭和21年4月1日に創設されたのと時を同じくして着手したもので,昭和31年3月31日で満10年を経過した。環境医学研究所の研究部門の中に,地理病理学或は気象医学等が含まれている。さきに筆者が報告した"気象と眼"に関する研究は,上記の研究部門に属するものである。トラコーマについては,前記の地理病理学的研究の一環として,愛知県下における本病の分布を,筆者独りの手で明らかにしてみようとの意図のもとに,本研究所開設と同時に研究を始めた。当時社会のあらゆる面が混乱の最中であり,この新設の研究所においても亦万事不如意で研究費も微々たるものであつた。これから後数年間の研究は文字通り苦難のつづきで,例えば雪の日に山奥の学校の検診に出かけたところ,持参の弁当も凍り,ためにお腹をこわし,以後絶食で働いたことが思い出される。その上この仕事の費用は全部私費でまかなわねばならず,近頃の検診事情からでは想像も許されない難事業であつた。
 その間に数ヵ所では毎年続けて観察する機会が与えられる様になつた。本文で取上げた例は最も長期にわたつて観察し,集団治療も亦数年間つづけたものである。対象とした地区は,名古屋市中川区下之一色町で,今日もなお研究がつづけられている。この一文は,この地区の小・中学校生徒についての満10年間の眼の観察記録である。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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