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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科14巻12号

1960年12月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会会誌

Trachomaの診断基準,分類法(特に潜伏期,初発症候)に対する私見(上)

著者: 金田利平

ページ範囲:P.59 - P.61

緒言
 臨牀眼科第11巻第13号(以下本誌と略記す)に文部省科学研究費トラコーマ研究班(以下Tr.研究班と略記す)によつて出来あがつたトラコーマ分類法及び診断基準が記載されてある。これに対しTrachoma (以下Tr.と略記す)症候名説を主張する私は疑義を述べTr.二原論を一そう強固にしようと致します。

連載 眼科図譜・70

異種表層角膜移植の症例と血清学的検索について

著者: 桑原安治 ,   小暮文雄

ページ範囲:P.2001 - P.2001

症例 20歳 女子 診断 Groenow氏角膜変性(両眼)
Case 20 year old woman Diagnosis Bilateral corneal Dystrophy of Groenow

講演

酵素性チン氏帯溶解術(Enzymatic Zonulolysis)の現今の手技と適応/前房内のプラスチックレンズ—良好な成績を得る為の基本的要素

著者: バラッケヨアキン

ページ範囲:P.2003 - P.2006

 著者は1958年1月から1960年5月までEnzy-matic Zonulolysisを利用して752眼に水晶体嚢内摘出術を施行した。この臨床経験や他の著者によつて示されている様にEnzymatic Zonulolysisは手術手技を簡略化し,水晶体嚢内摘出術の施行率が増加した。Enzymatic Zonulolysisはこの題目の最初の報告があつて以来,世界の総ゆる処の手術者によつて採用されている。
 我々の上記の症例群の統計は学会で既に紹介した。

切開創閉鎖法と限定された化学的チン氏帯溶解法—白内障手術

著者: ヒルハーバード

ページ範囲:P.2008 - P.2009

 白内障手術の目的は,出来るだけ創傷を小さくし,眼球の機能と外形の障害を最小限にすると共に完全に水晶体を摘出することにある。
 手術手技の最も新しい進歩は, 1. 眼圧を低下させる為に術前に眼球を抜圧すること。 2.切開創閉鎖法の改善 3. 最近,Prof.Barraquerの用いる化学的チン氏帯溶解術(chemical Zonulolysis)

談話室

カクテルパーティー写真の説明

著者: 井上正澄

ページ範囲:P.2009 - P.2009

 昭和35年9月23日東京信濃町の松平ホテルでカクテルパーティーが開かれ出席者約70名であつた。写真では前列右から4番目バラッケ氏,6番目メラー氏(濠)2列目右から3番目バラッケ夫人,1人おいてヒル夫人,次ヒル氏,3列目右から7番目ロー氏(濠),次トレバローパー氏(英),次クーパー氏(印),其他の外人は濠州眼科医旅行団の一行(眼科医9人,夫人6人婦長2人,オルソプチスト3人,合計20人)などである。
 当日午後には慶応北里講堂で東京集談会の外人講演が行われ,夜は植村操先生と慶応の眼科教室の御好意でこの会が開かれた。会費千円で,サンドウィッチ,ビール,すしの屋台など出て賑やかに話し合い,愉快なひと晩であつた。

Prof.Sugar講演会に出席して

著者: 早川宏学

ページ範囲:P.2019 - P.2019

 本誌第6巻(昭和27年)359頁に中村康先生が読書寸感としてProf.Sugar著The Glaucomaに就て詳細に紹介してある。その当時その本を求めて面影を偲んでいたので丁度教授がマニラの学会を終つての帰途10月17日順天堂大学講堂で講演会が催される事を知つたので出席した。印度BombayのDr.B.D.Telang外一名と都合3名で会場に来られた。会場には須田氏等初め多数の顔が見られた。会は大山信郎教授の紹介,国友教授の司会で始まつた。初め印度の老いたるDr.と間違えていたが紹介された時その若々しい力に満ちた様子を見て頼もしく感じた。中泉(若)博士の通訳で約2時間非常に分り易く上品でゆつくりとした英語で隅角の解剖とGonioscopy所見の関係や病的所見,治療等を多数美しいカラースライドで見せてくれ満場その立派なのに魅せられた。講演後質問に入り須田教授はPigmentaryglaucomaは日本には見られない事を述べたのに対し将来注意すれば見られるだろうとの答であつた。又桐沢教授はCyclodialysisとGoniotomeg(Bar-kan)との効力の差尋ねたのに対し後者には経験無い旨答えられた。尚次次と質問あり,流石米国第一流の縁内障の研究者であるだけに質問も経験を基礎とした貴重なもの許りであつて答弁もまた明快であつた。

