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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科13巻6号

1959年06月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会会誌

トラマコーマの社会的撲滅に関する研究(第Ⅲ部)—トラコーマに関する衛生学的調査研究(共の3)市町村収支決算額から見たトラコーマ罹患率について(第1報)

著者: 清水新一 ,   永田捷一 ,   中村亮 ,   永田峰子 ,   岡田勇

ページ範囲:P.35 - P.42

緒言
 今日の所,トラコーマは先ずビールスで起る疾患とされて居るから,トラコーマを予防撲滅するには,生体外では勿論の事,生体内でも此のビールスだけを壊滅する方法なり薬物なりが発見されるとか,種痘の様なワクチン,ジフテリアの様な抗血清の発見が最も望ましいのである。
 此の点からトラコーマ病原体の研究は極めて大切な事であり,緊急を要する事柄であるが,トラコーマ病原体が確定されなければ,又,其の研究が進まなければ,トラコーマの予防撲滅が出来ない訳ではない。

連載 眼科図譜・53

眼の補填形成術

著者: 秋山太一郎

ページ範囲:P.913 - P.914

綜説

Lichtkoagulationのその後の進歩について

著者: 坂上英

ページ範囲:P.915 - P.926

I.緒言
 Meyer-Schwickerath教授のIdeeに基くLichtkoagulationの我国への紹介は百々教授が眼科最近の進歩1)の中で簡単にふれて居られた秋山氏の詳細な報告2)があり,更には萩原教授3),神鳥教授4),田川5),久保木氏6)等もこれにふれて居られる。
 Meyer-Schwickerathが日蝕観察により黄斑部障碍をおこしている患者を診察し,これを黄斑部裂孔の閉塞に応用し得ないだろうかと考えついたのが1946年春のことであり,幾多の基礎的条件に関する家兎実験をつづけ,一応Lichtkoa-gulatorを完成し漸くにして人眼に於けるLi-chtkoagulationに成功するに至つたのは,1949年の春である。この間の彼の苦労についてはその後約3年にわたる臨床実験を重ねて初めてその成果を眼科学会に問うた1954年の論交7)の中に詳細にのべてあり,「無数といつてよい位の実験を行い,それが思う様にゆかない時私はいつも果して光線による人眼網膜の凝固ということが可能であろうかという疑問に悩まされた。しかしながら日蝕観察によつて網膜の障碍がおこるという動かし得ない臨床所見が私を励ましこの方法の実現への希望をもたしてくれた」とその創造への苦しみを語つている。

臨床実験

原田氏型特発性葡萄膜炎の臨床的観察

著者: 春田長三郎 ,   松坂利彦 ,   田岡昭二 ,   楠研二

ページ範囲:P.927 - P.930

 特発性葡萄膜炎の原因及び治療に就いては,古くから多くの研究報告が行われている。その原因に就ては,現在感染説が重要視され,Virusの分離同定が盛んに行われているが,未だ決定的段階に到つていない1)。その治療も,抗生物質,オーレオマイシン,クロロマイセチン及びACTH,コーチゾン等の出現以来大きく変化を来した。即ち病期の比較的初期に,抗生物質の全身,局身投与を強力に行い,一方ACTHコーチゾン2)を併行使用するのがよいと云われる。これは,この炎症が強いアレルギー性病変をその中に蔵する故である2)3)
 本報告例は,視力障害,難聴,耳鳴,脱毛,白髪化等の定型的症状をともなつた。特発性葡萄膜炎の一例で,一時網膜剥離の為め殆んど失明に陥つたが,数ヵ月後,極めて良好な治癒を示したものである。1ヵ年後現在も視力良好で,健康。唯相当の夜盲を残している。

血液中ルテインの消長よりみたアダプチノールの作用について

著者: 早野三郎 ,   小出佳英 ,   芦沢慶子 ,   鈴木玲之

ページ範囲:P.931 - P.937

緒言
 Adaptinolは暗順応機転を促進改善し,各種夜盲症に対して効果があると云われているが,本剤服用により血液その他組織にどの様な変化が現われるかは全く判つていない。私共は本剤服用後の血中Luteinの変化を検索し,二,三興味ある知見を得たので報告しようと思う。

