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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科10巻6号

1956年06月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・22

異種角膜移植症例

著者: 桑原安治

ページ範囲:P.963 - P.964

解説
 人眼角膜の代りに人工角膜或いは動物角膜を以つて角膜移植が出来たならば甚だ便利である事は論を俟たな事い。従つてHippel,Salzer氏等を始めとして多くの学者の研究が行われたが此の夢の実現は仲々に困離である。私は最近鶏角膜を以つて人眼に移植を試み透明癒着に成功したので僅かに1例ではあり尚遠隔成績を観察する必要があるが取敢えず御高覧を願う次第である。

綜説

軽症慢性軸性視神経炎に就て—特に桑島氏の疑義に答えて

著者: 鈴木宜民

ページ範囲:P.965 - P.970

 伊東教授1)が大正15年(1926)初めて一種の軽症球外視神経炎として,視力は1.2でありながら霧視,羞明或は眼精疲労を訴える患者の少くない事に注目してからこの方,吾々の教室に於ては本症の臨床症状に関して多くの研究と発表を行つて来た。又この間わが教室以外に於ても例えば藤田2)3),永山4),馬場5),佐々木6),大島7)或は倉知8)氏等少なからぬ人々が本症の存在に関心を持つて来たわけであるが,一般には本症に対する興味は尚薄くその認識は深くなかつた。この事は本年度の日眼総会(第60回)に於ける大島氏のわが教室の川村9)の発表に対する討論にも明らかな処である。

臨床実験

特発性円錐角膜の細隙燈所見

著者: 呉基良

ページ範囲:P.971 - P.972

 円錐角膜は稀な疾患ではなく又視力障碍と角膜の特有な形態学的変化とに依つて容易に診断され得るものである。併し之が急性且つ特発的に発生し,非炎症性の著明な角膜溷濁と急激な視力低下とを主訴とした場合には,細隙燈検査に依らざれば一般に診断困難で外観上Leucomaと誤診され易い。最近吾々のClinicに特発性の角膜実質溷濁と視力障碍を主訴とし,肉眼的諸検査で診断のつかなかつた円錐角膜の一例に就き,詳細なる細隙燈検査を為し得たので茲に報告する。

外傷性漿液性虹彩嚢腫に就て

著者: 陳昆暁

ページ範囲:P.973 - P.973

症例
患者:胡○○,27歳,♂
初診;1954年9月14日

糖尿病患者網膜の多糖類に就て

著者: 奥田観士 ,   宍道辰男 ,   辻昭二

ページ範囲:P.975 - P.978

 糖尿病に於ける眼病変に就ては古くから色々と報告があるが,水晶体に関するものが最も多い様である。之に次で我々の注意を惹くものは網膜の変化である。
 臨床上糖尿病性網膜炎の所見として挙げられるものは出血及び白斑であるが更に網膜細血管の動脈瘤に対しては最近Ballantyne,Loewen-stein,Ashton,Friedenwald等の仕事により特に注意が向けられる様になつた。

結節性紅斑に合併した再発性葡萄膜炎

著者: 深沢愛子

ページ範囲:P.978 - P.982

緒言
 皮膚,粘膜及び眼症状を伴う全身的疾患の存在については,最近多くの注目をひき,その報告例もかなり多数にのぼつているが,私も最近Behc—et症候群,或はFranceschetti Valerioのmu—cocutaneo-oculare Syndromeと考えてよいと思われる,結節性紅斑及び口内潰瘍を伴う再発性葡萄膜炎を経験したので,その概要を報告したい。

九州人に於ける眉の形態について(第2報)

著者: 塩谷信一

ページ範囲:P.983 - P.986

緒言
 筆者は,さきに眉の計測について,性別的,年令別的に検討を行つたが,茲に更に眉の計測について,人種別に比較検討を行つたので,続報としてこれを報告する。

孤立性網膜真性嚢胞の一例

著者: 中野淳巳

ページ範囲:P.986 - P.989

 孤立性真性嚢胞を臨床的に観察した記載は甚だ僅少で,外国に於てWeve,Kurz,Jancke,Kor-nzweig等,我国では布村一島,百々,林(生)等の諸氏による報告があるに過ぎない。
 私は最近,略同大の2個のこの種の嚢胞と鋸状縁断裂を示す片眼網膜剥離の一例について,その治療経過を迫求し得たので茲に迫加報告する。

