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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科11巻6号

1957年06月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会会誌

札幌並に岩見沢両市小中学校学童のトラコーマ検診と治療(第1報)

著者: 藤山英寿 ,   藤岡敏彦 ,   池田裕 ,   篠原正俊 ,   竹内英夫 ,   竹内光彦 ,   越智通成 ,   越田美津男 ,   大塚秀勇 ,   佐藤ミナ ,   渋谷ヨシ子 ,   吉田テイ ,   陳内鶴江 ,   中村泰治

ページ範囲:P.23 - P.25

 本報に於ては,昨秋(昭31)施行した両市小・中学校学童の検診成績のみに就て記述し,治療成績に就ては,第2報に譲ることとする。
 被検学童数は,札幌市小・中学校を併せて17,722名,岩見沢市は同じく3,002名,計20,724名である。ただしこの調査に於ては,両市とも全市に亘るものではなく,又旧市内の学校は,札幌市の円山・美香保両小学校及び一条,陵雲両中学校の4校のみであつて,他は悉く旧群部の諸学校である。

有明海沼岸福岡県山門郡大和村(中島,古開,皿垣地区)トラコーマ家族検診成績に就て

著者: 南熊太 ,   馬場春巳 ,   内田政理

ページ範囲:P.26 - P.28

 福岡県山門郡大和村はトラコーマ極めて多く当時の進駐軍福岡民事部よりの勧告もあつて,当時の久留米医科大学眼科教室南熊太等は昭和24年7月,大和村学童を検診して,中島小学校82.0%,大和小学校69.9%,皿垣小学校46.5%及び之等の小学校関係の大和中学校68.2%(何れも疑似症を含む)のトラコーマを発見し,其の極めて高率なのに驚くと同時に直ちにその治療,予防対策に着手したのであるが,元来トラコーマは学校病と言うよりもむしろ家庭病であるから治療,予防の対象となるのは学校に終始すべきものではなく,家庭の全員,村住民の全員を対象とすべきであると考える。
 そこで村住民全般のトラコーマの概略を知るために,前記3小学校区内にて,その代表として漁業を主とする中島(51戸),農業及び農漁兼業の古開(30戸),農業を主とする皿垣(10戸)……計91戸……445名を検査したのでその大略を報告したい,(各家庭に就ての家屋の衞生学的状況,家族各人の身体全般及び各部の清潔度及び共同浴場等を含めての衞生全般とトラコーマ罹患率との関係等を岡野教授始め当時の久留米医科大学,衛生学教室関係者,衛生部学生,眼科学教室員及び関係学生一同にて調査したものの中の主として眼科関係の一部分である。各部分に就て及び其の詳細は夫々別に報告の筈である)。

連載 眼科図譜・32

片側性顔面神経痙攣

著者: 須田栄二

ページ範囲:P.835 - P.836

解説
 間歇的に片側の顔面神経の痙攣が見られるもので,成人女子に多く,男子との比は6:4といわれる。
 痙攣は眼瞼の輪匠筋に始まつて,次第に片側の顔画神経領域に拡がる。両側に来る事は稀である。

綜説

虹彩毛様体炎の原因—附,Behçet氏病に就て

著者: 浦山晃

ページ範囲:P.837 - P.844

 内因性の葡萄膜炎,中でも虹彩毛様体炎の原因の鑑別は,古くから,眼科医にとり最も困難なる課題の一つとして,異論に富むところであつたが,研究方法や臨床面における最近の著しい進歩にも拘らず,依然として充分なる解決には達しておらぬようである。従つて,この問題は他より取残されて却つて前面に押出されて来た観があり,ここ数年に発表せられた本症の診断に関する知見や原因に関する統計は,少なからぬ数に上つている。依て私は,それら報告に基いて今日におけるこの問題を概観し,最近頓に,関心を持たれているBehçet氏病を含む諸病因に就て触れてみたいと思う。
 元来,虹彩毛様体炎は,一般に原因の如何に関せず,共通の,或いは同一の局所症状を示す傾向を有している。その際,炎症の性質として漿液性,線維素性,化膿性等の差異はさることながら,また瀰漫性炎であるか,或いは虹彩に限局性病巣を作る,作らないなどの特徴が,原因判断にある程度の助けを与えることはあり得る。

