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臨床実験
全身投与による広スペクトル性抗生物質Broad Spectrum Antibioticsの眼内移行について
著者: 生井浩1 檜山治男2
所属機関: 1久留米大眼科教室 2九大眼科教室
ページ範囲:P.709 - P.716
文献購入ページに移動眼科領域に於ける感染症は,その治療法及び治療の難易に関係しで,病巣の部位によつて3種に区別して考える必要がある。眼瞼,結膜,結膜下組織,眼窩組織等の感染症は化学療法剤を他科領域で慣用される程度の投与量と投与法に準じ全身的に与える事によつても,薬剤は病巣によく移行し,従つて多くは治療の目的を達し得るのである。角膜,結膜等の外眼部感染症は局所に直接的に極めて高い濃度の抗生物質を応用し得る利点がある事を特徴とし,従つて相次ぐ抗生物質の出現によつて,緑膿菌,変形菌,或は真菌等の低感受性菌による稀な感染症を除いては,その治療は今日一般にさほど困難なものではなくなつている。眼内感染症については,Leopold1)やCallahan2)が白内障摘出後の全眼球炎菌について指摘しているように,緑膿菌や変形菌等の低感受性菌を含むグラム陰性菌が漸増しつつある事は注目に値する事であるが,一方Locatcher-Khorazo et al3)が同様に白内障摘出後の感染症の起炎菌として黄色ブドー球菌の重要性を強調しているように,普通化膿菌の眼内感染症に対する役割は依然として重要なものであることに変りはない。
眼内感染症は,それが低感受性菌による感染症である場合は勿論のこと,普通化膿菌によるものであつても,一且発病すればその治療は甚しく困難であり,視力に対する予後は極めて重大である。
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