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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科13巻10号

1959年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・57

細隙燈検査法(その2)

著者: 大橋孝平

ページ範囲:P.1295 - P.1296

図譜説明
(本文1297頁参照)
 第1図 皿状白内障 Cataracta cupuliformisの細隙灯所見(60歳男)
 左側は広光束,右側は狭光束による所見。皿状白内障,楔状白内障及び核白内障は老人性初発白内障の三大特徴である。皿状白内障は老人特有の黄褐色後嚢の内面に円盤状黄金色様反射面を呈する混濁として起る。生理的にもこの部に見られる篩状所見が一層著明となつて蜂窠状を示し,後嚢の鏡面法で明瞭となり,狭細隙では頂点が後極部で最も高い山脈状を呈している。更に進行すれば一様に皿状の肥厚様混濁に発展して行く。

綜説

細隙灯検査法(その2)

著者: 大橋孝平

ページ範囲:P.1297 - P.1304

Ⅴ.角膜の検査
 前回述べた様に,広光東法では表面の変化がよく判り,狭光東法では光断面Optic Sectionがよく判るので深さ,厚みの変化が判定し易く,特に角膜と水晶体の検査では,これを常に使い分ける必要がある。しかも,いつでも直接に照明した細隙光の当つた辺縁を見るのが大切で,間接法で周囲の状況を判定するのは特に角膜や水晶体の様な広い平滑面の検査には重要であり,前述の様に,小隆起物の全景等は絶えず振動法で観察して行く。
 正常角膜を狭光束の光断面検査を行つて見ると,光断面の中には前面に二重,後面に一重の反射線が見える。特に最前方の反射面は白色に強いが上皮層上の液体面反射であつて,厳密には上皮細胞の表面に密着している涙液や脂性分泌物,塵等よりなる液体層よりの反射と考えられる。前面ではその後方にもう一つの反射線があつて,ボーマン膜と上皮層の間のリンパ液よりの反射と考えられ,ボーマン膜表面の反射とも云えるので,上皮層内はむしろ暗くなつていて,この上皮層(重層扁平上皮)の前面と後面が光つているわけで,この二重反射線はほぼ上皮層の厚みを物語ると考えてよいと思う。後面の反射線は梢弱いが,これは一重でデスメ膜と実質層との間の液体層よりの反射で,更に内皮細胞と前房水との境面からも反射が出ているがボーマン膜が薄いのであまり反射面は明かに区別し難い。

臨床実験

涙道機能検査と機能不全症

著者: 栗林保人 ,   松田才忠

ページ範囲:P.1307 - P.1310

 涙道機能検査は臨床上重要であるのに,フルオレスチンの結膜嚢内消失時間を測定する方法しかない。しかもこの方法は時間がかかること,涙道の器質的疾患も含まれるので臨床上最良の方法とは言えない。又涙道機能は瞬目運動と関係が深いのに今までの検査ではこれを等閑にしている。これらのこと,及び鼻涙管口検査,ビニール管による涙嚢機能検査の経験から臨床上に適していると思われる涙道機能検査法を考案したので報告し,併せて涙道機能不全症数例を経験したので報告する。

内分泌性眼球突出症について

著者: 植村恭夫 ,   野崎道雄

ページ範囲:P.1313 - P.1319

緒言
 吾々は,日常眼球突出の患者に遭遇した場合に,屡々鑑別診断に困難を感ずるのである。
 Benedictは,眼窩疾患を臨床的に,(1)先天性,(2)血管性,(3)腫瘍性,(4)炎症性,(5)内分泌性の5群に分ち,Hendersonは,眼球突出を便宜上(1)炎症性,(2)血管異常性,(3)新陳代謝性,(4)腫瘍性の4群に分けた。此等のなかで,先天性のものは別として,他の4つのものは,殊に其の初期に於ては鑑別に苦しむことが多い。又,内分泌性のものは,これに伴う症状が少いか,之をかく場合には,屡々炎症性,腫瘍性のものと誤まられる。著者の1人植村はさきに臨眼誌上に於て,"thyrotropic exophthalmos"の3症例に関するOrbitonometryの結果を報告したが,今回著者等は,内分泌性眼球突出症の初期の2例に遭遇し,其の経過を観察する機会を得たので,此等の症例を報告すると共に,其の診断,治療に関し些か知見を述べてみたいと思う。

家族性膠様滴状角膜変性について

著者: 藤江容

ページ範囲:P.1321 - P.1326

I.緒言
 家族性角膜変性の多くはGraenouw (1890)のいう結節状角膜変性,Haab (1899)のいう格子状角膜変性,及びEehr (1904)のいう斑状角膜変性に属するものであるが,此等と異つた1種の家族性角膜変性がある。即ち大正3年中泉氏1)が「稀有な角膜変性に就て」と題して報告したもので,角膜表面に半球状の膠様小隆起を生ずるのを特徴とし,昭和7年清沢氏8)は之を「膠様滴状角膜変性」と命名し,現在迄に我が国に於て27家系41例の報告1-21)がある。しかし本症の成因,本態に至つては未だ殆んど不明である。著者は本症と思われる2家系3例を経験したので,その臨床所見並びに角膜移植術施行の際に採取した角膜全層の病理組織所見を報告し,現在迄の報告例と比較検討して少しでも本症の本態の究明に資したいと思う。

