icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科14巻10号

1960年10月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会会誌

Trachomaの病原とそれに伴える細胞の変化に就いて

著者: 越智貞見

ページ範囲:P.47 - P.56

緒言
 Trachomaの病原問題に就て,私は目眼第47巻第7号所載の如く,日眼総集会の特別講演に於て私の見解を述べ,之をOphthalmologica Vol.101,No.5u6。(Aetiologische Forschungenuber das Trachom.)にも発表しておいた。其後暫く戦後の混乱に累いせられた時に当つて,幸にも少しくVirus性疾患の方面に目を注ぐべき機会を得てTrachoma研究の上に参考すべき資料が与えられた。折柄わが眼科学の領域に於てもVirus性疾患として見られた処の一種の急性結膜炎が広く流行した。それは一名流行性角結膜炎とも呼ばれ,私は古くより数回此流行に遭遇して居る。而して遂に此機会に於て,その発症には一種の絲状菌が関係していることを自ら確認するに至つた。
 かくて夫れ等の研究は,やがて私のTrachomaの研究にも発達を促したのであつたが,私は猶且つ常に動物試験を併用して知見を補いつつ病原問題の解決に意を用いた。而して其中に在つて臨牀家の手に入り易きTrachomaの塗抹標本に於ても,私の謂う所の病原的所見を比較的容易に証明し得ることが認められるに至つた。又それに附随して,各種細胞にそれぞれ相当の意義ある変化の伴つて来ることも認められるに至つた。

連載 眼科図譜・68

Sarcoidosisの1例

著者: 加藤格 ,   黒沢清

ページ範囲:P.1465 - P.1466

綜説

病理からみた葡萄腹炎とその治療

著者: 鹿野信一

ページ範囲:P.1467 - P.1479

§葡萄膜炎の原因
 葡萄膜炎をその炎症の形の上から分けて,禰蔓性と肉芽性炎症とに分けることはAllan C.Woods,Gilbert等の,独,米英に於ける葡萄膜炎の研究者の最近に於ける傾向とみることができます。ここでは一応Woodsの分類表を,私としては甚だ不満の点もあるのですがお目にかけることにします。
 このBehçet氏病,ヘルペスの葡萄膜炎,Trypanosomiasis等が,果してこの肉芽性といわれている葡萄膜炎の範疇に属するかどうか,私は疑問に思つているのでありますが。

手術

Preziosi氏隅角電気焼灼術(第2篇)

著者: 呉耀南

ページ範囲:P.1480 - P.1483

序言
 私は先に本法を正常家兎眼に実施し,其の減圧効果及び組織学的所見について,之れを本誌5)に発表したが,今回は同方法を緑内障眼に応用したので,茲に其の知見の一端を追加,報告したいと思う。

臨床実験

異常長睫毛の1例

著者: 瀬尾孝之 ,   兼子喜男

ページ範囲:P.1484 - P.1486

 睫毛の異常長発育に関する報告は本邦に於いても現在迄に多数の報告があるが,その大部分は全睫毛が一様に異常長発育を示すものの報告であつて,1乃至数本の睫毛だけに異常長発育を認める症例の報告は比較的少く,佐藤2),山中3),内田4),豊田5),三口7),浅田8),田村10),最近に於いて岩崎等12)の数例の報告があるのみであり,就中その1乃至数本の異常長睫毛が抜去後も再び発生して異常長発育を示したものの報告は浅田8)の症例に唯1例認められるだけで甚だ稀と云うべきである。
 最近我々は慢性結膜炎にて通院中の患者に偶然1本の異常長睫毛を発見し,その睫毛脱落後も再び同一部より異常に長い睫毛の再発を見た1症例を経験したので茲に追加報告する次第である。

網膜剥離眼に於ける眼圧調整機序の様相に就いて—第5篇 飲水試験について

著者: 森寺保

ページ範囲:P.1489 - P.1496

緒言
 特発性網膜剥離眼に於ては眼圧値は既報の如く本症の約43%は正常眼圧域より下降し,又一部約5%に於ては裂孔,及び病竈に由来する毛様体の刺激状態がもたらしたと考えられる眼圧異常昂進例を認めた事も既に報告した。
 しかし乍ら前者眼圧の下降を招来したものの中には,不安定試験,Tonography,の結果より見て,正常眼,緑内障眼の如き観念では律し得ない現象に屡々遭遇した。即ち,眼圧の著明な下降,或はTonographyに於ける測定不可能に至る迄の下降,又頸部圧迫による眼圧下降,及び手術的加療による下降の回復等,換言すれば,毛様体の眼圧調整機能と相俟つて,裂孔より葡萄膜系血管に向う異常後部流出路の存在が本症眼圧下降の主原因を為すのではないかと思考するに至つたのである。そこで眼内液流出の一面を知る為にLe-ydecker,の方法に倣い水飲試験を行いその結果を茲に報告する。

