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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科13巻11号

1959年11月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会々誌

最近5カ年に於ける青森市学童トラコーマの推移と生活環境的考察

著者: 三上正治 ,   伊藤信雄 ,   高橋堅止 ,   大金林太郎

ページ範囲:P.49 - P.72

I.緒言
 学童トラコーマ(以下トと略す)対策として,検診,治療,予防等すでに彩しい諸家の報告がある。私共も当市立診療所眼科に勤務し,昭和28年4月より市立小,中,高校児童,生徒のト検診を担当して満5カ年を経過したので,その罹患率と生活環境調査を行い,これを総括発表し,今後の学校保健のト問題解決に何らかの寄与と対策強化に参考となるところがあれば幸いに思う。

連載 眼科図譜・58

野寄手持眼底カメラによる中心固視の記録

著者: 馬場賢一

ページ範囲:P.1393 - P.1394

解説
 近頃は我国でも弱視治療が盛んに成つて来たが,その際中心固視の有無は常に最大の問題になる。これはいろいろな方法が診断されるが,記録法には従来あまりよい手段が無かつた。ところが野寄の眼底カメラの視野の中心に黒いスポツトをつけ,この点を患者に固視させながら写真を撮ると中心固視の有無,あるいは仮性黄斑の位置が簡単に記録出来る。ここに掲載した図は野寄達司講師がシカゴで米人の眼底を撮影したもので,いずれも中心固視をしていない。中心固視がある場合には黒点は中心窩と全く一致する。大きい眼底カメラではかような試を行つた人が以前に無かつたわけではないが,それはまことに不便である。野寄の手持カメラは弱視の子供でも,これをあやしながら簡単に撮影する事が出来るのでまことに良い。弱視治療の途中定期的にかような撮影を行つて中心固視発達の経過を記録するのは極めて有意義である。第1図は黒人,第2図は白人の眼底である。

綜説

前房隅角の解剖と病理

著者: 塚原勇 ,  

ページ範囲:P.1395 - P.1407

 近年のTonography,Perfusionによる単性緑内障(原発性広隅角緑内障)の原因に関する研究によれば,単性緑内障に於ける眼球摘出前のTonographyの成績は,房水排出抵抗の増加を示し,之はその眼球摘出後のPerfusionの成績も又,同様な結果を示す事により1)2)3),その原因の性質はOrganicなものであり,その存在推定位置として先ず前房隅角部のTrabecular Mesh-workが注目された。従つてTrabecula Mesh-workの解剖及び病理に関する研究は,欧米の緑内障問題に於ける近年の課題の1つとなつたようである。一方,我が国に於けるこの方面の研究は決して活発ではない。本稿に於ては,1) TrabecularMeshworkに関する最近の文献を紹介し,2)既に印刷公表ずみのものも含めて著者等のTra-becular Meshworkの写真,殊にtangentialsectionによる顕微鏡写真を示し,3)更にTra-becular Meshworkの電子顕微鏡写真を示しつつ,Trabecular Meshworkの解剖及び病理に関して綜説する意向である。

第9回綜合医学賞入選論文

角膜の透明及び溷濁の機構

著者: 吉川義三

ページ範囲:P.1409 - P.1421

 角膜の廻折スペクトル及び散乱光の角度分布を測定し,角膜の透明及び溷濁の機構をfiber及びfibrilによって構成される角膜実質の二重格子構造によつて説明した。
 (1)透明角膜の表面に垂直に入射する光はfi-berの格子構造に対応して廻折せられ,スペクトルが現れる。その格子常数は13.1μである。
 (2)透明角膜に入射する光の大部分はそのまま透過して行くが,一部分は前方に散乱される。側方及び後方には測定にかかる程の光は散乱されない。角膜が透明であるのはfibrilが格子状に配列しているため,干渉によつて散乱が打消されることによるものである。僅かに存在する前方散乱はfibril格子が熱騒乱によつて乱れるためであつて,其の外にfiber格子によるFraunhofer級の廻折も之に関与している。
 (3)角膜溷濁時のfiber格子の変化は,偏光顕微鏡所見及び廻折スペクトルの上に反映される。fiber格子の変化は潤濁を起す原因によつて著しく異なつているが,fiber格子の変化は角膜溷濁の本態ではない。
 (4)溷濁角膜の散乱は主として前方に行われるが,後方側方にも散乱される。これはfibril格子の乱れによるものであつて,fibril格子の乱れこそ角膜溷濁の本態である。尚散乱光の角度分布曲線は溷濁の原因に特有であつて,fibril格子の乱れの様式が原因によつて異つている事を示している。