臨床実験

急性球後視束炎の一つの型について

著者: 林文彦 ,   中村正二郎

ページ範囲:P.845 - P.849

 球後視束炎の病理に関しては,古くから多くの記載がみられるが,現在も尚,その病因及び病巣の位置が判然とせず,臨床診断として,各種の疾患を包含していると思われるけれども,球後視束炎なる症候名で一律な治療を行つている状態である。私共は数年来,球後視束炎の症例を集めて検討しているが,その中に特徴ある症状を有する一型のあることを認めた。よつて先ずその代表的な症例をあげて,その説明をしたい。

アドレノクロマゾーン誘導体(「AC-17」田辺)の使用経験

著者: 水川孝 ,   木津進吉 ,   木内健二

ページ範囲:P.849 - P.854

 日常診療に際し,外傷及び手術による出血或は病的出血に対して,従来種々の血圧下降剤・血管収縮剤・血液凝固促進剤が用いられているが,更にAdrenochrom monosemicarbazoneはその強力な血管強化作用と止血作用によつて眼科領域に於いても広く用いられ,特に眼内手術等に使用して好結果をあげている。然し,更に強力に且つ速効的効果のある血管強化剤の必要が屡々痛感されるのである。
 最近この目的にそつた速効性で,更に強力に作用するといわれる新合成剤「AC-17」(田辺)が試作されたので,主としてその血管透過性に対する検索を実験的並びに臨床的に行つた結果について報告する。

搏動性眼球突出症の1例に就いて—患側総頸動脈圧迫及び,内頸動脈結紮の際に起る角膜脈波の変動と,其の臨床的意義に就いて

著者: 植村恭夫

ページ範囲:P.854 - P.862

緒言
 最近,脳神経外科領域に於いては,其の進歩に伴い,頭蓋内動脈瘤に対する認識が新たにされて来た。著者は偶々,右眼搏動性眼球突出症の1例に遭遇し,内頸動脈結紮を施行する術前検査として総頸動脈圧迫試験(Matas Test)及び,漸進的頸動脈圧迫法(progressive carotid compres-sion)を行う際に,慶大式電気眼底血圧計にて角膜脈波を経過を追つて描写し,更に内頸動脈結紮術施行前後の角膜脈波を比較し,眼動脈領域に於ける側副循環の状態を検討した。

結膜上皮の細胞学的研究—健常結膜,流行性角結膜炎,麻疹性結膜炎,ビトー氏斑,乾角結膜炎,細菌性結膜炎,トラコーマ

著者: 大竹卓一郎

ページ範囲:P.863 - P.878

I.緒言
 結膜の組織学的,病理学的研究はすでに多くの人々によりなされているが,それらの多くは形態学的研究を主とし,且その主なる対象は個々の細胞ではなくてむしろ細胞の集団である組織であつた。所が,最近十数年来組織化学,細胞化学の著しい進歩を見,個々の細胞を対象として形態学的見地からしても,化学的見地からしても,研究が比較的容易に行える様になつてきた。他科領域にあつてはすでにこれが種々応用されていることであるが,眼科領域,殊に結膜上皮細胞についてわかかる見地からなされた研究は未だない様である。唯,形態学を主とした細胞学的研究としては,古くは宮下1),小口2),Stargardt3)氏等,近くは丹羽4),Thygeson5)氏等による各種結膜炎に於ける結膜嚢内遊走細胞像についての観察があり,細胞化学的なものとしてはThygeson5),Agarwal6)中島7)氏等数氏によるプロワツエーク氏小体等に関する研究があるにすぎない。
 結膜は他組織に比して軽く擦過することにより容易にその上皮細胞を採取することが出来るので各種結膜疾患に於ける上皮細胞の変化を細胞学的に追求するのに極めて都合がよい。私は以上の様な考からこれまで健常結膜及び各種結膜炎に於ける上皮細胞の状態について形態学的,並びに化学的にその何れにも偏重することなく観察を加えて来梢知見を得たので報告する。

カルピノールに関する研究(其の2)—点眼縮瞳藥カルピノール液の静脈注射,皮下注射等による実験的研究/カルピノールに関する研究(其の3)—点眼縮睡薬カルピノール液の球結膜下注射,球後注射,硝子体内注射,前房内注射による実験的研究