眼底測定値の誤差について

著者: 中静隆 ,   磯貝篤

ページ範囲:P.1497 - P.1500

 凡そ実験的研究方法の特色とするところは,問題の現象に関与する諸量の大さを適当な器械を用いて定量的に測定するにあるものであるが,測定に当つて器械で読み取つた数値は観測者が判断によつて定めた数であるから常に多少の誤差を伴つている。
 私共はGullstrand簡易大検眼鏡に三国式眼底測微計を装置して眼底計測を行つた時の誤差に就き考究してみたので以下に簡単に記載する。

老人白内障眼の後部硝子体剥離について

著者: 竹田俊昭

ページ範囲:P.1501 - P.1508

I.緒言
 教室の戸田・平田(1958)は,老人白内障の初期に飛蚊症の自覚ありとする多数の成書の誤謬を指摘し,この際の飛蚊症は,実は老人白内障眼に併存する後部硝子体剥離の際に多くみとめられる乳頭前硝子体斑Prapapillarer Glaskorperfleck(以下PGFと略記する)に基く飛蚊症を誤認したものであるとの見解を発表した。私は,その見解を更に検討するべく,老人白内障眼における後部硝子体剥離の頻度を明かにすることを意図して,遭遇する老人白内障症例の中,水晶体混濁が軽度で,硝子体の観察が可能な初発期を主とする老人白内障眼について,硝子体,殊に主としてその後部を,Hruby前置レンズを使用して,細隙灯顕微鏡で観察したので,その成績を述べる。

両耳側半盲症を呈した視交叉蜘網膜炎の1例

著者: 広田邦男 ,   安達耕三

ページ範囲:P.1511 - P.1514

緒言
 1929年Cushing,Eisenhardt両氏が始めて視交叉蜘網膜炎に眼症状を合併する事を報告して以来,眼科領域においても視交叉蜘網膜炎に関して多数の報告がみられる様になり,本邦においても荒木,庄司,浅山,井街(謙並びに譲)等の諸氏を始めとして幾多の諸氏により報告されている。
 最近我々は視力障害と略々完全な両耳側半盲症を呈したのみで眼底に何等著変を示さないと云う従来の報告例とやや症状を異にした症例を経験し,プレドニンの投与により急速に症状の軽快をみたのでここに報告する次第である。

網膜静脈血栓症に対する合成抗血液凝固剤Dextran Sulphateの効果について

著者: 三国政吉 ,   笛田孝雄 ,   木村重男

ページ範囲:P.1515 - P.1524

 動物組織(主に肺・肝)より抽出精製されるHeparinは優れた抗血液凝固剤として臨床的に広く用いられているが,高価の点が使用上の隘路である。
 Jorpes (1935)によりHeparinはMucoitinpolysulphuric acidの一種でGlucuronic acidとAcetylglucosamineからなる高分子硫酸エステルであることが明らかにされて以来,Heparinと同様の作用を有つ硫酸エステルを合成によつて得ようとする試みが数多くなされて来た。その結果澱粉,グリコーゲン,キチン,セルローズ,イヌリン及びその他種々の多糖類の硫酸エスエルが合成され,予期した抗凝血作用は得られたが,毒性が強くて臨床的に使用されるには至らなかつた。

ケナコルトの臨床的検討

著者: 百々隆夫 ,   富井宏

ページ範囲:P.1525 - P.1528

I.まえがき
 コーチゾンに始まる合成副腎コルチコステロイドの治療的役割が,刮目にあたいすることは今更云々するまでもない。又,これらコルチコステロイドの眼科的応用範囲の広いことも既に知られている。しかもこれらは,その抗炎症作用,抗アレルギー作用を増強し,副作用を減少させようとして,新製品がつぎつぎにつくり出されている現状である。従つて,これら製品の臨床的応用をあつかつた報告は,新製品が旧製品にまして応用範囲がひろく,且つ新製品の力価が旧製品の力価の幾倍であるかを臨床的に確認しているものが多い。
 吾々の今回の臨床実験においても,先人の報告と同じ傾向であることを認める。しかしながら,コルチコステロイドが一見効果をみないような例でも,疾患の性格の上からみて本製剤が当然作用しなければならないと考えられる場合には,或は既に充分とされている投与量よりも遙かに大量を投与することにより,或は用いられる時期により,著効を得ることを経験したので,あわせて報告する。

