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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科13巻11号

1959年11月発行

第9回綜合医学賞入選論文

角膜の透明及び溷濁の機構

著者: 吉川義三1

所属機関: 1東京大学眼科学教室

ページ範囲:P.1409 - P.1421

文献概要

 角膜の廻折スペクトル及び散乱光の角度分布を測定し,角膜の透明及び溷濁の機構をfiber及びfibrilによって構成される角膜実質の二重格子構造によつて説明した。
 (1)透明角膜の表面に垂直に入射する光はfi-berの格子構造に対応して廻折せられ,スペクトルが現れる。その格子常数は13.1μである。
 (2)透明角膜に入射する光の大部分はそのまま透過して行くが,一部分は前方に散乱される。側方及び後方には測定にかかる程の光は散乱されない。角膜が透明であるのはfibrilが格子状に配列しているため,干渉によつて散乱が打消されることによるものである。僅かに存在する前方散乱はfibril格子が熱騒乱によつて乱れるためであつて,其の外にfiber格子によるFraunhofer級の廻折も之に関与している。
 (3)角膜溷濁時のfiber格子の変化は,偏光顕微鏡所見及び廻折スペクトルの上に反映される。fiber格子の変化は潤濁を起す原因によつて著しく異なつているが,fiber格子の変化は角膜溷濁の本態ではない。
 (4)溷濁角膜の散乱は主として前方に行われるが,後方側方にも散乱される。これはfibril格子の乱れによるものであつて,fibril格子の乱れこそ角膜溷濁の本態である。尚散乱光の角度分布曲線は溷濁の原因に特有であつて,fibril格子の乱れの様式が原因によつて異つている事を示している。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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