"Succus Cineraria Maritima"点眼による白内障の治療

著者: 須田栄二

ページ範囲:P.939 - P.946

緒言
 藤山教授が昭和29年にSuccus Cineraria Ma-ritima (以下S.C.M.と略す)点眼による外傷性白内障治療につき報告されてから興味を抱いていたが,当時S.C.M.の入手は困難であり,尚多少の疑問の点もあつた。その後昭和31年,32年と相次いで白内障の治療成績の報告に接し,又佐伯氏も昭和32年に1例効果を得たと報告している。私も各年齢層の5例に追試して見て興味ある結果を得たので報告する。

MEDROL(6 Methyl-Prednisolone)の臨床的検討—特にBehçet氏病に対し

著者: 桐沢長徳 ,   朝岡力 ,   鬼怒川雄久

ページ範囲:P.947 - P.960

緒言
 抗生物質と共にコ-チゾン類の研究発展は戦後の医学進歩の両輪と言つて良く,最近ではCor-tisone, Hydrocortisoneよりも合成ホルモンであるPrednisolone, Prednisoneが広く使用せられている。これらはCortisone, Hydrocorti-soneに比べMineral-corticoid作用はそのままで,Gluco-corticoid作用は4〜5倍となり,Cortisoneを使用していた時代の不快な副作用は非常に減少している。その後引続いて本剤の主作用を高め,副作用を減ずるべく,分子構造を変えて,生物学的作用を検討する研究が続けられ,1956年に6-Methyl-PrednisoloneであるMe-drolがUpjohn社から,9-Fluoro−16-hydroxy-prednisoloneであるTriamcinoloneがLe-derle社及びSquibb社から発表され,2年間の基礎研究を経て量産され,最近実用に供される様になつた。

クロロマイセチン点眼液の使用経験

著者: 天羽栄作 ,   佐藤静雄

ページ範囲:P.960 - P.964

緒言
 Chloromycetin (C.M.)は従来の多くの臨床試験の結果,(1)抗菌範囲が広く各種感染症に用いられ,(2)高い血中濃度が得られ効果が迅速であり,(3)耐性菌の出現がほとんど見られず効果が確実であり,(4)副作用がほとんどないことが分り,現在各科領域において広く使用されている。眼科においても既に多数の使用経験の報告があるが,それらは概ね軟膏製剤であるのに反し今回はC.M.点眼液を使用する機会を得たので,その使用成績について簡単に報告する。
 C.M.点眼液の組成は次の通りである1)

コンドロイチン硫酸の眼科的応用

著者: 山本由記雄 ,   並木緑也

ページ範囲:P.965 - P.969

緒言及び文献的考察
 Chondroitin硫酸(Ch-硫酸と略す)はMuco-polysaccharidの一種で,結合織に豊富な分布を見る。従つて眼科領域でもこの消長は大きな影響を及ぼすものと考えられ,一応臨床的な検索を試みた。
 Ch-硫酸の作用機転としては,この基本形であるN-Acetyl-galactosaminであるHexosamin及びD-Glucuronic-acid,硫酸供与体などの作用,又,26万という高分子そのものによる作用が考えられる。

反復性前房出血を伴える網膜膠腫

著者: 栗本晋二 ,   児嶋日出男

ページ範囲:P.969 - P.972

緒言
 網膜膠腫の診断は困難なことがある。化膿性眼内炎が硝子体膿瘍を起こし,眼底に黄白色の腫瘍状の隆起を生ずる偽神経膠腫と鑑別出来ないことがあり,又水晶体後面結合織増殖症,硝子体内生来結締織遺残,滲出性網膜炎,梅毒,結核,脈絡膜肉腫とも鑑別を要する。網膜膠腫による網膜剥離,続発性緑内障,白内障に注目するあまりその原因である膠腫に考えの及ばない例もある。網膜膠腫で早期に前房蓄膿を現わし,或いは虹彩に結節を生じ,結核性虹彩毛様体炎の症状を呈した報告も多く,前房蓄膿様出血を来たした例もある。私は初期より多量の眼内出血を反復した網膜膠腫例を経験した。これらに於いては定型的病像が隠蔽され,確定診断が遅らされ,治療の期を逸することがあるので注意すべきであり,敢えて報告する次第である。

脳血管撮影による網膜動脈分枝栓塞の2例

著者: 三浦寛一 ,   大塚勝彦

ページ範囲:P.972 - P.978

I.緒言
 脳血管撮影は1927年Egas Moniz等によつて創始されて以来,脳疾患殊に腫瘍,血管異常の診断方法として欠くべからざるものであるが,その初期に於ては脳血管栓塞その他重篤な合併症が見られた。而し手技及び造影剤の改良と共に漸減はして来たとは云え,尚その軽度なるものにはしばしば遭遇する事がある。
 脳血管撮影による眼合併症に就ては種々報告されて居るが,その内網膜中心動脈分枝栓塞例は僅か数氏の報告があるのみである。

