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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科10巻7号

1956年07月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・23

睫毛白変症

著者: 中村康

ページ範囲:P.1057 - P.1058

解説
 睫毛の白変は色々の場合に見られるが2〜3の例を図示して見る。

綜説

最近の眼科新薬に就いて(1)—東京眼科講習会講演(31.6.3.)

著者: 大橋孝平

ページ範囲:P.1059 - P.1066

 最近の眼科新薬に就いて,抗生物質剤を除き最近1〜2年の国内文献及び教室の実験データーを基として次の順序で解説をする。

日本眼科学会第60回総会見聞記

著者: 大熊篤二

ページ範囲:P.1067 - P.1072

 本年の総会は,日本医大中村康教授の司会の下に,4月2日から3日間,九段の曉星学園講堂で行われたが,今年は日眼創立60周年に当るので,その記念式典が前日丸の内東京会館で催された。
 その日は4月と云うのに朝から冷い雨が降つている。午前中に理事会に引続いて評議員会が開かれ,明後年の総会の特別講演・宿題報告について投票が行われた。再三の投票を繰返した未,特別講演は名古屋市立医大吉田義治教授に,宿題報告は斜視についてのシンポジアムで,弓削経一・広石恂・中川順一の三氏に決定された。尚明後年度の総会は,三国政吉教授の司会で薪潟で催されることゝなつた。次で明年度司会者の清水新一教授より,明年度総会は5月17日より3日間岐阜市に於て開催,その際会場の数を増して申込の全演題を採用したい旨提案があつたが,討議の結果本年度の如く会員数による割当制によることが要望された。

臨床実験

乱視の一統計的観察

著者: 陳昆暁

ページ範囲:P.1073 - P.1076

緒論
乱視眼は視力障碍以外に眼症状,眼精疲労全身神経症状を発生する。併し乍らこれらの障碍は適切な眼鏡装用により治癒するものである。我々は過去に於てこれらの障碍を訴へる患者が医者にVitamin B1欠乏症として診断され,長期間に亘りVitamin B1の注射内服をして治癒しなかつた多数の患者を僅か一本の眼鏡装用により治癒させた症例を経験している。外来患者のすべてに対し一々検影をし,屈折の矯正を図る事は甚だ困難である。併し乍らこれをしなくては実際に確実な診断は得られない。著者は開所以来八個月間に亘り外来患者のすべてに対し,検影,矯正を施し眼精疲労を訴へる患者の多数が乱視に起因する事を確認した。従つて屈折の検査を施さずして眼精疲労眼に対しやたらなるVitamin B1注射をなす事に対して警告を発すると同時に其の成果を茲に報告する

九州人における眼瞼と角膜の位置的関係について

著者: 塩谷信一

ページ範囲:P.1076 - P.1082

 I.
 眼瞼の生体学的研究については,古くから多くの報告があり,瞼裂と眼球の位置的関係についても,1926年Reitschは独逸人について瞼裂の大いさ,瞼裂の形状との関係が年齢的に次第に変化することを述べている。即ち初生児では瞼裂間に比して角膜は過大で瞳孔は下眼瞼縁にあり,角膜上縁は上眼瞼縁に近いか又は若干蔽われている状態である。即ち内外両眼角部を結ぶ瞼裂方向線は,瞳孔又はそれより上位にあるが,以後年齢の進むにつれて瞼裂方向線は,瞳孔より下位にある様になり,角膜下縁は次第に下眼瞼縁に接近し,又角膜上縁は上眼瞼によって著明に蔽われて来る。従って鞏膜も充分露出して見えて来る。
 成人期を過ぎて老人期に至ると,瞼裂方向線は瞳孔を遙かに離れる。この様に瞼裂方向線は,年齢の進むにつれて眼球に対して次第に降下して行くので従つて,例え眼球は眼窩に対しては殆ど移動しないとしても瞼裂に対する位置は年齢的に変化を示すことになる。

