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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科12巻6号

1958年06月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会会誌

トラコーマの免疫に関する基礎的実験

著者: 柏井忠夫

ページ範囲:P.41 - P.43

 トラコーマの能動性免疫については,すでに本教室にても,高橋1)及び上野,柏井2)の報告があり,其の可能性については,幼若マウス脳及び家兎睾丸による実験にては成功しているが,今回更に被動性免疫性ならびに免疫血清による治療に就ての基礎実験を行つた。

Trachomaの分類に対する疑義

著者: 金田利平

ページ範囲:P.43 - P.47

1.急性期Tr.慢性期Tr.なる名称
 Tr.とは慢性の結膜炎だとは古来きまりきつた鉄則なのだから急性期Tr.とか慢性期Tr.等というべきではない。古典的Tr.なる語を使用される方があるが全く論外。

Oleandomycinに関する研究—第4報 1%軟膏による学童トラコーマの集団治療成績

著者: 真柄更郎

ページ範囲:P.47 - P.50

 Sobin等(1954)の実験によればOleandemycin(OM)はグラム陽性菌,結核菌,Neisseria,He-mophilus属及びブルセラ属の他リケツチヤ,大型ビールス或る種の原虫にも有効であると云う。
 私は第3報に於いて細菌感染性の2〜3の前眼部疾患に対して使用してみた成績に就いて記載したが,今回はトラコーマに用いてみた成績に就き以下に報告する。

連載 眼科図譜・42

家兎眼前房隅角所見

著者: 赤木五郞 ,   広川敏博 ,   清水博 ,   脇正敏 ,   乙倉久美子

ページ範囲:P.835 - P.835

綜説

日本に於けるトラコーマ問題(Ⅱ)—視察及び文献による

著者: G.B. ,   浅水逸郞

ページ範囲:P.837 - P.842

Ⅱ.研究状態
 日本に於けるトラコーマの研究は,チユニジア,アルジエリア,モロツコと同様に非常に活溌である。之は設備の整つた研究機関や有能な学者が多いので,研究がスムースに行い得るからである。
 荒川,藤山,三井及び川喜田が特にトラコーマウイルスの培養を熱心に行つている。

臨床実験

家兎眼前房隅角所見

著者: 赤木五郞 ,   広川敏博 ,   清水博 ,   脇正敏 ,   乙倉久美子

ページ範囲:P.843 - P.845

 新しい隅角検査法が赤木,梶ケ谷氏,荻野氏等によつて紹介されたのは一昔前の事になろうとして居る。此の間に其の重要性を認め,興味をもつ大は多数あり乍ら余り普及しない理由は,適当な練習方法が無い為ではないだろうか,即ち最初から人体実験を行う事は角膜損傷に対する危惧等の精神的負担が大き過ぎ,又手近にある家兎は隅角鏡検査の権威Troncosoが其の著書に於て,「家兎は前房が非常に浅い為に観察が困難である」と述べた事から,つい始めるのが臆却になりがちである。
 しかし私達は敢て有色家兎に於て隅角鏡検査を行い,此の可能である事を知り得たのである。入手し易いのみならず,後に述べる如く其の隅角所見が外観上では一寸人眼のものと似て居るので家兎は隅角検査の練習材料として誠に適当なものと考えられる。更に実験動物としても重要な家兎の隅角を理解する事は誠に有意義でもあり,隅角の研究を一歩進めるに役立つものではないかと愚考する。

Orbitonometryに関する研究—第4報"Thyrotropic Exophthalmos"について

著者: 植村恭夫

ページ範囲:P.845 - P.849

緒言
 著者は,第Ⅱ報にて甲状腺機能亢進症患者のOrbitonometryに関する研究を発表し,第Ⅲ報にて此等の患者に対する放射性ヨードI131の治療効果に就いて検討を試みた。今回は臨床的に"Thyrotropic exophthalmos"と考えられる症例に就いてOrbitonometryを施行し,得られた成績と,前報に述べた成績とを比較し,Orbitono-metryの面から,内分泌性眼球突出の一元説,二元説に対し些か批判を加えてみることとした。