広大眼科教室で最近5年間に観察した後部硝子体剥離について

著者: 竹田俊昭

ページ範囲:P.978 - P.986

I.緒言
 後部硝子体剥離の診断は,細隙灯で,網膜から離隔した硝子体後境界層を検出する事で確定される。しかしこの病変が後極部に及んだ際には,高い率で特異な乳頭前硝子体混濁斑を伴うので,少くともこの混濁斑を認めた場合には,Rieger等も指摘したように,直ちに後部硝子体剥離と判断して差支えないものと考えられる。
 従つて,乳頭前硝子体混濁斑を忠実に追求するならば,徹照,倒像,直像検査などの,我々が日常実施する手段だけで,既に本症を診定し得るのである。但し,この手順では,上方硝子体剥離等の,乳頭前混濁斑を有しない後部硝子体剥離は捕捉されないから,実在よりも尚少い頻度が検出される理である。

手術

眼の補填形成術

著者: 秋山太一郎

ページ範囲:P.987 - P.988

1.はじめに(外装義眼のおこり)
 ジメチルポリシロキサンを基本材料として,合成上の手続で人体の軟組織のような柔らかさのものから,軟骨様のものまで自由につくることができ1)2)3)4),加えて,これが生体に為害作用もないこので,体内部の各方面に補填材料として応用するとがさかんになつている。その上,ジメチルポリシロキサン(高弾性DMPS)は柔らかさそのものが,従来のいずれのプラスチツクスに比べても,もつとも皮膚的な感触のある材料である。また,機械強度も高く化学的にも安定で,汗や唾液にもおかされないし夏冬の温度差で硬さも変らない。さらに,皮膚のような小ジワを精密に表現し,着色も固体差に応じて自由にできる成形法を開拓したので,体外部の補填材料としても最適の材料である。昭和29年頃より人体各種の欠損に応用しているが5),今回は,眼科領域での応用法の一つとして,外装義眼法による補填形成術を報告しようと思う。これは,眼部に大きな凹陥がある場合,例えば,眼球を摘出してから長期間経過したとか,骨を含む眼部の大きな欠損がある場合は,従来の眼球義眼の装着だけでは外観的恢復が不十分である。このような場合に応用する外装義眼は,単に飾りだけの問題でなく,患者自身の精神的安定をはかる上に重要な意味がある。すなわち,精神医療を前提としての出発点があるのである。

私の経験

卒業後教育について

著者: 弓削経一

ページ範囲:P.989 - P.991

 欧洲でも同様のことと思うがアメリカの,Postgra-duate Educationは,なかなか熱心で且つゆきとどいている。日本では医師の,卒業後教育は学位獲得の方にかたよつて,却つて悪い結果となつている。看護婦の卒業後教育は中々熱心で,医師にも,よい卒業後教育の制度の設立が望ましい。
 日本で専門医制度の声をきいてから,かなりになる。私にはそれが,何の目的のためかまとまりがつかなかつたが,今回の外国旅行で各大学,病院を見て廻るうちにそれが,卒業後教育と,表裏一体であることを悟つた。通覧すれば,大論文が出来る筈であるが,それ程の調査もしてないので,例をあげて,参考に供する。尚このやり方は,別に日本に,専門医制度がなくても,実行は出来る。要するに,合理的な,専門家の養成法である。

眼科新知識

色覚のはじまり—人網膜の錐体桿体両視質について

著者: 堤修一

ページ範囲:P.993 - P.997

はじめに
 光が網膜の視細胞に達して,光のエネルギーが色の感覚に変る。その境目の色感覚のはじまりの問題はなかなか興味深い。此の問題を今迄に最も詳細に捕えたと思われるのはW.J.Shmidtの蛙桿体外節の偏光顕微鏡による研究,Sjöstrandのモルモツト桿体外節及びスズキの一種(Perch)の錐体外節の電子顕微鏡による研究並びに花岡のザリガニの視細胞,感桿の超微細構造とザリガニ個眼の電気現象に関する研究である。
 いずれも,外節又は感桿の超微細構造として,非常にうすいリポイドの層状構造が外節又は感桿の軸に対して垂直に配列し,その間に視物質の蛋白層がかさね餅の様にはさまつた互層構造を確認している。花岡は更にザリガニ個眼の電気現象の詳細を追及し,光のエネルギーにより蛋白層内の視物質が光解離を起し,陰陽両イオンが上下のリポイド層に移動吸着して界面電位を生じ,光の刺激がなくなれば界面に集つたfree radicalがSpontaneouslyに結合して,もとの視物質に再合成されると推論している。

