文献詳細
故中村康教授追悼号 原著
文献概要
中村教授が,透光体,眼底に疾患を有せず,只単に角膜溷濁を有するが為に,暗黒に悩む儘に放置されて居る失明患者に再生の光を与えんと角膜移植に注目され,昭和16年該研究を開始され,昨31年10月卒然として不帰の客となられる迄途中,大平洋戦争,大学の焼失,疎開による研究の中断等幾多の障碍を乗り越えられつつ,眼科学会に角膜移植という偉大な業績を残された事は既に御承知の事と思う。此の間昭和25年には「基礎的研究より臨床的応用」なる演題の特別講演をされた外,機に応じ,時を得て,或いは臨床眼科学会に集談会に,或いは手術叢書に発表され,今や角膜移植は眼科一般の常識となり,各所に於て実施せられる様になり,幾多の失明患者に再生の悦びを与えて居るのである。角膜移植なる大綱に就いては既に中村教授の著書もあり,又報告も多数見られるので,改めて,詳細に亘り述べる事は必要としないが,偶々恩師中村康教授の計に当り追悼号が編輯されるを聞き,故教授が生前実施された偉大なる業績を偲び,その御遺志を奉ずる意味に於て御存命中の移植成績を纒め,二,三感ずる所があつたので之を此の機会に発表し,恩師に続き更に奮起一番研究を続けんとする我々教室員の参考に資せんとするものである。
中村教授在世中の角膜移植例総数は403例(男291例,女112例)
中村教授在世中の角膜移植例総数は403例(男291例,女112例)
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