Judd Streetから

著者: 三島済一

ページ範囲:P.2072 - P.2078

前書き
 私がロンドンから帰国したのが1958年4月であつた。その年の暮に三島君が英国文化振興会の留学生試験を受けて合格し,Sir Duke-Elderの主宰するInstitute ofOphthalmology(Judd Street, W.C.I.London)に留学する事に決り,1959年7月未に日本を出発した。
 彼も私におとらず筆まめな方で,医歯大や私の所に山の様な手紙が来た。私の手紙は,佐藤先生のお世話で主な所を臨眼にのせて戴く事が出来た。彼地からの手紙は恐らく読者に居ながらにして外国での経験や見聞を共にさせるという意味で有用なものと思われる。私はProf.Sorsbyの所に居たので,世界でも屈指の眼科大研究所であるInstitute of Ophthalmologyの事は見る事は出来たが充分に紹介しなかつたし,彼の物の見方は私と又異つていて面白いであろう。大塚先生にお話した所,忙しいからお前が世話してくれという事であるので,彼の手紙から私的な部分を除いたものを以下に御紹介する次第である。実は昨年から引き続いて手紙が来て居り,初めの方のものは半年以上経つてしまつて,些か鮮度が低下したきらいがないでもない。これは私の無精の為で御寛容を願うの他はない。ロンドンに着く迄の旅行記は仲々面白いものだが,長くなるから一切省いて,彼が帰つてから数人で東南アジアの眼科事情についての座談会でもやつて御紹介する事にしたい。

手術

眼科手術時の全麻適応

著者: 加藤恵子 ,   志和健吉 ,   村瀬富太郎 ,   近藤勝雄 ,   涌沢玲児 ,   斎藤一彦

ページ範囲:P.2010 - P.2014

緒言
 眼手術の大部分は局麻に依り充分な麻酔を得られるのみならず,斜視等に於ては手術成果を直ちに確め得る上で,局麻が多くの長所を有する。しかし小児で手術を恐れ,反抗し泣き暴れるものでは,局麻で手術することは不可能なことが多い。この為小児手術は全麻に依らねばならない。この眼科領域に於ける小児全身麻酔に就ては,既に今泉教授1)がその簡易な方法として公表している様に,従来当眼科教室に於ては,主としてバルビトレート剤,フェノチアジン系薬物等のカクテルによる静脈麻酔法が用いられて来た。森等2)もラボナール単独使用法による全麻及び強化麻酔併用ラボナール麻酔を小児27名に就て施行し,良好な結果を得たことを報告している。しかし,これ等の薬物を用いる際は調節性がなく,手術に必要な麻酔状態を持続せしめることが可成り困難である。且つ又,薬物に対する個体差が著しいために効果は一定せず,充分な麻酔を得られなかつたり,時に薬剤の抑制効果が現われて危険な状態に陥る心配もあり,眼手術の麻酔としては疑問の点が多い。従つて最近は小児眼手術に専ら気管内麻酔を適応しているが,極めて良好な結果を収めているので,その経験の一端を弦に報告し,諸家の参考に供せんとするものである。

臨床実験

異種表層角膜移植の症例と血清学的検索について

著者: 桑原安治 ,   小暮文雄

ページ範囲:P.2017 - P.2019

緒言
 著者の1人桑原は鶏角膜を使用しGraenow氏角膜溷濁の患者に表層移植を試み幸に成功した症例を1956年に発表した。其の後共同研究者鎌田,妹尾,平川,野中,小暮,新井等により又筒井,神鳥氏等により優れたる基礎的研究が発表され,一方外国に於てもOrmsby, Maumenee,Lieb, Lerman, Muller, Basu, Choyce, Babel,Bourquth等による基礎的研究が行われておる。桑原等は第1例報告後,勿論症例を重ねては来たが此等は已むを得ざるものに限り行つたのであつて,臨床例を増す事を積極的に行うのを差控えた。其の理由は共同研究者による異種幾膜移植の理論的体系を確立する事に重点を置き,其の体系の完成の暁に理論的根拠に基いて臨床的に積極的に行う計画であつたからである。先に共同研究者の1人新井が異種角膜移植の血清学的研究と題する動物実験の成績を発表したが,之れはあくまでも鶏角膜を兎角膜に表層移植した動物実験であつて其の成績は臨床上重要な参考になる事は勿論であるが,人眼角膜に鶏角膜を表層移植を行つた場合果して同一成績であるか否かは尚検討すべき問題である。偶々動物実験と比較すべき好適な臨床例を得たので茲に報告する次第である。