Insulin療法中により惡化する網膜出血

著者: 小原博亨 ,   大橋克彦 ,   赤塚俊一 ,   阿久津澄美

ページ範囲:P.851 - P.854

I.緒言
 糖尿病の際に網膜出血の来る事は衆知の事であるが糖尿病の治療の目的でInsulinが用いられた場合に,殊に低血糖症状郡を惹起した場合に,網膜出血が増悪したり,或は,新に網膜出血が惹起されると云う事は余り知られていない。私共が丁度,斯る例症に遭遇して解決に苦んだ時,Guillot氏が来朝して,斯る事実を発表された,其の後,更に其の1例を経験したので報告する次第である。

家兎角膜脈波(角膜伝達脈波)描写に関する諸問題

著者: 川嶋菊夫

ページ範囲:P.855 - P.859

緒言
 循環器系の疾病特に高血圧症並びにその発症等に関する研究が盛んになるにつれ,その本態を解明せんとする動物実験の研究,例えばGoldblatt法による実験的高血圧,或いは実験的脳症の発症等種々の研究が広く行なわれる様になつて来た。現在のところ家兎は之等の研究にその発症の容易性から云つても,取扱いからしても,第一に挙げらるべき動物である。従つて眼科に於いても全身に於ける随伴現象を見る上に重要なるは云う迄もない。そこでその主体性を網膜中心動脈にもつ角膜脈波(この内,圧力脈波は角膜に伝達される脈波である故に角膜伝達脈波とした方が可ならん)の有意性は循環器検査の上に極めて大である。故にこの脈波を上手に描写する事が大切であるが,家兎角膜の径は,ほとんど人間と同様であるに反し,眼球全体の容積は約半分位であり,網膜血管径は人間のそれに比し極めて小さい,従つてこれ等の条件が組合わさつている故に人間の場合と異なり角膜脈波の描写は非常に六ケ敷い。而して若し此描写にあやまりがあるならば,その実験上からくる推論は総て間違いを犯す事となる。然らば如何にしたら家兎角膜脈波を上手に描写し得るか,起り得べき一つ一つの要因につき実験を行つた結果2,3の知見を得たので茲に発表する。

先天涙嚢瘻について

著者: 林生

ページ範囲:P.861 - P.867

 私は約3年間に先天涙嚢瘻の10数例に遭遇したが,その内比較的詳細に観察する事が出来た。12例を茲に記載報告する。

ブスコパン点眼による仮性近視の治療

著者: 水川孝 ,   高木義博 ,   小西勝元 ,   岡林毅

ページ範囲:P.869 - P.873

緒言
アトロピン様作用を有する各種の自律神経遮断剤の眼内筋に対する作用態度を調べ,Buscopan(C.H.Boehringer Sohn—田辺) Hyoscine-N-butylbromide
 〔註〕本剤は副交感神経節の神経伝導に対し特異な遮断作用を有するHyoscine-N-butylbromideで,次ぎの構造式を有している。

Glaucomatocyclitic crises (Posner and Schlossman)の2例

著者: 南睦男 ,   松本教子

ページ範囲:P.873 - P.876

 1947年にPosner and Schlossmanが1側性の毛様体炎を伴う反復性緑内障を一独立疾患として報告し,これをGlaucomatocyclitic crisesと名づけた。本症は原発性急性緑内障と,続発性緑内障といずれにも共通点を持ちながら,そのいずれとも異つた点を持つ特異な疾患とされ,今まで外国では多数の報告例があるが,わが国では今井の1例が報告されたのみである。私らは最近本症と思われる2症例を経験した。尤も2例ともに最初は急性炎性緑内障と診断し,後になつて本症であると信ずるに至つたもので,眼科医としての常識からみて,たしかに戸惑いさせられる疾患と思われるので報告する。

緑内障の治療(第Ⅰ報)—ピロカルピンに就いて

著者: 景山万里子 ,   河本正一

ページ範囲:P.877 - P.882

I.緒論
 ピロカルピンは,緑内障に用いる最も普通の薬剤であるが,これに対する私共の智識は案外に少い様である。これは通常,朝昼晩という風に,1日数回用いられている。しかし,私共は,実際にこの様な方法で,殆んど効果の無かつた者が,一時に数回,衝撃的に点眼して,著しく流出率が増し,眼圧下降を来たした数例を経験し,点眼方法による効果の違いを検討する事にした。又,一方ピロは濃度を高めて10%迄用いられているが,Sugarは2%以上の濃度にしても,効果はあまり変らないと述べている。しかし,これ等の点について,参考となるべき記載は見当らない。私共は,ピロの1%1回,10分(或は5分)間隔で4回,4%を3分間隔で2回,という3つの点眼方法を用い,緑内障に於ける眼圧下降の状況を追求した。尚,同時に,瞳孔径,球結膜の状況,Tonographyによる前房水の流出率,産生量等をも調べた。緑内障は個々の症例によつて,薬剤の効果が異るので,その症例の大要は「緑内障の視野」という題目で,別に発表する予定である。

