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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科12巻9号

1958年09月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・45

視束乳頭及び網膜の転移性癌腫の1例

著者: 高久功

ページ範囲:P.1169 - P.1170

解説
 脈絡膜の転移癌は時折報告されているが,乳頭及び網膜の転移癌は極めて稀で,未だ2〜3の報告例があるにすぎない。本例は極めて特徴ある臨床像を示し,又興味ある臨床経過をたどつているので,眼底図及び標本を図示する。
 患者:62歳,主婦

綜説

眼圧測定とTonography

著者: 河本正一

ページ範囲:P.1171 - P.1188

 此の数年来,私共の長年使い慣れたSchiötz氏の眼圧換算表と異る,二三の眼圧換算表を文献上に見かけるようになつた。これは眼球壁の硬さRi-gidityの検査及びTonographyの為に,眼圧の正しい絶対値が要求せられるようになつたからである。Rigidity及び,Tonographyを解明するには,眼圧測定の原理に就いて述べなければならない。Schiötz氏眼圧計による眼圧測定は,眼圧計を角膜上にのせた時に生ずる角膜の陥凹の大いさから,眼圧計をのせる前の眼圧を推定する方法である。此の角膜の陥凹は,測定によつて知りたいと思う眼内圧ばかりでなく,Rigidityが関係しているのである。
 本論文には,眼圧測定時の注意,眼圧に影響する諸因子,眼圧測定法,眼圧測定の原理,Tono-graphyに就いて述べる。

臨床実験

視神経乳頭及び網膜の転移主性癌腫の1例

著者: 高久功

ページ範囲:P.1189 - P.1192

I.緒言
 転移性の癌腫が眼球を侵すことは比較的稀であるが,特に視束乳頭及び網膜を襲う事は極めて稀と考えられている。著者は本症の例を経験し,一部報告したが,患者はその後3年以上を経た今日尚健在であることを知つたので,極めて興味あることと信じ発表する。

副腎皮質ホルモンによつて経過を遅延せしめたと思われる急性瀰漫性葡萄膜炎の1例

著者: 小井手寿美 ,   山中輝子

ページ範囲:P.1195 - P.1198

 最近,卓越せる効果を発揮し,現代治療医学に一大改革をもたらした副腎皮質ホルモン剤が出現,眼科領域に於いても,広く応用されて,その成果は,内外に於いて続々と報告されている。副腎皮質ホルモンは,強い抗炎,抗アレルギー作用を有し,劇的な効果をあげ得るが,病原そのものに対する作用がなく,投与中止によつて,再発をみることがあることは,今迄にも警告されていた。私共は最近投与中止による再発をくり返し,副腎皮質ホルモンによつて,経過を遅延せしめたと思われる症例を経験したのでそれを報告し,大方の批判を仰ぎたいと思う。

中心性網膜炎と末梢血液中の白血球数について

著者: 大村博 ,   桑崎修

ページ範囲:P.1199 - P.1202

緒言
 中心性網膜炎の原因に就いては種々挙げられているが,結核性疾患としての考へが多い。果して確実に結核性なりやを再検討するために先に私は血漿蛋白の電気泳動像について報告した23)。今回その末梢血液像より考察して見たいと思う。

各種眼疾患の前房隅角の研究(第1報)—角膜,虹彩疾患の前房隅角所見

著者: 藤永豊

ページ範囲:P.1203 - P.1206

 前房隅角視診法は緑内障の診断のみならず,種々の疾患に用いられる事はTroncosoが1948年以来述べている所である。更らに生体顕微鏡では観察出来ない状態が,偶然隅角検査を行う事に依つて発見される場合などもあり,その使用範囲は極めて広い。今回は数例の角膜,虹彩疾患に就て報告する。

眼窩黒色肉腫の1例

著者: 渡部通英

ページ範囲:P.1206 - P.1208

 従来,黒色腫で悪性を示すものは,母斑の黒色腫悪化,又は肉腫性,癌化性黒色腫に区別されるが,始めから眼窩内で悪化した黒色腫の報告例は比較的少ない。本例は組織学的に紡錐細胞肉腫であつて,約4カ月で急速に進展悪化した稀例である。

