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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科14巻6号

1960年06月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会会誌

トラコーマ集団治療に関する研究—第3報 集団治療における難治性および抗療性トラコーマについて(後編)

著者: 浅水逸郎

ページ範囲:P.27 - P.29

2.ト手術後の結膜変化及びその分類
 此の様な手術により結膜変化を模型的に整理すると第1図の如くなる。以下簡単に総括説明を加える。
(1)前垂形成型(前編症例1)最近は減少したがパクレン,トラコーマ鑷子等に依り強度に結膜を損傷し,主に膠原層迄侵された揚合,之が基礎となり発生すると考えられる。或いは強度の偽膜(或いは濃厚なベラーク)を作つた場合これの組織化が行われ,その下に濾胞,細胞浸潤が存在し,未治癒の状態となる。発生予防には勿論此の様な強度の手術を行わないことと,偽膜発生の場合その組織化の前に剥離を必要とする。

連載 眼科図譜・64

弾力線維性仮性黄色腫を伴う網膜色素線条症,特に矮躯の合併について

著者: 米山高道 ,   米山杏子

ページ範囲:P.1013 - P.1014

綜説 第64回日本眼科学会宿題報告概要

葡萄膜炎の病因と病理—主として病因について

著者: 浦山晃

ページ範囲:P.1015 - P.1021

はじめに
 此処に38歳男子の慢性葡萄膜炎患者がある。4年前一度入院した事があり,両眼性再発性である。既往歴には腎炎と肺結核とがあり,性病をも否定しない。内科では,左肺上野に非活動性の病巣を認め,歯科では歯槽膿漏がある。血液ワッセルマン反応,ツベルクリン反応共に陽性。皮膚には痤瘡様のものを出すことがあり,口唇にアフタを生じた事もあつたと云う。さてこの症例の原因はどの様に判断したら良いであろうか。
 60年前,Michelならば,これを腎炎に帰したであろうし,又,多くの人は,50年前なら梅毒,30年前なら結核,そして20年前ならおそらく病巣感染を疑つたであろうと思われる。更に,若し4年前,Sabin-Feldman-Testが,仮に陽性に出たとするならば,トキソプラスモージスを考えたかも知れないし,最近なら,或はBehget病を否定できないのではないか,との意見も出かねないのである,ということで,ここに微妙なる問題が一つ胚胎している。

臨床実験

弾力線維性仮性黄色腫を伴う網膜色素線条症,特に矮躯の合併について

著者: 米山高道 ,   米山杏子

ページ範囲:P.1022 - P.1028

 本症はDoyne (1889)が眼球打撲後の網膜脈絡膜変化として始めて記載し,次でPlange (1891)がStreifenförmige Pigmentbildung, Knapp(1892)がDark angioid streaksと表現して独立疾患としたものである。
 わが国では主として網膜色素線条症,英米ではAngioid streaksの病名で報告され,その成因に就て種々論議されていたが,Groenblad (1929)(1932)が皮膚科Strandbergとの協力により,次でMarchesani-Wirz (1931)もこれと別個に弾力線維性仮性黄色腫(Darier 1896)との合併を指摘して以来,本症が全身弾力性物質の変性を基調とする系統疾患であり,眼底に於ける色素線条は脈絡膜弾力膜の変性亀裂により出現するものとして一般に理解され,その後Böck(1938),Ha-gedoorn (1939),仁田等(昭31)の剖検によつてその見解の妥当なことが確認されるに至つたものである。

幼児色盲検査表(小嶋,松原)の検討

著者: 小嶋克 ,   馬嶋昭生

ページ範囲:P.1031 - P.1037

I.序
 学校保健法の改正により,昭和34年度から,小学校低学年の児童は勿論,就学前の身体検査で,視力と共に色神検査を行い,障碍の有無とその種別を明かにする様に定められ,その方法として,色盲表を手でたどらせる様に規定されている。就学時に既に色神障碍の有無が判明しておれば,教育上からも,児童の将来のためにも非常に有益であるが,ここに規定されている如き方法でどの程度迄実施が可能であり,又正確な結果が得られるかと言うことは充分に検討されねばならない。実際かかる検査を行うことに相当困難を感じている学校も多い様である。
 従来より石原式の曲線表の如く手でたどらせるものがあるが,最近二,三幼児用として製作されたものがある。

