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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科10巻8号

1956年08月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・24

虹彩嵌頓術

著者: 須田經宇

ページ範囲:P.1147 - P.1148

解説
 虹彩嵌頓術は対緑内障手術の一つであつて,之はCritchett (1857)が始めて行い,S.Holth(1906)によつて広められたものである。ところがR.H.Elliot (1909)によつて広められた鞏角膜管錐術に押されて,僅かにスカンジナビア地方にてその余命を保つていた位であつたが,鞏角膜管錐術では術後の後感染が起り易いことから鞏角膜管錐術がきらわれて虹彩嵌頓術が世界的に再登場して来た。A.Aerola (1934)によれば後感染は鞏角膜管錐術では1.8%にみられたが本法では約0.4%のみにみられたという。本法の減圧機転は鞏角膜管錐術のそれと略等しく主として房水の眼球外への濾漏である。即ち濾過形成術filtrating or filtering operation又は造瘻術Fistelbildende Operationの一種である。従つて本術式の適応症は鞏角膜管錐術の場合と同様に,単性緑内障,水眼であり,又欝血緑内障では非欝血時に,又続発性緑内障では炎症又は欝血の無くなつたとき施行する。本術式の減圧に対する成功率は約90%であると言われている。

綜説

最近の眼科新藥に就て(2)

著者: 大橋孝平

ページ範囲:P.1149 - P.1157

6.夜盲に対する薬剤
 a.アダプチノール
 アダプチノールAdaptinolはルテインより誘導した植物色素Heleninの製剤で暗順応に重要な物質とされ,宮沢,楠部,植村氏等の多くの記載を見る。1T5mg.1日4〜5Tを内服する。正常者に内服させると4〜5日連続で効を示し,第1,2次暗順応が促進され,衣笠氏等は網膜色素変性にカリクレインと併用して暗順応に改善を認め,池田氏は小口氏病に,岡氏は網膜色素変性と白点状綱膜炎に用いて改善を見ている。
 私共の症例では第1例,27歳男子,第2例,55歳女子の網膜色素変性2例に42,36Tを用い視力視野の改善と,多少の暗順応促進を認めたが,小口氏病の1例にはメチオニンを併用したが無効であつた(第1,2図)。

臨床実験

調節衰弱に於けるビタミンB1の意義

著者: 陶山喜久子

ページ範囲:P.1159 - P.1162

 眼精疲労を有する調節衰弱に対して従来よりビタミンB1剤による治療が行われて来た。しかしそれによつて患者の訴える眼精疲労の消失しない場合もある。私達は調節力が低下し近点反復測定により近点値の遠隔する5名の患者を選んでアリナミン(Thiamine propyl disulfide)を投与し,この脂溶性VB1が之等に如何なる影響を及ぼすかを検討した。尚この結果より逆に調節衰弱の本態の一端を知らうとした。

Pas-Na長期服用結核患者の副作用—第1報調節性眼精疲労

著者: 小原博亨 ,   長屋幸郎 ,   渋谷聰 ,   阿久津澄義

ページ範囲:P.1162 - P.1168

1.緒言
 Pas (Para-Amino-Salicylic Acid),が結核薬として登場して以来,左の卓効が認められ,広く使用されているが,左の副作用も皆無で無い。Pas過敏症として,発熱,発疹,下痢,黄疽,リンパ腺腫張,ニーランデル陽性尿,肝障碍,結膜充血等が挙られている。
 私はPas-Na (Sodium 2 Hydroxy 4-Amino-benzoic Acid)を長期服用している結核患者に調節性眼精疲労,其の他,二三の眼症状を併発したのを経験したので報告する。

乳頭浮腫と乳頭炎の問題について

著者: 桑島治三郎

ページ範囲:P.1168 - P.1171

 かねて,私は視束疾患の基礎的な問題について,わが国の一部に,幾つかの独特な偏向もしくわ独断的な誤解のあることを指摘し,特に視東症状に対する用語の問題に焦点をしぼつて,これらの混乱の整理を図るように提案してきた1)2)
 学説や理論の第一歩をなす学術用語や定義などに,誤解や偏向を放置したままにしておいて,学術的な問題の討議をしても,所詮それは混乱を重ねるだけになるのは明らかなことであり,特にその恐れが視束疾患の諸問題については始めから予期されたからである。

色盲用角膜コンタクトレンズ装用による欺瞞に対する看破対策

著者: 小原博亨 ,   阿久津澄義

ページ範囲:P.1173 - P.1178

1.緒言
 最近,色盲用角膜コンタクトレンズが創作されて以来,創作者の善意にも拘らず,之を悪用し,亦,市販に因る乱用で諸身体験査を通過せんとする場合が考えられる。
 私は最近,色神異常者の鉄道職員が運転従事員(機関士)に成ろうとして,色盲用角膜レンズを用い,身体験査に合格したが,体力管理表から再検査の必要を認められ,再検査を行つたが,其の際,色盲用角膜レンズを装用しているのを見出した。私は此の事から,多忙な集団検診の際,非専門医師或は医師の助手でも,斯る欺瞞を看破出来る方法を探究したが,道は近きにあることを知つたので報告する。

先天夜盲性眼底白点症の一家系

著者: 南陽子 ,   宮沢稔

ページ範囲:P.1179 - P.1183

 先天夜盲と眼底における特異な白斑点の出現とを2大特徴とするこの疾患は,Mooren (1882)が始めて記載し,その後欧米及びわが国においても数多くの報告がなされている。今回私共も夜盲を訴える母娘2人に本症を発見したが,遺伝関係において既報告例に普通に見られる劣性遺伝の型式よりはずれる如き感があり,興味を感じたので,できうる範囲内で種々検査を行つた。次にその概要を報告する。