前眼部血管の形態的病変に関する研究—第2報 糖尿病患者について

著者: 天羽栄作

ページ範囲:P.1208 - P.1218

緒言
 糖尿病の合併症は感染症と血管障碍に2大別されるが,その中感染症は抗生剤の出現により近年減少しているという1)。糖尿病患者の寿命が延長するにつれ,中年以後に多い血管障碍の意義とその研究はますます重要性を加えて来ている。血管障碍を実際に観察し得るという点において,眼底血管検査は血管障碍を伴う諸種の疾患の診断と予後判定に,もはや不可欠のものとなつているが糖尿病においても全く同様である。然し血管障碍が全身循環系にわたつて発生するものである以上,眼底血管ばかりでなく眼球結膜血管にも何らかの変化が発見出来るのではあるまいかということが予想されるのは決して不思議ではない。それ故に多くの研究者達は詳細に眼球結膜血管の形態的変化を観察し糖尿病に特有な変化として毛細血管瘤が眼底血管のみならず,眼球結膜血管にも発生することを発表して来た。然しそのような球結膜毛細血管瘤の発生は糖尿病以外にも見出される所から意義はないとする者と,或は意義を見出さんとする者と相半ばしているが,このような意見の相違を来した理由は眼球結膜が絶えず外界に暴露しているために,外傷や炎症をこうむり易くその影響によつて生じた血管の局所変化を考慮に入れなかつたためではないかと思われる。

Sr90β線照射による眼障害に対する副腎皮質ホルモンの効果について

著者: 植村恭夫

ページ範囲:P.1219 - P.1222

緒言
 家兎眼にMID以上の大量のβ線照射を行つた場合に,前眼部殊に角膜・虹彩・結膜に照射線量に応じて種々の程度の障害の発生することに就ては,既に眼臨52巻,6号誌上に於て発表した。眼科領域に於ても今後β線療法が普及するに伴なつて,障害の発生する危険も増大してくるものと考えられる。現在は未だかゝる障害面に関する関心は甚だ薄く,障害の予防及び治療に就ての報告は殆んど行われていない。そこで今回は,Sr90β線照射による前眼部障害に対する副腎皮質ホルモンの効果に就て検討を試みることとした。

角膜真菌症の1例

著者: 高木義博 ,   西村昭 ,   岡本聰子

ページ範囲:P.1223 - P.1227

 真菌による角膜疾患は1879年Leber氏によつて始めて報告されて以来,その症例は散発的に報告されて来たが,最近抗生物質治療中或は治療後の真菌類による感染は一般医学の注目をひき,眼科領域に於てはコーチゾンの使用が真菌症の発生をたすけると云われている1)2)。最近私共は角膜真菌症の1症例を観察し,病理組織学的標本を得たのでこゝに報告する次第である。

外傷による結膜下虹彩全脱出を伴つた結膜下水晶体脱臼の1例(附本邦文献総括)

著者: 長屋幸郎

ページ範囲:P.1229 - P.1234


 外傷による水晶体結膜下脱臼はDuke-Elder氏のいう如くnot uncommonlyのものであろうが,その報告数からみても比較的少いものであり,特に結膜下に虹彩全脱出を伴つたものや,結膜下に脱出した水晶体の位置が角膜の鼻側下方であるものは稀な症例に属する。私は最近,表題の様な一例を経験したので茲に報告し,併せて昭和31年末迄の本邦文献を総括した。

臨床講義

眼窩腫瘍

著者: 桐沢長徳 ,   松浦みわ子 ,   佐藤和夫

ページ範囲:P.1235 - P.1238

 まず最初に患者を供覧します。
 〔第1例〕30歳,男子

眼科新知識

涙液量の測定法について

著者: 水川孝 ,   高木義博

ページ範囲:P.1239 - P.1245

 涙液分泌量の測定は日常臨床において重要な筈であるのに案外等閑視されている様である。その理由は涙腺機能に関する研究が汗腺,唾液腺のそれに比し遅れがちであつたのと量が少ないため正確と思われる様な普遍的な方法がないのにもよると思う。然し涙液分泌障碍に起因する疾患即ち流涙症は勿論のこと殊に近時激増しつゝある涙液減少症の診断には不可欠と思う。私等も長い間機能に関する研究を行つているが,先ず最初は涙液測定より出発し,その改良に努めている。そこで本日は現在私等が常用している方法を述べ,各種測定と比較すると共に涙液分泌異常(殊に減少症)による一,二疾患に気付いたので説明する。

談話室

眼科史料(2)—高野長英著「眼目究理篇」について/眼科史料(3)—合信著「全体新論」の眼科事項について

著者: 福島義一

ページ範囲:P.1247 - P.1251

1.はしがき
 高野長英については,洋医学者ないし蘭学者としてよりも,むしろ,日本近代文明を拓いた時代の先覚者として有名である。
 医史学の立場から彼が大成を期したところを観ると,それは杉田玄白によつて拓かれ「解体新書」を以て代表とする解剖学と青地林宗によつて拓かれ「気海観瀾」を以つて代表とする物理学との有機的連係を計つたもので,現代の生理学よりも,むしろ,より大きな構想の下に立つ一種の生機学といつた様なものであつたらしい。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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