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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科11巻7号

1957年07月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会会誌

山口県下に於けるトラコーマモデル地区の集団治療成績—其1 大島郡東和町全学童の治療成績

著者: 大石省三 ,   佐々木佐 ,   徳山和宏 ,   小玉徳重 ,   周田吉博 ,   大川内利彦 ,   澄川宗男 ,   上田智 ,   伊藤博彦

ページ範囲:P.29 - P.34

緒言
 昭和30年に結成された,日本トラコーマ研究斑のテーマの一つとして日本に於けるトラ撲滅基準の制定の為,班員は各々モデル地区を選定し,各種団体と提携,協力し,集団治療を行うようその要項が班長故中村康教授から提示された。
 私共(研究班員大石)は山口県下のモデル地区トラ撲滅運動を計画するに際し,既に宇部市に於ける過去7ヵ年の経験に照して1)〜10),候補地を選定して集団治療を行いその成果を比較しようと考えた。それには先般私共が行つた県下トラ実態調査11)がよい資料となつて,大島郡東和町を推薦した。

アクロマイシンによるトラコーマの集団治療について

著者: 萩野鉚太郎 ,   鈴村昭弘 ,   野村篤子 ,   竹原聰子

ページ範囲:P.35 - P.38

 トラコーマの治療に対するアクロマイシンの意義については,既に多数の内外研究者によつて論ぜられている。その効果はAgarval (1955)が,三井氏及び筒井氏の成績にくらべて氏のはそれ程の好結果を得られなかつたと述べている様に,報告者によつて多少の差はあるが,大よそAureo-mycin或はTerramycinのそれと同等か時にそれ以上のものと考えられている。
 ここに述べる集団治療は,比較的多数例について試みたものであるが,その成績は文献諸例のそれと大差を認めなかつた。しかしその治癒判定については,臨床的診断の基準の確定していない今日,なお検討を要する点が少なくない。本文ではこれが解決法の1つとしてカラースライドによる批判を試みた。

トラコーマ伝染予防から見た共同浴場—有明海沿岸福岡県山門郡大和村の場合

著者: 南熊太

ページ範囲:P.40 - P.42

 福岡県の有明海沿岸特に筑後川,矢部川下流地方にはトラコーマが多くて,昭和24年頃私共当時の久留米医科大学眼科学教室員の調査したものにては小学校児童では福岡県山門郡大和村中島小学校児童にて82.0%大和小学校にて69.9%,六合小学校にて66.0%,三橋村二ツ河小学校にては65.3%,浜田小学校にては52.6%を占めており,一方住民に就ては全大和村にて82.0%,小学校区分としては,大和校区住民93.9%,中島校区87.6%の如く可なり高率である。ある地区にては96.0%もあつた地区があつた。(之等の詳細に就ては夫々別に報告の予定である。)
 之等の調査は当時の進駐軍福岡民事部の勧告に関連して私共久留米医大関係者が調査並びに治療,予防対策樹立を依頼されて之を行つたものである。

連載 眼科図譜・33

アクロマイシンによるトラコーマの集団治療について

著者: 萩野鉚太郎 ,   鈴村昭弘 ,   野村篤子 ,   竹原聰子

ページ範囲:P.973 - P.974

綜説

緑内障診断の諸問題

著者: G.B.

ページ範囲:P.975 - P.987

 本日,此所に斯様な諸名士を前にして,講演を為すべく御招待をいただきました事は,私の光栄且つ欣快と致す所であります。
 緑内障の早期診断は,眼科医にとり重大な関心事であり,初期に於いては必ずしも容易でない此の問題の解決に役立たせようと,数多くの提案がなされてきて居ります。