緑内障手術の効果判定法について

著者: 神鳥文雄 ,   藤永豊 ,   黒瀨芳俊

ページ範囲:P.1421 - P.1432

緒言
 緑内障に対しvon Graefeが1856年に虹彩切除を行つて,著効のあつたことが判明して以来,それぞれの緑内障に対して種々な手術治療が案出され実施されている。然しながら手術が完全な効果があつたか否かに関する検査方法が殆んど欠除していて,僅に視力視野の経過と眼圧の推移より判断する外なかつた。それがために緑内障に対する手術治療は甚だ悲観的であつて,術後多くのものが病の増悪,視機能の低下を招来することを嘆じている。緑内障の診断には1925年Troncosoによつて隅角鏡が発見され臨床的の応用が拡大された。又1950年GrantによつてTonographyが,1952年Duke Elderによつて負荷試験が緑内障診断に導入されて以来,初期緑内障及び低眼圧緑内障に対する診断が甚だ容易になつて来た。故にこの方法を用いて診断のみでなく,緑内障手術の効の有無を判定し,再手術の要不要を決定し,術後の予後の予測する上に利用せんことを試み実施した。その結果は甚だ有効適正であつたので,その結果を報告し其の利用性について論及しよう。之を次の2篇に分ちて述べる。

臨床実験

アイソトープによる眼循環の研究(その2)

著者: 植村恭夫 ,   橋本省三

ページ範囲:P.1435 - P.1438

緒言
 著者等は前報に於て述べた如く,アイソトープによる眼循環血液量の測定及び,眼圧力脈波(角膜脈波)の描写という2つの研究方法により網膜,脈絡膜循環に関する研究を行うことを企図し,前報に於てはアイソトープによる眼循環測定方法に就て詳述し,実験結果の一部を報告した。著者の1人植村は,従来より各種麻酔剤の網膜中心動脈血圧及び角膜脈波に及ぼす影響に就て研究し,其の成績を日眼誌上に於て発表した。著者等は前報に於て,強化麻酔の主剤であるクロルプロマジン,又,静脈麻酔剤として今日広く使用されているラボナールの眼循環に於ぼす影響に就て検討したので,今回は,エーテル吸入麻酔の際の影響に就て実験を行い,此等の実験結果より麻酔下の眼循環に関する問題に就て些か論じてみたい。

アルカリ性糞便菌による角膜輪状膿瘍

著者: 大野八千代

ページ範囲:P.1438 - P.1440

 外傷による眼障害は非常に多い様である。
 茲に述べる例は,単純な鉄片外傷によるものであるが,同時に眼内に侵入した,比較的稀とされるアルカリ性糞便菌の同時感染によつて,典型的な輪状膿瘍の像を呈し,遂に眼球内容除去の止むなきに至つた1例を経験したので報告する。

円錐角膜の分類

著者: 紺山和一

ページ範囲:P.1441 - P.1445

緒言
 円錐角膜は角膜中心部が円錐状を呈して突出して来て,強い近視と高度の角膜不正乱視を起す比較的珍しい疾患として知られて居る。円錐角膜に対する治療法としては,本邦において佐藤勉教授によつて始められた角膜後面切開法がRoutinestandard operation1)として知られて居る。また最近コンタクトレンズが大いに進歩し,これらと角膜移殖法が相まつて円錐角膜の治療をほぼ解決したかの感がある2)事は私がすでに発表した。
 円錐角膜は平均20歳頃に発病し,壮年には普通停止する進行性の疾患であつて各時期における適切な治療法をあやまらないために,これに対してpathodynamicな立場から病態を把握する必要がある。円錐角膜の病型および病期の分類は佐藤勉教授が早くこれを行い,後にAmsler氏も試みて居る。著者は最近親しく診察した約200眼の円錐角膜から佐藤教授の分類法を一歩すすめた私案を考え,実際にあてはめて使用して居るのでこれを発表したい。

流行性角結膜炎に対する強力パニールチンの効果の再検討

著者: 常岡昭

ページ範囲:P.1447 - P.1450

I.緒言
 シスチン剤たる強力パニールチンの眼疾患に対する応用は,シスチン剤の臨床方面への活用の1つとして,他科に於けると同様,近来注目されてきた。
 本剤は含硫アミノ酸の1種で,生体蛋白質の重要な構成分であるl-シスチンを主成分としており,これは天然蛋白質から製造され,その可逆的な酸化還元作用で網状織内皮細胞や植物神経細胞を賦活して,新陳代謝を高め生理的機能を旺盛にするとされている。これらの特性からも,眼科方面への応用として特に角結膜疾患に対して,従来その効果が認められてきた。

