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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科11巻9号

1957年09月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会会誌

奈良県におけるトラコーマ集団治療の4カ年の綜合成績—3)各種薬剤の効力の比較について

著者: 神谷貞義 ,   山本純恭 ,   堀内徹也 ,   山岸陸男 ,   岩垣正典 ,   百瀬皓 ,   畠山昭三 ,   石井和子 ,   阿部圭助 ,   岡繁宏 ,   沢田孝明 ,   阿久津澄義

ページ範囲:P.49 - P.53

 我々は前報1)において,結膜症状と年齢の関係について述べ,若年者にはNo.2に属するものが圧倒的に多いが,年齢の進行と共に,次第に定型的な所謂トラコーマ即ちNo.4〜5,及び最盛期のトラコーマ即ちNo.6〜8の比率が高くなり,壮年期になるとこの傾向が強まると共に,末期トラコーマ症状即ちNo.9〜10を示す患者の比率が高まることを報告した。
 我々の集団治療では,衞生指導,環境改善の指導等,集団としての疾病の対策に力を注ぐと共に,直接治療には主として1% Aureomycin軟膏(以下AMと略す)を点人したのであるが,一部には1% Terramycin軟膏(以下TMと略す)及び,特に提供を受けた結晶により作製した1% chloromycetin軟膏(以下CMと略す)を用いて,これ等3種の薬剤の効力の比較を試みた。今回はその成績について報告する。

連載 眼科図譜・35

眼のサルコイドージス

著者: 桑島治三郎

ページ範囲:P.1151 - P.1152

 第1図 25歳,男,農,1953年12月9日初診。
 1952年9月から倦怠と徴熱などを伴つて初め左眼,次で右眼の霧視を覚え,肺門淋巴腺腫脹および結核性虹彩炎と診断され,内科に4カ月,眼科に8カ月入院,この間に顔面や鼠蹊部などに外数の無痛性皮下硬結を生じ,両眼の視力はそれぞれ光覚におちた。

綜説

最近の眼科薬物療法—東京眼科講習会講演(32.6.9)

著者: 杉浦清治

ページ範囲:P.1153 - P.1166

 最近1カ年間に於ける眼科の薬物療法を展望し,問題となつている1,2の事項及び注目すべき2,3の薬剤について述べてみたいと思う。薬剤を便宜上化学療法剤と一般薬剤とに分けて記述する。

臨床実験

視紅再生面よりみたアダプチノールの作用機序

著者: 早野三郎 ,   小出佳英

ページ範囲:P.1167 - P.1173

緒言
 AdatinolはTages種の植物の花瓣より抽出した植物色素Helenien (Lutein dipalmitinsäu-reester)を一錠中に5mg含有する糖衣錠のBayer社商品名で,v.Studnitz,Niedermeier等によつて暗順応機能が促進されることが見出され,最近本邦でも正常者及び各種夜盲疾患に対する投与成績が報告されている。
 本剤の作用機序については一応v.Studnitzが説明をしているが,私は視紅の再生に及ぼす影響を中心とせる二三の実験を行つたので,その結果より暗順応に対する作用機序を考察してみようと思う。

所謂中心性網膜炎の研究(第1報)—初期に視力が凸レンズで矯正される現象に就いて

著者: 本多英夫

ページ範囲:P.1175 - P.1177

緒論
 我が国に於ける所謂,増田氏中心性網膜炎の研究の歴史は相当古いものである。然しその確実な組織処見は,昭和23年及び24年に,生井氏及び上岡氏の報告を見るのみで,従つてその研究は臨床処見及び機能的な観察に重きが置かれている。本症の臨床経過は周知の如く,突然中心暗点を自覚し,初期には黄斑部に所謂浮腫が現われ,この浮腫は一般に一カ月程の後に吸収されて終う。そして多少共眼底変化は残すが視力は比較的早く回復していく。従つて本症の病像を云々する場合,上述の二症例の報告は重要なものではあるが,矢張り疾患の一つの断面を示しているに過ぎない事を忘れてはならぬと思う。
 茲に問題とする現象に就いても,生井氏は黄斑部に硝子体よりも屈折率の高い液体が凹面をなして貯溜しているため,視細胞層に結像すべき光線は,液面で少し外方へ屈折して視細胞層より後方に結像する。即ちこれが所謂遠視の原因であると結論している。一方上岡氏は黄斑部網膜下の滲出液を認め,この処見は生井氏の処見に反して,従来より増田,長谷川,北原の諸氏が臨床処見より,又三井氏等が細隙燈を用いて観察した結果に依つて支持されている様に,所謂遠視も網膜が前方え凸出するために起ると謂う。