異常瞳孔反応(反射性瞳孔強直症,瞳孔緊張症,絶対性瞳孔強直症等)の成立病理について(その3)—薬物反応について

著者: 大本純雄 ,   鴨打俊彦

ページ範囲:P.882 - P.885

I.緒言
 瞳孔反応異常疾患の鑑別診断方法として,対光反応,近見反応,暗順調検査等の臨床診断的に常用されて来た理学的検査法の外に,幾つかの薬物学的方法が知られている。
 例えば瞳孔不同症の性質を判定するに用いられるCoppezの表(1903),交感神経侵襲部位を判定するに用いられるFoster and Gagelの図表(1932)等があるが,Adler and Scheie (1940)により発表されたメコリールによる瞳孔緊張症の診断法は,臨床診断的価値が比較的大であるとして,欧米殊にアメリカでは広く用いられている様である。

先天性虹彩異彩症の1例

著者: 天沼宏

ページ範囲:P.885 - P.888

I.緒言
 先天性虹彩異彩症(又は異色症)は内外文献に依つて多数報告され,我国に於ては,甲野氏等に依る50例近くの報告がある。その中,一眼の虹彩が邦人の正常色調を呈し,他眼のそれが白人のように全体に帯碧灰白色を呈する所謂金銀眼は,私が調べた範囲では26例である。私は最近,一見して金銀眼を呈してはいても,これを仔細に検討すると,一部に境界明瞭な正常色調部を認める先天性虹彩異彩症(以下異彩症と略記)を観察したので茲に報告する。

クレーデCréde氏膿漏眼予防法は現在如何に実施されているか(そのⅡ)—助産婦によるものについて

著者: 南熊太 ,   野中栄次

ページ範囲:P.889 - P.893

I.緒言
 クレーデ氏膿漏眼予防法は現在如何に実施されているかに就て調査したのであるが,(Ⅰ)日本の全大学医学部及び全医科大学附属病院産科婦人科教室(以下之を大学病院産科と略記す),(Ⅱ)日本各地の国立病院,公立病院,赤十字病院,主なる私立病院等の産科婦人科,産院(以下之を国立公私立病院産科と略記す),(Ⅲ)助産婦の3つに分けて,夫々往復葉書等にて問合せて返答を求めたのであるが,その結果に就て,大学病院産科,国立公私立病院産科に於けるものは,既に(其のⅠ)に於て報告したので,今回は(其のⅡ)として,助産婦によるものに就て報告せんとす。

海綿静脈洞血栓症について

著者: 松永茂 ,   柴崎智恵子

ページ範囲:P.893 - P.897

I.緒言
 海綿静脈洞血栓症の原因は種々あるが,顔面及び頭部には豊富なる静脈網が存し,之と交通を有するので,この部分に於ける化膿性疾患は海綿静脈洞迄波及し,予後重篤なる疾患を招来する可能性あるは,想像に難くない。私共は軽快せる2例の海綿静脈洞血機症を経験したので,こゝに報告する。

Oleandomycinに関する研究—第2報 睫毛性潰瘍性眼瞼縁炎患者から分離したブドー球菌に対する菌感受性の検査成績/Oleandomycinに関する研究—第3報 2〜3前眼部疾患に於ける臨床使用成績

著者: 真柄史郎

ページ範囲:P.899 - P.908

 ブドー球菌はあらゆる組織や器官に炎症を惹起して壊死及び膿瘍を形成する病原菌で,化膿性疾患の起炎菌として私共が日常最も多く遭遇する細菌である。従つて抗生物質療法の対象となることが最も多いので耐性菌の発現に就ては各科から最もしばしば報告されるところである。
 水井(1953,1957),川畑(1953),石山等(1957)は外科的疾患に於けるブドー球菌に就き,石井等(1955)は外科及び耳鼻科疾患に就き,細谷等(1955),水野(1957)は婦人科領域から報告している。眼科領域に於ては徳田等(1950,1953,1955),杉浦(1957),板橋(1957)等の報告が見られる。