網膜剥離眼に於ける眼圧調整機序の様相について—(第6篇)フルオレスチン透過性試験の成績に就いて

著者: 森寺保

ページ範囲:P.2020 - P.2025

 第1〜5報に発表した如く網膜剥離眼の眼圧値はまづ第1に裂孔の存在により左右され,第2にその裂孔周囲の一次的乃至二次的病変(例えば類嚢脆性変化)等が直接或は間接毛様体に影響せるか否かによつて眼圧値は種々の値を示す事を知つたのである。即ち全症例の17%のみが正常眼圧値を示したが,76%は正常眼圧以下に下降し,6%は明かに上昇し不安定性を示したのである。又術後になると手術的加療により,裂孔が閉鎖され,且又病的侵襲の排除により一部眼圧値が回復し眼圧調整機序の正常化を示すものもあるが(43%),猶一部に於ては,眼圧が依然低眼圧を維持し,一部に於ては更に下降を示す症例もあり,病的及び手術的侵襲が毛様体の機能を再生不起に至る迄影響せるものと思考されるが如き例にも遭遇する。そこでこの毛様体の分泌機能の一端を知る為フルオレスチン(以下Flと略)を静脈内に負荷し前房への出現時間を測定し房水産生状態を検討し且又前房隅角よりシュレム氏管を経過する前方排出路と,脈絡膜血管系への眼内液(網膜下潴溜液)の移動及び吸収によると考えられる後部排出路の存在と,各々の流出度の比重を知る為,その出現時間,消失時間について追時的に考察検討を行つて見た。

視野に関する研究補遺(その2)

著者: 坪井彪

ページ範囲:P.2026 - P.2034

Ⅱ.周辺色視野の計測について
1.色視野計測用視標の色について
 我邦に於て色視野の測定に使用せられている視標で,現在市販されているものは,その色が一定しておらず,従つてそれによる計測成績にも当然差異を生ずると思われるので,これを統一する必要がある。私はこの為に適当な視標色について検討を行つた。
 この視標色としてはなるべく彩度の高いものを可とするものと,いわゆる不変色を可とするものと両説があるので,両者の優劣について調べて見た。

輻射エネルギーによる眼傷害の3例

著者: 樋渡正五 ,   大戸建 ,   斎藤紀美子 ,   韋鵷斑 ,   林茂松 ,   高地淑子

ページ範囲:P.2037 - P.2039

 輻射エネルギーによる各種眼傷害に関しては多くの報告例があるが,我々は太陽光線,高圧電流,高熱による白内障及び網膜傷害の3例を観察したので報告する。

初発性老人性白内障に対するパロチンの効果について

著者: 古城力

ページ範囲:P.2041 - P.2045

 1.老人性白内障殊に初発性白内障に対するパロチンの効果は見るべきものがあり,経過観察期間1年以上4年5ケ月に及ぶ全症例37例中34例に白内障進行阻止の効果があり,その内の3分の1に視力の増進を認めている。 2.パロチン3mgを最初週2回上博に20本筋注し,次いで週1回20本,合計40本を最小必要量とし,その後 月1回の割に追加注射する。 3.パロチン注射は40〜50本で大体充分で,以.降はカタリン或はシネラリヤ点眼に切り換える。 4.パロチン注射にはさしたる副作用は認められない。

眼真菌症に対するナイスタチンの局所使用経験例

著者: 日開啓司 ,   小西勝元 ,   西村昭

ページ範囲:P.2047 - P.2051

 1879年Leberは糸状菌の感染によつて起つた前房蓄膿性角膜潰瘍の1例を報告した。その後約80年間に幾多の眼科領域における真菌感染症の報告がある。その主なものは重篤な症状を呈した角膜真菌症である。併しこの他に症状が軽微なために見逃がされている眼瞼及び結膜の真菌症も可成り多数ある。
 現在の眼科領域における真菌感染症を概観してみると次の2つの特徴が見られる。

アドレノクローム系薬剤のIridociliary Permeabilityに及ぼす影響

著者: 嶋田なつみ

ページ範囲:P.2052 - P.2056

緒言
 著者はアドレノクロームモノセミカルバゾーン(アドナ)が血液房水柵に及ぼす影響を,フルオルレッセンスを用いて検索し,フルオルレッセンスの移行態度からアドナが血液房水柵の透過性を抑制する事を知り,更にアドナの誘導体であるAC−17がアドナよりも速効性である事も認め,その成績を前報に於いて報告した1)2)3)。之等血管強化作用を有する一連のアドレノクローム系薬剤が血液房水柵に及ぼす影響には興味深いものがある。
 今回はAC−17にPolyvinylpyrrolidon (以下P.V.P.と略す。)を10%の割合に加えたデポ型アドナ(AC−17)が作製せられたので,AC−17にP.V.P.を添加する事によつて血液房水柵の透過性に如何なる影響を与えるかについて実験を行つた。その結果柳か知見を得たので弦にその成績を報告し,前報の成績1)2)3)と共に総括的考察を加えてみた。