著者: 南熊太 ,   井上豊人

ページ範囲:P.881 - P.888

緒言
 昭和25年佐賀県下に於いて点眼縮瞳薬カルピノール液(20ccアンプル入り)を誤つて,静脈注射したと思われるものにて死亡せし例が数例,新聞紙にて報道せられた。(その詳細に就いては別に報告した。)南熊太は,此のカルピノール液誤注射によると思わるる死亡例に就いての調査に最初から関係していたのであるが,その後私共はカルピノール液に就いて,静脈内注射,皮下注射,球結膜下注射,球後注射等色々の方法による実験を行つたのでその結果に就いて,報告する次第である。(此の実験は昭和25年,昭和26年頃即ち井上豊人が,久留米医大助手として,眼科学教室に於いて勤務していた頃に行つた実験である。)

大橋孝平教授開講10周年記念論文

視力視野の改善を見た結核性播種性脈絡網膜萎縮の1例

著者: 太根節直

ページ範囲:P.889 - P.893

緒言
 脈絡膜の慢性粟粒結核とも称すべき結核性播種性脈絡網膜炎に就ては,少なからずその臨床的記載を見るが,その諸症状の軽快治癒を報じた陳旧症例は対結核化学療法の発達しつつある今日と云えどもその報告は余り多くない。然も最近ストレプトマイシン等の対結核化学療法には余り反応を示さず,むしろ従来の転調療法を長期に且り根気よく併用し,顕著な諸症状の改善を見たやや陳旧な結核性播種性脈絡網膜炎の興味ある症例を観察し得たので茲にその大要を報告する。

糖尿病患者に見られた網膜多発毛細血管瘤と網膜ルベオージス

著者: 南部正躬

ページ範囲:P.894 - P.899

 1922年Banting及びBestがインシユリンを発見して以来,糖尿病の予後は著しく改善され同病患者の生命は延長せられ,全患者の平均余命はインシユリン前期の約3倍(15.2年)と言われている。インシユリン発見によつて,昏睡死は激減したが,之に反し糖尿病の合併症としての心臓及び血管障害所謂循環器障害,腎臓障害及び其の他の合併症は逆に増加の傾向にあるとされている。且つ近時病理学的,生化学的及び臨床的に,又実験的糖尿病の研究により糖尿病そのものに対する見解に於ても,従来のものとは変りつゝある模様である。眼科領域に於ても,糖尿病に由来すると思われる眼合併症の報告も逐次増加して注目を集めているが,糖尿病に併発した疾患に就ては,1814年Renauldinが視力障害及び失明を報告した事に始まり,糖尿病患者の眼検査は必須の条件となつた。糖尿病に合併する眼障害の頻度は報告者により各々其の価を異にするけれども,大体5%〜40%と言われている。日常最も我々が経験するのは糖尿病性自内障と糖尿病性網膜炎(症)の二つであらう。前者に就いては先に日眼誌上に発表した通り,いさゝか検討を加えておいたが今回は最近経験した糖尿病性網膜症の1例に於て従来の報告とは稍々異つたものを発見したので敢て報告する次第である。

特発性網膜剥離の一家系

著者: 宮崎茂夫

ページ範囲:P.899 - P.901

緒言
 特発性網膜剥離は日常屡々遭遇する疾患であるが,これが一家族に多発する症例は非常に稀で本邦では僅かに2例の発表を見るのみである。著者は最近1家8人中4人に裏を見せた網膜剥離,或は硝子体剥離を認めた症例に遭遇したので文献に追加しようと思う。

プレドニンとアクサー併用により著効を見たる炎性偽腫瘍と鞏膜周辺角膜炎の1例

著者: 松島裕

ページ範囲:P.902 - P.904

緒言
 眼の炎性偽腫瘍は従来臨床的には時折遭遇するものであり,病理組織学的には特異の像を示さないものが多く,診断は病初から一定期間過ぎなくてはつけられぬことが多い。殊に最近に至つてコーチゾン系の優秀な薬物が使用される様になつて之が著効を奏し,はつきりした症状を示さぬうちに治つて了い充分の所見が掴めず従つて診断も後になつて炎性偽腫瘍であつたであろうと云う事が多くなつて来た様である。
 炎性偽腫瘍とは一応アレルギー性の病変と解する事が出来,従而極めて広汎な疾患群を包括する症候名であつて之がため最新のコーチゾン系の薬物を大量投与して多くは治る様であるが時に所謂劇的効果を収め得ない場合があつても止むを得ないことである。