コンドロイチン硫酸の眼科的応用—2,3の角膜疾患について

著者: 高木義博 ,   若山秀二

ページ範囲:P.908 - P.910

緒言
 コンドロイチン硫酸(以下コ硫酸)の臨床的応用として最近多くの報告1)2)3)が見られつゝあるが,眼科方面としてはその使用例4)5)が未だ乏しい様に思われる。私等は最近種々の眼疾患に対してコ硫酸(コンドロン,科研呈供)の局所投与を行い興味ある結果を得ているので,一まずこゝに2,3の角膜疾患について報告し,諸家の御批判を仰ぎたい。

上鞏膜血管系の研究

著者: 呉基良

ページ範囲:P.911 - P.930

第1章 緒言
 血液は元来生体内に於て組織の為に栄養素を運搬し,且つ其の代謝産物を排泄する主役を演ずるが故に一旦組織に病的変化が発生した場合,其の新陳代謝に最も関係深き血液が直ちに異常を来すは勿論の事其れを輸送する唯一の路,即ち血管にも多かれ少かれ影響が波及される事は自明の理である。殊に病的組織及び其の近辺に於ける血管には其の影響が極めて直接的である為,著明な形態学的変化が起り得る事は当然考へられるべきである。換言すれば血管系は其の分布を受けた組織の病的変化と緊密な関連があり,血管系の変化のみを以て当該組織の病変を診断し,又は其の病的状態を推定し得るものがある程である。
 19世紀初頭に彼のAndral (1829)が『生体に於ける局部的病変は総て局部毛細血管の障碍に基づくものである』と発表して以来血管系と組織病変との関係に就ては枚挙に逗なき程多数の研究と見解が重ねられている。但し其等は殆ど炎症時に於ける血管系の役割に就てであり,且つ病理解剖学的若くは病理組織学的研究に属するものであつて生態顕微鏡学的に追及されたのは極く近代,即ち細隙燈顕微鏡がGullstrand (1911)に依り考案されて以来の事であり,其の研究業績も又寥々たるものである。

プレドニンの眼科的使用成績

著者: 池田一三 ,   宮沢稔 ,   阪本善晴 ,   佐々木民男 ,   田辺幸行 ,   田村保 ,   中島健造 ,   盛岡清孝

ページ範囲:P.931 - P.937

緒言
 コーチゾン,ハイドロコーチゾン等副腎皮質ホルモンの臨床的応用は,薬物療法に一新紀元を劃したが,その輝かしい成果にかかわらず,これらのコルチコイドは友面種々の副作用を有しており,全身投与の際特に長期にわたつて使用する場合には,往々その副作用のため投薬継続を断念せねばならぬような事態がおこつてくる。したがつてこれらのホルモンの治病作用の本質たる抗炎症性を増強しながら,極力その副作用を軽減しようとする研究が盛んに行われるようになり,その結果生れたのがプレドニゾンPrednisone,プレドニゾロンPrednisoloneである。
 かねて私共は塩野義製薬より,プレドニゾロン製剤プレドニンPredonineの内服錠の提供を受け,今回新に眼科用軟膏及び注射用懸濁液試用の機会を与えられたので,ここに各種眼疾患にプレドニンを使用した成績をまとめて報告する。

高血圧症に試みた所謂Dionin反応について

著者: 井上八千代 ,   武藤清子 ,   川島久雄

ページ範囲:P.937 - P.940

I.緒言
 血管に負荷試験を行つてその血管の残余能力の多寡を知る事が出来れば,高血圧症患者の血管壁の状態,即ち硬化やスパスムスを知る事が出来て,本疾患の治療の上に大なる利益をもたらすと思う。昭和18年,江原氏はこの事に着目し,諸種の疾患,主として高血圧症に対して2%Dioninを点眼し,10分後における結膜所見を検し,原疾患によつて反応状態が著しく異なると報告している。即ち,結膜嚢全域の出血点を数えて出血点の少いもの第1度から出血点の多いもの第4度迄を分ち,本態性高血圧症には強度陽性を示すものが多く,腎性高血圧症では常に陰性になると発表し,相当はつきりした差が認められたと記している。
 我々も今回これに興味を持ち追試を行つた。我々はかつて.細隙燈で前眼部血管に硬化と思われる所見が屡々見出される事を報告したが,かかる血管がDioninに対してどのように反応するかを検し,且つ,眼底血管の硬化度及び原疾患との比較検討を行つた。その結果,予期した江原氏のような成績とは異なつ結果を得たので報告する。

