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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科11巻8号

1957年08月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会会誌

山口県下に於けるトラコーマモデル地区の集団治療成績—其2 大島郡東和町沖家室部落の集団治療成績

著者: 大石省三 ,   佐々木佐 ,   徳山和宏 ,   小玉徳重 ,   古山利雄 ,   藤江圭助 ,   柳原利夫

ページ範囲:P.43 - P.47

緒言
 前編1)に於て山口県下に於けるトラコーマモデル地区として大島郡東和町を選び,全町の小中学校生徒の集団治療4カ月の成績を述べた。
 そもそもトラ撲滅運動の理想的方法は一定地域内の全住民を対象として実施すべきで,単に治療が容易である為に学童のみを重点的に行うのでは満足すべき成果は挙げ難い。特に現在学童のトラは比較的軽症或は疑似症を主とし,抗生物質の治療対象としては適当であるが,全民となると陳旧頑症例も少くないのでその成績にも多少の差違があることと思われる。

連載 眼科図譜・33

眼窩眼瞼嚢腫を伴う先天性小眼球

著者: 奥田観士 ,   広川敏博

ページ範囲:P.1069 - P.1070

解説
 須陽,男児
 生下時既に左眼に巨大な腫瘤が瞼裂より出て居た。嚢腫は表面平滑,鮮紅色,弾力性柔軟,波動性著明,光線をよく透すが,前上壁にある径約5mmの小眼球(青黒色の硬結)は光線を透さない。(第1図)

綜説

トラコーマの診断基準について

著者: 桐沢長徳

ページ範囲:P.1071 - P.1077

 トラコーマ診断基準に関しては多数の案があり,周知の如く先年WHOからも発表されたが(臨眼9巻5号,世界保健機構技術報告,日本公衆衛生雑誌,2巻9号),演者が昨年の当講習会で述べた如く,その中には多少妥当を欠き又具体的記載の不足なものもあるように思われるが,他方わが国に於いても多数の学者が診断基準について論じて居る現状である。然るにたまたま,昨年度より文部省綜合研究班として「トラコーマ研究班」が結成され,故中村康教授に次いで演者が班長となるに及び,この問題を班として取りあげることとなり,昨年秋以来小委員の間で原案を作り,今春の学会の際,班員全部の賛成を得たので,班長の責任として茲に一応これを公表して各位の御批判を仰ぎたいと思う次第である。本基準案の作成に当つた委員は国友昇(日大),弓削経一(京府大),赤木五郎(岡大)青木平八(群大),桐沢長徳(東北大)の諸氏であり,青木教授がその委員長として努力された。
 現在承認された委員会案は次の如くであるが,以下に各条項を解説的に述べることとする(多少の字句は今後訂正の余地がある。

臨床実験

義眼装用の為の鞏膜後半部切除術

著者: 公炳禹

ページ範囲:P.1079 - P.1080

 眼球摘出又は眼球内容除去後,義眼装入により,其の外観が健眼と全く同じく,其上義眼の運動が健眼と大差なき様企つるを以て理想とする。斯かる目的を達するために,眼科医は古くより多様の術式や義眼台の考案を試みつゝあるも,今尚満足すべき方法がなき様である。著者は眼球摘出を可成避けて,代りに眼球内容を除去し,眼球後剖の鞏膜を部分的に切除(2〜3個所に穴を作る)したる後出来得る限り大なるプラスチツク球を鞏膜腔内に挿入し,薄きプラスチツク製義眼所謂一重義眼を装用することにより,上記の如き目的を達せんと試みた。其の結果は鞏角膜葡萄腫の如き鞏膜内腔の拡大箸明なる症例に於ては満足なる結果を得た。然し正常大の鞏膜内腔を有する症例の大多数に於ては挿入する義眼台(プラスチツク球)が大なるため,術後数箇月後に,鞏膜の萎縮により,義眼台が角膜切除部より脱出するのが普通である。

