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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科13巻4号

1959年04月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会会誌

トラコーマ結膜嚢内に共棲する細菌について(第4報)—トラコーマ結膜嚢内共棲細菌のトラコーマ結膜症状に対する影響

著者: 難波龍也

ページ範囲:P.17 - P.27

I.緒言
トラコーマ結膜嚢内共棲細菌に就て,主として其のトラコーマ炎症症状に如何なる影響を及ぼしているかと云う事を検討する目的で,私は第1報に於て結膜嚢内共棲細菌の菌種,分布状態其の他を報告し,第2報に於て其の嫌気性発育菌の状態を検し,第3報に於て最も高頻度に証明される葡萄状球菌に就ての諸種抗生物質に対する感受性に就ての実験成績を非トラコーマ眼のそれと各々対照しつつ観察して来たのである。本篇に於ては更に研究を進め下記数種の実験により共棲細菌とトラコーマ結膜炎症症状の関係に就て観察を加えた結果を報告する次第である。即ち
 1)トラコーマ結膜嚢内共棲葡萄状球菌のCoagulaseTest成績。

連載 眼科図譜・51

Manson孤虫の眼窩内寄生例

著者: 塚原勇 ,   三浦寬一 ,   字山昌延

ページ範囲:P.617 - P.618

図譜解説
症例:右眼窩内マンソン孤虫寄生
20歳,女子職業:事務員住所:京都府下笠置

綜説

トラコーマ総合研究班報告

著者: 桐沢長徳

ページ範囲:P.699 - P.710

 文部省科学研究費によるトラコーマ総合研究班の研究成績に関しては昨年度も報告したが,今年度(昭和33年度)の成果は此の度纒めて文部省に報告したので,その概略を茲に記述して各位の御参考に資したいと思う。
 まず病原学的方面では藤山班員が昨年に引続きトラコーマ結膜艀化鶏卵漿尿膜接種による結節乳剤を抗原として患者血清との特異的反応(補体結台反応)に成功し,かつ該材料から電顕により,50〜270mμのウイルス様粒子を認めた。川喜田班員はトラコーマに近縁のMausのMeningo-pneumonitis (MP)ウイルスを用いて組織培養(人羊膜FL株)に於けるウイルス増殖形成を研究し,培養上清及び細胞内ウイルス量の定量によつてその発育様式を究め,かつ同時に細胞内封入体の形態学的変化を追求した。荒川班員も氏のトラコーマ固定毒をFL細胞に接種し,同様に細胞の形態的変化を観察した。杉浦班員は人体結膜上皮細胞(Chang株)培養にトラコーマ材料を接種すべく試み,目下研究続行中である。プロワツエク小体に関しては三井班員が電顕による観察を継続研究し,原始体(400〜1000mμ,内部は微細顆粒),基本小体(300mμ,内部に類核あり),Polygon (光学的にplastin様),Minute body(80mμ)の四種を区別し,その発育環について考察している。又同様に浅山班員もプロワツエク小体の核酸について研究を行いつつある。

臨床実験

Manson孤虫の眼窩内寄生例

著者: 塚原勇 ,   三浦寬一 ,   宇山昌延

ページ範囲:P.713 - P.718

 眼と寄生虫との関係については,古くより多数の報告がある。そのうち,十二指腸虫や蛔虫等の腸内寄生によつておこる眼症状は,全身的中毒症状の部分症としてである。又,大寄生虫Makro-parasitenが直接に眼局所に寄生して,多様な病状を呈することもあるが,かかる例は稀れなもので,その主なものを次に挙げてみると,
 A.線形動物Nemathelminthes

視束管骨折に因る視束離断例

著者: 矢ケ崎薰 ,   蓮田晶一

ページ範囲:P.719 - P.720

 頭部外傷に際して視束管骨折を来す事は稀ではないが,この為に視束離断を来す事は珍らしいといわれている。
 私共は最近,顔面の外傷は軽微であるにも拘わらず,視力を忽ち喪失した症例に就いてX線撮影により,視束管の骨折を証明したので,開頭術を行つたところ,視東離断を確認した症例を経験したので報告する。

