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特集 第13回臨床眼科学会号 一般講演
未熟児の眼症状について
著者: 中島章1 高山(依田)迪子1 天野清範1 吉本光久1 斉藤幸市1 大坪佑二2 小原正樹2 村松たつ2 女川栄光2
所属機関: 1順天堂大学眼科 2都立世田谷乳児院
ページ範囲:P.167 - P.172
文献購入ページに移動未熟児の眼症状に就いては,本邦ではあまり記載がないが,未熟児対策の進歩した欧米では幾つかの報告がある。就中,後水晶体線維増殖症(以後R.L.F.と記す)に就いては数多くの研究がある。本症は1942年Terry1)によつて見出され,第二次世界大戦後,一時は本症が多くの未熟児の失明を起す原因として各国で盛に研究がなされた。その結果未熟児に用いる酸素の使用量にその原因がある事が解明され,以後欧米ではその発生が著しく減少したと伝えられて居る。
我が国に於いても水川教授等の実験的研究2)吉岡氏3)等の組織学的検索,その他いくつかの研究がなされて居るが,日本の未熟児対策が遅れて居た為,欧米諸国で問題となった程,本邦にR.L.F.が発生しなかつたのではないかと思われる。私達は最近東京都の未熟児センターである世田谷乳児院に於て保育された未熟児約200名の検診を行い,7名のR.L.F.を発見した。これらは何れも出生時体重1380g以下のもので,酸素を多量且つ長期間にわたつて用いたもののみから発生して居る。我が国でも最近ようやく未熟児対策が軌道にのり,各地で未熟児の看護が行われる様になった。しかし,必ずしもこれらは欧米での苦い経験を充分に取り入れてR.L.F.に注意を払いながら行われて居るとはいえない様に見受けられる。
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