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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科11巻1号

1957年01月発行

雑誌目次

附録

診療報酬計算早見表

ページ範囲:P. - P.

日本トラホーム予防協会会誌

眼疾患に対する細隙灯検査法の研究—(第3報)初発トラコーマ性パンヌスに関する研究

著者: 鈴木志賀子

ページ範囲:P.1 - P.9

I.緒言
 古来トラコーマ性パンヌスの存在はトラコーマの診断上重視され,本邦でも早くより河本,菅沼,桑原等の多くの記載があり,外国でもWilson,Lopes de Andrade,Busacca,Duke-Elder等はパンヌスはトラコーマの初期に発生するとし,殊にLoewenstein,弓削等はトラコーマ性パンヌスは角膜のアレルギー反応であるとし,近年Natafはトラコーマによる真の角膜炎であるとしたが,清水,岡村,清水,河本,三井等もパンヌスを以て角膜に於けるトラコーマ病変そのものであるとし,石原,青木,Thygeson等も接種トラコーマで接種6週後よりパンヌスを見ている。
 かくしてパンヌスは組織学的にも臨床的細隙灯的にも血管が球結膜より連続進入して必ずPalli-sades zoneを超える血管異常とされ,同時に角膜中にも所謂濾胞を作ることが少くないとされる(Nataf)。そして従来これらの臨床的見解細隙灯所見によつてVogt,Koeppe以来Howath,Bu-sacca,中村,呉,山根,牧内,宮田,松本,国友,大山等多数のものによつて支持されている様であるが,未だ充分の検討がなされて居らない状態である。然も近来トラコーマの診断上パンヌスの細隙灯所見が重視されるようになつて来たが,従来慢性に経過するパンヌスに就ては多くの研究が有るにも拘らず,急性に経過するパンヌスに就てはその研究が比軽的少ないうらみがある。

連載 眼科図譜・29

Euthyscopによる弱視治療の実況

著者: 秋山晃一郎

ページ範囲:P.3 - P.4

解説
第1図 Euthyscop一揃い
向つて右より
円形プロジエクター(視力練習のための),点滅式室内燈(上の棚にあつてこの写真では見えない)のトランスへ,Euthyscopのトランス,Euthyscop,Euthyscopの箱,視力表のポタン

綜説

化学療法と抗生物質によるトラコーマ治療の現況

著者: G.B. ,   樋田敏夫

ページ範囲:P.5 - P.14

 トラコーマの治療は,鉱物性,植物性物質,生物的薬剤,無機,有機物や物理的外科的方法等,非常に沢山の方法で成されて来て居る。
 此等の手技の大部分は現在では化学療法の素晴らしい効果に依つて単なる歴史上の興味であるにすぎなくなつた。他方,外科的処置は今日ではトヲコーマ後遺症の矯正に限られ,トラコーマ性増殖に対して用いられるだけである。トラコーマの治療に対する抗生物質や化学療法の価値が上昇したといつても,同一の根本的点に対しては,眼科医間に一般的合致がないのである。これはかかる治療が未だ一般の諒承出来るものを発見出来ないという意見の不一致に依るものであろう。

臨床実験

球後視束炎と疑われた鞍上脳膜腫

著者: 桑島治三郎 ,   堀内敏男 ,   佐野進 ,   豊田利明

ページ範囲:P.15 - P.18

 最近われわれは球後視束炎を疑わせる症状を呈し,開頭術により視束及び視束交叉部を圧迫している腫瘍を摘出し,組織学的に悪性変化を起した鞍上脳膜腫(Suprasellar meningioma)なることを確認したが,不幸にして鬼籍に入つた症例を経験したので報告する。

出血性緑内障の像を呈せる網膜膠腫

著者: 大野八千代

ページ範囲:P.18 - P.20

緒言
 網膜膠腫は,周知の如く早期診断,早期剔出と云う事が,患者の生命を救い得る尤も近い道であると考えられるが,誰が見ても判り易い症候を具備するものは先ず診断に迷わされる所は無いが,二次的な変化が定型的な病像を隠蔽し,誤診又は確定診断を遅らせる為,剔出の期を逸する事のあるのは注意すべきである。この様な観点から次の例は,教えられる事が多いと思い報告する事にした。

先天性脳脱による仮性搏動性眼球突出症

著者: 青柳恒之

ページ範囲:P.20 - P.25

緒言
 Sloman (1898)は搏動性眼球突出を真性と仮性に大別し更にSattlerは仮性のものを搏動性悪性腫瘍に因るもの,蔓性血管腫に因るもの及び眼窩上壁の一部欠損による脳搏の伝達に因るもの等に分類している眼窩壁の欠損によるものは成因によつて先天性と後天性に分類され,先天性のものゝ大部分は脳脱に因るものであると言われている。小川氏は先天性脳脱の頻度に就て3500〜4000の分娩の1人位の割合に発生する疾病で之れが限窩内に脱出する事は甚だ珍らしいと述べて居る。私達は最近本症の興味ある一例を経験したので追加報告したいと思う。