Glaucomatocyclitic crises (Posner and Schlossman)と考えられる一症例

著者: 今井晴一

ページ範囲:P.1082 - P.1086

 Adolph Posner及びAbraham Schlossman1)は1948年に「毛様体炎の症状を伴つて片眼性に再発を繰り返えす緑内障発作について」なる題目の下に,特異な症状及び経過を呈する症例についての観察の結果を発表し,この特異な症候群をGlaucomatocyclitic crisesと命名したが,当時Sallman2)もこのような症例の存在することを認め,その後Theodore3),Billet4), Vanters5)は夫々同様の症状経過を示した症例を報告し,Posner6)7)は更に症例を追加報告し,Grant8)は本症患者のTonog-raphyの成績について論及し,又Theodore3)によるとKornzweigやDouglasも同様の症例を観察している。これらの人々の意見では本症候群はさほど珍らしいものとは思えないと云うことであるが,我が国では未だ報告を見ない。
 Posner及びSchlossman1), Posner6)7),Theodore3),Billet4)等の論文から,本症候群の特異な点を摘録して見ると次の如くになる。

脈絡膜黒色腫の二例に就いて

著者: 黒田育徳

ページ範囲:P.1086 - P.1089

緒言
 脈絡膜に原発する悪性腫瘍は我国では所謂黒色肉腫の名称を以つて報告されているものが最も多く,必ずしも極めて稀有の疾患とは言へないが,私も最近2割の本症に遭遇し摘出を行ひ組織学的に検査する械会を得た。又後処置としてX線近接照射を行ひ好結果を得たので報告する。

先天性心臓疾患にみられた網膜チアノーゼの一例

著者: 小島芳子

ページ範囲:P.1089 - P.1092

 先天性心臓疾患に際して全身チアノーゼを招来すると同時に網膜血管,殊に静脈の高度なる拡張チアノーゼ着色を呈する症状を,1863年,Lieb-reichが初めてCyanosis retinaeと命名して以来時汝その報告が見られ,その後,心臓障碍を伴わぬ真性赤血球増多症に於ても同様な所見が現われる事が知られ,我が国に於ても,広石氏1)(1929)の報告第一例以来,追々その報告例をみているが,しかし全部でも未だ7例にすぎない。即ち真性赤血球増多症にみられる網膜チアノーゼとしては広石1)(1929),大橋・岡田2)(1938),太田3)(1951)三氏の症例,心臓疾患によるものとしては野崎4)(1931),浅田5)(1934)(本例は後天性心臓弁膜疾患,殊に僧帽弁閉鎖不全症によると。)陳6)(1939),黄7)(1944)氏等の4例である。私共も最近,所謂Fallot四徴と思われる先天性心臓疾患々者の眼底に網膜チアノーゼを見出したのでここに追加報告する。

Rutin Cに依る眼科出血性疾患の臨床治験

著者: 市原正文 ,   宮本巖

ページ範囲:P.1093 - P.1097

1.緒言
 余等は昨年来Rutin C (エルアスコルビン酸100mg,ルチン50mg。日本衞材による)により諸種眼底出血(蛋白尿及び糖尿ある者は除外)を加療し,その経過(主として視力並びに再出血の有無)を観察し,その結果比較的良好な成績を得た故此処に報告する。尚実験例に於ける全身処見の記載は凡て本学,内科教室員の御協力による成績である。

東京労災病院に於ける眼内鉄片異物摘出成績に就て

著者: 楢崎嗣郎 ,   松崎浩 ,   小鹿倉正

ページ範囲:P.1099 - P.1103

Ⅰ.緒言
 眼内鉄片異物摘出に就て,比較的新鮮な症例に関しては数多くの報告があるが,数ヵ月乃至1年有余経過した陳旧な眼内鉄片異物の数例を経験した報告は少いのでここに報告する。
 尚当院で労災患者の障害等級の認定検査に来院した患者に就て,眼内異物の検索を行つた結果,失明眼の12%に達する眼内鉄片異物が見逃されていた。これに就ても諸家の注意を喚起したい。