乾燥菌と思われる桿菌に因る内麦粒腫に就て

著者: 石川敏夫

ページ範囲:P.1080 - P.1082

研究の動機
 臨床上,麦粒腫の経過を診ていると,自潰排膿して2〜3日で治癒するものがあるし,又眼瞼の発赤腫脹が強く,瞼全体が多数の膿点がみたされていて,切開排膿しても濃い膿のみで簡単に排膿せず,経過も二週間程に及ぶものもある。後者の様に重症型の麦粒腫は,特種な細菌に因るのではなかろうか,という疑問をいだいて私は1955年2月から麦粒腫の膿中の菌検査を始めたのであるが,結果は前者も後者も膿中には同じく球菌を認めたにすぎなかつた。即ち何等特種な細菌は発見出来なかつた。
 ところが序でに検査した内麦粒腫の膿中には高率に桿菌を証明するという興味ある事実を発見した。該桿菌はグラム陽性で,大小種々の形をなし,ヂフテリア菌に類似している。

緑内障における網膜中心動脈圧の上昇—特に高血圧症による場合との鑑別

著者: 佐古恒徳 ,   山田保夫

ページ範囲:P.1083 - P.1087

 緑内障において,眼内血管圧が上昇しているということを,Weinstein氏1)は,バイヤール氏法によつて証明した。氏は之を,眼圧上昇にもとづく2次的変化であると考えた。
 私共も,緑内障患者について検索を行い,網膜血管硬化,網膜中心動脈圧(以下C.A.P.)の上昇の認められる症例について報告したが2)3),その出現機序としては,全身血圧上昇,眼圧上昇,或いは老人性変化の2次的産物ではなく4)5),眼部血管系調整機能不全という問題が,緑内障患者においては体質的に存在し,その異常興奮が,網膜血管硬化,C.A.P.上昇として,緑内障の定型的他覚症状の発現以前に,既にあらわれているのではないかと考えた6)

嚢内摘出100眼の統計的観察

著者: 百々次夫 ,   住田静子

ページ範囲:P.1087 - P.1092

 昭和27年1月から31年1月にわたる4年1カ月間に,教室臨床で行つた白内障治療を目的とする弁状摘出は121人,163眼を数える。その中,嚢内法によつて術を終えたものが78人,100眼であるので,その成績を統計的に調査した。

トノグラフイーの臨床(第1報)—実施方法及び基礎実験

著者: 景山万里子

ページ範囲:P.1095 - P.1101

I.緒論
 眼圧は眼房水の流出抵抗と産生量の二つの因子によつて影響されるものであり,これを知る事によつて,眼圧生理乃至病理を明確に把握する事が出来る。この為,生体に於て,臨床的にこれ等を測定する事が切望され,研究されて来たが,Gold-mannのフルオレスチン法とGrantのトノグラフイーによつて確立された。
 眼圧計を角膜上に載せて放置する事の眼圧に及ぼす影響を調べたのは,遠く1925年のWegnerの研究に始まつている。その後,欧米に於ける幾つかの研究を経て,1950年にGrantはMullerの電気眼圧計を用いて眼圧を連続的に測定し,Friedenwaldの確立したtonometryの理論と実験値を元にして,房水流出率と産生量の計算方法を考案し,始めて,臨床的にこれ等の2因子を数字的に知る事が出来た。これがトノグラフイーと呼ばれる方法で,これによつて,緑内障の研究に一大進歩をもたらしたわけである。

顔面及び頭蓋の不相称を伴える一眼高度遠視に就いて

著者: 南ミツ

ページ範囲:P.1101 - P.1104

緒言
 E.Fuchs教授のLehrbuchder Augenheilkun-deにも,高度の不同視眼に於いてはasymmet-rische Bildung des Gesichtes und des Scha-dels即ち顔面及び頭蓋の不相称を伴う場合のあることは記載されおり吾国に於いても,顔面の不相称を伴う一眼高度近視の報告は,緒方昇,伊藤忠,倉知与志氏等数氏の報告があるが,顔面の不相称を伴う一眼高度遠視症例の報告は,極めて稀の様であるが,私は,顔面及び頭蓋の不相称を伴つた一眼高度遠視の症例を観察したので報告せんとするものである。