Chagrinを件う1種の角膜炎に就て—仮称Ceratitis chagrinosa

著者: 国友昇 ,   八木橋彰

ページ範囲:P.25 - P.28

緒言
 Vogtはその名著Lehrbuch und Atlas Spal-tlampenmikroskopie des Lebendesaugesの中で角膜のChagrinに就て言及し,それは角膜の内皮細胞層の附近に於て,丁度同条件下の水晶体の上皮に見られるChagrinlederartigの徴候に似ていると述べている。
 Chagrinと言う名称は水晶体前面に鏡面法で,稍々不規則な線状又は凹凸の反射を認め,これが鮫革の様である事からChagrinと名付けたものであり,是等は何れも生理的に見られる現象である。所で病的に現われる際はやゝ趣を異にし,水晶体Chagrinの場合にもその前面或は後面のみに限らず,水晶体の中にも色の変つたChagrinの出現があり,これは屡々,併発白内障或はChalkosis lentisの際などに経験されるものであるとしている。この様な病的のChagrinの出現は,角膜に於ては水晶体に比して更に稀なものである。

新血管収縮剤「ナーベル(仮称)」に就て

著者: 田岡昭二 ,   木田幸男

ページ範囲:P.28 - P.31

 イミダリン誘導体の1つとして新しく合成された本剤は,1954年Sahyun及びEmerson氏等によつて血管収縮作用のあることが発見されたものである。
 ナーベル(仮称)は,2-(1,2,3,4-テトラヒドローイーナチフル)-イミダゾリン塩酸塩で,アドレナリン様の強力な血管収縮作用を有することが,既に林・内海両氏によつて報告されており,且つその毒性のきわめて弱い点から,当然眼科領域に於ける適応範囲も大きいことが期待できる。

緑内障に関する研究(第8篇)—諸種薬物の前房内注入による眼圧変動に就いて(其のⅡ)

著者: 衣笠治兵衞 ,   湖崎弘 ,   東郁郎

ページ範囲:P.31 - P.36

1.緒言
 実験的に動物に緑内障をおこす手段としては,現在迄の所,主として局処的に薬物を投与するという方法が採られている。而うして,その際用いられている物質の種類は多種多様にのぼつている。既に報告した様に,私共は実験的緑内障の研究に当り,房水の化学的組成が緑内障の場合如何なる変動を示すかという問題の解明に一歩近ずく目的で,Kimsey初め多くの研究者の報告で見られる様に,房水と血漿との化学的組威を比較した上で,明らかに差異を認め得る物質を前房中に注入して,それ等の化学的物質が眼圧に及ぼす影響を検討せんとした。Kinseyの研究によれば,第1図に示される如く,家兎房水中のHCO3,VC,乳酸の濃度は血漿中より高い値を示し,蛋白質,Cl,phosphate,sulfate,Na,K,Ca++,Mg++,CO2,非蛋白性窒素,及びGlucoseはむしろ房水中に少ないと云われている。斯かる観点に立つて,先にHCO3を中心に一連の眼圧変動を探求する目的で,空気・酸素・炭酸ガス・炭酸ガス飽和液及び重炭酸ソ-ダ溶液を前房内に注入時の眼圧変動を検べ,その成積を第9回臨床眼科学会で報告した。今回も引続きHCO3,VC,及び乳酸の前房内注入時の眼圧変動を追求した。

視神経コロボームの7例

著者: 宮下忠男

ページ範囲:P.36 - P.40

1.緒言
 視神経乳頭欠損症の報告例は稀なものではなく本邦に於ても既に100例に近い報告があるが,その臨床所見は多様であり,成因については未だ定説がない。私は最近所謂神神経乳頭コロボーム7例に遭遇する機会を得たので簡単に報告する。

蜘蛛膜下出血死に先駆した嚢腫腎による網膜出血

著者: 小原博亨 ,   阿久津燈義 ,   長屋幸郎 ,   大橋克彦 ,   渋谷聰

ページ範囲:P.40 - P.45

1.緒言
 嚢胞腎(Cystenniere)例に於ける網膜出血の報告は未だ聞かない。理論上起り得る事のようであるが,其の報告に接しないのは,嚢胞腎例其のものが比較的稀な為でもあり,又たとえあつても他の症状におおわれて,眼底疾患を観察する機会が少いがためであるかとも考えられる。私共は腹部腫瘍の診断の下に入院中の患者を偶然診察する機会を得て,網膜に出血性変化の有る事を知り,経過観察中に蜘蛛膜下出血を起して不幸な転機を取つた例があり,剖検の結果,両側腎臓が高度の嚢胞腎であり,その出血性変化が嚢胞腎に多分に関係ある可きを想定し得る例に接した。又,蜘蛛膜下出血に先駆して網膜出血を起しているのを発見されているのは寡聞にして未だこれを聞かないので敢て報告する。