FAD眼軟膏の臨床的使用

著者: 古城力

ページ範囲:P.1450 - P.1452

 生体内種々の臓器のビタミンB2は遊離型のFR(riboflavin)或はエステル型のFMN (flavin-mono-nucleotide),FAD (flavin-adenine-dinu-cleotide)と種々の型で含まれているが,大部分はFADである。生体内に於てはFRからFMNへの燐酸化が主として小腸粘膜で,FMNからFADへの合成が主として肝,腎臓内でなされ,ATP,Mg++共存のもとでFRからFMNへ,FMNからFADへ生体内合成されると言われている。FMN及FADは種々のフラビン酵素の助酵素として生体組織の酸化還元に利用されている。
 船津氏によるとFR,FMNは角膜の代謝に何等の影響も与えないが,FADは角膜の酸素消費能を著明に増加させ呼吸代謝を充進させると報告されている。

興味ある症状を呈した脳橋前端部症候群?

著者: 高橋利兵衛 ,   近藤勝雄 ,   石川和男 ,   平良寛

ページ範囲:P.1453 - P.1458

I.緒言
 先に吾々1)は,末梢循環障碍によると推定されるFoville氏症候群第Ⅲ型の治験例を報告したが,次で今回は左水平注視麻痺,左顔面神経麻痺左半身運動不全麻痺,右舌咽神経麻痺並に左指尖知覚異常等を訴える症例を経験した。この症例は一見,Foville氏症候群の第Ⅰ型,即ち病巣は大脳にある如く思われたが,種々なる検索並に其の経過観察の結果,右側脳橋前端部に主病巣の存在を推測するのが妥当な稀らしい症例と判定されるので茲に報告する。

健眼に耳側視野の狭窄を伴う眼窩悪性黒色腫の1例

著者: 三浦良子

ページ範囲:P.1458 - P.1462

 眼窩領域において黒色腫は比較的稀な疾患とみなされているが,最近私は健眼に耳側視野の狭窄を伴つた眼窩悪性黒色腫の1例に遭遇したので報告する。

前立腺癌の眼窩転移例

著者: 山浦伯雄 ,   金田正

ページ範囲:P.1465 - P.1466

I.まえがき
 転移性眼窩癌腫については内外諸家の報告があり,欧米では乳癌の転移が最も多く,肺癌がこれに次ぐと言われている(Boulanger,1956年)。しかるにわが国の報告を通覧すると,胃癌からの転移(5例)が最も多く,次いで乳癌(4例),肝癌(2例),膵,中耳,子宮及び卵巣癌(各1例)となつており,肺癌または前立腺癌の転移例は未だ報告されていない。
 私共は,骨盤転移を有する前立腺癌患者に現われた眼窩腫瘍が,女性ホルモンの投与,除睾術およびコーチゾン療法により,原病竈の軽快に伴つて著明に縮小した例を経験した。

眼部打撲による脈絡膜剥離のデイアテルミーによる1治験例

著者: 青木平八 ,   前田富男

ページ範囲:P.1467 - P.1470

I.まえがき
 脈絡膜剥離は,白内障及び緑内障手術の如き眼球の穿孔性創傷によつて比較的しばしば起ることは周知の如くであるが,特発性又は非穿孔性外傷によるものは極めて少い。しかも欧米においては現在なお本症の病理発生問題が喧しく論議されているにも拘らず,わが国においては特発性のものについては河本,菅沼等の記載,山崎の報告があるのみで,非穿孔性外傷によるものの報告は未だに見当らず,手術後に生じた症例の記載を散見する程度に過ぎない。
 私共は,非穿孔性眼部打撲によつて生じた脈絡膜剥離の1例に,前後3回にわたるデイアテルミー手術をおこないこれを全治せしめた症例を経験したので,その大要を報告する。

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眼科ニユース/人事消息

ページ範囲:P.1475 - P.1475

○第19回国際眼科学会が1962年12月3日より7日までニユーデリーにおいて開かれる。2つの主要テーマによる一般講演と4つのシンポジウムの他に約50の自由演題の講演を予定している。主要テーマは1960年のInterna-tional Councilにおいて決定され,追つて通知がある。自由演題はInternational Councilの小委員会が選択を行う。当学会中にThe International Association forthe Prevention of BlindnessとThe InternationalAgainst Trachomaの会合がある。学会において使用される国語は英語及び仏語である。会費は眼科学会所属の者は150インドルピーである。詳細及びプログラムは,Dr.Y.K.C.Pandit (Secretary-General of theXIX International Congress of Ophthalmology,Bombay Mutual Building, Sir Pherozeshah MehtaRoad,Bombay I.India)に請求されたい。アジアにおいて始めて開かれる学会であるので,学会当局は多数の日本眼科医の出席を望んでいる。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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