プリスコール球後注射が奏効した網膜中心動脈栓塞症の1例に就いて

著者: 妹尾謙三

ページ範囲:P.1107 - P.1109

緒言
 網膜中心動脈栓塞症に就いては古来数多くの文献があり,その治療法に就いても亜硝酸ソーダ皮注,メトブロミン皮注,アミルニトリツト吸入,アセチルコリン及びアトロピン球後注射,前房穿刺其他多くの報告があり,又,その治験例が報ぜられて居る。之にも拘らず本症の予後は一般に不良の事が多いとされて居る。私は偶然昭和31年12月急激な視力障碍を訴えて練馬病院眼科外来を訪れた本症患者に2-ベンチルイミダリン(プリスコール)の球後注射を行つて良好な結果を得たので報告する。

房水静脈の観察—Ⅲ.アミールニトリツト吸入に依る影響,特に眼圧の推移との関係

著者: 岡信次郎 ,   上野一也

ページ範囲:P.1109 - P.1116

I.緒言
 房水静脈がShlemm氏管より起り少くとも前房水の主要排出路の一つであると云うことはAscher (1942)に依る該静脈発見以来幾多の研究に依り一般に認められているところである。
 併し房水排出に依る眼圧調整機転が如何程の比重で戻水静脈にかゝつているかと云うことについては多くの説はあるが未だ明確な結論は出ていない。この点の解明の為の臨床的観察として我々は房水静脈の房水含量の消長即ち房水静脈を経由する房水排出量の消長と眼圧の変動との関連性について種々の方面よりの観察3)4)を行つている。その一つとしてアミールニトリツト吸入試験を行つた。緑内障のアミールニトリツト吸入試験については,G.Cristini及びPagliaraniの研究6)があるが,その作用機転等はさておき,この薬剤吸入が眼圧の変動を起し而もその作用が迅速にあらわれ,且割合手軽に用いられ得る故,これを用い実験を行つた。即ちこの薬剤吸入後の眼圧の変動とその際の房水静脈内房水量の変動を観察して両者の間の関連性について比較検討したのである。

脳腫瘍を疑われた後副鼻洞炎による四分の一半盲症に就て

著者: 内海栄一郞

ページ範囲:P.1117 - P.1119

緒言
 四分の一半盲症の原因について,今までは第二次視中枢である鳥距溝の障碍即ち後頭部の外傷等が主として考えられ,視束交叉部附近の病変は考えられなかつた。処が最近アメリカ学派は半交叉の状態について,従来の考え方の様に神経線維が正確に半交叉するのではなく複雑な経過を辿る事を発見した。この新しい半交叉の理論より視束交叉部附近の病変のみでも四分の一半盲症が起ると考える事が可能となつて来た。
 私は最近左側同名性下四分の一半盲症を呈し脳腫瘍を疑われた患者に後副鼻洞炎を発見し,その根治手術を行つた所急速に視野欠損が消失した甚だ興味ある症例を得たので茲に報告する。

生後3ケ月6日目の乳児に見たる霰粒腫に就いて

著者: 南ミツ

ページ範囲:P.1120 - P.1122

緒言
 霰粒腫は,マイボーム氏腺の慢性肉芽性炎症にして,其の発育は可なり徐々なるものにして,Prof.Dr.W.LohleinはKurzes Handbuch derOphthalmologie(1930)に於てChalazionはKindersaltelrに於てはnur sehr seltenに見るに過ぎずと述べ,Prof.Schreiberの執筆されたGraefe-Saemisch,Handbuch der gesamtenAugenheilkundeの眼瞼疾患篇(1924)に於てChalazionはim kindlichen Lebensalter selt-ner sind:にして,氏自身は4〜6歳の小児に於いて経験されている。即ち同氏が経験されたものは4〜6歳が最も年少者と思われる。
 以上の様に,霰粒腫は小児期に於いては極めて少く,特に,乳児期に於いては尚ほ更に,稀なるものと思わるるが,南熊太氏は昭和14年2月日本眼科学会雑誌上に於いて『生後4ケ月22日目の乳児に見たる霰粒腫に就いて』報告されているが之は,其の当時に於いては文献中,恐らく最も年少者ならんと考えられる例であつた。

