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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科13巻7号

1959年07月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・54

デスメ氏膜破裂及び欠損を伴う後部円錐角膜の1例

著者: 浅水逸郎

ページ範囲:P.1013 - P.1014

 解説
 〔症例〕8歳 男子
 既往歴及び主訴:妊娠10カ月,陣痛微弱のため鉗子分娩にて出産,当時右眼眼瞼の腫脹と角膜混濁があつたが医治により軽快し,角膜も略透明となつたが,学校身体検査に於て右眼視力が悪いと指摘された。

綜説

流行性角結膜炎の病因と臨床病理

著者: 杉浦清治

ページ範囲:P.1015 - P.1025

 便宜上流行性角結膜炎をEKCと略称して話を進めることに致します。

臨床実験

デスメ氏膜破裂及び欠損を伴う後部円錐角膜の1例

著者: 浅水逸郎

ページ範囲:P.1027 - P.1029

I.緒言
 出産時に於ける眼外傷,殊に鉗子分娩による報告は枚挙に遑ない程であるが,私は最近鉗子分娩による後部円錐角膜の比較的稀な症例を診る機会があり,特異な病像を呈していたので,次に報告する。

網膜色素変性症と組織療法について(その2)

著者: 小山田和夫 ,   湖崎克 ,   渡辺千舟 ,   和田光彦

ページ範囲:P.1029 - P.1032

1.緒言
 先に私等1)は,網膜色素変性症と組織療法との結び付きを検討する手がかりとして,一方では,臨床実験として同疾患患者に対する組織療法の影響を,視力,Flicker値,視野,及び暗順応について検索し,又他方では,基礎実験として健常家兎眼の網膜組織呼吸を1つの指標とする組織療法の影響を検討した。
 その結果,中等度以上に病勢の進行した網膜色素変性症に対しては,組織療法は,視力及びFli-cker値には稍々改善的に働くが,視野及び光覚には有意の改善を与えないこと,一方,健常家兎眼の網膜新陳代謝中,呼吸作用を亢進せしめるが,解糖作用には影響を与えないことを述べ,組織療法には魅力が無いではないが,更に深く検討の要があること,及び,従来よりのこの問題に対する諸家の見解が皮相的に過ぎることを指摘した。

アクロマイシン(塩酸テトラサイクリン)による油剤,軟膏,水液の結膜嚢内滞溜時間に関する研究

著者: 高山東洋

ページ範囲:P.1032 - P.1038

 抗生物質点眼薬として,点眼に便利であつて,而も力価を保存14)し易く4)6)13)11),又適当な粘度によつて,結膜嚢内濃度を保持させるのを目的として,最近油性点眼薬の研究使用が多くの人々によつて試みられて居り,その剤質には植物油4)8)13)15),鉱物性の流動パラフイン等が挙げられて居る。
 当院に於ても,患者の自宅点眼に軟膏使用の不便を感じて居たので,注射用椿油に,アルミニユーム・モノステアレートを2%の割合いに混じ13)15),110〜120℃に加熱冷却後,カプセル入りアクロマイシン(塩酸テトラサイクリン)を1%力価相当に入れた揺動性膠質を調製したので,結膜嚢内滞溜濃度の時間的消長を,濾紙法により測定した。同時に1%力価相当アクロマイシン水液,同白色ワゼリンとの比較を試みた。

人血清γ-グロブリンの眼科的応用

著者: 宗保人 ,   須賀純之助 ,   植村恭夫

ページ範囲:P.1038 - P.1042

緒言
 最近,眼科領域に於ても,ヴイールス性疾患に対する関心がたかまつて来ている。抗生物質による治療が進歩し,広範囲に使用されるようになつた為に細菌性感染症が減少して来ていることは実地医家の均しく認めるところである。トラコーマ以外で,其の治療に関し興味あるヴイールス性疾患には,流行性角結膜炎と角膜ヘルペスが挙げられる。流行性角結膜炎(以下EKCと略す)の原因としては,近年Adenovirus群が注目され多数の学者によりこれを病原体と決定すべき根拠が次々と立証されている。かくの如き小型ヴイールスによる疾患群に対する治療法は,内科方面で行われている様な抗体利用によるものが考えられる。その方法としては,Vaccine,回復期患者血清等が正統的なものであろうが,日常の診療に多忙を極める実地医家にとつては利用価値は低いとみなければならない。そこで,著者等は同様の効果を期待して人血清γ-グロブリンの治療上への応用を試みてみることとした。γ-グロブリンは小型ヴイールス性疾患である麻疹に対しては驚異的効果を現わすことは周知のことであり,眼科領域に於ても,EKC,パラトラコーマ等に対する臨床的応用が報告されるようになつて来た。
 今回,著者等はEKCと角膜ヘルペスの両者に就て,γ-グロブリンの臨床的効果を検討し,若干の成績を得たので茲に報告する。