頭蓋内圧と眼底血圧との関連についての一考察

著者: 山田耕太郎

ページ範囲:P.940 - P.945

緒言
 眼底血圧と髄液圧との関係についての文献は本邦において極めて少ないが,西欧には比較的多く見られ,脳腫瘍・髄膜炎等頭蓋内圧上昇性疾患の場合に眼底血圧が上昇する事を認めている報告が多い。しかしながらかかる疾患においては,正常者高血圧症患者等における眼底血圧と髄液圧との関係とは事情を異にすると考えられるので,これらのものを綜合観察するのでなければ,果して脳腫瘍,髄膜炎等において眼底血圧に変化が生ずるか否か,またもし生ずるならば,それがいかなる意義を持つものであるかについては明瞭でない訳であり,現在未だかかる域に達してはいない。元来脳腫瘍,髄膜炎等における髄液圧と眼底血圧との関係を研究する目的は,髄液圧脳圧の上昇が直接にまたは脳循環への影響を介して間接に眼循環に影響するかどうかを知る事にあると考えられるが,近年髄液圧と脳循環との関係についての研究が発展し,脳腫瘍,髄膜炎等における脳循環の状態は次第に解明されつつある。一方眼底血圧測定の意義についてWeigelin等によつて唱えられている説即ち眼底血圧は眼内局処の血圧を現わすものでなくて,更に深部の眼動脈血圧を現わしており,この眼動脈血圧は頭蓋内の血管抵抗を反映するという考え方が本邦に紹介された。

前房内睫毛異物の1例

著者: 河瀬澄男

ページ範囲:P.946 - P.948

緒言
 前房内睫毛異物は1835年Lercheが始めて報告し,我が国では明治39年大西氏が詳細に記載されその後現在までに20数例の報告を見る。此の内他種異物の介入もなく,而も小さい穿孔創で前房内に単独に睫毛を見た例は10数例に過ぎない。私は僅かな外傷で前房内に3本の睫毛が竄入した患者に遭遇しその睫毛侵入機転を奇と感じ追加報告する。

談話室

ロンドン生活のRésumé

著者: 中島章

ページ範囲:P.949 - P.951

 別便に書きましたようにこれからair letterのある限り,今迄の此所の生活のresumeを書いて見ます。その為にと思つて,必要と思われる資料をわざとpackせずに置いてあるので,書き終え次第parcelにして送り出してしまおうと思つてます。勿論これでは原稿にならないかもしれませんが,適当な形にして臨眼に出して頂ければ幸と存じます。出来る丈先生の御厄介をかけないように試みて見ますが,どうもまたまた御迷惑をおかけするかと思つて本当に恐縮して居ます。
 昨年ロンドンに着いてから昨年2月頃まで約半年間見たり聞いたりした事は臨眼に載せて頂く事が出来ました。その後私の無精と実験が初まつて時間の余祐が無くなつた事に加えて,来てすぐの新鮮な感覚が無くなつてしまつて,自然医局えの便りも遠くなつてしまつて居ましたが,快して種がなかつたわけでなく,また長く居るにつれて最初見て感じたのとは違つた考えを持つようになつて来た事も色々あります。この1年近くの生活をふりかえつて見て,その中から大切な事,書き止めて置きたい事を,前の報告と違つて,私の今の考えを入れながら結論的に書いて見たいと思います。見てそのままを綴る見聞記に比べて鮮度は劣るかもしれませんが,味付けがうまく出来て居れば仲々うまい料理になつて居るかもしれぬ,とこうゆうわけです。

第15回徳島眼科集談会記念講演懐旧談 2題—「徳島県眼科医家の先輩たち」「約50年以前の眼科事情」

著者: 福島義一

ページ範囲:P.953 - P.955

 昭和32年11月24日第15回徳島眼科集談会が盛大に開催された。之れを記念して,当日,われ等の先輩,井上東周,宇山栄一両先生をお迎えして懐旧談をしていたどいた。その内容ほ興味深く且つ有益なるものと思い,演者の許可を得て発表する。尚お,文責は私に左る。演題は,たゞ両先生共に懐旧談となつていたが,仮りに前掲の様な課題を掲げてみた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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