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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科12巻10号

1958年10月発行

文献概要

手術

眼科領域に於ける全身麻酔—第1報 小児気管内麻酔

著者: 依田迪子1

所属機関: 1順天堂大学眼科

ページ範囲:P.1343 - P.1348

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I.緒言
 眼科領域に於ける全身麻酔法に関しては,吾が国に於いても鴻1),吉田2),湖崎12)氏等の報告がある。特に小児に関しては弓削3),森4),能戸5)氏等の報告が有る。しかしながらどの報告をみても乳児に対する麻酔は皆無もしくは,僅少であつて,全部を合計しても11例しかない。麻酔時間も記載が無いか,またはみじかく,例えば鴻氏の例では最長10分間,平均約3分間に過ぎない。これらの諸氏が行われた麻酔法は,すべて注射または,開放点滴麻酔であるから,多かれ少なかれ副作用の発現をみている。例えば森氏は27例中2例に軽度の呼吸麻痺を経験し,能戸氏の場合は1例に呼吸停止,2例にチアノーゼを起している。弓削氏の用いられた麻酔法は強化麻酔であるから,そればかりでは効果が不充分であつて,必ず充分な局所麻酔の併用を必要としている。どうしても患者の興奮が鎮静せずに,更に開放点滴麻酔を併用したものが,40例中8例に及んでいる。またカクテル分割注射開始から手術開始迄に著しい長時間を要し,最大160分に及んでいる。湖崎氏も強化麻酔は小児の虹彩切除以上の手術には不充分であるから,吸入全身麻酔の併用を必要とすると述べて居る。これらの先覚者が眼科の全身麻酔に早く着目されて,その道を開拓せられた事は,まことに尊敬すべきであるけれども,専門の麻酔医の協力が無かつた為であろうか,厳密にコントロールされた理想的な麻酔法を採られなかつた事は止むを得ないと思う。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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