トノグラフイーの臨床(第4報)—ピロカルピン,ホマトロピンの房水流出,産生に及ぼす影響並びに隅角所見との関係

著者: 景山万里子

ページ範囲:P.1179 - P.1187

I.緒言
 緑内障の本態は,現在尚明らかにされておらず,近年頓に世界各国に於てその研究が盛んになつて来た。中でも眼房水の流出を計測して,眼圧生理を解明しようとする方法に,Goldmannのフルオレスチン法とGrantのtonographyがある。前者は操作がむづかしいが,後者は簡単で臨床的に非常に応用し易い為,特に最近この研究が盛んに行われている。
 私もtonographyによつて,ピロカルピン(以下ピロと略記)とホマトロピン(以下ホマと略記)の眼圧に及ぼす影響並びに房水流出,産生機転に対する作用を,正常10眼,疑似緑内障10眼,緑内障57眼,合計77眼について測定し,更に,河本式隅角鏡(昭和25年8月東京眼科集談会発表)を用いて隅角検査を行い,隅角所見と,ピロ,ホマ,作用の関係を比較してみた。ピロ,アトロピンの正常眼眼圧に及ぼす影響については,現在迄多くの研究があるが,その成績は必ずしも一致しておらず,作用機転にも種々の異論がある。しかし,緑内障眼に対しては,縮瞳的に作用するピロが眼圧を下降せしめ,散瞳的に働くアトロピンが眼圧を上昇せしめる事は多くの人々の認める所であり,緑内障眼にアトロピンを用いる事は禁忌とされている。又,ピロ,アトロピンの眼房水流出に及ぼす影響にも,以前より種々の推論はあるが,尚意見の一致を見ない。

片眼外傷性白内障の手術後にコンタクトレンズの奏功した2例

著者: 三村昭平 ,   吉野龍二

ページ範囲:P.1188 - P.1190

緒言
 コンタクトレンズの成書,或は綜説をひもとけば片眼無水晶体眼に対する本レンズの使用は,適応症の第一に挙げられ,欧米では既にこれに関する数多くの報告がある。しかし本邦では未だ高野氏が2例,古城・中村氏が1例に用い,好結果を得たと報告しているに過ぎない。最近私共も2例の外傷性白内障による片眼無水晶体眼にコンタクトレンズを装用せしめ,好結果を得たのでこゝに報告しようと思う。

血圧と関係ある2,3の眼底所見に就て(其の2)—網膜細動脈硬化と血圧及び年齢との関係に就いて

著者: 加藤謙 ,   松井瑞夫 ,   島崎哲雄

ページ範囲:P.1191 - P.1197

緒言
 従来限底の動脈硬化は一つの老化現象であつて硬化の程度は年齢と共に高度となるものと一般に考えられていた。併し近来2,3の学者特にScheie氏(1953)等は,網膜の動脈は大部分細動脈であり,この部の硬化は内膜性アテローム硬化と細動脈硬化の2つの形態をとるが,検眼鏡で容易に観察し得るのは後者即ち細動脈硬化であることを記し且つこれが高血圧に随伴し又高血圧の結果として現われるものと信ぜられることを述べた。又緒方氏(1956)に拠れば,細動脈硬化は老年病変化であつて老年性変化ではなく,血管軟化の素地の下に滑平筋の異常収縮により増進せられ高血圧と密に関連した病変であると解せられる。斯くして眼底を検すればその患者の持続性血圧上昇の有無と高血圧持続期間を,細動脈硬化の程度にもとずいて,かなり正確に(少くとも患者の記憶にもとずく不確実な自供によるよりは正確に)判定し得るとの見解が生れるのである。
 併しながら,このような見解が妥当であるか否かは未だ臨床的に充分に検討せられたわけではない。

眼のサルコイドージス,その診断と治療とについて

著者: 桑島治三郎 ,   松永勝己 ,   堀内敏男

ページ範囲:P.1199 - P.1208

 サルコイドージスの病因は今日なお明らかではない。しかし臨床病理学的には,類上皮細胞からなる粟粒結節を特長とする系統疾患として,他の病型と鑑別診断される。
 本症の眼症状は,しばしば結核症その他と混同されていることが多い。