眼科領域に於けるウインタミン使用経験

著者: 石川清

ページ範囲:P.45 - P.48

 Chlorpromazinが人工冬眠療法として応用されて以来,各科に於ける本剤の使用は目覚しいものがある。それは本来の人工冬眠療法としてではなく,植物神経の不安定に対する安定剤として,或は手術時のPremedica-tionとして広く用いられる様になつた。眼科領域に於ても斯る意味に於て既に2〜3の報告が見られるが当教室に於ても手術患者にウインタミンを応用して相当の効果が得られたので其の概要を述べ度いと思う。
 実験例は当科入院手術患者にして第1〜2表の如く,手術前使用19例,術後使用9例にして,男15例,女15例年齢は7カ月より74歳に及んでおる。

副腎皮質ホルモンの角膜創傷治癒に対する影響—第3報 メチコルテン,プレドニンの効果

著者: 高尾泰孝

ページ範囲:P.49 - P.55

I.緒言
 私は先きに,コーチゾンを始めとする副腎皮質ホルモンの本態を究明する目的で,角膜創傷治癒に及ぼすこれらステロイドの影響に就いて,昭和27年12月東京眼科集談会に発表して以来,本問題解明に努力して来たがその一部は既に眼科臨床医報(第49巻5号)及び臨床眼科(10巻3号)に掲載した。
 一般に副腎皮質ホルモンは三群に分類されるがコーチゾン,ハイドロコーチゾンはglucocorti-coidで糖,蛋白質,脂質代謝に関係する他,St-ressに対する抵抗に主役を演ずる11-Oxycortico-sterone型に属するものである。

移植眼球における瞳孔の対光反応に関する一実験

著者: 萩原武雄

ページ範囲:P.55 - P.56

I.緒言
 古くから眼球移植の問題については多くの研究者(Ruggers,Pardo,Zervos,Uhlenhat,Krause,Przibram,Koppanyi,Baker,Guist,Blatt,Kol-mer,Ask,Stone,Anderson等)が両棲類,魚類,二十日鼠,家免,幼鶏等を実験動物としていずれもある程度の解剖学的治癒を認め,時には機能的治癒をも認めて報告している。最近は秋谷氏1)(1955)が金線蛙を使用して眼球の移植実験を行い,移植眼の瞳孔に光線反射の恢復するのを認めて報告している。
 私も殿様蛙を使用して眼球移植実験を行いいささか知見を得たので報告する。

Anthranil酸錠・5-Oxy-Anthranil酸錠・5-Oxin錠の緑内障に対する使用経験

著者: 清水貞男

ページ範囲:P.57 - P.62

 Tryptophanが必須Amino酸の一である事は今日衆知の事であつて,殊に動物の成長に欠くべからざるものである事は数多くの実験によつて立証されている。
 殊にTryptophanの中間代謝に関しては,阪大名譽教授古武博士の輝かしい幾多の業績がある。

緑色を呈しない緑色腫の一例

著者: 小林信博

ページ範囲:P.63 - P.65

 急性の経過を辿り死の転帰を取る緑色の眼窩腫瘍に始めて着目し報告したのはAllen Burns (1821)であるが,爾来此の疾患の報告が多く見られる様になつた。私は昨年その腫瘍が白色ではあつたが緑色腫に属せしむべき一症例に遭遇し,ナイトロミン,ザルコマイシン,アザン等を試み,死後剖検する機会を得たので茲に報告する。

臨床講義

スポーツ(バレーボール)による眼外傷

著者: 桐沢長徳 ,   菅原脩二

ページ範囲:P.67 - P.70

 まず患者を供覧する。

眼科新知識

流行性角結膜炎の病原に就て

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.71 - P.75

 流行性角結膜炎は1889年Fuchsによつて点状表層角膜炎Keratitis punctata superficialisという名で最初に報告された病気である。我が国では1894年井上通泰が最初に報告している。その後1938年Schneiderが流行性角結膜炎Keratoconjunctivitis epidelnica (E.K.C.)という名称を提出して以来,この呼称が広く使われる様になつた。最近20年間に世界各地に大小の流行をおこしている。
 本疾患が伝染性のものであることは疫学的に見て疑いの無いものであつたが,Wright (1930),Kirwan (1930),青木(1941),三井(1948),田中(1950,1951)等の人体実験によつて,更にそのことは確証された。

集談会物語り

筑後眼科研究会に就いて(1)

著者: 南熊太

ページ範囲:P.77 - P.79

 筑後眼科研究会を紹介するに当り次の如き筑後眼科研究会設立趣意書を記して設立の目的を紹介せんとす。
 『謹啓新春の候愈々御清適の段奉慶賀候。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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