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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科12巻8号

1958年08月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会会誌

真鍋島におけるトラコーマ集団検診及び集団治療成績

著者: 赤木五郎 ,   広川敏博 ,   難波竜也 ,   松尾信彦

ページ範囲:P.61 - P.66

I.緒言
 吾々の教室では,先にトラコーマ(以下Tr.と略す)集団治療モデル地区として岡山県笠岡市神島外浦地区及び白石島を選定し,その成績について報告したが,更に今回は真鍋島についてのTr.集団検診及び集団治療成績を報告する。
 真鍋島は笠岡港の南方約24kmの所にあり,連絡船にて約2時間半を要する瀬戸内海に浮かぶ風光明美な小島である。全島民2500名で農業68.0%,農漁兼業26.8%,商業4.8%,工業0.4%である。島には診療所があり内科医が1名いるのみで眼科疾患は容易には治療され難い状態にあり,自然の状態におけるTr.の生態を観察するのに適していると思い集団治療モデル地区に選定した。

連載 眼科図譜・44

乳児黒内障性家族性痴呆症(ティ・ザックス氏病)の臨床的および組織学的知見

著者: 松浦みわ子 ,   堀内敏男 ,   安生昌夫

ページ範囲:P.1071 - P.1072

解説
 乳児黒内障性家族性痴呆症(テイ・ザツクス氏病)は,痴呆,全身筋肉の麻痺,及び高度の視力障碍を伴ふ,特異な眼底像によつて知られる家族遺伝性疾患の一つである。
 本症例は,之等の症状を完備した11カ月の男児で,(出生:1952年1月16日,初診:1952年12月13日。)3年5カ月の経過後,全身衰弱で死亡した定型的な一例であり死後剖見に附された。両親に血族結婚を証明する。

綜説

白内障手術について

著者: 佐藤勉

ページ範囲:P.1073 - P.1084

 本日の話について,私に判らぬ事柄を数名の方々にアンケートを差上げてうかがつたのでありますが,いずれも大変御親切な御返事を頂きました。改めて厚く御礼申上げます。

臨床実験

乳児黒内障性家族性痴呆症(テイ・ザックス氏病)の臨床的および組織学的知見

著者: 松浦みわ子 ,   堀内敏男 ,   安生昌夫

ページ範囲:P.1085 - P.1091

 乳児黒内障性家族性痴呆症Idiotia amaurot-ica familiaris infantilisは,テイ・ザツクス氏病とよばれ,特異な眼底像によつて知られる家族遺伝性疾患のひとつである。
 本症の定型的な1例について,その臨床経過の観察と共に,剖検の機会にも恵まれたので,これを報告する。

巨口症を伴う先天性外側瞼縁癒着の1例

著者: 木津進吉 ,   小西紀正

ページ範囲:P.1093 - P.1094

I.緒言
 先天性瞼縁癒着は,1841年v.Ammonによつて始めて報告された非常に稀な疾患であるが,私共は最近巨口症を伴つた本症に遭遇したので,追加報告する。

白内障手術に続発したEpithelial Downgrowthの2例

著者: 小川一郎

ページ範囲:P.1095 - P.1100

 上皮の前房内侵入に就いてはCollins and Gro-ss (1892)が始めて記載して以来数多くの報告があるが,Perera (1938)はこれを1)虹彩上皮性真球腫,2)前房外傷性乃至上皮性嚢腫,3)前房上皮形成乃至上皮下降増殖の3型に分類した。最近ではTheobald and Haas (1948),Calhoun,(1949),Pincus (1950),Maumenee (1956,1957),Long and Tyner (1957)等の報告がある。
 この内epithelial downgrowth (上皮下降増殖)は穿孔性外傷或は手術に引きつづき結膜或いは角膜の重層扁平上皮が創口より前房内へ侵入し,角膜後面を内被細胞に換つて被い,更に前房偶角,虹彩,硝子体前面迄下降増殖し,屡々新生上皮による前房偶角の閉塞或いは随伴する虹彩毛様炎により耐え難い続発緑内障を惹起する予後不良の合併症である。

Phacolytic Glaucomaの1例

著者: 小川一郎

ページ範囲:P.1100 - P.1103

 過熟白内障による緑内障に就いてはSzily (1884)の報告以来,モルガニー白内障による緑内障(Knapp1927,Kaufmam1933),過熟白内障の特発的破裂による緑内障(Knapp1937,Sugar1949,Hubbersty and Gourlay,1953,Ballenand Hughes1955),或いは水晶体誘因性緑内障(Irvine1952),水晶体性緑内障(Zeeman1943,Irvine1952)等種々の名称で報告されて来たが,Flocks,Littwin and Zimmerman (1955)は過熟白内障による緑内障のため摘出された138眼を検討して水晶体皮質の液化(phacolysis)が本疾患の基本的病理過程であることを示す簡にして要を得た名称であるとして本症を"phacolyticglaucoma"(水晶体皮質液化性緑内障)と呼ぶことを提唱した。
 私は偶々かかる1例に遭遇し,剖検する機会を得たので簡単に報告する。

