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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科13巻5号

1959年05月発行

文献概要

手術

軟性白内障に於ける水晶体吸引術について

著者: 桑原安治1

所属機関: 1東京医科大学眼科

ページ範囲:P.885 - P.887

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緒言
 自内障には種々の種類があり,それに応じて様々の術式が実施せられておる。老人性白内障を主とする硬性白内障に就ては,術式の進歩改良が著しく,戦前戦後に於ける相違は驚くべきものがある。併し乍ら小児の先天性白内障を主とする軟性白内障に於ては,さしたる進歩が認められない。従来一般に行われておるものは截嚢法と,角膜輪部を切開し水晶体を洗出す方法である。截嚢法は安静を保つことの困難な幼児には術後処置が容易である点に於て便利であるが,水晶体皮質の吸収に日数を要し,時には截嚢法を繰返す必要のある場合が少くない。家族は数回の手術を厭い,又最初の截嚢に於ても水晶体皮質が前房に拡つて,術前より悪化したと告げる母親すらある。又角膜を切開して前房洗源して水晶体皮質を洗出す方法は,手術は一回にて事足り,然も術後は直ちに瞳孔領は黒くなる為,前記の欠点は総て除かれる。然し乳幼児は安静が極めて悪く,然も屡々泣いて眼圧を高める。手術中は全身麻酔等を行えば手術は容易であるが,術後は号泣して安静が保たれぬ為虹彩の脱出する事が少くない。最近角膜を縫合する人が多いが,それによつて之の弊は大分防げるが,尚甚しく号泣する場合に縫合糸の脇より虹彩の脱出する事がある。又全身麻酔は最近非常に進歩したが,尚乳幼児には全く危険のない訳ではなく,閉鎖循環式麻酔器を使用し専門家が行つても,不幸の結果に終つた事が少数例乍らある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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