原発性緑内障の統計的観察

著者: 松坂利彦 ,   金田哲太郎 ,   三輪貴代子 ,   小山美代子

ページ範囲:P.1185 - P.1186

 私達は昭和23年から3年間,阪大眼科で診察した原発性緑内障患者260人,404眼について統計的観察を行つた。因みに外来患者総数は21,226人であつた。
 年令,性,種類及び屈折状態との相関々係は,第1表の如くである。屈折状態に就ての年令は受診した当時のものであるが,他は既往症から算出した。

Stahli-Hudson Lineに就て

著者: 呉基福

ページ範囲:P.1187 - P.1190

緒言
 角膜の色素沈着症にStahli-Hudson lineがある。此の角膜色素沈着症は1911年Hudson氏によつて始めて記載され1918年Stahli氏によつて詳細に研究されたものである。Stahli氏の記載によれば此の角膜上皮性色素沈着症は通常角膜の下半部,瞼裂部,水平の位置に存在し波状又は細線状,ときには分枝しけつして角膜辺縁に達する事はない。其の本態に就ては此の色素は上皮細胞内に存在し小顆粒をもつて構成されたアルカリ性hema-tine (Stahli,Moncreiff,1932)である。又其の発生機転に就てはBowman氏膜の変性があり,或いは牽引による断裂があつて涙液中に含まれている鉄成分が此の個所に滲入し次いで色素沈着を来たしたものだと報告している。其後Vogt氏M.L.Berliner両氏の研究報告が発表されているが,いずれにしても此のlineの発生機転に就ては究明されていない。余は角膜色素沈着の綜合的研究をなし,此のSttihli-Hudson lineなるものはStahli氏の記載せる定義をはるかに超えて,更に多種の新症状が含まれるべきだと考えたので其の諸症例を迫加報告し,併せて其の明確なる分類を試みたのである。

銀海餘滴

グラフ募集

著者: 中村康

ページ範囲:P.1186 - P.1186

 グラフ頁の原稿の募集をします。あまり一度に集まると,のせられなくなるので,一応其内容指示をした通信を戴きたいと思います。そして1〜2ヵ月前に原稿を送つていたゞく事にします。又当方から御発表の論文について,御依頼するものもありましよう。眼で見る診断,治療で,臨床に主体をおき,1ヵ年分位を集めては,図譜として単行本としたいと思います。掲載原稿には薄謝を呈します。

バツクナンバーのお知らせ

ページ範囲:P.1204 - P.1204

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Vol.2 No.2

談話室

近視問題に就て充分話し合う事を重ねて大塚氏に提案する

著者: 佐藤邇

ページ範囲:P.1191 - P.1192

 表題の事項は私としては自明の事と考えられる。併し昭和27年来の再三の提案にも関らず,大塚氏は本提案を拒否し続けられた。近視が眼科学に於て重要問題である故一般の御意見を伺い度い。
 学会に於ける従来の近視論争はDiscussionの時間が制限され,そのため,誤が有つても之を訂正する事が出来ず,同じ事を互に繰り返す結果を来した。

集談会物語り

九州眼科集談会に就て

著者: 南熊太

ページ範囲:P.1193 - P.1194

 九州眼科集談会は,大西克知各誉教授(九大),庄司義治教授(九大),浅沼武夫教授(長大),鹿児島茂教授(熊大)等の発起により,其の第1回集会は,昭和2年10月11日,熊本医大に於て行われ,出席会員130名,傍聴者を加えれば優に200名を越ゆる盛会にして,演題44題,主として眼科医に直接関係密接なる臨牀的問題に就て知識の交換を行い,一方会員懇親会,熊本市内案内,阿蘇登山,球磨川下り等にて懇親を計り,非常に有益な会合であつた。其の後は長大,九大,九州医学專門学校など主として,医学校所在地(第8回,昭和9年には大学,医專所在地ならざる鹿児島市に於いて行われたが)に於いて,毎年1回行われ,最近では大体九大,久大,熊大,鹿大,長大の順に此の5つの大学に於いて行われている。第1回以来講演は一般講演のみであつたが,昭和27年久大に於る第22回集会の際に討議されて昭和28年九大に於る第23回より特別講演(九大精神科中教授の特講があつた)が行われることになり,昭和29年熊大に於る第24回の集会よりは,一般講演の他に補修講義,シンポジウムが行われる事になつた。
 依つて最も最近に於て行われた第25回九州眼科集談会(昭和30年6月5日,鹿児島県立大学医学部附属病院に於て)に就いて述べて,九州眼科集談会のあり方の大体及び雰囲気等に就いて述べる事にしよう。

日本トラホーム予防協会会誌

最近5ヵ年間に於ける宇部市小中学校生徒のトラコーマの推移について—宇部市小中学校生徒のトラコーマ研究(第8報)

著者: 佐々木佐

ページ範囲:P.1197 - P.1204

 昭和25年4月の宇部市内小中学校生徒のトラコーマの検診を担当して以来,既に満5年を経過した。最初の報告で,小学校15.5%,中学校20.0%の数値を得,平均16.3%罹患率であつた。その後当市でも一般生活の改善,保健衞生の向上,環境の整備等,種々の因子がいずれもよくなる一方,学校に於ける保健教育の徹底,養護訓導等による集団治療の実施等もあり,他方眼科医の献身的の努力もあつて,昭和29年の検診に於ては,平均小学校4.4%,中学校6.1%と罹患率の激減を示し,平均値4.8%を得るに至つたのであるが,之を,更に吟味し,検討することによつて,現在問題になつているトラコーマ発症の因子に関する見方,学童のトラコーマ対策,或は集団的トラコーマ治療批判等を行い得る資料を提供することになると考え,推移の大要を統計的に述べたいと思う。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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