眼窩炎性僞腫瘍について

著者: 栗崎正孝 ,   青村瑤子

ページ範囲:P.721 - P.726

 眼窩炎性偽腫瘍については,淋巴腫,炎症眼窩硬化症,リンフォマトージス,リポグラヌロマトージス等1)とも名付けられて,本邦で既に100例を越える報告があり,決して稀なものではなく,Reese2)も片側性眼球突出の最も一般的原因の1であると述べている。その原因については,未だ不明であるが,私達は興味ある組織像を示し,その成立機転について有力な示唆を与えると考えられる症例を経験したので,此処に報告して,御批判を乞う次第である。

ストレプトマイシンの点眼により感作され,注射により惹起されたアレルギー性結膜炎の1例について

著者: 関根邦之助 ,   関根昭江

ページ範囲:P.726 - P.728

緒言
 抗生物質の副作用,特にペニシリンアナフィラキシーについては既に幾多の報告があり,皮膚反応等も広く応用せられ,その投与方法等の改善についても研究されて居るが,他の抗生物質特にストレプトマイシン(以下ストマイと略称)のアレルギー反応に関する報告も之に劣らず,特に眼症状については眼科領域に於ても多数の報告がなされて居るが,ストマイ或はマイシリンの点眼によるもの或は結核患者のストマイ注射の際に発生せる場合等同一投与方法に於ける発生例が圧倒的である。我々はストマイ点眼後約6ヵ月経過してストマイ1.0g筋注を行つた際,高度の眼瞼腫脹を伴つたアレルギー性結膜炎を発住した興味ある1例を経験したので報告する。

28%アンモニア水に因る眼腐蝕症の口唇粘膜移植術による治験例—腐蝕眼球結膜の組織学的所見

著者: 松山道郎 ,   柏井哲郎

ページ範囲:P.728 - P.732

 近来,化学工業の発達により,アンモニア(以下アと略記)による眼障害が漸次多くなつている。古来アによる眼腐蝕の報告例は多く,その治療法に就ても様々な手技が述べられている。古くはWagenmannも強調する如く,アによる眼障害は一般に酸類に比して深部組織への浸透力が強く,屡々予後不良に至る事が多い。我々は最近28%ア水の飛入により,両眼の高度の眼障害を来し,両眼球結膜に壊死竈を形成した例に,早期に口唇粘膜移植術を施行し,完治せしめたのでその大要を報告する。

眼窩炎症性偽腫瘍

著者: 浅山亮二 ,   加藤直太

ページ範囲:P.732 - P.738

 眼窩炎症性偽腫瘍とは諸種の臨床所見が一見眼窩真性腫瘍の如く思われるものの内,その組織学的所見,或いは経過の臨床的観察により,真性腫瘍及び結核,梅毒等の特殊性炎症並びに全身疾患の一部分症である事が否定された後に残る,眼窩の非特異的慢性炎症に原因せるものの総称である。
 私達は昭和25年以降現在迄に教室で得た6例について報告する。

前眼部血管の形態的病変に関する研究—第3報 糖尿病患者の結膜血管瘤と網膜血管瘤の形態の相似性について

著者: 天羽栄作

ページ範囲:P.738 - P.742

緒言
 著者は第1報において,炉前作業者,第2報において糖尿病患者の前眼部血管の形態的病変,特に毛細血管瘤を検査した結果,眼球結膜の露出部における変化は外界の影響を蒙り易いために所見が多いが,糖尿病患者の隠蔽部結膜にも変化が多く見られるのは,全身血管変化の一つの現われとして解し得るとの結論を得た。この眼球結膜血管瘤は角膜顕微鏡によつて観察され,又,写真にも撮影されてその形態を確認することが出来たが,之を組織学的に染色し証明したという報告がないので著者は之を試みた結果,糖尿病患者に見られる網膜毛細血管瘤と形態的に相似していることが判明したのでここに報告する次第である。

眼圧日差の臨床—1.眼圧日差と負荷試験の関連について

著者: 黒瀬芳俊 ,   岡本孝夫 ,   栗本晋二

ページ範囲:P.742 - P.747

 人眼々圧に日動揺があり,緑内障眼では変化量に増進のあることは,Maslenikow以来,Koll-ner1),Duke-Elder並びにその門下2)による研究より明らかにされているが,その成因については未だ混乱を極めて確たる定説をみていない。しかも一方,眼圧日差の緑内障診断への必要不可欠性は益々増加し,加えて緑内障本態の究明のためにも観過し得ない問題となつている。ここに於て我々はこの不可思議な眼圧日差なるものの正体を多少なりとも究明しようとして以下の実験を試みた。
 既に眼圧日差各位相期と負荷試験との関係については,Leydhecker3),岸本4)5),があり,更にBloomfield & Leokellerman6)の広範な研究があるが,眼圧日動揺量と負荷試験陽性率については,自明のこととして等閑に付されているきらいがある。しかしながら緑内障診断のために眼圧日差量測定が如何程の判定価値を持つものかを知り,引いては眼圧日差成因々子の探究に当り,負荷試験成立因子となつているものと比較検討してみることは,興味あることであると同時に必要なことと考えられる。