第61回日本眼科学会総会に出席して

著者: 桐沢長徳

ページ範囲:P.989 - P.994

 今年度の日本眼科学会(第61回)は5月17,1819の3日間,岐阜市公会堂に於て開催されたが,幸い好天に惠まれ,しかも,従来に見ぬ多くの外人学者の参会もあつて学問的にも大きな収獲を収めた。岐阜市は学会開催地としては比較的小都市でもあり,且つ新制大学に於て総会を開くのは戦後も始めてである上,学会運営の形式についても昨年の評議員会以来何かと論議や問題が多かつたので,蓋をあけて見るまでは幾分の心配を抱いだ者もないではなかつたが,愈々実際に開いてみるとすべての杞憂は完全に吹き飛んで明朗な学会となつたことは誠に御同慶の至りであつた。しかも有名な鵜飼を以て鳴る天下の観光都市であるだけに県市側から寄せられた後援も大きく,会場前の歓迎アーチや,懇親鵜飼の際の慶祝花火など,多数の参会者の眼を楽しませるのには充分であつた。これに答える交歓の意味で催された「市民眼科の夕べ」や「医師会医学講演会」も新しい試みで,これらを斡旋企画された清水会長の御苦労には会員一同と共に心からの謝意を表するものである。

臨床実験

眼科用表面麻酔剤4%キシロカイン(0.5%クロロブタノール含有)使用経験—並に添加防腐剤についての考察

著者: 浅山亮二 ,   坂上英 ,   宮崎栄一 ,   森寺保之

ページ範囲:P.996 - P.1004

 1955年我々は新局所麻酔剤キシロカインの使用経験について詳細に報告し,2%キシロカインはその浸潤麻酔力並に伝達麻酔力に於いて強力な麻酔作用を有し,しかも麻酔効果持続時間が長く且全身的並に局所的副作用が皆無であることより眼科手術領域に於て賞用さるべき局所麻酔剤であるとのべ,更に,4%キシロカインは眼圧,瞳孔径に影響を与えず,角膜を障碍せず,刺戟感,充血等の副作用が少いことより表面麻酔剤として賞用しうるとのべた。
 その後,キシロカインの臨床使用については,稲用・伊佐敷・生田,生井・荒木・本庄・田原,石黒,池田・楠部・森川・藤田の諸氏が相次いで報告し何れも優れた麻酔剤であると結論している。更に,湖崎・吉田・東,脇・難波・錦織等はキシロカインをはじめ数種の表面麻酔剤の麻酔力,眼圧,瞳孔径に及ぼす影響並に副作用等を詳細に検討しその成績を報告している。

眼窩周囲癌腫のCo60針治療

著者: 呉耀南

ページ範囲:P.1005 - P.1008

 今日Radioisotopeの出現は医学上一新紀元を画するものとして,種々の追跡実験や治療分野に目ざましい発展を遂げつゝあるが,就中Co60はRaの代用物質として現在最も其の名が知られている。Coは天然にはCo59が存在する丈で,この他に人工的に作られる放射性のCoとしてCo55Co56,Co57,Co58及び2種のCo60がある。此の2種類のCo60は核異性体(Isomer)になつており,どちらも天然のCo59を原子炉内で中性子によつて衝撃させるか(27Co59n.r/Nuclear Reactor→27Co60),或は27Co59d.p/Cyclotron→27Co60によつて半減期が夫々10.7分と5.3年の2種のCo60が得られるが,実際の治療に役立つのは半減期が5.3年のCo60丈である。Co60から0.31Mevの非常に弱いβ線とエネルギーの強い1.17Mevと1.33Mevの2本のγ線を放出するが,β線は簡単に除去されるので臨床的にはγ線が放射源と見做されている。Co60に就いては従来のRaに比較して色々な長所で高く評価されているが,其の主なる点を挙げれば1)γ線の波長が短かく,透過性が大であり,然かもhomogenである,2)使用の目的に応じて色々の形にすることが出来る,3)磁性を有する為に取扱い易い,4)値段が非常に安い事等である。

眼科診療用器具に就いて(其の7)—試作〔正視と遠視との鑑別用〕板付レンズに就て

著者: 南熊太

ページ範囲:P.1009 - P.1011

 学校生徒児童等の身体検査の際の視力検査に際して裸眼視力良好なる場合には,之等の総てが必ずしも正視だけではない筈であるが,検査器具がなくて必要な検査をなさずに,視力1.0以上のものを総て正視と徹してしまつている人が可成りある様に思われる。即ち裸眼視力良好なものの中には正視の外に遠視が含まれている筈である。
 裸眼視力の良好な軽度の(潜伏性)遠視を集団的に自覚的検査により検出する事に就ては,昭和12年及び昭和14年に当時の帝大及び医科大学の眼科学教室に文部省から委嘱されて眼の検査を行つた場合当時の熊本医大眼科学教室員であつた私共も当時熊本県に於て小学校,中学校等の生徒児童の眼の検査をしたのであるが,その時文部省から示された眼の検査上の注意事項によると「裸眼視力1.0以上あるものに就て最弱度の凸レンズを装用して,視力減退すれば正視とし,若し視力減退せず,又は佳良となれば遠視とす」となつている。

