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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科13巻12号

1959年12月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会会誌

トラコーマ集団治療剤としてのSigmamycin

著者: 今泉亀撤 ,   渥美健三 ,   藤田宏

ページ範囲:P.73 - P.77

I.緒言
 戦後Sulfa剤の登場に次ぐ種々の抗生物質の出現により,トラコーマの治療,殊にその集団治療法は画期的な飛躍を遂げ,既に我教室に於ても各種薬剤による集団治療成績を遂次報じているが,Tetracyclinの発見により一応治療目的が達せられるに及び,昭和31年に今泉がそれ迄の各薬剤の自家経験に基いた集団治療の集大成とも云うべき「トラコーマ集団治療の実際」を発表した。その後多くの眼科医はトラコーマ治療に対してはTetracyclinを好んで使用しているのが現状であつて,その後も吾々は各種薬剤に就て集団治療による効果比較を継続しているが,今回台糖Pfei-zerの提供したSigmamycinを試用した結果,その効果が従来の薬剤に比して比較的大であることが判明したのでここに報告する次第である。

連載 眼科図譜・59

眼トキソプラスモーシスの1症例

著者: 生井浩 ,   野中昌文 ,   宮崎一郎 ,   山本厳雄

ページ範囲:P.1479 - P.1480

綜説

国際眼科学会物語(その1)

著者: 桐沢長徳

ページ範囲:P.1481 - P.1484

 昨年のブラツセルに於ける第18回国際眼科学会には日本から10数人の人々が出席し,その会の模様については既に何回も本誌に掲載されて読者各位も大体の擬子はお分りになつたことと思う。その後,日本眼科学会理事長の植村教授が国際眼科学協会Intefnational Council of Ophthalmo-logyの理事に推選されて,今春パリーに於ける同理事会に出席して来られたことはこれも亦本誌に掲載された如くである。従つて今後は日本も国際眼科交流に於ける重要なメンバーとしてその責を担うと共に公的にも眼科学の国際的レベルの上昇に尽すべき義務があることになつたわけである。戦後の国際的孤立から脱して,国際協力に努力することは眼科学の領域に於ても今後愈々必要になることは言うまでもない。この意味で,この際,「国際眼科学会」というものの成立及び歴史の大体を顧ることも決して無意味ではない。幸いに昨年の国際眼科学会には筆者が日本代表として選ばれて参加する光栄を担つたが,その際ブラッセルに於てDuke-Elder教授著のA Century ofInternational Ophthalmology (1857—1957)という著書を入手したので,それに基いて表題の如き内容を述べてみることとする。
 国際眼科学会は現在4年毎に開催されることは周知の如くであるが,昨年の学会は奇しくも本学会が始めて開かれてから満100年に当つたわけである。

臨床実験

眼トキソプラスモーシスの1症例

著者: 生井浩 ,   野中昌文 ,   宮崎一郎 ,   山本厳雄

ページ範囲:P.1485 - P.1491

緒言
 Toxoplasmaは1908年Nicolle et Mance-aux17)が齧歯動物から,又翌1909年Splendore27)が兎から始めて発見した細胞内寄生原虫であるが,1939年に到りWolf,Cowen&Paige30)によつて乳児から発見され,以来人間の病原寄生虫としても重視されるようになつた。特に近来Pinkerton&Weinman (1940)19)が22歳男子のToxoplasmosis罹患例を報告してから,乳幼児のみならず成人に於ても罹患の対象として考慮を要する重要な疾患となつた。
 欧米の眼科領域では網膜脈絡膜炎或は葡萄膜炎の病因として本症の重要性が認められている。場合によつては眼病変のみが本症の唯一の臨床診断の手掛りである場合も少くないと言われている。
 我国では本症の確かな罹患例が殆どないが,最近私共は臨床的には片眼の黄斑部に滲出の強い網膜炎(滲出性中心性網膜炎)の病像を呈し,脳脊髄液の動物接種によりToxoplasmaを分離し得て,病因としてToxoplasmosisを推定し得た症例を経験したので,ここに報告する。

アイソトープによる眼循環の研究—(その3)血管拡張剤について

著者: 植村恭夫 ,   橋本省三

ページ範囲:P.1493 - P.1497

緒言
 眼循環は従来より脳循環と密接な関係があるとされている。網膜,脈絡膜血管は脳実質に分布する内頸動脈の分枝たる眼動脈より分れたもので,解剖学的,機能的にも同じような態度をとるものと考えられて来た。古くより網膜中心動脈は,脳出血,軟化等を最も起し易い被殻,視床,内包等の動脈と非常に密接な関係があることが指摘され,1939年,Keith,Wagenerが眼底所見を中心として高血圧症を分類し,其の重要性を強調して以来,認識が新たにされ現在では内科医,神経科医が眼科医の手を借りることなく自ら検眼鏡を使用し,高血圧の診断,予後の判定を行うようになつて来た。又,従来より血圧の測定は上腕動脈血圧を測定するより,網膜血管血圧を測定する方が遙かに有意義であることが強調されて来たが,其の測定方法が難しく且つ客観性がないことより眼科医のみによつて行われていた。然るに,植村教授による電気眼底血圧計の出現により,其の測定は内科医によつても行われるようになつて来た。川島,大岡等は電気眼底血圧計により描写した角膜脈波を解析した結果と,N2O法による脳循環測定結果とを比較検討し,脈波面績と脳血流量(C.B.F.)との間には直線的平衡関係があり,極めて大きい相関関係を認めた。