フルオレスシンの眼房内移行について—附:前房内Fl濃度測定装置の試作

著者: 中村重雄

ページ範囲:P.1038 - P.1045

緒言
 血流に入つた物質が眼内に如何なる様相にて出現するか,此の現象を研究する事は,眼機能上及び眼科臨床上に於ける諸問題の究明に対し重要な手段の一つになる。眼内移行の研究を眼房水に限定する時,所謂血液房水柵(以下血房柵と略す)に関する渚問題として古くから採り挙げられて来た課題である。文献上挙げられた研究対象物質は枚挙に連がないが,大多数は測定に際し前房穿刺等を行わなければならず,又,測定手技も複雑で臨床に応用するには多くの困難を伴なうのが普通である。生体で直接観察するに便利なのは色素の注入であるが,陽性荷電色素は一般に移行性が少い。1882年Ehrlich氏は,血流中に注入した陰性荷電であるフルオレスシン(以下Flと略す)が眼房に出現した事を記載している。Fl—ナトリウム(ウラニン)は拡散性の強い酸性色素であるから移行量が大きく,且,螢光性の為微量でも検出が容易であるので,之を用いた業績は極めて多数の報告があり,近年,生理的条件を比較的侵害することの少いAmsler-Huber法の発表以来特に臨床例も含めて相次いで報告せられるに至つた。
 Flの眼房移行に関して,Flが血房柵を通過する事実には特に議論の余地はないが,Flの血房柵透過に於ける態度に就いては異論百出の態である。血房柵は物質の通過に当つて阻止するのが本来の態度であるが,柵である以上其の間隙を潜ぐり抜けるものもある。即ち物質に依り其透過性に差がある事である。

広汎な転移を伴つた眼瞼癌の一剖検例

著者: 石田常康

ページ範囲:P.1046 - P.1051

緒論
 眼瞼癌は左程珍しい疾患ではないが,眼部には生命保持に絶対必要な器官がないこと,その発育が極めて緩慢なこと及びその転移が著しくないこと等の理由により,本病で死亡する例に,我々眼科医が遭遇することは極めて少く,更に剖検の機会にめぐまれることは殆どない。
 文献上,今西氏(大12年,肝転移を示す),Tallei氏(1926,全身衰弱を示す),生駒氏(昭31年,全身衰弱を示す)等の剖検例が報告されているが,今西氏の報告例は記載が簡単であり,後二者の例は全身転移が認められていない。

春季カタルのβ線療法に関する研究

著者: 斎藤嘉輔 ,   田中直彦 ,   多賀邦夫 ,   石黒元雄

ページ範囲:P.1052 - P.1061

I.緒言
 春季カタルの治療法については,従来よりアドレナリン,コカインの点眼,遮光眼鏡装用,其他種々の方法が試みられた。然しこれらは自覚症状を僅かに軽減させる程度であることは,周知の通りである。
 現在最も一般に用いられている副腎皮質系ホルモンは,従来の治療法に比較して自覚症状,分泌物の減少に対し,著しい効果がある。又他覚的にも,眼球型にはよく奏効するが,眼瞼型の乳頭増殖には,極めて不充分な効果しかなく,又点眼を中止すると,再発するのが常である。

二重眼瞼術に於ける皮膚予定線の設定について

著者: 沈啓文

ページ範囲:P.1062 - P.1064

I.緒論
 二重眼瞼術における皮膚予定線と瞼縁の距離については,過去において色々論じられてきた。著者は台湾の女子17〜25歳までの二重眼瞼の中,一皺襞性で形の美しいもの540眼を選び 1)二重眼瞼の皺襞が蒙古襞およびその下方に移行するもの