緑内障眼に於ける前毛様動・静脈圧に関する研究—第5報 頸部圧迫試験に対する前毛様動・静脈圧及び眼圧の反応による緑内障の診断並に予後の判定に関する一考察

著者: 清水貞男

ページ範囲:P.989 - P.995

 既に第3報に於ては正常眼の,第4報に於ては緑内障眼の頸部に30粍水銀柱,10分間圧迫と云う操作を加えた際の前毛様動・静脈圧及眼圧の反応に就いて述べ,又単純緑内障眼に於ては前毛様動・静脈圧の反応に於て正常眼の反応と差なく,眼圧に於ては正常眼と反応が異なり,又鬱血性緑内障眼に於ては前毛様動・静脈圧及び眼圧の反応に於て正常眼と反応の異なる事も既にその際述べた如くであります。そこで今回は正常眼と緑内障眼の前毛様動・静脈圧及び眼圧の反応に於けるその差を利用し,本試験の如き30粍水銀柱,10分間と云う低い加圧量の頸部圧迫試験が緑内障の診断並に予後の判定に役立つかどうかに就いて考察した結果従来の圧迫負荷試験にも優るとも劣らぬ好結果を得,然かも従来は圧迫量として60粍水銀柱以上の圧を用いる者が多かつた為,患者に与える苦痛も甚しかつたが,本試験は圧迫量として従来の半分と云う30粍水銀柱の圧を用い,而も気管を圧迫しないで頸動・静脈のみを圧迫する様に作つた橋を用いたため患者に与える苦痛は著しく軽減し,又一定の圧を目的部に加える事が出来たのでかくの如き好成績を得たものと思われ,又一方前毛様動・静脈圧をも考慮しての圧迫負荷試験の成績は従来の文献にもみられないので此処に報告し大方の批判を仰がんとする次第であります。

緑内障眼に於ける前毛様動・静脈圧に関する研究—第6報緑内障眼に於ける虹彩部組織の病理組織的所見に就いて主として血管に就いて

著者: 清水貞男

ページ範囲:P.997 - P.1002

 緑内障の本態の解明の一助にと,第1報より第5報に至る迄は,専ら房水の産生・排出に重要な役割を果している前毛様動・静脈の生理学的探索を行い,その結果単純緑内障眼に於ては,前毛様動・静脈の反応に於て,正常眼と差異を認めず,鬱血性緑内障眼に於ては,前毛様動・静脈の反応に於て,正常眼と差異を認め,前毛様動・静脈にトーヌスの低下のある事が知れたのでありますが今回は少し趣を変え,前毛様動・静脈の更に末梢である虹彩部の血管に就いて,病理組織的探索を行い,聊か興味ある結果を得たので,此処に発表し,大方の批判を仰がんとするものであります。

緑内障患者に於ける皮膚丘疹吸収時間(Q.R.Z.)に就て

著者: 清水貞男

ページ範囲:P.1003 - P.1008

 1923年アメリカのMc.clure及びAldrich両氏は生理的食塩水0.2ccを皮内に注射し,之により生ずるQuaddelの消失する迄に要する時間をQuaddel-Resorptions-zeit (Q.R.Z.)と呼び,浮腫及び潜在性浮腫のある患者に於いては,健康者に比し著しくその時間が短縮されたと述べ,其の後西洋に於いても,又我が国に於いても次の文献に示す如き各種実験が行なわれ,本試験は広義に於ける生体内の水分代謝と密接な関係がある事が実証されたのでありますが,以上の実験は主として内科小児科疾患に就て行なわれたものであり,眼科的疾患に就ては現在に至る迄未だその実験が行なわれたと云う報告をみないのであります。
 そこで私は水分代謝と密接な関係があると思われる各種緑内障患者に本試験を実施し,各種緑内障患者のQ.R.Z.と正常者のQ.R.Z.との間の関係,各種緑内障患者の眼圧とQ.R.Z.との間の関係,各種緑内障患者に手術的操作を加えた際のQ.R.Z.に及ぼす影響等に就て種々考察した結果聊か興味ある結果を得ましたので報告する次第であります。

硝子体の細隙燈顕微鏡的所見—第6篇 硝子体内出血

著者: 陳昆暁

ページ範囲:P.1009 - P.1014

第1章 諸論
 健常硝子体は無血管であるが周囲の有血管組織の出血に際して硝子体内出血を合併する。著者は硝子体内出血を細隙燈顕微鏡的に観察したのでその所見を茲に述べる。

緑内障に於ける余の前方排出率(CV%)に就て

著者: 大橋孝平

ページ範囲:P.1014 - P.1016

 余は既に本誌7巻,8号及び11号又は今次の日眼総会,緑内障シンポジアム席上等で余の前方排出率CV%と後方排出率VV%に就て述べたが,少しくこゝに補足して説明しようと思う。
 先ず須田氏眼球圧迫試験に於ける下降率Dとの関係は,緑内障眼ではDとCV%,DとVV%,CVとVV%の間にそれぞれ有意の相関が見られた事より,恐らくDは排出路全体の排出率を示すのであつて,CV%は主として前方排出路による前毛様体静脹を介する排出率を示し,VV%は主として渦静脈を介する排出率を示し,CV%,VV%又はその他総ての排出度の合計を示すものがDであろうと思う。このことは己に発表した通りである。