緑内障に関する研究 第15編—緑内障の早期診断成績

著者: 湖崎弘 ,   武田真 ,   満田博年 ,   東郁郞 ,   中谷一

ページ範囲:P.1123 - P.1128

I.序
 緑内障は現今迄数多くの人々によつて,種々研究されて来たが,尚その本態は不明であり,罹患率も高く,予後は一般に不良で,而もその早期診断はなかなか容易ではない。また老人に多く見られるので,初期は屡々老視として見逃されることもある。かくの如く緑内障は臨床上重要な疾患であるため,昨今欧米各地では,早期に診断を確定し,適切な指導方針によつて患者に療養方針を正しくさせ,希望と光明を与え,更に経過を観察し,又新しい薬剤や新しい早期診断法,治療法を試みるために別にGlaucoma Clinicを設立し,緑内障研究に多大の貢献をしている1)
 この趨勢に促されて,私達も新しく緑内障研究室を設け,主として早期診断と,一面緑内障の経過観察を目的として,各種の試験を施行している。尚検査は病室に余裕のないため,すべて外来で行つている。今回は約一年間の早期診断の成績について発表する次第である。

臨床講義

原発性緑内障症例

著者: 赤木五郎

ページ範囲:P.1129 - P.1133

 眼内圧の病的充進を本態とする緑内障に就て症例を挙げて説明する。但し緑内障に関する研究は近来極めて盛んであつて新しい知見が陸続として発表されて居り,此等をことごとく紹介する事は出来ないので,本日は緑内障の診断を中心として話を進めたい。

談話室

欧米旅日記(その3)

著者: 萩原朗

ページ範囲:P.1135 - P.1141

 シカゴのNorth-Western Stationを11時の夜行で発つて,翌朝8時15分MinneapolisのUnion Stationに着きました。9時間と15分間かかつたわけです。此処は麦と湖水に名を得たMinnesota州の首都で,ミシシツピー河を挾んで,その東岸に在るセントポール市と共に,Twin Citiesと呼ばれています。両者の人口合せて80余万というアメリカ合衆国北部の雄都です。大小合せれば,1万もあろうという沢山の湖水を擁する詩の邦というだけでも,旅行好きな私には心鈴の強く振り鳴らされるものがありましたが,米国の6大学の一つに数えられるミネソタ大学や,全米に最大の個人病院としてその名を轟かせているMayo Clinicの所在地でもありますので,たとえ2,3日であつても,この地を踏んで見たいというのが以前からの私の望みでした。緯度から云えば北緯45°位,北海道の北の果にも当ります。暦では4月の8日ですが,街路に白く霜の降り敷いた早朝の寒さは流石に身に浸み渡りました。たまらなくなつて駅の附近のドラツグストアに飛び込み大勢の労働者風の人達に交つて,温い牛乳とスープで暖を取り,元気を取戻して,河向うのミネソタ大学に向いました。この大学の生理学教室には,半年も前から,東大生理学教室の時実利彦氏が勉強して居られたのです。
 時実氏に連れられて,ミネソタ大学のキヤンパスや,ミネアパリスの街を見物しました。

米国に於ける最近の眼科器械の発達並に手術々式の傾向

著者: 山下剛

ページ範囲:P.1143 - P.1145

眼科器械の発達
 Americaでは,検限が,眼科医の収入の半分以上を示めると云われる程なので,検眼は非常に重視され器械も発達しています。Copeland streak retioscope1)は良く普及しSt.lowisでは,殆んどの病院で常用しています。これにcross cylinder2)を併用すると適確に,且簡単に検眼が出来ます。特に乱視のある場合に便利です。refractometer3)は,American Optical Co.のものが優れ,vertex-distance迄計算してあるので,aphaklaのrefractionに迄も,応用出来ます。Trial frame4)も大体Lensが4枚位入る様になつているので,乱視のある場合に便利です。Projector chart5)は普通のcolorslidのprojectorのと同じ原理ですが,簡単な操作で字の大きさやchartの種類も変えられるので便利です。
 最近,検眼のみを商売とする所謂opticianの進出が目ざましく,眼科医をおびやかしています。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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