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綜説
角膜炎に対するピロカルピン或いはアトロピン点眼の問題
著者: 小口昌美1 清水由規1
所属機関: 1日本医科大学眼科
ページ範囲:P.1111 - P.1115
文献購入ページに移動 角膜炎に対して縮瞳薬を使用すべきか,将又散瞳薬を使用すべきか,或いは瞳孔薬の必要はないものか。此の問題に就いての議論は最近に於いては余り見られない。往年匐行性角膜潰瘍に対して丸尾,野地氏等のピロカルピン点眼万能に相対し,畑,鈴木氏等のそれに就いての反対論はお互に辛辣を極めたことは当時の文献の記する通りである。最も近年ズルフアミン,及び抗生物質の登場に依り,それ迄多発した旬行性角膜潰瘍もその影をひそめ,又その潰瘍に対する治療も大変容易になつたので瞳孔薬の可否の問題は不必要になつた訳である。併しながら眼科の秘薬としての瞳孔薬の価値は決して減少した訳でもないし,又これ等瞳孔薬の眼内圧,及び血管に対する作用に就いても決して解決されたとは云われない。私共は宛も古色蒼然の感ある瞳孔薬の問題をとり挙げ,特に角膜炎に対する効果に就いて言及し度いと思う。此の動機は両眼角膜ヘルペスの症例に,慣例的にアトロピン(以下アトと略)を持続点眼した所,益々増悪し,ピロカルピン(以下ピロと略)に変更した所,劇的に治癒し,その後も再発を見ない症例に遭遇したからである。又その後角膜ヘルペス以外にもピロを使用して有効例を多数得たからでもある。始めに文献に就いて述べ,次いで自験例及び動物実験に就いても述べ,ピロ,アト,の問題を再検討し度いと思うのである。
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