瞬目回数に関する研究—(其の1)正常成人の瞬目回数に就て/瞬目回数に関する研究(其の2)正常小児及び乳幼児の瞬目回数に就て

著者: 南熊太 ,   山城主計 ,   南ミツ

ページ範囲:P.1012 - P.1017

緒言
 瞬目回数に関しては,病的の場合は,Basedow氏病患者に於ては,瞬目回数少くParkinsonis-mus患者に於ても,瞬目回数の減少を見ると言う事は一般に知られている事である。又,流行性脳炎の昏睡期に於ては瞬目回数が極めて少く,ヒステリーの際にも瞬目回数減少し,鞏皮症の場合も,瞬目回数が減少すると言われている。
 之に反して,蛔虫症の際には,瞬目回数が非常に増加することがある。此の蛔虫症の際の瞬目回数増加に関しては,南熊太も既に報告している所である。

血圧と関係ある2〜3の眼底所見に就て—(其の1)高血性眼底病変の分類竝びに分類の成績に就て

著者: 加藤謙 ,   松井瑞夫 ,   島崎哲雄

ページ範囲:P.1017 - P.1022

 高血圧性眼底病変の程度分類に関しては,既に多くの提案があるが,主なるものとして,次の4つを拳げ得ると思う。
(1) Thielの分類

臨眼11巻3号掲載浜田氏の2〜3の疑義に対する説明

著者: 大橋孝平

ページ範囲:P.1022 - P.1024

I.余の房水排出抵抗Wが緑内障の判定に果して無意義か否か
 この浜田憲一氏の御質問に対して私は次の如く御答え致します。
 私はこれはWの計測方法にもよると思います。ことに始めは,和28年臨眼で報告した眼圧の初圧P0,圧迫10分後の除圧しない時の眼圧P1,除圧直後の眼圧P2の3点より計測しましたが,これでやつていますとP1の値が圧迫中に眼圧をSchiötzで計測するので,その手技が極めて困難であり,兎角,角膜の彎曲が異なりSchi-otz計測による値が非常にまちまちに出るので,適当でないことを知り,バイヤール目盛50瓦の読みを50mmHgとして換算した結果,P1は測定せず,P0-P2をPとして,の改良式を用いる簡易方法を案出し,以後はこれを用いて居り,多田が之を発表しました。

人胎児網膜発生過程に於ける組織化学的研究—第2報 核酸

著者: 中山恭四郎

ページ範囲:P.1024 - P.1032

緒言
 核酸の研究は1871年F,Miescherが膿球よりNucleinなる物質を分離したのに始まり今世紀に入りFeulgenにNucleinに特有な呈色反応所謂Feulgen反応を発見しCaspersonは紫外線吸収試験を,Brachetは核酸の塩基好性を利用しMethylgreen-Pyronine染色法を考案した。我が国に於ても浜崎教授はこれら欧米に於ける研究とは全く別個に核酸の分解産物であるケト・エノール物質について数多くの卓抜した業績を発表している。
 その結果,核酸が細胞内新陳代謝の中枢とでも名付くべき重要な機能を有して居りその種々の機構も除々に明らかとなり生物学・医学界の注目を浴びてその研究は長足の進歩をなしつつある。

