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綜説
色覚異常と災害医学
著者: 市川宏1
所属機関: 1東京鉄道病院眼科
ページ範囲:P.7 - P.24
文献購入ページに移動社会生活と色覚異常との関係は,近代科学の発達と近年の異常な交通量の増加に伴う社会機構の複雑化に伴つて益々重要な課題となつている。色覚異常が原因して起した事故も又,之に伴つて頻発しているであろうと思われるが,事故発生の状況が複雑であるため,明らかに色覚異常による事故と断定し得る場合は案外少い。しかしGanter(1956)1)は独逸の交通機関に於て色覚異常が事故の原因となつていると確め得た6例についての報告をしていて,この種の事故の少くないことを示唆している。一方米国に於ては色覚異常者にとつてもなるべく安定した色感を与えるような信号灯についての研究が近時行われ,Judd (1952)2)やSloan and Habel (1955)3)等によつて,色覚異常者を顧慮した信号灯色のJudd chromaticitylimitsについての検討がつづけられている。
しかし,僅かの色覚異常の故にSchwichten-bergの云うように何かにつけて"色盲"と云われ,社会から除け者にされることは不幸なことであつて,吾々臨床家としては色覚異常の程度を充分に究明した上で適切な忠告と職業指導を行うように努めなければならない。しかし色覚の異常度ということは沢4)氏の適切な表現にもあるように,一つの基準,たとえばanomaloscope或は色盲表だけで程度を決めることは出来ない。
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