緑色腫の1剖検例

著者: 森田三千代 ,   長沢大七

ページ範囲:P.747 - P.750

 緑色腫は主として幼少の男児を侵し,急激な経過を辿つて死の転帰をとる極めて悪性な腫瘍を形成する稀な疾患である。その全身症状特に血液所見に特異性を有し興味ある疾患とされている。我国では林(1904),菅沼(1909),等の詳細な剖検報告を始め多くの症例が報告されているが,その本態については未だ定説がない。私共もその一例を経験したので報告する。

眼科領域におけるPLASGEN-L使用症例

著者: 村田博

ページ範囲:P.750 - P.754

I.緒言
 1940年,J.W.Reppeにより合成されたPoly-vinyl pyrrolidon (以下P.V P.)の高分子性のものは,G.Hecht及びH.Weeseにより血漿増量剤として紹介され各科領域に於て使用されている。又,この低分子性のものは,生体内毒素,有害物質を吸着し,腎よりの排泄作用や浮腫消失作用が強い事が知られ,これ又,広く使用されている。しかし,眼科領域に於ては未だ使用症例は少く,文献的報告も2,3を数えるのみである。
今回,私は,低分子性P.V.P.,所謂PLASGEN-L (以下P-L)の眼科的応用を主として網膜疾患に行い,その治療効果を判定する機会を得たので,ここに報告したい。

ニコチン酸の奏効した中心性網脈絡膜炎

著者: 佐古恒徳 ,   岡村治彦

ページ範囲:P.755 - P.757

 従来中心性網脈絡膜炎の予後は,一般に良効であり,自然治癒の傾向が認められる疾患である事はよく知られている。それ故に色々な療法を行つて視力が回復しても,治療による治癒か,自然治癒によるものか一般に区別がつきにくいものである。今回,私達は種々の治療を受けたにもかかわらず視力の出なかつた中心性網脈絡膜炎に,強力な血管拡張作用を有するニコチン酸(ナイクリン:山之内製薬)を使用し著効のあつた例,及びはじめからナイクリン単独療法を行い,短期間に視力の回復を得た例,あわせて4例を経験し,これが明らかにナイクリンの効果によるものと考えられたのでここに報告する。

帯状角膜変性症と診断された4例の組織学的検索

著者: 上野賢一

ページ範囲:P.759 - P.763

緒言
 帯状角膜変性症は1848年英国のDixon氏にょつて,初めて記載され,我国では明治32年河本氏により,初めて発表されたものであり,以来多くの報告を見る。帯状角膜変性症はその成因により,原発性,続発性の2型に区別されているが,その組織所見は1849年Bowman氏により,ボーマン氏膜に石灰沈着があることを報告されて以来,硝子様物質,脂肪,澱粉様物質等の沈着することが報告されている。
 私は臨床上,帯状角膜変性症と診断された4例につき,組織的に検索し得たので発表する。

血圧と関係ある2〜3の眼底所見について—(その10)糖尿病性網膜症の構成要素・分類並びに分類成績について

著者: 加藤謙 ,   羽飼昭 ,   天羽英作 ,   須賀純之助

ページ範囲:P.765 - P.771

緒言
 糖尿病性網膜症は,近時次第に増加しつつあると言われる。Thiel (1956)は糖尿病患者に於ける網膜症の発見頻度を年代を追つて図示し,それがInsulin発見以前(1923年迄)の20%以下から,近時40%以上に達している状況を述べ,又Wa-gener (1945)は自らの症例に於て1921年の8.3%が,1934年に17.7%,1945年に30.6%に増加したことを報告している。この増加は多くの報告者によつて糖尿病の治療法の進歩により,患者の生存期間が延長したことに帰せられているが,その外に網膜の糖尿病性変化に関する知見が的確となつて,軽度の所見も見逃すことがなくなつたことが考えられる。
 併し,何れにしても眼科医にとつて糖尿病性網膜症を観察する機会は次第に増加してきたことは確実であり,又糖尿病患者の生命予後が好転したのに反して,網膜症そのものの予後は好転していないために,患者は生活に支障なき身体的健康を保ちながら失明の故に生活能力を失つて絶望的な余生を送る事例が日常屡々認められるようになつた。従つて糖尿病性網膜症の初発病変・病期及び経過を熟知して,内科医及び患者に適時適切な助言を与えることは眼科医の重要な任務となつたと思う。

