文献詳細
文献概要
特集 第9回日本臨床眼科学会号 〔一般講演〕
(38)再び眼筋無力症に就て
著者: 田野辺富蔵
所属機関:
ページ範囲:P.754 - P.757
文献購入ページに移動 余は昭和7年より同10年にかけ,東大眼科を訪れた所の,従来なら慢性進行性外眼筋麻痺症と診断さるべき,又実際に慢性進行性外眼筋麻痺症という診断の元に紹介された14名の患者,即ちすべて幼少年の時期に発病し,慢性に外眼筋を侵して来,上眼瞼下垂,眼球運動障碍を来すが,内眼筋には異状無く,眼部を除いた身体筋には全然運動障碍を来たさないという独得の症状を見うるものを観察して居た所,此の症状は疲労により著しく増悪する。反対に閉目休息せしむれば著しく恢復,一時的乍ら殆んど治つた様になるという非常に変つた性質のあることを注目,此の目の眼瞼下垂とか,眼球運動障碍は,真正の麻痺でなくて,眼筋の筋無力症であると主張,慢性進行性外眼筋麻痺症というのは妥当でなく,その代りに眼筋無力症Myasthenia ocularisとしたら如何かと提議したのである。之に対し其の当座,しばらくの間真向からの反対もあり,牛ば肯定,牛ば否定の立場をとられたものもあり,之等の論に対し余は,真の解決は10年,20年と沢山の症例を集め,忠実に観察し,其の結果を綜合して始めて達せられるものであると述べておいたのである。今やその言葉通り20年以上の歳月が流れたので,本眼筋無力症問題の火付役であつた余に,一応此処である程度のしめくゝりをつけさせて頂き,更に諸家の御研究,御教示を得乍ら,将来の真の解決の道に進んで行きたいと念願するものである。
掲載誌情報