細菌性並びに非細菌性結膜炎に対する非特異性免疫原加複合水性ペニシリンGの効果

著者: 向山昌信 ,   中野京子

ページ範囲:P.1016 - P.1019

緒言
 従来,各種結膜炎の治療は,主として局所的に点眼薬を使用して略々満足すべき効果を見,全身的療法の併用を見る迄もない場合が大部分である。然し乍ら,その疾患の治療経過の短縮並に合併症の防止と言う見地に立脚して考えると,就中義膜を生ずる場合に於て,一見さほど重症とも見做されない各種結膜炎に於ても,全身療法の併用の必要性が痛感されるのである。
 一般に眼疾患の治療に当つては,その病原体に特異的に作用する薬剤の全身的適用が,予期以上に効果を見ない事が屡々である。この場合寧ろ非特異的作用物質を以て遙かに有効性を示すことがある。この事は眼組織の特殊性に鑑み,他の組織に発症する場合に比し遙かに集中的に濃密に発症が起るためであろうと考えられる。

ハイドロコーチゾンの眼科的応用

著者: 三浦寛一 ,   奥平喜惟 ,   上野一也 ,   田中好文 ,   重松典雄 ,   前田泰子

ページ範囲:P.1019 - P.1028

 最近数年間に卓越した治療効果を示す各種抗生物質が登場し,次でコーチゾン,ACTH等のステロイドホルモンが出現したが,我々眼科領域に於ても此等薬剤は広く応用され,十数年前に比べ治療方針には一大改革が齎らされた。中でもコーチゾンは,眼科領域に於ける各種疾患に対し,確実にして,而も顕著な治療効果を示す点より必須の薬剤とされるに到つた。特に一般には局所使用によつて確実な効果を示すため,全身投与による不愉快な副作用を全く避ける事が出来る。扨て,ハイドロコーチゾン(Compound F.)は,コーチゾン(Compound E.)と類似の構造を有し,既に1938年Mason, Hoehn and KendallにょつてC12O4SeriesのCompound C, D, E, G,と共に記載されている。併し其臨牀的応用は,最近3〜4年来漸く注目される処となり,ステロイドホルモンのニユーフェィスとして登場すに到つた。
 ハイドロコーチゾンは強い抗炎症性作用,抗アレルギー作用を有する副賢皮質ホルモンの一つであり,而もその臨床的応用に於てコーチゾンより広く,又その効果に於てコーチゾンより勝れ,約1.5倍強いとさえ云われて居り,既にM.D.Gor-don, McDonold, R.H.Dickinson, M.J.Hogan等を始め,我国に於ても,三井・山下,筒井,倉知,鴻,池田等の報告がある。

ネオシネジンと白内障手術

著者: 宮崎茂夫 ,   神足実 ,   三宅正夫 ,   岸田博公 ,   佐々木たつ子

ページ範囲:P.1029 - P.1030

1.緒言
 著者等は先に臨眼誌上に「ネオシネジン」が眼科領域に於て瞳孔散大作用が速かで眼圧亢進の恐れなく,且つ散瞳時間も長くない上に1%液でも充分に散瞳効果があり,その場合0.5%のピロカルピン点眼により散瞳を阻止出来る事を知り診断的散瞳薬として理想的である事を発表した。その当時本剤の血管収縮作用も仲々強力である事を知つたのである。一方最近の老人白内障手術の傾向として所謂水晶体円形瞳孔手術が多く用いられる様になり,既に井上,桑原,大橋氏等の白内障手術に10%ネォシネジン応用の記載がある。更に近来カストロビェホー式の全摘鑷子,ベル式吸引器等々優秀且つ使用に便な器械の出現により更にこの傾向は強まろうとしている。然してこの手術に際し問題となるのは瞳孔径である。然し折角散瞳しても充血が強くなつたり,眼圧を上昇させたりしたのでは,手術に際し忌むべき硝子体脱出,虹彩脱出,前房出血等を来す恐れが多くなつて来る。此等の症状を避けるため従来は「アドレナリン」の結膜下注射,又は前日乃至数時間前の「ホマトロピン」点眼が用いられていたが色々と不便の点があつたのである。そこで著者等は今回「ネオシネジシ」の散瞳を白内障円形瞳孔手術に応用した結果,見るべき効果を得たので報告する次第である。

