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特集 第13回臨床眼科学会号 一般講演
角膜脈波の解析(Ⅱ)—起源について
著者: 鈴木一三九1 西昭1 大月博視2 東郁郎3
所属機関: 1大阪府立病院眼科 2大阪府立成人病センター 3大阪大学眼科教室
ページ範囲:P.557 - P.561
文献購入ページに移動さきに吾々は,眼圧の搏動性変化にともなつて,眼球被膜の一部を構成している角膜が,どの様な仕組みで搏動的に振動するかという問題について報告した。即ち,心収縮期に生ずる眼圧上昇に応じて角膜がなすドームの曲率は小さく(曲率半径は大きく)なり,拡張期には曲率が大きくなる様に振動することを証明した。その結果,従来報告されていた植村式電気眼底血圧計による角膜搏動の記録波形(CAP波——角膜脈波を容積変化に導いて2次元波形に示した波)は,正しい意味の角膜脈波を,恰かも鏡像の状態で表現したものであることを指摘した。
今回吾々は,角膜脈波を生ずる原動力は眼内のどの部分の動脈に局在するかという点に主眼を置いて実験考察を試みた。その理由は,すでに川嶋氏が角膜脈波の主たるエネルギー源を網膜中心動脈に求めて,これを既定の事実として網膜中心動脈血圧測定が可能であるとするのに対して,一方広石氏等は網膜中心動脈栓塞症の1症例から,角膜脈波の起源は主として脈絡膜動脈にあると結論し,併せて脈絡膜動脈血圧測定の可能性について報告している。何れの説をとるにしても,眼球加圧によつて生ずるCAP波の消長から,眼底動脈の血圧算出の可能性があるならば,角膜脈波を生ぜしめる起源となるべき眼内動脈の局在について,今一度検討を加えることは必要なことである。
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