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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科13巻9号

1959年09月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・56

細隙灯検査法

著者: 大橋孝平

ページ範囲:P.1191 - P.1192

図譜説明
(本文 1193頁参照)
 第1図 正常下眼瞼結膜所見
 20歳女子。細隙灯広光束法で見た図の描写。投射された光隙の辺縁附近では各層の区別が明瞭となり,深層は瞼板組織で,太い深部血管が平行して見え細枝は明かでない。表面の方では多数の乳頭血管が見える。これは一見すると不完全な乳頭血管毛細管で浮草の根の様に毛細管終末糸毬で特有の形態を呈し,上皮層は白濁していて,その下に腺様層も白濁して見えて中に毛細管がある。線維層は極めて不明瞭であるが病的には,この乳頭血管が新生肥大して開花状毛細管網に発達して所謂乳頭肥大を呈するのである。

綜説

細隙灯検査法(その1)

著者: 大橋孝平

ページ範囲:P.1193 - P.1200

I.細隙灯顕微鏡の種類
 細隙灯検査法は細隙灯による特殊の光を当てて,これを生体顕微鏡で立体観察するのであり正確には細隙灯生体顕微鏡法Slitlamp Biomicro-scoplaと云われる。
 細隙灯検査は眼科臨床に際して,現在では最早必須の重要検査法の1であつて,視力検査,眼底検査と共に日常欠く事の出来ない基礎的検査であることは己に常識となつている。しかし,本法の実際手技に就いては従来余り系統的の記載がなく,近年細隙灯の種類もかなり多くなつているので,その取捨選択にも迷うほどであるので,少しくその使用法,所見の読み等に就いて簡単に系統的解説をすることとする。

臨床実験

ピリナジンの眼圧に及ぼす影響—第1報 家兎眼圧について

著者: 飯沼巌 ,   東城初治 ,   安藤純 ,   保田正三郎

ページ範囲:P.1201 - P.1204

I.緒言
 最近山之内製薬K.K.より新らしく発売された解熱鎮痛剤ピリナジンは,N-Acetyl-p-aminophenolの構造を持つものである。先にBrodie&Axelrod (1948)1)の研究により,Acetanilide及びPhenacetinのもつ解熱鎮痛作用は,それ等の生体内代謝産物であるN-Acetyl-p-amino-phenolの作用であることが鮮明されている。同時にその研究に於いて,それ等代謝過程の一環にAniline及びP-aminophenolの介在する他の過程のあることも予想されている。
 一方私共の教室に於いては,Anthranil酸による緑内障治療研究を行つてきたが,その一環としてAcetanilide,Aniline,P-aminophenolその他のAnthranil酸に化学構造の類似せる薬剤が眼圧に及ぼす影響を検討し,上記3者に眼圧下降作用を認めた2)

Marcus Gunn氏現象の3例

著者: 百瀨皓 ,   福地敏泰 ,   阿久津澄義

ページ範囲:P.1204 - P.1207

 Marcus Gunn (1883)により始めて報告されたこの現象は,我国に於いては明治26年大西克知氏が報告して以来,今日迄に40数例の報告があり,他方欧米に於いてはGrant (1936)が101例の患者について論評を行つている。
 我々は最近遺伝的関係を認める患者2名を含めて3名の患者を観察する機会を得たのでここに報告し,併せて若干の考案を加えたい。

トノグラフィーに於ける房水流出率と眼球圧迫試験の比較

著者: 水垣勝代 ,   景山万里子 ,   河本正一

ページ範囲:P.1207 - P.1211

1.緒論
 1952年須田教授は,緑内障の早期診断の目的で眼球圧迫試験を創始した。その後Blaxt町氏も同様の試験を行つている。この方法は緑内障の優秀な診断法として一般に認められている。
 この方法はオフタルモジナメーターにて50g10分間眼球を圧迫し,圧迫除去直後の眼圧が7.0mmHg (シエツツ氏表)以下のものは正常,8mmHg以上は緑内障,7.1mmHg〜7.9mmHgのものは疑とするものである。

眼精疲労の臨床的観察—第2報 所見と治療効果

著者: 保坂明郎 ,   高垣益子

ページ範囲:P.1211 - P.1216

 各症例について検査した結果,前述のようにいろいろな所見が得られたが,その内主要と思われた所見に対する治療を行つた。主要とみなした所見が治ゆしても症状の消失しない場合は更に他の所見に向つて治療を行つた。このような方法はこの種の試みとしては止むを得ないと思う。若干の例では故意に治療的処置を施さずに経過を観察した。
 眼精疲労というものの性質上,或る程度以上の観察期間を置かなければ俄かに治療効果を云々出来ないので,少くとも1箇月以上観察した72例について考察する。これらの例の観察期間は1〜3月が15例,4〜6月が15例,7〜12月が23例,1年〜2年が15例,2年以上が4例である。