緑内障早期診断,特に傾斜試験に就て—補遺共の2早期緑内障主導側に就て

著者: 魵沢甲造

ページ範囲:P.1031 - P.1034

 眼科的疾患の診断に当つて是が複臓器である以上相対的観察は日常我々の常に試みる処である。而して左右の疾病が早期に全く同程度に罹患し進行する事は極めて稀な事である。緑内障に於いては単眼性も両眼性もあるけれども早期に単眼性であり乍ら,機能上即ち眼圧に於いて両眼性に上昇を来すものが間々認められる。所謂同感性眼圧の由つて来さしむる処であり,此の場合健側は二次的に器質の変状を来し,恰も早期より両眼性に発来し,個々別々に同程度の進行を呈したる如く解されがちである。
 斯かる場合,両傾差試験としては,全く正常値或いは其に近い第Ⅰ型を示すのであるが,何れに主導性があるかを決定する事は極めて重要な事と思われる。

銀海餘滴

グラフ募集

著者: 中村康

ページ範囲:P.1002 - P.1002

 グラフ頁の原稿の募集をします。あまり一度に集まると,のせられなくなるので,一応其内容指示をした通信を戴きたいと思います。そして1〜2ヵ月前に原稿を送つていたゞく事にします。又当方から御発表の論文について,御依頼するものもありましよう。眼で見る診断,治療で,臨床に主体をおき,1ヵ年分位を集めては,図譜として単行本としたいと思います。掲載原稿には薄謝を呈します。

会議だより

ページ範囲:P.1034 - P.1034

トラホーム対策連合会
  1956年度大会
  トラホーム会議
 この会議は"トラホームの長期間治療"というテーマについて,パリー8区ペルシヤス通り,47番地ペリアル議長宅で1956年5月5日土曜日十時に行われた。
 眼科学のフランス連盟会議の折,パリーを訪れた眼科学者達は今度の会議に心からなる招待を受けた。

ビェッテイ教授来日

ページ範囲:P.1043 - P.1043

 昨年来朝のはずであつたW.H.0国際トラコーマ専門委員会委員,国際眼科学会トラコーマ対策委員会委員長,イタリーローマ大学眼科教授,ビェツテイ博士,本年の7月30日飛行機で来朝の予定,同教授より通知あり。

臨床講義

局所適応症候群Local Adaptation Syndrome (L-A-S)と眼疾患

著者: 池田一三

ページ範囲:P.1035 - P.1039

 先にはいわゆる全身適応症候群General A-daptation Syndrome (C-A-S)と眼疾患との関係について述べた1)が,今回はSelyeの新しい概念局所適応症候群Local Adaptation Syndrome(L-A-S)を紹介し,併せてこれと眼疾患との関係を考察たいと思う。

談話室

第60回日眼総集会印象記

著者: 赤木五郎

ページ範囲:P.1041 - P.1043

 中村康教授から,今学会の零囲気に就て何か書く様にとの依頼である。学会が終つてから既に一ヵ月を経た今日此頃では,学会の記憶も薄れ勝ちの為,或は多少の誤りはあると思うが,想い出すまゝ書き連らねて見た。
 日本眼科学会は明治30年2月27日創立されたので,今年は丁度60年目に当る訳である。学会60周年と云えば,数多い日本医学会分科会中でも,解剖学会に次ぎ最古の歴史と伝統を持つものである。此は偏に私達の大先輩,河本重次郞,大西克治,宮下俊吉,川上元治郞等の諸先生方が先見の明を持つて居られた事に依るものであつて眼科学会の今日の隆盛を見るにつけ,斯る先覚者を持つた事は私達会員の大きな誇りであろうと思う。

日本トラホーム予防協会会誌

トラコーマの集団治療に就て—1.トラコーマ淫浸地に於ける一般住民の集団治療の遠隔成績/2.学校トラコーマ集団治療の検討

著者: 木村一雄

ページ範囲:P.1045 - P.1054

 先ず福岡県南部,佐賀県一部の中小学校トラ集団治療の実態を調査した。この成績に基きO.T.眼軟膏1日3回点眼5ヵ月間治療校の治癒率を始めとして意外に低いのに気付きその原因を追及した。率直に云つてその理由を判然とさせることが出来なかつた。或は私共の調査の及ばなかつた眼軟膏の自家調製技術,保存法使用原薬剤の陳旧等に原因がひそんでいるのかも知れない。併し如何れにしろ熱心な治療にも拘らず,低い治癒率しか挙げえていいないのが現実であるからして,何らかの適切な指導乃至手段をトラ集団治療実施校に施すべきと考える。かくて現段階では福岡県南部及び佐賀県一部の中小学校に於けるトラ集団治療の現況を述べ,トラ集団治療校の成績を,一つの事実として述べるの止める次第である。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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