再び経鼻視束管開放の著効を奏した症例—特に其の網膜血管径の変動に就いて

著者: 飯塚哲夫 ,   山田春雄 ,   岡田甫

ページ範囲:P.905 - P.907

 球後視束炎の原因は現在尚不明の点が多いが,然し所謂鼻性視束炎も此れを全く閑却する事は出来ぬ現状であり,視束炎の診断,治療に当つては耳鼻科の専門的検索を必要とする事は当然である。又本症の治療中耳鼻科的療法によつて予想外の好転を見る事も多く経験する所である既に当教室の宮崎博士は鼻性視束炎に対する経鼻視東管開放術の著効を奏した例を報告して居り,其の摘出標本の組織学的検査に於いて導出静脈系を中心とした多発性の一種のアレルギー炎が証明されたとして居り,此れが果して所謂鼻性視束炎の本態か否かは別な問題であるとしても,確かに視束管開放によつて急激な視力障碍暗点等の症状が急速に消退する例があり,我々も最近かかる症例を経験し,今回は特に其の症例に於いて網膜血管径,網膜中心血管血圧等の機能検査を行い興味ある結果を得たので此処に報告し症例を追加する次第である。

乳頭近接脈絡網膜炎の一亞型

著者: 神足実

ページ範囲:P.908 - P.911

緒言
 乳頭近接脈絡網膜炎Chorioretitis juxtapa-pillarisは,1908年Edmund-Jensen氏が,始めてこれを発表記載してより,本症はEdmund-Jensen氏病又は視神経線維炎Neurofibrillitisoptica (Rönne)或はNeuritis retinae (Zeeman)とも云われ,その特徴は境界不明な充血した乳頭に接した白色,綿球状の稍々粗大な限局性網膜溷濁が単発又は多発し,やがて拡大して大きな白斑となる浸潤期に次で,この白斑は漸次消失して帯青色萎縮巣となるもので,又屡々再発しやすく陳旧巣の附近に更に新鮮巣が現われ再び神経線維に沿つて拡大進展する様に見える。特に視野はマリオツト盲点(以下「マ」氏盲点と略す)を含む扇状視野欠損を示すものと考えられている。
 最近飯沼氏は,本症の軽症形に就いてその扇形視野欠損が比較的欠損を示す症例を報告し一応本症と考えると記載している。

緑内障を伴つた脈絡膜間接破裂の1例

著者: 岡田甫

ページ範囲:P.911 - P.914

 脈絡膜間接破裂は1854年Graefe氏が報告して以来内外の文献に多数見られ,さして珍らしいものではないが,その眼圧を観察した例は少い。私は最近外傷による前房並びに硝子体出血,水晶体不全脱臼,眼球陥没等を伴つた本症の1例を経験したが,外傷性緑内障を伴つたと考えられる珍らしいものであるので茲に報告し,本症の眼圧上昇について少しく考察してみたいと思う。
 症例は21歳男子,鍍金工,初診昭和30年12月18日。家族歴,既往歴に特記することなし。

ストマイ及びコーチゾンの奏効した急性瀰漫性脈絡網膜炎の一異型

著者: 針谷嘉夫

ページ範囲:P.915 - P.918

緒言
 急性瀰漫性脈絡膜炎に関しては多数の報告があり種々な検索も為されているが,その本態に就いても未だ定説がない様である。之は一方では本症が分類上にも確たるものが無い為であるが,過去の報告に就いて見ても,実に多種多様な症状を呈することからも,その困難さが思われるのである。
 最近余は急性滲出性脈絡網膜炎の形で発病した本症の一例を経論したので報告する。

外傷に基因せる結膜下鞏膜瘻孔の稀例並に之が緑内障負荷試験の成績に就いて

著者: 常松美登里子

ページ範囲:P.919 - P.921

緒言
 角膜縁に接し虹彩脱出を伴つた鞏膜穿孔性外傷を何等医師の治療を受けることなく片眼包帯のみで良好な経過を取り結膜下鞏膜瘻を形成して治癒した1稀例に相遇したのでこゝに報告する。