虹彩ルベオージスを伴つたKimmelstiel-Wilson症候群の1剖検例

著者: 天羽栄作 ,   羽飼昭

ページ範囲:P.1043 - P.1051

緒言
 糖尿病に対する治療が進歩して来たために糖尿病患者の寿命が延長した半面,合併症も多く見られるようになつて来た。然し各種の全身的障害に比較すれば,眼障害は割に少ないものの部に属するであろう。而もその眼障害の中でも糖尿病性網膜症,虹彩毛様体炎,糖尿病性白内障の発生に比較すれば虹彩Rubeosisは更に稀な合併症である。著者等は昭和32年より本年にかけて糖尿病患者を比較的に多く観察する機会を得たが,その中に1例の虹彩Rubeosisの患者に遭遇し,病理組織学的に検索することが出来た。文献によると虹彩Rubeosisの報告例は少なく1),病理組織学的に検査し記録した例は,Kurz (1937)2),Fehr-mann (1939)3),Fralick (1945)4),Gartner(1950)5),本邦では良知・藤原(1955)6)である。而も本症例は他に糖尿病性網膜症,腎にはKim-melstiel-Wilsonのhyalin nodulesを見出したので,此処に報告して各位の御参考に供したい。

水晶体摘出患者の統計的観察

著者: 神鳥文雄 ,   岡本孝夫 ,   黒瀬芳俊 ,   神崎教孝 ,   岸田利夫

ページ範囲:P.1052 - P.1056

 当教室に於て昭和31年1月より32年8月31日迄に各種疾患に対する水晶体摘出患者数は82名,103眼である。これらについての統計的観察を報告する。

角膜上皮剥離を伴う流行性角結膜炎について

著者: 佐古恒徳 ,   岡村治彦

ページ範囲:P.1056 - P.1058

 流行性角結膜炎(以下流角結炎と略す)の角膜所見としては一般に瀰漫性,点状性の角膜表層混濁を来たすものが多く,角膜上皮剥離や潰瘍を伴う症例は比較的稀とされている。最近私達は急性濾胞性結膜炎症状を呈し,その最盛期にヘルペス様角膜上皮剥離を起し,その治癒後表層点状角膜炎を来たして流角結炎の診断をつけ得た2症例を経験したので報告する。

内直筋麻痺の1治験例

著者: 柴田正元

ページ範囲:P.1059 - P.1061

緒言
 眼筋麻痺の治験に関する報告は,内外の文献に数多く見られる処であるが,内直筋単独麻痺の治験例は案外少ない様である。内直筋は動眼神経の支配によるが私は当初左眼の内直筋が麻痺し,次に右眼の内直筋が麻痺し,引続いて,外旋神経の支配下にある外直筋が両側共に麻痺し,諸種の薬物療法に依つては仲々回復し得ないので,腰椎穿刺及び髄腔内「ヴイタミン」注入を施行した処,短期間に治効を収めた症例を経験したので,此処に報告する次第である。

低周直角賑波治療器(オーゴスペル)の眼科領域への応用

著者: 西川寬 ,   福原敬人

ページ範囲:P.1061 - P.1065

 大阪大学放射線教室の五百住氏1)等により考案試作され,千葉大学鈴木教授2)によつて,理論的裏づけをされた低周直角脈波通電は,その優秀なる効果により注目をあび,各科にて,その治療効果の報告をみているが,今までの電気治療では到底期待出来なかつた良好な成績をあげているものが少くない。しかるに眼科領域に於ける本療法の報告は極めて少ない。私達は此度,所謂学校近視(仮性近視を含む)を主体とし,其他2〜3の疾患に対し,低周直角脈波通電による治療を行つて,予期以上の良好な成績を得たので,ここに報告する。

緑内障に対する炭酸脱水酵素阻害剤Nirexonの効果について

著者: 坂上道夫 ,   樋田富雄 ,   脇泰三郎 ,   林正雄 ,   佐藤静男 ,   須賀純之助 ,   平川和夫 ,   本橋昭男

ページ範囲:P.1067 - P.1072

緒言
 房水産生理論に関して問題になる炭酸脱水酵素Carbonanhydraseを抑制して,眼圧下降作用を示すズルフオンアミド誘導体製剤はAcetazola-mide以来色々報告されている。
 さてCarbonanhydraseは1932年N.U.Mel-drum, F.J.W.Roughton氏等によって発見された酵素であり,無水炭酸が水と反応して炭酸を形成する反応を可逆的に触媒するものである。

