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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科12巻13号

1958年12月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会々誌

トラコーマ結膜嚢内共棲菌について(第3報)—葡萄状球菌の諸種薬剤に対する感受性について

著者: 難波龍也

ページ範囲:P.79 - P.85

緒論
 私はトラコーマ結膜嚢内共棲菌に就いて,種々検索を行つているものであるが,第1報及び第2報に於て其の菌種,其の発現頻度,一眼よりの証明菌種並びに其の嫌気性発育に就ての実験結果に就て健康眼並びにトラコーマ疑似症眼との比較を行い報告した次第である。今回は其の結果最も発現頻度が高く,且つトラコーマ症状に対する影響も大きいと想像される萄葡状球菌に就て,其のサルフア剤,及び数種の抗生物質に対する感受性に就て実験を行い検討したので其の結果を報告する。

連載 眼科図譜・48

網膜腺病性苔癬の1例

著者: 小林守治 ,   菅原脩二

ページ範囲:P.1647 - P.1648

図譜解説
 〔症例〕53歳男。
 初診:昭和32年12月11日。

綜説

増田氏病は真の血管攣縮性中心性網膜症であるか?

著者: 桑島治三郎

ページ範囲:P.1649 - P.1655

 漿液性中心性脈絡網膜炎Chorioretinitis cen-tralis serosaに造詣のふかい長谷川氏は1),この病型と,ホルニケル氏以来ギフオード氏らのいう血管攣縮性中心性網膜症Retinopathia cent-ralis angiospasticaの病型とが,果して同じものなのか別のものなのか,この点を調査した結果,これら両疾患は別のものである筈だが,本邦でも外国でも,両者を別のものとする説と,同じものとみなす説と,ふたつの異つた見解のある事実が明らかだとして,矛盾を指摘された2)
 これに対して,最近の日眼総会で増田中心性網脈絡膜炎について極めて興味ふかい研究業蹟を発表された三井氏は3),これを外国誌には中心性血管攣縮性網膜症と題して発表したが4),同氏はその理由として中心性血管攣縮性網膜症の病名で実際に扱つている病気は,増田氏病と同じものであることになつたと述べ,この結論に到るにはマウムネー教授のお世話になつた事情を語り,三井氏じしんは血管攣縮ということを否定するために,わざと表題にこの病名を用いたというような主旨を弁明されている5)

臨床実験

青森に於ける流行性角結膜炎の臨床的観察

著者: 須田栄二

ページ範囲:P.1657 - P.1663

I.緒言
 先に私は昭和29年度の岩見沢市に於ける流行性角結膜炎87例の観察を発表した(臨眼10-10)。その後も本疾患に興味を抱き研究を続けて来たが,此の度青森県立中央病院に勤務する事になつた。岩見沢市に於ける場合と地域的に,又年次的にも推移があるので,再びその観察を行つて見るのも意義があると思われる。更に本疾患の病原体と思われるAdenovirus type 8も分離されて注目を浴び,ウイールス学上にも重要な位置を占めるに到り,今後の研究を期待するものであるが,本論文が聊かでも之等に役立てば幸いである。

網膜腺病性苔癬の1例

著者: 小林守治 ,   菅原脩二

ページ範囲:P.1665 - P.1668

緒言
 腺病性苔癬は皮膚科領域に於て,胸腹部,腰部,四肢,顔面などの皮膚に生ずることは周知のことであり,眼科領域でも眼瞼又は結膜に生ずることが知られているが,1920年Axenfeldが,網膜静脈周囲炎の眼底に数週間で速かに消失する白色小結節を発見し,これを結核疹Tuberculideとして発表して以来,わが国に於ても同様の変化の記載が散見される。然し,腺病性苔癬として発表されているものはごく少数であるのみならず,その眼底所見が不詳のものも少なくない。且つ,結核性網膜炎の際に多発することがあると云われる小白斑との異同についても,文献上かなりの混同があるようにも見うけられる。
 最近吾々は網膜腺病性苔癬と思われる1例を経験し,その美麗なる眼底所見に加えて,甚だ興味ある経過を観察する機会を得たので,茲に報告する次第である。

眼球外傷による破傷風の1症例

著者: 柳垣憲夫 ,   森茂

ページ範囲:P.1668 - P.1672

 本邦における眼部外傷による破傷風の報告例は,大正4年奥瀨氏の報告をはじめとして,小数の報告を見るに過ぎない。近年における報告は教室の高橋等と楠本氏等による2例があるが,その多くのものが眼球及び眼球外組織又は眼球外組織のみの損傷によるもので,眼球のみの損傷によつて破傷風を引き起した症例は世界的にも比較的少いものと思われるが,最近我々は古竹による眼球のみの刺傷によつて破傷風を引き起し,各種治療を試みたが遂に死亡した1例を経験したので追加報告する。

血圧と関係のある2,3の眼底所見について—(其の7)糖尿病患者の網膜細動脈硬化所見特に交叉現象について

著者: 加藤謙 ,   羽飼昭 ,   天羽栄作 ,   坂上道夫 ,   須賀純之助 ,   林正雄

ページ範囲:P.1673 - P.1682

緒言
 Insulinの発見(1922)以来,糖尿病性昏睡による死亡が減少し,これに代つて循環器系統の合併症とこれによる死亡が増加しつゝあることは諸家(特にJoslin 1952)の指摘するところである。而して循環器障碍としては,冠動脈硬化,大動脈硬化,四肢の壊疽,腎細動脈の硬化,糸球体の病変及び血管病としての糖尿病性網膜症等が知られ,病変は大動脈より細小動脈・毛細血管に及び普遍的にみられる。然らば細動脈を直接拡大して観察し得る利点に恵まれた網膜の動脈硬化所見は何のようであろうか。先人のこの問題に関する研究は比較的少なく,小柳美三(1935,1941) Waite及びBeetham (1935),Ballantyne及びLoe-wenstein (1944),Leopold (1945),Ashton(1953),Quiroz等(1954),Kornerup (1957)等の業績が主なるものである。