毛様体上皮細胞の電子顯微鏡的研究(第1報)

著者: 小林守治

ページ範囲:P.773 - P.777

緒言
 毛様体上皮細胞の形態及び機能に関しては,古来,眼科学的にも最も興味ある課題のひとつとして,多数の研究報告に接するが,今なお充分に解明されたとは称し難い。申すまでもなく形態と機能とは共に密接に結びついた相関関係にあるので,その機能を論ずるにあたつては,形態学的研究の完遂が望ましい。
 近年電子顕微鏡学の発達により,細胞内微細構造に就ての劃期的な観察が,続々と行われつつあり,毛様体上皮細胞に就ても,その成績は解剖学者等により逸早く報告された。しかし眼科側よりの報告は極めて少く,種々の点で,われわれを満足せしめる程の結果は未だ得られていない。

臨床講義

膠様滴状角膜変性

著者: 小口昌美

ページ範囲:P.779 - P.781

 視力低下の原因は沢山あるが,角膜の溷濁のために視力を消失するものは甚だ多い。眼科医は常に角膜疾患に遭遇しその治療に従事しているが一度生じた角膜溷濁は容易に透明にならぬ事があるのは遺憾のことである。此点についても眼科医の将来の一つの課題でなくてはなるまい。角膜炎経過後或は角膜の栄養障碍のために後天的に溷濁するものの外,先天性或は遺伝性に一群の角膜溷濁がある。此等のものは現在の所適切な対策がないので患者にとつては極めて不幸のことである。此中膠様滴状角膜変性に就て述べる。

手術

欧米の眼科と現行手術—旅行の概略と欧米の眼科(1)

著者: 大塚任

ページ範囲:P.783 - P.793

 私は一昨年(1956年)文部省海外研究員として10月1日羽田を出発,途中香港,Bankok,Karachiに少休止の後10月3日朝4時EgyptのCairoに降りてGizehのPyramjds, Sphinx,博物館,Citadel, Mosque ofMohamed Aly, Sultan Hassan Mosque, Mosqueof El Azharさては夜にはジプシイの音楽や踊りなど初めて見るアフリカの異様な姿に驚嘆し,色々な果物,食物も物珍しかつたが,ホテルのマネージヤが悪く,町には悪いガイドが多いのでMohamed Osman Yousefという眼科医を訪れ,白人,アラブ人,黒人と三つの待合室があるのを見た後,ここを2泊できり上げて出発。
 10月5日朝Romaに来た。ここには一面識のあるG.B.Bietti教授がローマ大学に居られるので,これを訪ね種々好意に与かり,昼食を共にしエビ,タコの天プラを御馳走になつたが醤油がないので残念だつた。

私の経験

日本の医療設備の改善は可能か

著者: 弓削経一

ページ範囲:P.798 - P.798

 欧米,どこを回つても,大学,病院とも設備のよいのに驚くのは私1人ではなでしよう。医療器械のみならず,病院のサービス部面(ベツト,待合室,休けい所など)もすばらしいものです。日本を省みて,世の中がちがうという感がします。ワラぶとんなど使つている所は,慈善病院にさえ見られない事でも,その上等さがうかがわれると思います。
 さて,何故こんなにちがうのか,日本人もカメラをつくり,よいラジオ,テレビをつくる事が出来ます。世界をふるえ上らせた軍艦をつくつたことさえあります。決して,未開国の貧困とは云えないでしよう。日本にいた時日本にいる外人の給料の高いのを,単純に,彼等の生活程度が高いからと云いあつていましたが,何故日本人の生活程度はひくいのか,又,それでよいのか。