眼瞼下垂症に対するFriedenwald-Guyton-三国氏手術の変法—特に再発防止対策に就て

著者: 菅沼定明

ページ範囲:P.1209 - P.1212

 眼瞼下垂症に対し,今日までに記述されている手術方法は誠に多種多様で,之を大別すれば,
(1)前頭筋の作用を上眼瞼に及ばさんとする方法(2)上直筋の作用を上眼瞼に及ぼさんとする方法(3)上眼瞼拳筋の前転法(筋不全麻痺の場合)となり,夫々適応例に対しては相当に有効と考えられるものも少くないが,術式の複雑であつて効果の不安定なものもあり,而も再発を起し易いことが,殆んど全ての方法に共通の欠点とされている。

新刊書紹介

—B.Cushman—Strabismus, Diagnosis and Treatment.1956(Lea and Febiger),他

著者: 桐沢長徳

ページ範囲:P.1213 - P.1214

 斜視一般を眼科医(及び学生)の為に分りやすく書いた本で,複雑な斜視に関する諸問題を比較的簡潔に記述してある点が特長である。元来,斜視は日本に於けるよりも遙かに欧米に於いて重視せられ,今までも多数の著書が刊行せられたのであるが,今以て多数の問題が未解決のまゝであることは本書のVail緒言でも知られる通りである。たとえばその発生論に関しては解剖学的立場を重視する人と神経学的原因を重視する二大流派があり,その検査法や手術法も区々であり,手術の時期,方法,Orthopticsの評価に至つては多数の異論が今もなお多いようである。このような混乱にも拘らず,手術の結果が比較的問題となることの少いのは母なる自然が,良能の手によつてうまく救つてくれるからに外ならない,と実に耳痛い言葉でVailは皮肉つているが,このことを特に痛感させられるのは外ならぬ,わが国に於いてゞあろう。この故にこそ,後ればせ乍ら日本に於いても明年の学会では斜視のシンポジウムが行われることになつたのであるが,その講演を聞くためにも斜視の病態生理並びに欧米で行われているroutineの検査法に通じておくことは絶対に必要であつて,そのためには本書のような書物が適当と思われる。
 著者はDuane,Whiteの流を汲む女医であるが全体を二部に分け,第1部は診断,第2部は治療とし,第1部を更に検査法及び眼筋及び共同運動の異常に分類し,第2部は治療の各論について述べている。

談話室

欧米旅日記(その4)

著者: 萩原朗

ページ範囲:P.1215 - P.1226

 バッファローを10時25分の夜行で発ち,翌朝の9時10分にボストンのSouth Stationに着きました。10時間45分間かかつたわけです。バッファロー,ボストン間を直線で測ると,約650粁です。これは東京から糸崎辺りまでの直線距離に相当します。今東京を10時30分発の筑紫で西下しますと,翌日の丁度昼頃糸崎に着きますから,約13時間半かかることになります。平坦で真直なアメリカの鉄道と,曲りくねつた日本の鉄道とを考慮に入れて比較すると,ニューヨークセントラルでも,それ程速くはないということになります。
 ボストンは旧い町です。

Basal Iridectomy (英)とBasale Iridektomie (独)とは同じ意味ではない

著者: 須田経宇

ページ範囲:P.1228 - P.1229

 私はさき1)2)に虹彩根部に切開を加えて,その際生ずる虹彩根部片を180°廻転させて鞏膜又は角膜切開創に巌頓させる手術法を虹彩根部嵌頓術basal iridencleisis又は周辺虹彩嵌頓術peripheral iridencleisisと称して発表した。即ちbasal iridencleisisとperipheraliridencleisisとを同意語とした。このbasal iriden-cleisisはStallard3)の論文によつたのである。
 一般に対緑内障手術中の虹彩切除はGraefeが示した様に虹彩を瞳孔縁から根部までを,而も根部を広く切除するのが原則である(B図)。この場合は瞳孔は正円を得られないので視力は多少悪くなる。若し緑内障が軽く,瞳孔にかけないで虹彩の根部丈を切除してその目的が達するならば瞳孔は正円が保たれて視力も低下せずに済むのでよろしいのである(A図)。前述の周辺虹彩嵌頓術もこの意味に他ならない。ところが虹彩切除の場合basalの意味の取り方が独逸系(又はヨーロツパ系?)とアメリカ系では異なるのである。独逸のMellerの本4)ではBasal Iridektomie nach Pflugerとして虹彩根部のみの切除を示している(A図)。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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