icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床眼科12巻4号

1958年04月発行

私の経験

涙管ブジー

著者: 長谷川信六

ページ範囲:P.683 - P.683

文献概要

1.「ブジーは痛い」を追放せよ
 成人の流涙症の場合,涙管ブジーを挿入しても余り効果は期待出来ないが,10人に1人位はたとえ一時的にせよ治癒する者があるので,万更棄てたものでもない。私は流涙症には1〜2回は一応試みて見るが,只,ブジーを通すと云うと患者は誰でも「あれは痛いそうですネ」と云う。ブジーは痛いと云うことが世間の通り相場になつているようである。事実,痛いちしい。私は且つて先輩の広田敏夫先生の体験談を聞いたが,最も痛いところは涙小管と涙嚢との移行部,即ち,ブジーを90度廻転するところだと云う。それで,私はブジー挿入の際は移行部近囲に2%のノボカイン0.5〜1.0ccを注射している。その結果は患者に殆んど苦痛なしにブジーを通すことが出来る。僅の労であり平凡なことだ。然るに,こんな平凡なことが一般に行われず,ブジーは痛いと云うことが依然として世間の通り相場になつている。尤も,一般教科書には点眼麻酔を行えと書いてあるが,流涙症に点眼麻酔を施しても肝腎の涙嚢は麻痺されないから意味がない。敢て切創を加えなくとも痛いものは痛いのであるから,徒に患者に苦痛を与えぬよう,ブジー挿入の際は注射による局所麻酔を施すべきだ。ブジーは痛いと云う眼科医には不名誉な声は追放すべきであると思う。
 尚,涙管ブジーは1〜2回試みて効果のない時は何回試みても無意味だと思つている。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら