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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科14巻4号

1960年04月発行

文献概要

談話室

第64回日本眼科学会総会をきいて(2)

著者: 杉浦清治1

所属機関: 1東大分院眼科

ページ範囲:P.907 - P.911

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 外人の招待講演は第2日午後1時から多数の聴衆を集めて行われた。演題は「放射能による白内障発生機転」演者はIowa大学教授Leinfelder氏で,放射線白内障の研究を25年来やつて来られた方だそうで,広瀬会長が原爆の地長崎に特に因んで選ばれた演題と人選であつた由である。
 まず放射線白内障の研究に業績のあつた日本人の名前をあげて講演を始めるあたり仲々如才がない。放射線白内障は毛様体障碍につづいてではなく,水晶体上皮の一次的障碍によつて起る。上皮の中では赤道部が最も感受性が強く,照射された上皮細胞は赤道部に移動しそこで異常増殖を行い異常線維が作られて混濁するが,この混濁は次第に後方へおしやられる。水晶体を部分的に照射するとその部分に白内障が起る。水晶体の全照射を行えば完全白内障を起すだけの線量を部分照射すれば完全白内障は起こらない。非照射部が何等かの機転で完全白内障を予防する。分劃照射は白内障を起しにくい。水晶体上皮の組織培養したものに照射しても,生体と同様な変化vacuole, micronuclei等が現われる。放射線感受性は動物種によつて違う。非感受動物でも上皮の変性は起るが,病的線維が作られないために白内障にならない。中性子による障碍はX線より大きく,分劃照射でも障碍が減らないし,休止期間中に恢復現象がない。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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