匐行性角膜潰瘍の1例

著者: 岸田博公

ページ範囲:P.921 - P.924

 匐行性角膜潰瘍は農村等で慢性涙嚢炎のある人には稀ならず見られるものであるが,著者は最近角膜異物に続発した極めて重篤なる匐行性角膜潰瘍の一例に遭遇したのでここに報告する。

高度瞳孔膜遺残症の手術経験

著者: 飯塚哲夫 ,   古村安

ページ範囲:P.924 - P.926

 1861年Weber氏の報告以来瞳孔膜遺残症の報告は多数にのぼり,其の手術も色々の方法が述べられている。我々も最近高度の瞳孔膜遺残症に手術を施行し比較的良好の結果を得たので此処に報告し文献に追加する。

眼科領域に於けるF.A.D(アデラビン)の効果

著者: 三宅正夫

ページ範囲:P.926 - P.931

緒言
 V.Bが熱に対する抵抗性を異にする2因子,即ち熱に不安定なB1と熱に安定なB2に1926年Goldberger氏等によつて分離されて以来各学者の研究により,V.B2が体内の酸化還元機構に重要な役目を果して居る事が知られて居る。近時抗生物質の投与に際しV.B2欠乏症状が現われるに及び注目せられ,特にV.B2の結合型たるFla-vin mononucleotide (以下F.M.Nと略す)及びFlavin adenine dinucleotide (以下F.A.Dと略す)が重視される様になつた。眼科領域に於て市川,船橋氏が既に活性型B2の報告をされてるが,今回名糖製薬よりアデラビン(F.A.D30γ)の提供を受け,点状表在角膜炎(以下K.P.Sと略す)13例,眼角部眼瞼炎7例,眼瞼湿疹2例アリボフラビノービス1例につきその効果を見る機会を得たが,その結果一応まとめる事が出来たので茲に報告し,大方の御批判を仰ぐ次第である。

珍稀な前房鉄線異物の2例

著者: 保住民枝

ページ範囲:P.931 - P.933

1.緒言
 眼球内鉄線異物に就いては多数の報告がされているが最近私は角膜,虹彩間に橋状に嵌入した異物及び角膜より水晶体を穿通して更に深部に及ぶ比較的稀な異物の2例を得且つ特別の障碍を残す事なく比較的容易に摘出しえた症例を経験したので開講10周年を記念して報告する。

イミダリン注射の奏効した網膜動脈塞栓症の2例

著者: 小川昌之

ページ範囲:P.933 - P.938

 網膜動脈血行の障碍により,視神経の栄養が障碍され,急速な失明を来す疾患である網膜動脈塞栓症は,治療として,従来種々なる方法が試みられて来たが,中々充分な効果を期待出来る場合が少い。最近,網膜動脈塞栓症の2例を経験し,これにイミダリンの眼注を行い,有効と思われたので,報告する。

眼底写真に関する研究

著者: 久富潮

ページ範囲:P.939 - P.943

 眼底撮影は写真術の発達と平行して種々試みられ1909年にThornerは既に眼底の立体撮影を発表して居る。1915年にNordensonは眼底カメラを発表したが之より眼底撮影は実用可能となつた。初期のNordensonカメラは炭素アークを光源とし乾板を用いた。
 以後Nordensonカメラを改造して撮影を行つた報告が沢山あり遂次Nordensonカメラは改良された。

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ワカビタン眼軟膏の使用経験

著者: 坪井彪 ,   藤江容

ページ範囲:P.945 - P.947

 Vitamin B2が眼科領域に於いて繁用されて居ることは多数の報告に見られる所であるが,従来注射が主として利用され,特に結膜下及び球膜下注射が多用されている。たまたま我々は「わかもと製薬株式会社」より簡便に使用出来る1g中にVitamin B210mg (Riboflavin 5-phosphatemonosodium FMN-Na 13.7mg)及びVitaminB65mgを含有するワカビタン眼軟膏(以下W-Sと略す)を得て之を2〜3眼疾患に使用する機会を得たのでここにその結果を報告する。
 Vitamin B2(Riboflavin)は水に難溶(水100cc中12mg溶解)な橙黄色針状結晶で,緑色螢光を発し熱,酸には安定であるが,光には極めて不安定でアルカリ光分解でルミフラビン,酸光分解でルミクロームを生ず。生体内では遊離の形そのままでは効果なく,燐酸エステル即ち小腸上部よりFlavin mononucleotide (FMN)となつて吸収され,更に肝,腎でFlavin adenine dinu-cleotide (FAD)となり,之等が蛋白質と結合してフラビン酵素系の補酵素として生体内の酸化還元に関与している。之等燐酸化過程の一部は血液細胞,筋肉組織でも行われる。