緑内障性視神経乳頭陥凹の成因に関する研究

著者: 徳島邦子

ページ範囲:P.1531 - P.1548

I.緒言
 鬱血性緑内障並びに単性緑内障に於て,視神経乳頭に病変を生じることは,周知の事実である。単性緑内障は,急性鬱血性緑内障とは対照的に,軽い自覚症状を起すに過ぎないが,進行すれば高度の視力障害と視神経乳頭の陥凹が特徴的であるので,昔はamaurosis with excavation of discと呼ばれていたと言うことである。
 Duke-Elderは1949年,単性緑内障に於ける乳頭の変化は,視神経の栄養血管の硬化によるものであろうと想像し,眼球の後方の血管が主として侵されるならば,視神経の陥凹を来たしても眼圧上昇を起さないが,眼球の前方の血管(シュレム管の部)が,主として侵されるならば,眼圧上昇を起すもので,眼球の前後部の血管が侵されるならば,単性緑内障の定型的な症状,即ち,眼圧上昇と乳頭陥凹を起すと述べている。

Sarcoidosisの1例

著者: 加藤格 ,   黒沢清

ページ範囲:P.1549 - P.1550

緒言
 葡萄膜炎の病因に梅毒,結核を考えていた時代は去つて現在ではBehçet氏病の如き膠原病やsarcoidosis,toxoplasmosisなどの探究に力が注がれている。このうちsarcoidosisについては特にアメリカで研究が進みA.C.Woods等による1)2)と成人の葡萄膜炎に可成りの頻度を占めているといわれて居る。しかしながら我国の眼科領域に於てsarcoidosisの症例は僅に飯沼氏等3),上岡氏等4),三上氏5),桑島氏等6),古城氏7),能登氏等8),和賀井氏9),川村氏等10)の報告をみるにすぎない。我々は本院眼科外来で,はじめ結核性葡萄膜炎として治療を受けていた患者が再発時に,頸部リンパ腺(scalene node)及び肺臓よりbiopsyを行い,sarcoidosisと診断を確定し得た症例を経験したので,その特異な眼底所見とリンパ腺,肺臓の組織学的所見を供覧する。

流行性角結膜炎の再発に就いて/蜂窠状黄斑に就いて—特に特発性壮年性黄斑部変性症について

著者: 盧慈愛

ページ範囲:P.1551 - P.1560

 流行性角結膜炎の再発に関しては"原則として再発しない""although the disease may lostfor a long time with remission and relape,as a rule it tends heal without recurrence"(M.L.Berliner, 1943)又は"比較的高度の免疫を附与される"(Braley, 1945),又は"再発は稀であるが,再発しても極めて軽度である"(M.Amsler 1948)等色々の見解がある。実際臨床家は極めて多数の本症例を治療するが再発例に遭遇することは極めて稀である。しかし茲数年来Cor-tisoneが本疾患の治療に使用されて以来確かに本疾患の再発と思われる症例を度々経験するので其の典型的と思われる症例を報告し其の臨床症状を検討して見たいと思います。

眼科新知識

多原色仮説—中心窩錐状体視質の種類に就いて

著者: 堤修一

ページ範囲:P.1561 - P.1568

はじめに
 私は,昨年本誌13巻6号の「色覚のはじまり」と云う小論のむすびで,以下の様に決論した。人間の錐体視質も,錐体外節の非常に薄い層状互層構造の円板内に含まれて,入射光粒子により光解離を起し,陰陽イオンが上・下のリポイド層に移動吸着して界面電位を生じ,丁度積層乾電池の様な形となる。此の変化が遂に色覚中枢へ伝わり色覚を生ずると考えられる。がしかし,私が此の時に得た絶対視感度曲線(?)から,いきなり幾種類かの錐体視質の存在を推定するのは,些か飛躍にすぎると。
 今回は多少方法を異にして,人間の錐体外節に含まれているらしい錐体視質の存在と種類とを今一歩,稍々詳細に具体的に捕え得たと考えるので報告する。

談話室

コンタクトレンズの歴史(2)

著者: 水谷豊

ページ範囲:P.1569 - P.1572

 1909年Müller-Weltは屈折異常の矯正の目的で,コレの製作に力を注いだが,尚装用後の障害が強くて成功する事が出来なかつた。
 その原因に就て,レンズの重さの軽減とか角膜溷濁の理由等の考究に力を尽した。

--------------------

眼科ニユース/人事消息

ページ範囲:P.1575 - P.1575

東京眼科集談会
 第395回東京眼科集談会は9月23日慶大北里講堂において行われた。演者はすべて外人で次の講演があつた。
 ○Current trends in ophthalmic treatmentin Western Europe Dr.T.Roper

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?