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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科10巻13号

1956年12月発行

特集 トラコーマ

トラコーマの免疫

著者: 弓削経一1

所属機関: 1京都府立医大

ページ範囲:P.1650 - P.1657

文献概要

Ⅰ.緒言
 長年に亘つたトラコーマ(以下トと略す)の臨床観察は,トの性格がアレルギー(以下アと略す)性疾患ではあるまいかと言う推理を私に持たせるに至つた。その後,この様な観点に立つて,トの臨床経過を今一度解析し,更に実験的にトの本態をなす抗元抗体反応の証明に努めて来た。先年,その成果をまとめ,「トア」16)と題して綜説を発表した。当時私は,トのア性々格について,尚充分な根拠を収めるには至つていないが,之を確信すると述べたが,今も尚変る処がないばかりか,一層その信を強めている。
 トが他のヴイールス(以下ヴと略す)性疾患と同様,ア化疾患と考え得る以上,そこに営まれる抗元抗体反応は,一方に於てア性反応を表示すると共に,他方,免疫現象をも表現するに相違ないことは推定に難くない。アと免疫との両者に関する一元論的解釈は,最早今日では常識的であるからである。然しトの免疫現象は,臨床的にこれを明確に捉えようとしても,却々困難である。従来多くの研究者がトには絶対的な免疫は成立しないとして,それ以上には論及していないのも,この辺りに理由があるようである。絶対免疫についてのこの見解には誰も反対しないであろうが,これがうのみにせられて,トには免疫は認められないと,頭からこれを否定してかかる傾向が,今日尚強いようである。確かに,トの免疫の実証は今日不確かではある。然し不確であると言うことは物事の否定には結び付かない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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