私の経験

眼科研究50年(2)

著者: 石原忍

ページ範囲:P.949 - P.955

日本眼科学会
 大正15年の正月から日本眼科学会の事務所が東大に移つた。
 その時から組織が変つて会長がなくなり,3人の專務理事が事務を分担することになつた。そして会の創立者の1人である須田卓爾氏が庶務を,中泉行德氏が会計を私が編集を担任することになつた。日眼事務所はそれまで,やはり創立者の1人である九州大学の大西克知教授の許にあつて,一切の事務を大西氏が1人でやつて居られた。私が編集を引ついだ時は,雑誌は第30巻であつたから,すでにその30年も前に日本眼科学会は出来たわけである。

自作の簡易隅角鏡

著者: 大橋孝平

ページ範囲:P.956 - P.956

 隅角鏡法Gonioscopiaはかなり古い歴史を持つが,現今ではGoldmann,Trorcoso,Barkan等の実用化によつて急速に応用法も進歩した様であり,日本でも荻野,河本氏等その他の改良型が使用されている。
 私も最近これらを使用して見て,臨床実地家が外来で手軽に応用しうる簡易隅角鏡の作製を思い付き,次の様なものを試作したが,これだと手術台上で簡単に使え,隅角部異物や虹彩切除後の観察にも便利であり,臥床のまゝで隅角写真の撮影も容易であり,隅角を覗く角度もやゝ深く出来るし,照明は単純なハンマーランプや手持細隙灯でもよいのでこゝに紹介することゝした。

眼科新知識

トノグラフイーに就いて

著者: 河本正一 ,   景山万里子

ページ範囲:P.957 - P.961

 緑内障の本態は,古来幾多の研究があるにも拘らず,未だ明らかにされていないので,その予防法は勿論の事,治療法も確立されていない。この為,緑内障の早期診断は非常に困難で,相当進行してから発見される者が大部分である事も,治療を困難にする原因となつている。眼球に種々の負荷を与えて,その機能を知り,早期診断に役立てようという多くの負荷試験が行われているが,特に傑出したものはなく,真に遺憾な事乍ら,早期の緑内障は殆んど発見され得ない現状である。
 1950,1951年にGrantは電気眼圧計を用いて眼圧を連続的に測定し,これを描写したカーブから,房水の流出率と産生量を知り,眼圧生理乃至病理の研究に新しい分野を開き,緑内障の診断並びに治療に一大進歩と便宜を提供した。この方法がトノグラフイーと呼ばれるものである。

談話室

ロンドン便り抄(その3)

著者: 中島章

ページ範囲:P.963 - P.964

 11月3日
 近視についての御批判ありがとうございます。私がくれぐれも残念に思つて居る事は,良い線に沿つて早くスタートしながら,途中で休憩したために,肝心な所でおくれをとつた事を歎いて居るわけです。フアコメトリーは将来クリニツクでかなり広い応用を持つものと確信して居ます。日本でも近視の研究にProf.Sorsbyのようにfactをつみ上げてゆくためには必要な方法です。日本と英国ではreflectionの状態が違うのですから,日本で測るのは非常に面白いと思います。
 先日兎の水晶体の屈折率をMr.Sheridanと2人で計りました。そのdataは眼軸が実際より長く出るので2人であれこれ考えて居る所です。

九州医師会医学会眼科分科会

著者: 南熊太

ページ範囲:P.965 - P.966

 終戦後より,昭和29年迄の九州医師会医学会眼科分科会に就てその記録の主なる事を紹介し且つ昭和31年10月21日熊本市に於いて行われる九州医師会医学会眼科分科会の要望演題及びパネルデイスカツシヨンに就て紹介せんとするものである。
 昭和20年は終戦の年にて九州医学会は行われず。昭和21年に終戦後はじめての九州医学会が行われた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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