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私の経験
台湾医学の現況
著者: 呉耀南1
所属機関: 1長崎大学眼科
ページ範囲:P.1133 - P.1138
文献購入ページに移動 此度私が貴国に参りますのは12年振りであります。戦後日本医学の目ざましい進歩は誌上或は其の他の機会に於て見聞し,近くは眠科関係者として中村,馬詰両教授にも親しくお会いし,その他知名諸教授の渡台によりまして日本医学の状況を窺知していたのでございますが,此度御地に参りまして其の進歩発展の状態を目のあたり見まして貴国の為,誠に慶賀に堪えない次第でございます。此度恩師広瀬教授の多大なる御盡力によりまして遂に渡日が実現し,茲に台湾医学の一端を御紹介出来ますことは私の此上もない歓びであり,光栄であります。台湾の近況に就きましては既に他の機会に色々お聞ぎの事かと存じますが,今日私は台湾医界出身の一人として茲に改めてお話し申上げたいのでございます。御承知のように終戦10年此方,台湾は目まぐるしい変遷を経ました。戦争の打撃と終戦に次ぐ民族の移動,社会状態の変化の中にあつて台湾は一時渾沌たる停頓状態に陥入つたのであります。終戦当初は医薬医療設備欠乏し,空襲によつて病院は到る処破壊されるという状況にありました。その間にあつていよいよ大陸との往来も繁くなつて来た1946〜47年頃にかけて真性脳膜炎,天然痘,コレラペスト等の疫病が一時に流行したのであります(第1図は1946〜52年に於ける天然痘,コレラ,ペストの流行状態を示す。)以上の疫病は当時の緊急防遏によつて幸にこれ以上の大事にいたりませんでした。
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