高血圧の集団検診成績(その1)—特に高血圧の新分類法について

著者: 飯塚哲夫 ,   山田春雄 ,   神足実 ,   太根節直 ,   山田弘 ,   鈴木羊三 ,   小川昌之 ,   常松美登里子 ,   鈴木勳夫

ページ範囲:P.1683 - P.1692

 近年抗生物質の進歩普及等によつて伝染性疾患の発生,死亡率等が低下し,同時に癌性疾患及び高血圧性疾患が大きくクローズアツプされて来た。其の為に各所に所謂人間ドツクが設立され,又各会社,工場等に於ても衛生管理等によつて此等の疾患を出来るだけ早期に発見し治癒しようと云う気運が高まつている。即ち高血圧症に関しては初期の高血圧症,或いは動脈硬化症の判定,分類更に此等の管理と云う点に注意が払れるに至つた。
 高血圧の際の網膜中心血管の血圧に就ては既に1946年Bailliart氏以来多数の報告があり,最近Weigelin氏等の異論があるにしても,此れが全身血圧と並んで内科医方面からも重要視されるに至つた事,更に又眼底所見を基礎としたKeith-Wagener氏分類が広く採用されつつある事は我々眼科医にとつて喜ぶべき事であるが,又此れによつて多くの検討すべき問題も多いものと思われる。

スタージ・ウエーバー病と緑内障負荷試験

著者: 太根節直

ページ範囲:P.1693 - P.1700

緒言
 1860年Schirmer氏は顔面血管腫と牛眼の合併を報告し,1879年Sturge氏は之に癲癇の来ることを述べ,1929年Weber氏は血管腫が脳に発生するために起るジヤクソン型癲癇であることを立証した。以来本徴候疾患群は,スタージ・ウエーバー病とも呼ばれ,血管腫と牛眼乃至緑内障並びに癲癇は偶発性のものではなく,眼球内の血管腫,或いは脳内の血管腫の充血・鬱血・腫脹により夫々眼圧の異常上昇或いはジヤクソン型癲癇が起るものとされていたが,実際には癲癇を合併する症例は少く,佐藤氏によれば文献上12%に過ぎないとされている。私達は最近遭遇した本症の2例に教室で行つている緑内障負荷試験を施行し,眼圧調整機序に関して興味ある観察をなし得たと思うので茲にその大要を報告することにした。

網膜血管と脳内血管との病理学的比較(第4報)—脳内毛細血管瘤について

著者: 羽生孝明

ページ範囲:P.1701 - P.1705

緒言
 私は第3報にて網膜毛細血管瘤に就いて述べ,その結論に於て"高血圧症を有し網膜に比較的多数の毛細血管瘤の認められる症例では,詳細な検索により,脳内に小動脈瘤或いは毛細血管瘤をも発見し得る可能性があるように考えられる"と述べたが,その後の検討により脳内毛細血管瘤とも考えられるものを認め,又その他一・二の知見を得たので報告する。

私の経験 国際眼科学会への旅・2

5.ベルリン大学眼科の現状

著者: 桐沢長徳

ページ範囲:P.1707 - P.1708

 今更ドイツ見学記でもないでしようが,ドイツ,殊にベルリンは言うまでもなく,現在のわが国の眼科の長老の多くの方が勉強された所で,いわば日本眼科学のハイマートとでもいうべき所ですから,ベルリン大学の現状は特に古い先生方への御報告の意味で書いてみましよう。
 8月29日,国友,大橋,弓削の三教授と共にOscarRothacker書店のHermann-Schäfer氏の案内で,Universititäts-Augenklinikを訪れました。ベルリン大学は昔から世界に名高く,またフンボルト大学とよばれて幾多の輝しい業績をあげたものですが,戦後遺憾乍ら東独地域となり,そのため,現在の西独学生は各所に分散された教室を廻り歩かなければならぬ為に非常な苦心を払つているようです。つまり,西独としては,別に統一された大学を作りたいのでしようが,さすがのドイツでも完成した大学は一朝一夕に出来るものではなく,2年前に南西地域のDahlemにfreie Universitätを建て,目下鋭意整備に懸命なようですが,医学部さえも各所に分散し,たとえば甲病院の耳鼻科を大学の耳鼻科とし用いても,眼科は乙病院のものを使う,というような現状です。現在Universitäs-Augenklinikの一つとなつているのはCharlottenburgの地区病院(SpandanerDamm 130)で,主任はHugo Gasteiger教授です。

談話室

恩師鹿児島茂先生の憶い出(その7)—所謂鹿児島式諸器具について

著者: 南熊太

ページ範囲:P.1709 - P.1711

 鹿児島茂先生は,自家考按の器具等を公表される場合は多くは,熊大式(当時の熊本医科大学式)何々と命名されていて,鹿児島茂式何々とは命名されてはいない様である。但し,医療機械店の方で便宜のために鹿児島式とカタログ等に書いてあるものもあるであろう。即ち正式には,鹿児島式とは命名されなくても,鹿児島先生御考案の所謂鹿児島式の眼科診療用諸器具を此所に取りまとめて,之等の器具を通じてその当時の鹿児島先生を憶い出してみたいと思う。
○鹿児島式有枠無枠眼鏡(金,銀,赤銅製各種)

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臨床眼科 第12巻 総目次・物名索引・人名索引

ページ範囲:P. - P.

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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