時間と云う次元が加わつた視野変状—〔I〕中心性網膜炎の中心視野

著者: 大島勇一

ページ範囲:P.1103 - P.1108

 視野変状を考える場合,我々は狭窄或いは暗点としてその大小,形或いはその濃さ等を視野計上に画こうとするのが普通であるが,その画き始めから終りまでに時の隔りがあつても又あるのが普通であるが,そんな短い時間にはその境界は変らないと考えて,別にその時間的隔りを意にとめていない。これは暗点或いは狭窄は器質的変化の投映とみるからであろうが,私もあくまでそう考えたいがそうは考えられない種類の狭窄や暗点が数多く記されて来た。例えば血管暗点と称えられるものに於いて或いは緑内障に於て眼球に圧迫を加わえるとその暗点或いは盲斑が拡大するとされる。又或る疾患に於いて視野計の照度を明るくすると暗点が拡大するとされる。こんな暗点は一体何と考えられたのであらうか?その負荷となつた圧迫も照度もいくらでも多少することが出来るから暗点もそれに応じて,瞬間的には境界があるとしても,その境界がどんどん変るものとすれば,器質的変化はとてもこんなことではその大きさを変える筈はないから,この様な暗点は最早器質的変化の投映とは見徹し難い。その大小する範囲は負荷に対する機能的な変化と見なければならない,とすれば何もこの様な場合,暗点として境界を画く必要が果してあるであらうか?

眼瞼骨腫(骨芽腫)の1例

著者: 船橋知也 ,   高本佐喜子

ページ範囲:P.1108 - P.1111

 眼瞼皮下に骨腫の出来ることは極めて稀であるとされ,海外にはSbranaとWildiの報告がある1)のみで,我が国では之に相当する疾患は今迄の所報告されていない。私達は先に第163回名古屋眼科集談会の席上,其の一例を報告したが,今回更に一例を得,Kümmell1)が本疾患の組織学的所見,並びに其の発生機転として記載して居る所に誤りがあることを知つたので,此処に訂正し,諸家の御批判を仰ぐものである。

頑固であつた瀰漫性表層角膜炎の2例

著者: 八田淳

ページ範囲:P.1113 - P.1115

I.緒言
 瀰漫性表層角膜炎に就てはその原因,治療等に関しても,幾多の研究報告があるが,私は今回従来の治療法に頑強に抵抗しチヨコラBB+プレホルモン,チヨコラBB+チヨコラAにより,速かに治癒に赴いた瀰漫性表層角膜炎の2例を経験したので之に就て報告し諸賢の御批判を仰ぐ次第である。

春季カタル患者の尿中Total 17-Hydroxycorticoids量に関する研究

著者: 永井誠一 ,   根本祐

ページ範囲:P.1116 - P.1118

緒言
 春季カタルの原因に就いてはアレルゲンの浸襲,特に花粉感作説は最も信を得ていると信ずるものであるが,その基盤をなすものは体質が大いに影響する事は充分想像されるのである,私共はその体質研究の一部として,尿中Total 17-Hyd-roxycorticoids量を測定した。春季カタルの尿中Total 17-Hydroxycorticoids量に就いて未だ測定した報告を見ないのであるが,今回私共は若干の知見を得たので茲に報告する次第である。

老人性白内障の薬物治療

著者: 馬場賢一

ページ範囲:P.1119 - P.1123

緒言
 従来老人性白内障は進行してから手術を行うほかに治療の道が無いとされてきた。もつとも薬物により白内障を治療しようという試みは可成古くから行われ,幾つかの薬物1)が老人によつて使用された事は知られているところである。しかし何れも明確な白内障の発生理論に基づかず,また効果が確実でなかつたので,それらの薬物の中で現在まで試みられているのは僅かに沃度カリのみである。
 近頃漸く薬物治療の研究が進んで来た。その中で,Succus Cinerraria Maritimaについては北大藤山教授2)その他により臨床的に研究されているが,これは作用機転が不明で,外傷性白内障に幾分の効果が認められたに過ぎない。

血圧と関係のある2〜3の眼底所見について—(その6)動静脈交叉現象の臨床的意義(附) Schelburne,Salusの論文について

著者: 加藤謙 ,   松井瑞夫 ,   島崎哲雄

ページ範囲:P.1125 - P.1128

緒言
 第5報1)2)までに於いて,われわれは約800名に及ぶ高血圧者と非高血圧者の眼底観察の成績を記し,特にその細動脈硬化所見に言及してきた。この際われわれが採用してきた判定規準乃至処理の方向は,次の如くであつた。
 (1)網膜細動脈硬化所見の中で動静脈交叉現象を特に重視した。