眼精疲労の臨床的観察—第3報 総括及び病型に関する1提案

著者: 保坂明郎 ,   高垣益子

ページ範囲:P.1327 - P.1329

I.総括及び考按
 石原氏は腺精疲労を定義して「眼を使う仕事を続けてすれば,じきに疲れて前額部の圧迫感,頭痛,視力減退等を起す状態」と述べ,桐沢氏,中村氏等も同様に定義している。畑氏,大草氏もほぼ同様であるが,畑氏は「…を起すに至る一種の神経機能障碍を総称する」とし,大草氏は「…を伴う一連の症候群」と記載している。梶浦氏は,「視機能を明快にしようと意識した努力をする時に起る全身,殊に眼の症候群」としている。これらは表現の相違があるにしても眼精疲労を症候群とする点では一致しているが,石原氏等の記載は簡明に過ぎて誤解される恐れがある。
 患者が眼の疲れを訴える場合,単に眼局所の不快感,疲労感をさす場合と,能率の低下や全身の疲労感,精神の不安定感等を背景に持ち,多くは頭痛を伴う視疲労をさす場合とがある。この両者は区別出来ない場合もあり得るが,明かに別箇の状態で,前者は疾患の症状の1つであるが,後者は1つの症候群であつて,私共はこれを眼精疲労と解釈する。私共の対象としたのはこの種の患者である。

新作電気眼圧計

著者: 山森昭 ,   林全邦

ページ範囲:P.1331 - P.1334

1.緒論
 impression tonometerの接眼部は足板と杆よりなる。従来の形式では,杆に錘を乗せて,杆と錘の重量で,杆が角膜を圧迫する場合に,杆の下端が足板よりどれだけ下降するかを,目盛で読み又は記録した。しかし予め杆の下端が足板より下へ出る部分の長さを定めて,足板と杆を互に動かないように固定する。こうしてから被検眼に此眼圧計を乗せる場合の杆にかかる力を測定しても眼内圧を知る事が出来る。本論文に述べる眼圧計は此原理を応用したものである。電気tonometerとしては,既にThiel氏1)(1928) Müller氏(1949),高木氏等(1950)2),植村氏等(1952)4),大塚氏等(1953)6)のもの等があるが,著者等のtono-meterも電気的記録装置を備えて居り,堅牢で故障が少なく,眼内圧の可測範囲は500mmHg以上に及ぶ。

眼疾患に対する2,3新抗生物質の治療効果—第3報 テトラサイクリソ枸櫞酸ソーダ混合剤

著者: 松浦みわ子 ,   田沢英子 ,   涌沢章郎

ページ範囲:P.1335 - P.1341

緒言
 今日,各種の抗生物質及び化学剤の進歩により眼科領域でも一般感染症の治療乃至予防は著しく容易となつて来ている。各種の抗生剤中テトラサイクリン(TC)系物質(オーレオマイシン,テラマイシン,アクロマイシン)は広域スペクトル抗生物質としてビールス,リツケツチア性疾患及びスピロヘータ,原虫にも有効と云われ注目されているが,中でも殊にテトラサイクリンは副作用が少く安定性,溶解性の点からみても,すぐれているとして各科領域で広く使用されている。但し経口投与後の血中濃度が比較的低い事及び吸収に個人差が著しい事が大きな欠点とされていた。此の理由はTCが腸管内でAl,Mg,鉄,Cal等の金属イオンと結合して不溶性の金属塩を作り便中に排泄されるためと分り,之等の金属イオンとの結合によるTCの不活性化を阻止し,TCの腸管よりの吸収を出来るだけ良くするために,TCに緩衝剤としてヘキサ・メタ燐酸ソーダを配合したアクロマイシンV (以下AC-Vと略す)が作られた。AC-Vについての実験成績も既に相当数報告されているが,現在の所従来のTCに比して抗菌力に顕著な差は認められないが,消化管よりの吸収が極めて早く且つ良好で従つて血中濃度も高く,特にその血中蓄積が長く,明らかにTCに勝ることが証明されている。
 更に最近緩衝剤としてヘキサ・メタ燐酸ソーダの代りに枸櫞酸ソーダを添加したAC-Vがレダリー会社から作られた。

動静脈交叉現象と屈折状態との関係について—血圧と関係ある2〜3の眼底所見について,その11

著者: 加藤謙 ,   松井瑞夫 ,   島崎哲雄 ,   野崎道雄

ページ範囲:P.1343 - P.1347

 吾々は第9報に於て,老年者の交叉現象の頻度が,70歳台に於て,60歳台に比して却つて低下する現象を指摘し,このような現象の成因を,人間ドツクの如き健康診断に伴なう特殊な要因と,血管の老年性変化の如き一般的要因との2つの面から考察した。
 今回は被検者の屈折状態と動静脈交叉現象との関係に就て記したいと思う。