乳児砒素中毒の眼所見

著者: 浅山亮二 ,   塚原勇 ,   坂上英 ,   今野信一 ,   永井秀夫

ページ範囲:P.1103 - P.1110

 周知の如く,昭和30年に,我国で著明な森永のMF印粉乳による集団砒素中毒が発生し,中国,四国,近畿地方にわたりその数は約8000人以上と推定される多数の中毒患者を出した。此の事件は患者が乳児である点に於て世界最初の珍しいもので,既に各所で報道された事ではあるが,次に本事件の経過を要約する。
 昭和30年8月初めの頃から,中国,四国地方に不明の疾患が乳児に多発し,岡山大学小児科学教室浜本教授をはじめ,病理学,法医学教室関係者が検討した結果,森永・徳島工場製のMF印粉乳中に混入した砒素(以下Asと記す)による中毒である事を決定して,8月23日夕刻発表した。翌24日には各新聞社がこの事件を掲載したので,8月25日以降,中風四国,近畿各地方ではAs中毒の疑を以て多数の患者が各病院を訪れるにいたつた。粉乳にAsが混入した原因は,森永・徳島工場で粉乳製造過程に於て緩衝剤として用いたNa2HPO4と砒酸ソーダが誤り使用されたといわれ,同工場製MF印粉乳Lot番号5410以降の粉乳にAsが含まれている事が判明した。

先天性葡萄膜欠損眼に於ける網膜剥離手術について

著者: 浅山亮二 ,   山田秀之

ページ範囲:P.1111 - P.1114

1.緒言
 先天性葡萄膜欠損眼に合併する網膜剥離に就いての報告は,現在尚その数が少い。為にその発生機序,更に治療に対する見解も,百々3),三根4)の報告を見るまでは甚だ不明確であつた。著者等は最近その一症例に遭遇し,ヂアテルミ凝固術によつて之を治癒ぜしめた経験を得たので報告し,併せて其発生機序並びに治療に対する見解を述べる。

眼疾患に対する細隙灯検査法の研究—第2報 涙点に関する研究

著者: 鈴木志賀子

ページ範囲:P.1114 - P.1121

Ⅰ.緒言
 流涙症の原因に対して涙点の占める位置は大きく,Graefe, Hippel,足利,Rosengren, Faza-kas等も述べた如く,涙小管ボンプ作用に関しても涙点の機能が重視されるところであつて,種々の涙点障碍が流涙の原因となることは古くよりの多くの記載でも明かである。然し乍ら涙点の細隙灯所見に関しては従来殆んど詳細な記載が見られない。私はこの涙点の機能的重要性を鮮明にすべく,こゝに細隙灯検査法を応用して種々の検討を加え,殊に正常涙点の形態的所見を鼻性及びトラコーマ性流涙症に於ける涙点所見と比較し,且つ従来行われなかつた諸種の細隙灯微測法を利用して涙点とその附近の計測値を検討した結果,流涙症に関して興味ある知見を得ることが出来た。

自律神経剤の眼圧に及ぼす影響—第4報中枢性遮断剤の眼球圧迫負荷試験

著者: 船本宏

ページ範囲:P.1123 - P.1131

Ⅰ.緒言
 自律神経剤の眼圧に及ぼす影響に就いては己に末梢性に作用する薬物について観察を発表して来たが,第3報で述べた如く,最近大橋教授,山田(昭和30年)は間脳,葡萄膜サイクルの眼血圧調整作用としての眼圧自働調整能の上位中枢として大脳皮質支配を考えた。そこで若し大脳皮質から間脳への伝導を遮断しつつ眼球を圧迫すればその除圧後に発生する軸索反射で間脳及び大脳皮質への求心性刺戟により眼圧上昇因子誘発の遠心性亢奮が無くなり眼圧恢復が遅延するものと推定される。そこで今回はこれを究明すべく眼局所に眼圧上昇に働く薬物を負荷した時の眼圧の変化と中枢そのものを遮断した時の眼圧の変動及びこれに眼局所に眼圧上昇に働く薬物を同時負荷した時の眼圧の変動により大脳皮質及び間脳支配の眼圧に対する態度を観察せんとした。それ故前者としてはコントミン,これにイミダリン,ピロカルピンを負荷し,後者としてはアプレゾリンとこれにイミダリン,ピロカルピンを負荷し眼球圧迫との二重及び三重負荷による正常眼,眼圧の変動を観察したが興味ある知見を得たので報告する。