国際眼科学会への旅・5

国際眼科学会の映画供覧

著者: 大橋孝平

ページ範囲:P.795 - P.797

 第18回国際眼科学会は9月7日午前の開会式より始まつた。学会はAよりFまでの6ホールで行われたが,特に8日より12日まで毎日,午後2時半より夕方まで,4日は午前午後に映画供覧(手術検査法その他)があつて,全部16mm映画であり,主として人気は,これらの上映に集中されたかの感があつた。見て直ぐ判るから,一番手取り早いと云うわけか,これが今学会の特色と云うことが出来る。
 私の報告は11日の午前の映画供覧「内反症に対する瞼板横断法」と11日午後の講演「緑内障負荷試験に於ける前毛様体血管の態度」であつたので,これに出たり,他のセクシヨンに出たので映画を全部見ることは出来なかつた。それ故主として私の興味を惹いたものに就いて述べる。

談話室

川喜田教授著「病原微生物学よりみたトラコーマの諸問題」と題する論文を拝読して(1)

著者: 金田利平

ページ範囲:P.799 - P.802

まえがき
 1957年11月17日午後3時から国友教授司会のもとにトラコーマシンポジウムが日本大学において開催され,川喜田教授は病原微生物学よりみたトラコーマの諸問題について約50分間御講演下された。私は教授の一言一句もききもらさじと拝聴し,御講演後,誠に有益な講義をきくことが出来てよい勉強になつたと深き感銘を心にきざみこみ,更に臨牀眼科第11巻第13号トラコーマ特集号に掲載された川喜田教授の原著を拝読して昨年11月17日の感激をあらたにし川喜田教授に私は感謝の念で一ぽいなのですがトラコーマとは原因的病名ではなく症候名だとする私共の主張を川喜田教授はProbableではないと考えられて一顧だにあたえておらぬ様であるしトラコーマ体質説,二原論を主張するためにはトラコーマ病原論を主張せられる方々に納得のいく形で説明してみせる義務があるだろうとも申されるのでトラコーマ症候名説を主張する私は義務の一端をはたすべく浅学ながら筆をとつた次第であり決して川喜田教授にたてつく,つもりではないのですからこの点何とぞ御諒承下されたく伏しておねがい致しす。私がこれから述べ様とすることは最近の眼科雑誌に掲載してあることと重複する所も多いのでなるべく表現を変えて述べる様に致します。

恩師鹿児島茂先生の憶い出(その9)—鹿児島先生の俳句

著者: 南熊太

ページ範囲:P.802 - P.803

 鹿児島茂先生は,俳号も茂として,即ち鹿児島茂(漢詩とか,書等の時は『寿峰』の号をよく用いられていしまたが,俳号は『茂』でした)として,俳句をよく発表されていました。俳句としては,熊本市内にて,眼科開業の伊藤忠(田々子)氏(熊本医大眼科にて研究,昭和18年,66歳にて,学位受領の篤学の方)及び当時熊本県立第一高等女学校高等科,浜田佐賀衛(坂牛)教授(後の東京学芸大学教授)の指導を受けられていまして俳句雑誌としては『ホトトギス』にも投句されていましたが,多くは,熊本市にて発行されています『阿蘇』に投句されていました。『阿蘇』では,長い間,鹿児島茂,鹿児島田鶴子,南フミ(俳号史子)の3人が揃つて5句投句,5句入選にて揃つて上位を占め,特に,或る時は,此の3人の中の1人が,巻頭になり,或は,他の時は,他の1人が巻頭を占めると言う如き状態が長くつづいたのであつたが,茂先生はじめ,此の3人も,又伊藤忠博士も今は早や故人となつていられるのであります。俳句を通じて,その当時その当時の鹿児島茂先生を憶い出してみたいと思うのであります。
 ○熊本医大では,昭和5年頃即ち私がまだ学生の頃から毎年秋に教授以下全教職員,事務職員,学生,看護婦等,全員の阿蘇登山が行われていて,学生の時も,鹿児島先生のお伴をして,中嶽に登つたことを覚えているが,昭和9年秋の阿蘇登山は,外輪山の大観峰に登つているがその時の先生の句に次の如きものがあります。

眼科ニユース/人事消息

ページ範囲:P.805 - P.805

○第15回仙台眼科集談会(昭和33年12月21日)
1.メドロール使用経験 朝岡力(東北大)
2.粘膜皮膚眼症候群について 武田忠雄(白石,刈田)

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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