眼疾患に対するPredonineの臨床的効果

著者: 弓削経一 ,   上野弘 ,   佐々本昌弘 ,   稲富昭太 ,   百々隆夫 ,   駒井昇一郎

ページ範囲:P.1035 - P.1041

緒言
 副腎皮質ステロイドが眼科領域に於ても,他科同様,その治療面に於いて劃期的な発展をもたらしたことは,周知のことである。このステロイドとして,先ず世に出たものが,コーチゾン,次でハイドロコーチゾンであり,更にフロロハイドロコーチゾン及クロロハイドロコーチゾンの合成を経て,最近Prednisone,Predonisoloneの新ステロイドの合成が成功するに至つている。両者の臨床的効果に就いては,第1回国際会議報告(1955)でKinseltが述べている様に,リウマチ性関節炎,膠原病,副腎性腺症候群,ネフローゼ,喘息,紅斑性狼瘡はもとより,その他多くの疾患の治療法に於て,本剤が確固たる地位を占める事実が,多くの人々によつて実証せられつつある現状である。
 眼疾患に対する治療効果に関しても,King等,Hogan等,Gordon,O'Rourke等,Leopold等の報告があり,本邦に於いては,井上,重松,島崎等が同様に本剤の効果を確認している。今回,私共は塩野義製薬のPrednisone製剤であるP-redonine (以下Pと略す)を諸種主眼疾患に使用し,良好な成果を収め得たので,茲に発表する。特に臨床的効果の観察に重点をおいたこと,並に,症例中1,2全経過を観察し得なかつたもののあることを断つておく。

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「眼科新知識」原稿募集

ページ範囲:P.1011 - P.1011

 「眼科新知識」の原稿を募集いたします。内容は肩のこらない随筆風な書き方で,新しい検査法,実験法,或は新しい器械の紹介等々凡そ眼科の全領域に於いて,すべての眼科学徒の知つておくべき親知識を歓迎いたします。長さは400字詰原稿用紙10〜15枚程度,図,表等は4〜5枚程度にお願いいたします。

私の経験

眼科研究50年(3)

著者: 石原忍

ページ範囲:P.1042 - P.1050

その他の研究
 トラコーマ,近視の共同研究のほか,私の在職中に教室から発表された研究業績は多数あるが,そのうち主要なものを次に挙げる。

談話室

欧米旅日記(その2)

著者: 萩原朗

ページ範囲:P.1053 - P.1059

 アメリカ合衆国内至る所徴密な交通網を敷くグレーファウンドバスに乗り,フィラデルフィヤの三十丁目駅を後にし,ボルチモアに向つたのは,珍しく朝から雪の降りしきる3月16日の午後でした。
 時間表は調べてあつても,乗り遅れては面倒だと思つて,次ぎ次ぎとやつて来るバスの行先を聞き聞き,数台めにやつと目的の車をつかまえることが出来ました。同じくボルチモアに行くにしても,他処の町を遠廻りするのもあるのです。陰鬱な空模様の中を走ること2時間ば主かりで,ボルチモアのバスターミナルに着きました。日はもうとつぷり暮れて了つて居りましたが,雪も止んで居りました。この地に半年程前から留学していた九大生理学教室の中村講師が,前以つてリサーブして置いて下さつたホテルの一室に辿り着いた時は,全くホッとしました。

ロンドン便り抄(その4)

著者: 中島章

ページ範囲:P.1061 - P.1063

 11月22日
 20日にDr.K.Lyleの手術を午前中見て,午後MissLeeとゆう人にorthopticsをみせて貰いました。話によるとorthopticsの患者の90%以上がsurgeryに廻つて手術を受けた患者だとゆう事で,erthopticsは決して独立のものでなく,surgeryを補うものとして重要であると考えて居ます。この点は我々の考と全く一致して居ます。orthopticsでいろいろ測定して,手術のindi-cationの手懸りとして用いられて居る事も重要です。
 Lyleの手術は10のうち8つがsquint 3つが斜筋でした。斜筋の手術をいとも簡単にやつて居ます。Indi-cationをきめるのがなかなか大変だと思いますが,手術そのものは要領さえ判れば大いした事は無さそうです。斜筋の手術はすべてmyetomyでナートををかずパクレンで2mmほど切り取つて居ます。たとえば下斜筋だと内角附近に皮膚切開を行い,深く剥離して斜視鈎をうまくつかつて,下斜筋をつり上げます。そしてパクレンで2mmほど切り取つてしまいます。この時Septumorb.を開きますから,縫合に際してはこれを縫合してそれから皮膚を閉じます。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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