私の経験

台湾医学の現況

著者: 呉耀南

ページ範囲:P.1133 - P.1138

 此度私が貴国に参りますのは12年振りであります。戦後日本医学の目ざましい進歩は誌上或は其の他の機会に於て見聞し,近くは眠科関係者として中村,馬詰両教授にも親しくお会いし,その他知名諸教授の渡台によりまして日本医学の状況を窺知していたのでございますが,此度御地に参りまして其の進歩発展の状態を目のあたり見まして貴国の為,誠に慶賀に堪えない次第でございます。此度恩師広瀬教授の多大なる御盡力によりまして遂に渡日が実現し,茲に台湾医学の一端を御紹介出来ますことは私の此上もない歓びであり,光栄であります。台湾の近況に就きましては既に他の機会に色々お聞ぎの事かと存じますが,今日私は台湾医界出身の一人として茲に改めてお話し申上げたいのでございます。御承知のように終戦10年此方,台湾は目まぐるしい変遷を経ました。戦争の打撃と終戦に次ぐ民族の移動,社会状態の変化の中にあつて台湾は一時渾沌たる停頓状態に陥入つたのであります。終戦当初は医薬医療設備欠乏し,空襲によつて病院は到る処破壊されるという状況にありました。その間にあつていよいよ大陸との往来も繁くなつて来た1946〜47年頃にかけて真性脳膜炎,天然痘,コレラペスト等の疫病が一時に流行したのであります(第1図は1946〜52年に於ける天然痘,コレラ,ペストの流行状態を示す。)以上の疫病は当時の緊急防遏によつて幸にこれ以上の大事にいたりませんでした。

談話室

日本眼科学会創立60周年記念式典竝びに第60回日本眼科学会総会に出席して

著者: 南熊太

ページ範囲:P.1139 - P.1141

 昭和31年3月29日久留米駅を出発した。九州はもうかなり暖かい。しかしその暖かさにも増して,心温たまる気持,愉快な雰囲気は,駅に見送つて戴だいた教室員及び,家族に取り囲まれたその心の温たかさであつた。
 学会へ出で立つ駅の暖かき

日本トラホーム予防協会会誌

「トラコーマ」と「トラホーム」

著者: 千葉保次

ページ範囲:P.1143 - P.1144

 この10月,日本トラホーム予防協会の再出発についての通知を受けた時,現在では「トラホーム」という呼名を「トラコーマ」と改め,日本トラコーマ予防協会として発足すべきではないかと直感したのであつた。
 言うまでもなく眼科学会では「トラコーマ」の呼名を用いている。これは昭和5年,日本眼科学会で学術名を「トラコーマ」に統一したのに始まる。医学の独立によつて之が進展を期するためには,医学用の国語の整理統一が必要となることに日本限科学会は当時既に著眼し,卒先之を断行して他の医学に先鞭をつけたのであつた。かくて従来,汎く用いられていたドイツ語のTrachom「トラホーム」は廃止されて,世界的術語であるラテン語のTrachoma「トラコーマ」に改められたのである。当時「トラホーム」という慣れた言葉を批棄するに就ては,議論もあつた様で,術語の決定後にも筒久しく此の改名に従つていない範囲もあつた。然し己に眼科学会の決議を経た事である以上,之を用いるのが正しい態度である。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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