中心性網脈絡膜炎に対するCarnigen(Hoechst)の効果

著者: 深道義尚 ,   岡田都

ページ範囲:P.1074 - P.1076

 中心性網脈絡膜炎(増田)の病因は尚不明な点が多く,その治療についても未だ確実なものが知られていない。最近私達は心臓,末梢循環剤であるCarnigen (Hoechst)を使用して,可成り有効な作用をみたので以下に報告する。
 使用法は主としてCarnigen錠を用い,1日6錠内服させた。また毎週或は隔週来院時に皮下注射を併用した症例もある。

白内障にみられる全身合併症(その1)/白内障にみられる全身合併症(その2)

著者: 小倉重成

ページ範囲:P.1076 - P.1083

 白内障は最近種々の薬物を用いて内科的に治療される頻度が増してきた。之を逆に云えば白内障を有する個体は内科的にも異常があり,この異常を治す事により白内障が共に好転する事を意味するものと解せられる。
 かかる観点よりして種々の方向から白内障にみられる全身合併症を検討するのもあながち無意味ではないであろう。自分は昭和28年2月より33年9月に亘る6年間にみられた36歳より88歳に至る353例の白内障について,全身合併症を症候名を中心として調べたのでここに報告御叱正を乞う。

アイソトープによる眼循環の研究—(その4)球後注射の影響について

著者: 植村恭夫 ,   橋本省三

ページ範囲:P.1084 - P.1088

緒言
 著者等は,前報(その3)に於て血管拡張剤を静脈内投与した際の眼循環に及ぼす影響を調べた結果,臨床的使用量では薬剤によつては静注直後に一過性の眼循環血液量の減少をみることはあるが,一般には著明な変化はみられない。然し,此等薬剤を大量に投与し全身血圧が著明に下降する場合には,眼循環も二次的に其の影響を受けることを明らかにした。そこで今回は,現在眼科領域で広く治療上行われている球後注射の際の此等薬剤の眼循環に及ぼす影響に就て検討を加え若干の成績を得たので茲に報告する。

前眼部血管の形態的病変に関する研究—第4報 糖尿病患者の血管走行形態について

著者: 天羽栄作

ページ範囲:P.1089 - P.1094

緒言
 近年糖尿病に関する知見が豊富になつており,治療法にも種々の改善が試みられ,平均余命は著しく延長したが,その反面合併症特に眼合併症が増加して来ているのは多くの文献が示す所である。網膜血管の変化は腎糸球体血管の病変と共に既に多くの注意を以て観察されているにも拘らず,糖尿病患者の前眼部血管の変化については少数の研究があるに過ぎない。著者は糖尿病患者の前眼部変化を観察し,高熱作業者のそれと比較した結果,露出部に於ける変化は外界の影響を受け易いが,隠蔽部に於ける血管瘤などの変化は全身血管変化の1つの現われとして解し得るので,或る程度の診断的価値を有する旨を既に第1報1),第2報2)において報告し,又,球結膜毛細血管瘤は網膜毛細血管瘤と形態的に相似していることを伸展標本のPAS染色により之を第3報3)として報告した。今回は球結膜血管の走行形態などについて資料をまとめたのでここに報告する。

手術

フカラ手術の検討

著者: 神鳥文雄 ,   岸田利夫

ページ範囲:P.1095 - P.1097

 鳥取大学医学部眼科教室における昭和27年より,33年末までに施行した強度近視眼に対するフカラ手術について検討を行つた。

私の経験 国際眼科学会への旅・8

外来診療のやり方

著者: 弓削経一

ページ範囲:P.1099 - P.1100

 1959年1月7日,私はChicagoのIllinois Univer-sityの眼科であるEye and Ear infirmaryを訪ねた。之はMichigan Avenueから,Adams STを10ブロツク程西にはいつた所にあって,Northwesteru Un.の病院とあまり遠くない。外見は大したこともないと思つたが,中は広い。建てましたものらしく,一方の2階が他方の3階になつていて,案内の看護婦が笑いながら説明してくれた。ここの主任Dr.Kronfeldは引退していて,今欠員中で誰にともなく,話し合つている中にAblatio clinicに案内されてしまつた。12時からCon-ferenceがあるから,きいたらどうかというので之をきき,昼食をよばれた。この食卓でDr.Folkと知合になり,斜視をやつていて,午後,muscle clinicがあるから来て見ないかという話。そこで彼とつれ立ち,診察場であるOrthopticsの室に入つて,Residentsと共に患者を見たり,討論したりしていたか,ついでに,このようなやり方について,彼に根ほり葉ほりきいて見た。その結果私に,この様な特殊clinicのやり方について,1つのまとまりが出来たので,ここにのべて見ることにする。
 ここのmurcle clinicは1週5回,月曜を除いて開かれる。Dr.Folkは,4回出て,指導する。

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眼科ニユース/人事消息

ページ範囲:P.1101 - P.1102

第3回北日本眼科学会総会
(6月20,21日 於 弘前市)

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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