所謂索状を呈する脈絡膜炎(山際,吉江氏)の2例

著者: 小島克 ,   馬島昭生 ,   武藤玲子

ページ範囲:P.1217 - P.1219

 Fuchs,A1)2)氏がchoroiditis proliferansとした眼底像は,索状物(分枝状,時に扇状)が,眼底にあつて,白線の時は,竹の節の様な,斑点があり,これらの特異な部分では,網膜が,少し突出して見える。氏は,屡々支那で診ており,滲出性脈絡膜炎による炎性剥離消退後,フイブリンの機能がおこるもので,原田氏病後遺と関係があろうとのべている。
 Chen3)氏も,2例をのべ,索条は,乳頭周囲,乳頭黄斑間にも見られ,膜様のこともあつたが,原田氏病後遺,bhoroiditis exudative internaとし,Fuchs氏の考えを支持した。

眼窩及び眼底に病変を認めた多発性骨髄腫の1例

著者: 稲富房子

ページ範囲:P.1221 - P.1225

まえがき
 比較的稀な疾患とされる多発性骨髄腫は,腫瘍細胞が形質細胞である点,その特異な血液所見のために内科,病理,殊に血液病関係では非常に興味ある疾患として多くの報告をみるが,眼科領域で取扱われることは少く,殊に我が国では2例の報告1)2)をみるのみである。最近典型的な1症例を経験したので報告する。

カタリンによる網膜色素変性症の治療

著者: 水野勝義 ,   上杉もと

ページ範囲:P.1227 - P.1237

緒言
 実験網膜色素変性に関する生化学的実験の結果,網膜色素変性症の成因は,網膜の外境界膜と硝子膜の間に存在する,blood-retinal barrierの中の解毒機構たる,モノアミンオキシダーゼ及び,硫酸抱合酵素の障害に基いて,蓄積したカテコールアミンが酸化し,アドレノクロムとなり網膜外層を,選択的且つ特異的に破壊し,ここに網膜色素変性が発生すると云う仮説は,既に水野1)が発表した。此の報告に於いては又,これらカテコールアミン又はアドレノクロームを解毒する目的で用いた,グルクロン酸及びコンドロイチン硫酸に依る抱合解毒よりも,むしろアドレノクロームをカタリンに依つて,競合解毒する方法が動物実験に於いても,臨床実験に於いても,すぐれている事が報告されている。私共は,網膜色素変性の患者16名に,カタリンを主とした治療を行い,その経過を観察し,見るべき効果を収めたので,ここに一括して報告する。

2〜3血圧降下剤の網膜動脈血圧並びに網膜血管径に及ぼす影響—I.Veratrum alkaloid,他

著者: 松元とよ

ページ範囲:P.1238 - P.1255

 血圧昂進時網膜血管に変化の見られることは周知のことであるが,かかる患者に降圧剤を用いて血圧降下した場合の網膜血管に如何なる変動が見られるかは眼科医にとつてのみならず内科医にとつても興味あるところと思う。
 この様な意味で2〜3の降圧剤に就いて網膜中心動脈血圧並びに網膜血管径に及ぼす影響に就いて多少実験して見たので以下にそれらの成績を記載する。

眼科に於けるMetasolon (16 α-methyl-9 α-fluoroprednisolone)の使用経験

著者: 三根亨 ,   大塚勝彦 ,   中井洋 ,   植田謙次郎 ,   鈴木慶子

ページ範囲:P.1255 - P.1263

I.緒言
 最近10年間に卓越した治療効果を示す各種抗生物質が登場し,次いでCortisone,ACTH等の副腎皮質Steroidhormonが出現し眼科領域に於いても広く使用されるに至つた。このCorti-soneに始つた天然副腎皮質Steroidhormonは其の後Hydrocortisone,Prednisone,Predni-soloneと次々に合成されて来た。我々は最近新合成副腎皮質SteroidhormonであるDexame-thasone Acetate (Metasolon塩野義)の提供を塩野義製薬よりうけ,これを眼科各種疾患に使用したのでその結果を報告する。尚特に臨床効果の観察に重点をおいたこと並びに症例中1〜2に全経過を観察し得なかつたことを断わつておく。眼科領域に於ける本剤の使用成績の報告にはまだ接していない。