眼窩腫瘍を初発とせる慢性淋巴性白血病と思われる1例

著者: 唐木正一

ページ範囲:P.1499 - P.1502

 一側眼窩腫瘍を初発とした白血病の症例の報告は少く,三村氏1)の1例位であり,且又眼窩腫瘍を好発する緑色腫でなくて,慢性淋巴性白血病と思われた1例を得たので簡単ながら報告する。

角膜単性ヘルペスのPhaseと治療法との問題

著者: 池間昌男

ページ範囲:P.1503 - P.1512

I.緒言
 近年,外来を訪れる角膜ヘルペス患者は,少なからぬ数に上り,然も,複雑難治な経過を示すものが多い。内外諸家の報告も,この事が我々の所のみの現象ではない事を,裏書きしている。古典的教科書のみならず,最近の成書に於ても,角膜ヘルペスは,さして重要な疾患として取扱われていないかの如く,病型に就ても,予後や治療法に就ても,格別の問題があるようには記述されていない事が,日々,今日の角膜ヘルペスの治療に腐心している我々に奇異の念を起さしめる。
 1939年にBurnet1)は,ヘルペスウィルス(単性)の感染が,1歳から5歳位の間にアフタ性口内炎として起り,生涯,潜伏感染としてのウィルスを保有する,という事実を明かにした。1952年にBraley2)は,再発性の角膜ヘルペスは高熱や,深刻な精神的ストレス等に依ても起るが,これは副腎が過刺激を受けてコーチゾンの放出を増し,このコーチゾンの為に,ウイルスと局所免疫機構との均衡が破られるのだと述べた。これに就ては,後で考察を試みる積りだが,Braley以後,不顕性感染から顕性となる場合のメカニスムに就て,説を為す学者がない事は,この問題の難しさを物語つている。然しThygeson3)も,角膜ヘルペス患者が第二次大戦後に激増した事を認め,コーチゾン療法以前にあつては,極めて稀か或いは「前代未聞」であつた,前房蓄膿や角膜穿孔の如き重篤な合併症も,数多く見られるようになつたと述べている。

降圧剤投与による網膜中心動脈血圧と網膜血管径の変動について—I.Rauwolfia Serpentina剤について,他

著者: 岩田玲子

ページ範囲:P.1512 - P.1531

 高血圧症において眼底所見の重要なことは周知のことであるが,近年眼底血圧も重要視されて来た。内科を初め各科からこの検査を依頼されることは日増に多くなつている現状である。
 従つて血圧下降剤の効果判定を眼底血圧の面から検討してみることも重要なことである。この意味で私は網膜中心動脈血圧を測定するとともにその時の網膜血管径も計測し,両者の測定値及び全身血圧測定値を基礎に網膜血流量も算出して経過を追及してみたので以下にそれらの成績を記載する。

皮膚粘膜移行部症候群と眼疾—(その1)春季加答児

著者: 小倉重成

ページ範囲:P.1533 - P.1538

 眼・鼻・口・陰部・肛門等の皮膚粘膜移行部に病変を現す一連の症候群がある。
 1)眼;眼球結膜炎,瀰漫性表層角膜炎・角膜鼻側血管侵入,眼瞼縁炎等

無数の白斑の発生した視神経網膜脈絡膜炎について

著者: 桑原安治 ,   松尾治亘 ,   徳永文雄

ページ範囲:P.1538 - P.1543

緒言
 眼底に小さな白斑が多数現れる疾病は数多くあり,敢て奇とするに足らない。
 結核が原因と考えられる視神経乳頭炎に初まり,主として乳頭周囲より黄斑部に小白斑が現れ,又瀰漫性脈絡膜炎を生じた例は,その相似たものに庄司先生が報告されたもの,鈴木,井出,秋田氏の例,最近は吉富氏の例等がある。

眼窩より咽頭後部及び側頸部に達した巨大木片異物の1治験例

著者: 逸見和雄 ,   四倉昭次

ページ範囲:P.1545 - P.1547

 眼窩内異物の報告例は多数あるが,私共は最近眼窩から咽頭後部及び側頸部にまで達した長さ15.0cmの巨大木片異物を摘出し,ほとんど後遺症を貽さずに治癒した症例を経験したので報告する。