家兎眼球各部のグルタチオン含有量,及びナフタリン白内障に於けるグルタチオン含有量とグルタチオン生合成能の変化について

著者: 難波淳典

ページ範囲:P.2057 - P.2061

緒言
 Pirie学派は角膜及び水晶体の透明性はその代謝に依存するようで,酸素及びブドウ糖を欠乏させるとき又はモノヨード醋酸,青酸塩のような代謝毒に曝らすときは溷濁してくること,水晶体の代謝エネルギーの大部分は房水含有のブドウ糖により補給されていることを報じている1)。実験的に種々の方法で起した糖尿病性白内障,及びX線白内障水晶体の代謝研究によるとAdenosinetriphosphateグルタチオン,及び可溶性蛋白の喪失が共通の現象であるが,最初に現われる変化はグルタチオンの減少であり,またグルタチオン還元酵素及びグルタチオン合成酵素の活性も減少すると云われる1)。さらに興味あることとしてグルタチオンの含有量は他の如何なる臓器よりも眼に多く,その中でも水晶体中に最も多く含有されている2)。Kinsey及びMerriam3)は白内障水晶体での実験成績からして,かかる水晶体でみられるグルタチオン含有量の低下は本来グルタチオン生合成の抑制によるものでグルタチオン分解の昻進によるものでないとしている。またPirie等は家兎のX線白内障で早期に侵される酵素はSH基を必要とする酵素であり,さらにグルタチオン還元酵素は極く早期に活性を失うと報じ4),Joce-lyne5)も生体内での還元型グルタチオンの確保にはグルタチオン還元酵素が主役を演じているとしている。

遮光眼帯試験について(第1報)

著者: 岡田隆子

ページ範囲:P.2062 - P.2067

緒言
 緑内障眼は暗処に於いてその眼圧が上昇するという事は,最初Grönholn (1910)によつて注目され,ついでSeidel (1920),Serr (1928),Sall-mann (1930),Ohn (1936),Ross (1953),Higgitt (1954),Fould (1956)等多くの研究者によりこの事実は緑内障眼に於ける誘発試験として研究された。我国では本現象について緑内障に於ける明暗試験として須田氏(1956)の発表があり,黒瀬氏等(1959)は暗室試験を含む負荷試験と日差の関連性について論じた。
 同年武田氏は暗室試験に於て自律神経遮断剤の全身投与によりより以上の眼圧上昇を来すという事から,又田辺氏(1960)は狭隅角緑内障眼に於ける暗室試験の際,前毛様静脈圧を測定し眼圧上昇と共にその静脈圧にも変動を見る事から,それぞれこの試験によつて起る眼圧上昇の原因を探究している。従来暗室試験の陽性率は狭隅角緑内障に高く,隅角が暗闇による瞳孔散大のため益々狭くなり,終に閉鎖して房水の流出が妨げられ,その結果眼圧上昇が起るという説が支配的である。Foulds (1956)は緑内障の早期診断にDarkro-om-testとDarkroom outflow testを行つた。

網膜異常血圧と陳旧性変化に対するJolethinの効果

著者: 山本由記雄 ,   並木緑也 ,   馬場みつ ,   加藤美智子

ページ範囲:P.2068 - P.2071

緒言
 柳氏は甲状腺機能亢進症に出現する中毒作用の強いTriiodothyroxineにヨードを,しかも200〜300γの微量のものを与えることによつて,Thyroxineが得られることを推定し,更に,従来のヨード剤内服による副作用を除外する目的で,ヨードにレシチンを結合させ,これをヨーレチンとして発表した。
 一方眼科におけるヨード剤使用の歴史は古く,内服,注射,イオントフォレーゼ,点眼と多岐にわたつて使用されているが,内服の点で私共は常にその適当な使用量に関して,又,その副作用に対して疑問をもつていた。幸いに1錠100γ又は50γという微量なヨード剤が手に入つたので,臨床実験を試みた次第である。本剤は第一薬品産業KK製のものである。

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眼科ニユース

ページ範囲:P.2079 - P.2079

医療金融公庫
35.11.12発表
 第1回貸入申込み及び貸付け状況は次の通りです。 1. 9月末日までの借入申込み,2,621,359千円に対して第1回分としての貸付決定額は約12億円で,この決定額のうち第一次として,680,190千円は受託金融機関を通じて本人に通知ずみであります。
 決定通知ずみの各県別の状況は別表の如し。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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