閃輝暗点症に対するKallikreinの使用経験

著者: 川崎正夫

ページ範囲:P.1265 - P.1268

 閃輝暗点症に関する報告は既に多くなされているが,その病因については尚推測の域を出ず,従つて治療法も経験的に行われているに過ぎない。私は本症の病因を脳血管の痙攣乃至攣縮によるとする説が現在に於いては比較的理解し易いと思うことから,最近その2例に循環系ホルモンKallik-reinを試用して見るべき効果を得たのでここに報告する。

臨床講義

脳橋疾患の症候群について—ミラルド・ギユブレル症候を中心として

著者: 大岡良子

ページ範囲:P.1269 - P.1272

 脳に疾患或いは損傷があつた場合に全身に種々なる神経学的症状(Herdsymptomとして)が現れる事は云う迄もない。眼科の立場からこれを考えて見ると,眼球に関係ある脳神経は視神経を始めとして,多くのものがこれに関与している。従つてそのHerdsymptomとしての価値は極めて大である。大脳疾患としては主として視野,視力を中心として症状が現われ,中脳(脳橋,延髄,小脳)以下に於いては主として眼筋に現われ,しばしば外眼筋麻痺により上眼瞼下垂及び麻痺性斜視や,又内眼筋麻痺により調節麻痺及び麻痺性散瞳を伴つて来る。然しながらこれらの症状は種々なる組合せをもつて現われて来る為その病集の所在を確定する事が必ずしも容易な事ではない。とは云え,これらの症状が定型的で特徴のある症候を示して来る事もしばしば存在する。この様な時にはその病巣の位置を相当の確実性を持つて推定する事が出来る。特に眼筋麻痺の出現状態は,他の脳神経の刺激症状や脱落症状と合せて症候の特徴を示し,眼科学的に中脳以下に於ける病巣位置推定に重要な役割を持つている。
 今回は脳橋腫瘍により特徴ある定型的な症候の一つであるミラルド・ギユブレル症候(Millard-Gübler's Syndrom)を示した症例につき臨床並びに病理解剖所見を述べ,これに関連し脳橋部症候群の眼科的所見,特に鑑別診断につき,いささか述べる事とする。

手術

欧米眼科の現行手術(1)

著者: 大塚任

ページ範囲:P.1273 - P.1281

1.白内障
 老人性白内障の手術はドイツErlangen大学のE.Schreck教授及びロンドン大学のDr.Cardellが嚢外別出を行つていた以外はすべて嚢内捌出をやつていた。2氏が何故に嚢外剔出を行うかはわからない。Schreckは索引糸を用い,Canthotmieを行い上下の眼瞼及び眼球結膜を綿棒でふき,線状刀で輪部より少し外を切開,カプセル銀子でカプセルを破り,2つのスパーテルで水晶体核を娩出,洗滌,3糸縫合する。Cardellは2%Li-gnocainを球後及び顔面神経根部に注射,4%Cocain,Adrenalin,Homatropinを点眼し,瞳孔を中等度に開く,散瞳しない時は10%Phenylephrinを点眼する。角膜弁で切開,周辺虹彩を切除,前房洗滌は控え目にし(余りすると後で虹彩脱出すると)縫合しない。アトロピン点眼,糸で眼瞼を固定する。嚢内別出は何れも人により小さい相違があり,一定し難いが大別すると線状刀を使う人と鎗状刀を用いる人に分つことが出来る。

私の経験

流行性角結膜炎の院内感染に対する一防止策

著者: 菊池富三郎

ページ範囲:P.1283 - P.1284

はしがき
 流行性角結膜炎(以下流角結と略)の院内感染は,現在臨床眼科医を悩ませている問題の一つであり,このことに関して患者から抗議を申し込まれた苦い経験の持主も甚だ多いものと思われる。本問題はひいては眼科医の信用の問題でもあり,一日も早い防止策の発見が望まれるのであるが,流角結の病原体がヴイールスである関係上,試験管内実験でなく,単に臨床的に消毒の効果を云々するため,漠然たる事を免れ得ず,然も,適当な防止策を見ないままに今日に到つている。
 著者も過去数年間,種々な対策を立案し実施して来たが,失敗の連続でしかなかつたが,最近,漸くその防止に効果を見るに到つたので,此処に報告し,諸氏の御批判を受けたいと思う。

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眼科ニユース

ページ範囲:P.1289 - P.1289

○『伊東弥恵治先生』出版される
 6月27日に千葉大学眼科教室より『伊東弥恵治先生』が出版された。丁度1年前の6月27日に逝去された千葉大学名誉教授伊東弥恵治先生を記念して鈴木宣民千大教授が中心としなつて刊行したもので,巻頭の先生直筆画57図,幼少よりの写真36葉,他90氏の寄稿文から成る本書は,A5判388頁の美麗本である。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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