Carnigenの眼科的応用(基礎実験)

著者: 加藤直太 ,   宇山昌延 ,   中井洋

ページ範囲:P.1547 - P.1555

緒言
 最近低血圧症などの循環機能障害に対する治療剤として,Carnigen (Hoechst)が,内科外科の領域で用いられるようになつている。
 Carnigenは,温血動物の臓器より抽出したAdenosin含有のNucleocidと,Suprifenの2成分からなる薬剤で,前者は末梢動脈,殊に冠状動脈の拡張作用が著しく,心搏動を亢進させる作用があり,後者は交感神経興奮剤に類するrac,p-oxyphenylmethylaminopropanol-hydroch-loridで,細静脈緊張作用があつて,静脈内貯溜血を少なくし,心臓への静脈血還流を増加させるといわれる。この2成分の複合効果から,血管内の血流を増加し,心搏出力を増大して循環機能を亢進させるのである。さて,本剤を低血圧症者に用いて,血圧上昇,循環血量増加が著明であることがみとめられ,Gerstner1),間宮1),水野1),伊東1)らの治療報告があり,又手術時の低血圧状態にも有効なことが,中山2),西邑2),田中2),川田2)らにより報ぜられている。特に血圧に及ぼす影響については,Lindner1),伊東1),中村1)の実験で,本剤の投与によつて最高血圧は上昇し,最低血圧やや低下することを明らかにしている。

原発性眼瞼癌の1例

著者: 針谷嘉夫

ページ範囲:P.1557 - P.1560

 眼瞼癌に関する報告は我国でも従来数多の報告はあるが,最近原発性眼瞼癌の1例を経験したが之が組織的所見を少しく追加して見ようと思う。
 患者は42歳の婦人で,特記すべき既往歴はないが,家族歴では父が61歳で胃癌で死亡,母も腸癌で更に父方の叔父,叔母に各1名癌によつて死亡せるものがある。

手術

欧米眼科の現行手術(3)

著者: 大塚任

ページ範囲:P.1561 - P.1568

9.涙嚢炎
 涙嚢炎に対して何処でもToti氏涙嚢鼻腔吻合術が行われ,単なる涙嚢剔出は一回も見なかつた。何処でも教授はやらず,助手が手術をしていた(Leonardi,Müller,Schreck)涙嚢内側に直径1糎半位円形のArrugaのトレパンで骨壁をとり,拡大し,鼻腔粘膜をたてにH形或いはI形に切開して涙嚢内側も同様に切開,両者縫合するのである。この孔がつまることもあり,Millerはかく例を再手術し涙嚢よりPolyethylene管を入れていた。Mil-ler氏の再手術例を記すると全麻の下,先ず鼻腔にAna-esthecianが10%長いコカインガーゼをつめ麻酔,次にワゼリンガーゼを鼻口の奥につめる。瞼裂部より少し低く鼻根部で少し鼻背によつた皮膚を弧状に縦に1.5cm位切り,骨膜に到り剥離子で骨膜剥離水道水を利用した血液は吸引器で吸引する。

談話室

アメリカのコンタクトレンズの現況—見聞記(1)

著者: 水谷豊

ページ範囲:P.1569 - P.1571

1) finished lensとUncut Lens
 我国では,個々のレンズを注文する時でも,レンズを大量にストツクする場合でも,完成したレンズをメーカーから送つて貰う。処方さえ適切であれば,このレンズで患者は大体満足するものである。所がアメリカでは上のどちらの場合でも,uncutのレンズを注文するのが多い。Uncut Lensとは未完成のレンズであり,レンズの直径は大きく10.5〜11.0mmで,レンズの縁は全然仕上げてない。
 術者はこのレンズを一々けずり,大きさを小さくして,縁をとり,丁度歯科医が義歯を合わせる技巧と同じような処理によつて,個々の患者にレンズを合わせている。従つて,各自に夫々我国のMKマイクロマシンの様な器械を診療室の側に設備しているし,これらの研磨器械が各メーカーから,様々の構造で販売されている。Uncut Lensがアメリカで流行している理由は3つ考えられる。1つはアメリカの様に,レンズの価格の高い所ではfinished Lensに比してUncut Lensの方が遙かに安価である為であり,第2にはfinished Lensがメーカーから送られても,それが万一調子の悪い時そのレンズを再三メーカーに送つていては,術者も患者も無駄な時間と経費とを消費する為に,各自で手直しした方がよく,若しそうであれば,初めから自身でレンズを修正して合わせた方が便利であるというためである。

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眼科ニユース

ページ範囲:P.1573 - P.1573

日本眼科医会総会
 昭和34年度前記総会は9月27日(日)東京御茶の水順天堂大学講堂において開催された。北は青森より,南は九州まで各地代表が出席し,庶務会計報告の後次の議題につき熱心に討論された。
 議題(順不同)

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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