シノミン点眼液について—その抗菌力・安定性および臨床経験

著者: 鈴木一三九 ,   西昭 ,   奥田茂 ,   北山藤吾

ページ範囲:P.1067 - P.1073

はしがき
 1935年DomarkによるProntosilの発見に始まつたサルファ剤の研究はSulfa-thiazole,Sulfa-diazineに至りその頂点に達したが,その後のFlemingにょるPenicillinの発見に引続いた抗生物質の目覚しい発展の蔭にその化学療法剤としての価値を忘れられていた感があつた。然るに最近,新らしい持続性サルファ剤の登場をみたので,それが化学療法の分野に占める地位についてはもう一度検討されて然るべきときがやつて来たものと思う。
 持続性サルファ剤(Long-acting Sulfa-drugs)の一つである5-Methyl-3-Sulfanilamide-isoxa-sole (シノミン)は,その広い抗菌性と臨床使用上における種々の有利な条件とによつて優れたサルファ剤であり,眼科的局所剤として採りあげてよい製剤であると考える。

T245眼軟膏の使用経験

著者: 藤山英寿 ,   藤岡敏彦 ,   吉田テイ ,   井口重利

ページ範囲:P.1075 - P.1081

 副腎皮質ホルモンが臨床面に応用されて以来,眼科領域に於てもその卓越した抗炎症作用殊にアレルギー作用は,諸種眼疾患に顕著な効果を治めている。Cortisone, Hydro-cortisoneは我々も数年来使用して来たのであるが,最近それより強力且つ毒性の少い合成副腎皮質ホルモンとして,Prednisoloneが出現し広く各科に於てその応用が発表されている。我々は今回武田薬品よりPre-dnisolone acetateの供試品T245軟膏の供与を受け,臨床応用の小実験を試み,いささか興味ある結果を得たので報告する。

高血圧性眼底病変と血圧

著者: 神鳥文雄 ,   岸田利夫 ,   児島日出男

ページ範囲:P.1082 - P.1086

I.緒言
 本態性高血圧と眼については,検眼鏡による眼底検査が簡単に行うことが出来るし,分類基準となり。その診断,予後に重要である,私等は高血圧性眼底病変を認められた者にKeith-Wagener1)分類(以下K-W分類と記す)を適用して考察を試みた。

パラフィン様物質による美容成形に際し惹起された眼障害の3例について

著者: 佐伯譲

ページ範囲:P.1086 - P.1088

緒言
 御承知の如く美容成形は近来頗る盛んであり,女性のみならず男性間にも流行して居るが,各人各様の手技,材料によりその大部分は秘中の秘で公開されず,私共の窺い知る処でない。従つて事故は学術的に究明されず,吾々として反省の機会もなかつたが,私は最近同一材斜を使用した美容成形に際し眼障害を来した症例を続けて経験したので報告する。本例に使用された物質も御多聞にもれずその性状は秘中のものとされ,私共は勿論術者にさえもその性状をはつきり知らされずに施術されて居る現況で,従つて処置も対症的ならざるを得ず3例中2例失明という結果となり患者及び術者の心痛を救うことが出来なかつた。