談話室

川喜田教授著「病原微生物学よりみたトラコーマの諸問題」と題する論文を拝読して(3)

著者: 金田利平

ページ範囲:P.999 - P.1001

第5章 トラコーマの病原が多分まちがいなしに眼で見えるものなら
 本誌18頁「その意味でわれわれはトラコーマの病原をいわゆる基本小体の形で多分まちがいなしに眼で見ているにかかわらず後に詳しく述べるように未だつかまえていない,分離しえずにとどまつているのである」本誌21頁「診断法に関連してはProwazek小体の検出というはなはだ重要な技法が既にほぼ確立していて云々」と記載されていることからして川喜田教授はProwazek小体そのものがトラコーマの病原体とする説に多分に疑義がある方だが,教授はトラコーマはウイルス病である,そしてこのウイルスはProwazek小体という封入体を形成するものであると考えておられる方だと私が考えても間違いがないでしよう。もし臨床眼科医がトラコーマの病原体を多分まちがいなしに基本小体,封入体,Prowazsk小体の形で眼で見ている眼で見ることが出来るものなら何がトラコーマで何がnichtトラコーマであるかはProwazek小体,封入体,基本小体の証明によつて,はじめてきまるものでしよう。結核症と同じ様にトラコーマも同じ基盤の上に立つことは言うまでもないことでしようから。

増田型中心性脈絡網膜炎と中心性網膜血管攣縮症(Central angiospastic retinopathy)との異同問題に対する桑島治三郎氏の説を読んで

著者: 長谷川信六

ページ範囲:P.1003 - P.1005

 桑島氏は本誌第12巻1649頁並びに日本医事新報No.1808,105頁に増田型の中心性脈絡網膜炎と外国で言うCentral angiospastic retinopathy (以下C.a.rP.)との異同問題に関して内外の報告者の主張並びに之に関する桑島氏自身の意見を述べられている。桑島氏がこの問題を再び取り上げられた事に対しては敬意を表するが,氏の主張や意見を読んでみると,氏には増田氏や私共の主張することが正解されていないのみならず,C.a.rp.なるものの桑島氏の解釈は単に字義から出発した定義であつて現実からは離れたのものであり,C.a.rp.とは斯々の病気に「限定させたい」と云うところを「限定されている」と断定を下し,増田型とは「別にすべき」であると云うところを「別である」と断定を下したところに聊か行きすぎがあると私は思つている。以下順を追つて私の意見を述べることにする。

眼科ニュース—これだけは知っておきたい/人事消息

ページ範囲:P.1007 - P.1007

○日本眼科学会では評議員の任期満了の為改選中の処下記の通り80名が当選した。(五十音順)
 (北海道地区)越智貞見・末吉利三・中川順一・藤山英寿・山賀勇・(東北地区)今泉亀撤・入野田公穂・梶浦睦雄・桐沢長徳・桑島治三郎・佐々木統一郎・林雄造(関東地区)青木平八・佐藤邇・鈴木宣民・三国政吉・(東京地区)井上誠夫・井上達二・植村操・馬詰嘉吉・大塚任・大橋孝平・大熊篤二・小口昌美・加藤金吉・国友昇・黒沢潤三・桑原安治・熊谷直樹・河本正一・佐藤勉・庄司義治・鹿野信一・鳥山晃・戸塚清・中泉行正・萩原朗・茂木宣・村上俊泰・(中部地区)石原忍・加藤静一・倉知与志・小島克・清水新一・菅一男・中村文平・萩野鉚太郎・吉田義治・(近畿地区)浅山亮二・井街譲・池田一三・飯沼厳・宇山安夫・神谷貞義・岸本正雄・衣笠治兵衛・古味敏彦・瀬戸文雄・長谷川信六・藤原謙造・牧内正一・水川孝・弓削経一・山地良一・(中国・四国地区)赤木五郎・大石省三・神鳥文雄・高木義博・筒井徳光・百々次夫・畑文平・福島義一・三井幸彦・盛新之助・(九州地区)生井浩・須田経宇・田村茂美・高安晃・広瀬金之助・南熊太

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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