眼科領域に於けるβ線療法について(その1)—2〜3の角膜疾患について

著者: 植村恭夫 ,   脇泰三郞 ,   宮下忠男 ,   林正雄 ,   松井瑞夫 ,   島崎哲雄

ページ範囲:P.1129 - P.1136

緒言
 近年,放射性同位元素の治療医学上に於ける応用の進展に伴ない,眼科領域に於いても種々のApplicatorが考案され,放射線による障害の危険が非常に減少したので,次第に普及される傾向にある。本邦に於いても既に荻野,斉藤,井上,中泉,鈴木氏等によつて翼状片,春季カタル,蚕蝕性角膜潰瘍等の前眼部疾患に対するβ線療法の治療成績が報告されている。著者等もLedermanの考案になる眼科用Sr90 Applicatorを入手したので,これを使用して種々の前眼部疾患の治療を試みているが,今回は此の中で最近問題となつている2,3の角膜疾患の治療成績に就いて報告する。

角膜コンタクトレンズの研究—(その2)白子眼に対するスフエリコンレンズの装用経験

著者: 紺山和一

ページ範囲:P.1136 - P.1140

緒言
 白子眼に虹彩を描いたコンタクトレンズを用いるとよいと云う意見が内外の成書(1)に述べられている。その目的とするところは屈折異常の矯正と羞明感を軽減せしめるためである。しかし従来の角鞏膜型ならびに角膜コンタクトレンズでは一般に装用時間が短いために実用的にはあまり成功したという報告が見られないようである。著者は先般スフエリコンレンズの眼球振盪眼への装用に成功(2)したが,今度更に着色スフエリコンレンズを眼球振盪症を併せ有する白子眼に応用して良い結果を得たのでここに発表する。

手術

緑内障手術の遠隔成績

著者: 浅水逸郞 ,   小林守治

ページ範囲:P.1141 - P.1149

I.緒言
 緑内障の治療問題に関して,近年各種縮瞳剤,ダイアモツクスの如き優れた房水産出抑制剤,その他の薬剤の出現を見たが,手術的療法の価値は依然減少しておらず,多くは之に頼らざるを得ない現状にあるようである。
 緑内障の手術々式は多種多様であるが,何れにせよ手術の可否は,術後長期の経過に基いて検討される必要があり,文献上これについてはなお異論が多い。

臨床講義

大脳寄生虫症3例とその眼症状

著者: 井街譲

ページ範囲:P.1151 - P.1157

 脳寄生虫症は,非常に珍らしい疾患であるが,脳腫瘍や,癲癇や,精神病と間違えられ時に,診断が甚だ困難である。然し乍ら次の3例は,非常に判然とした。X線写真による石灰像を示し,血液像や,人種,職業,生活環境等によつても,推定出来る例であり,又視野,瞳孔反応,乳頭所見が病巣の位置との関係から見て面白いので供覧します。

談話室

ロンドン生活のRésumé (その3)

著者: 中島章

ページ範囲:P.1159 - P.1161

 1月26日あと2時間位でイギリスを離れて1月位は旅鳥と云うわけです。1年半にもなると何だか帰る先の日本が他国の様な気がするのも妙なものです。イギリスでの生活がわりとcomfortableだつた故でもありましようが,何となく去り難い気持にとらわれている所です。さて前の続きを書きましよう。
 2日目は主として測色学或いは照明の問題で,Judd,McAdam,Wrightなどと云う名の売れた連中が次々に話していましたが,総じて私が感じた事は,いくら数式をこねまわして実用に便利な様に考えても結局の所は基礎は生理的な事実なので,そこが未だ固つていないのでは彼等もやりにくかろうと云う事でした。そう云つた所にも此のSymposiumの意義があるわけです。例えばMcAdamが提出しているBeat Oscilation Hypo-thesis (私にも内容はよくわかりませんが)などはHar-tline等と云う生理の大御所に色々と話を聞いて,その揚句にひねり出したものの様な話で,大体大勢はColoradaptationの状態での色と云うものまで記述出来る,今迄の体系より一般化された体系をつくる,と云う事に努力が向けられている様に感じました。

ボストン便り(2)

著者: 生井浩

ページ範囲:P.1161 - P.1163

 私は1月4日羽田に帰つて来た。今更ボストン便りでもないが,1回だけで終つて了うのは具合が悪いし,滞米中に書いて其のままにしているものもかなりあるので,其等に加筆して引続き載せて貰う事にした。旅行記や学会見聞記を書くのもよいであろうが,我国の眼科学のためにはもつと他に書くべき事があるように思われるので私は其等を見合わせる事にしたい。
 私はは本号に於いてアメリカ限科学の優れたLabora-tory Systemを書くつもりであつたが,前回に引続きもう少しEye Pathologyの事を書く事にする。私が帰国してからHowe Laboratoryの桑原登一郞博士から来た手紙によると,私が昨年本誌(11巻11号)に書いたOphthalmic Pathology Clubの記事が其の会の創設者の1人であるBenjamin Rones博士の目にとまり,同誌がHowe Laboratory宛に送られて来た由である。Rones博士の考えがどうであつたか私は知らないが,自分等が始めたOphthalmic Pathology Clubの価値を日本人の1医師が認めて同じ組織を日本にも作りたいと云つているのを喜んだのかも知れない。何れにしても私は同じ様な会を我国にも是非実現させたいと望んでいる。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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