アラヒノダクチリーを伴える水晶体偏位に色神異常を合併せる一家系

著者: 森田三千代 ,   塚原伸司

ページ範囲:P.1089 - P.1092

 私共は最近アラヒノダクチリーを伴つた水晶体偏位の1例に遭い,家族的にも同症を証明し,又先天性色神異常をも伴つた珍しい家系を観察したので報告する。

角膜脈波伝達時間測定時に於ける角膜の意義について

著者: 川嶋菊夫

ページ範囲:P.1092 - P.1095

緒言
 慶大式電気眼底血圧計により描記される角膜脈波の問題について最近漸く云々されて来た。その第一の問題として脈波の伝達時間の問題がある。1955年山本氏は本装置を用い角膜脈波伝達時間を測定され,そのECG-Q点より脈波起始点に至る時間の意外に遅くFismyer氏による末梢血管脈波に関する研究と一致せざる点に疑問をもたれ,解剖学的に網膜,脈絡膜の問題にあると一応解釈せられた。又1959年鈴木氏はこの伝達時間に疑問をもたれ眼球被膜特に角膜の動きに問題点を移され模型実験をもとに論議され,圧上昇時は眼球が伸展され,眼内圧変動時角膜は反つて凹み脈波は反転するのだと解釈せられた。更に金子氏は眼球の特異性と之に加圧と云う因子が加わる為め脈波は遅くなるのだと説明されている。著者はこの問題に生理学的検討を加え興味ある結果を得,これが本問題の解明の一助になる事を期待し茲に報告する。

銀海余滴

受水器と拭綿

著者:

ページ範囲:P.1045 - P.1045

 春の結膜炎流行期には屡々院内感染に悩まされることがある。如何に十分に注意し,手洗を厳重にやつていても,うつるときには簡単にうつつてしまう事があり,はてなと首をかしげる。そこで次の2点を注意してはどうか。
 1)拭綿は洗眼処置中,片眼が終つたら捨て,片眼には新しい綿を使用する。両眼に共用せず,処置中,綿を指などの間に狭まない。

臨床講議

ヒステリー性黒内障の1例

著者: 鈴木宜民 ,   金井塚道節

ページ範囲:P.1096 - P.1101

はじめに
 ヒステリーは機能的疾患すなわち神経症の1つと考えられておるが,最近日常の外来診察で本症を見る機会は決して少なくない。本日は定型的なヒステリー性黒内障の1例を供覧し,それについて少しく述べてみたい(ヒステリーを以下Hyと略す)。

談話室

アメリカのコンタクトレンズの現況—見聞記(3)

著者: 水谷豊

ページ範囲:P.1103 - P.1106

12)Con-LishとDr.Cepero
 Con-LishとはSpherconと同様に一商標名であり,私が敢て,その宣伝員として,提灯を持つわけではない。然しCon-Lishのアイディアは,私の滞米中興味の持てる一つであつたし,それにも増して,私はDr.Ce-peroの人柄が大変気に入つたので,ここに紹介する次第である。Con-Lishとは"Conical and concentricpolishing"の謂いで,コンタクトレンズの辺縁部の形成を,系統的に行う方法であり,今迄縁取りに手とパフを用いて行つていたレンズは,これを拡大して見ると,同じ人が仕上げたレンズでもまちまちであり,相当粗雑であるので,その改良の必要に迫られ,180°,140°,90°,60°,40°の研磨面を持つ器械を作り,レンズ縁を,これらの器械に順次にかけて,レンズ縁をカツトし又研磨し,理想の縁取りを行う事に成功したわけである。5分から5秒に亘る諸段階の研磨工程を経て,臨床的に,最も異物感の少い辺縁を持つコンタクトレンズを作り出すのである。手先の不器用なアメリカ人には,恰好な装置であると言えるし,又一定の同じ型のレンズを仕上げる上から言つて,理想的とも言い得る。然し乍ら,この方法で,レンズ縁の総ての円みをうまく作り出すのに,満点であるとは保証しかねる点があり,スピードの点でも案外時間がかかつて,かえつて不便であると批評する人もある。

私の経験

本態性高血圧症と動脈硬化症との病態生理にもとづく分類

著者: 岩田秀三

ページ範囲:P.1108 - P.1114

 本態性高血圧症はみな同一の経過をとつて進行するものではない。単に経過に遅速があるのみでなく,おのずから病型がある。あるものは永く生命を全うし,あるものは脳軟化となり心筋梗塞となり,あるものは脳出血となり,又あるものは尿毒症となる。これらの各型は各々異つた病態生理を示している。
 近時降圧剤と血液抗凝固剤の発達はこれらの病型を鑑別して致命的病変への発展を未然に防ぐ必要を益々痛感せしめるに至つた。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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