流行性角結膜炎に於ける角膜点状溷濁の運命について

著者: 杉浦清治 ,   涌井嘉一 ,   横山烋子 ,   江口甲一郎 ,   近藤有文 ,   小池和夫 ,   小関茂之 ,   多田桂一 ,   太田道一

ページ範囲:P.1347 - P.1350

 流行性角結膜炎(以下EKCと略す)に於ける角膜点状溷濁の予後は臨床上重要な問題であるが,長期間の観察例を得ることが難しく系統的にこれを扱つた報告は必らずしも多くはない。角膜点状溷濁の予後は,流行による起炎virusの毒力,患者の内的環境医療人種等によつて差が出てくるものと思われる。ここには1953より1958の間に東大分院眼科に於いて診療し角膜点状溷濁を発生したEKCのうち自然に近い経過を観察し得た141例202眼の成績について述べる。

プレドニンとメドロールの抗炎症作用の比較

著者: 高尾泰孝 ,   丸山伊勢雄 ,   新妻幸男 ,   関口邦夫

ページ範囲:P.1351 - P.1355

I.緒言
 1949年Hench及びKendall等により,リウマチ性疾患に対するコーチゾンの驚異的な効果が発表せられて以来,眼科領域に於いても各種疾患に対するその応用は目ざましいものがある。然も近年,副腎皮質ホルモンの改良研究は日進月歩,次々と新ステロイドの合成が行われ,Hydroco-rtisone (以下H.)次いでPrednisone,Pre-dnisolone (以下P.)が現在旺んに使用せられるまでに到つた。
 Prednisoloneは1954年Herzog等により合成せられ,糖質効果,抗炎症作用はH.の約4倍に増強されており,而もその塩類作用は却つて少いことが判明している。

Guaiazuleneの眼科領域に於ける応用—動物実験篇

著者: 岸本達也 ,   鈴木慶子

ページ範囲:P.1355 - P.1362

緒言
 欧州を原産とし,各地で栽培されるカミツレ(Matricaria chamomillal)は古来消炎作用を有する薬草として,煎剤及び薬湯として,広く奨用されて来た。最近これより分離された。Guaia-zuleneが抗アレルギー及び上皮再生,肉芽形成促進剤として,皮膚科領域に於いて大いに使用される様になつた。
 現在角膜疾患に関しては,消炎作用を目的として,Cortisone,Prednisolon等のSteroid-hormoneが広く応用され,治療面に非常な進歩をみたのであるが,角膜上皮剥脱や角膜潰瘍等の物質欠損を有する疾患の場合,単に抗生物質その他の薬剤により,創傷感染を防ぐに過ぎず,黄軟膏Dionin VitaminA及びB2 Chlorophyll軟膏等の血管拡張及び新陳代謝促進機転を介して,治癒促進を計つているに過ぎない。

手術

欧米眼科の現行手術(2)

著者: 大塚任

ページ範囲:P.1365 - P.1374

3.網膜剥離
 網膜剥離手術は白内障,緑内障に次いで最も屡々見る手術である。Arrugaは眼底スケツチを見ながら無雑作にデイアテルミーで鞏膜を焼いて眼底を見るが,すぐに裂孔に当るらしく20分位で手術を終つてしまうので驚かされるが,大多数の人は1〜2〜3時間かけて鞏膜切除も同時に行うことが多い。裂孔の位置にはStrampelli氏鞏膜燈(Shapland),Goldmann氏燈(Hagedoorn)などで裂孔部の鞏膜を照し,瞳孔より眼底を覗いて位置を決める人もあつた。WeveやBiettiは反対に眼内にレンズで光を投じ,鞏膜部より裂孔を探した。Weveの所は網膜剥離の本家だけに年に網膜剥離363の手術があるとのことで諸外国で手こずつたのが,ここに集まつて来るという。Weveは220 Volt 500Wのスリ硝子電球を20Dの凸レンズで集光して倒像で眼底を見る。(この装置はPaufiqueも用いていた)手術中生理的食塩水を点服し,角膜の混濁を防ぐことは同じであるが,Stallardは,純グリセリンを点眼していた。Weveの手術室はタイル迄黒一色で手術衣その他の覆いも黒い,口の前に薄い沙の様な布を下げてマスクの代りにしているのが面白かつた。(入院200人,外来は新患50人,旧患60人といつた)日本人では鞏膜燈は眼膜の色素が多いため価値が少いと思う。

附録

眼科新点数表

著者: 小暮行雄

ページ範囲:P.1375 - P.1385

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眼科ニユース/人事消息

ページ範囲:P.1387 - P.1387

○9月27日 日曜日 日本眼科医学会総会が東京お茶の水順天堂大学講堂で開催せられ全国各府県より代表者出席健保其他各種の問題につき熱心に質問討論せられた。又庶務会計報告の後植村操慶応大学眼科教授が,今秋行われる日本学術会議委員選挙候補者(全国区臨床)として満場一致推薦決議された。
○東京医科歯科大学では近視研究所の設立を文部省に申請中のところ,その一部としてコンタクトレンズ研究施設費が交付された。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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