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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科14巻7号

1960年07月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会々誌

トラコーマ集団治療に関する研究—第4報 トラコーマ集団治療の対象としての家庭内感染

著者: 浅水逸郎

ページ範囲:P.31 - P.33

I.緒言
 第2編にトは再発・再燃により難治化,抗療化することが多く,此の原因については一応家庭内に於ける再感染が重要性を持つならんと推定した。
 ト予防対策上最も必要なるのは伝染経路の解明である事は今更強調する必要がない。トが慢性伝染病であることと,感染の要因等を考えれば家族に集積して検出される傾向を見出され得ることは想像に難くないことである。以下若干の調査成績につき述べる。

連載 眼科図譜・65

裂孔状瞳孔の1例

著者: 船坂圭之介

ページ範囲:P.1121 - P.1121

綜説

ブドウ膜炎の病因に於けるストレスの問題

著者: 池田一三

ページ範囲:P.1123 - P.1130

(A 筆者の友人,眼科開業医 B 筆者)
 A:長崎の日眼総会での宿題報告是非拝聴したいと思いながら,とうとう暇がなく欠席して残念だつた。浦山,鹿野両先生の御講演は後日原著でよませて頂くとして,せめてきみの話の大要をきかせてくれないか。
 B:宿題報告のぼくの分は,実は練習のときのテープがあるので,それをスライドを見ながらきいてもらえば,大体学会当日の話をそのままおつたえできるのだが,2人の間でかたくるしい演説口調もどうかと思われるから,要点を少しくだいて,裏ばなしをまぜながらお話ししよう。

臨床実験

網膜色素変性眼の後部硝子体剥離について

著者: 竹田俊昭

ページ範囲:P.1131 - P.1140

I.緒言
 私は1958年の日本中部眼科学会で,広大眼科において5年間に乳頭前硝子体斑PräpapillärerGlaskörperfleck (以下PGFと略記する)の検眼鏡的認知に基いて診断された後部硝子体剥離の統計的観察を報告し(本誌第13巻,978頁),本疾患の頻度が決して低くなく,むしろ相当高いことを指摘した。この観察でPGFが認められた280眼の随伴した眼変状の中に,網膜色素変性は4眼を数えるに過ぎなかつた。しかし病因判定の不能な硝子体混濁群344眼の随伴眼変状においては,網膜剥離174眼,高度近視48眼に次いで,網膜色素変性21眼が第3位を占めたのである。
 一方細隙灯検査で,網膜色素変性26眼中の24眼に後部硝子体剥離を認めたとのRiegerの報告もあるので,網膜色素変性の場合にはPGFの検眼鏡検出の条件が悪いのではあるまいかとの疑問が生れ,新材料についての再検討の要が感得された。

虹彩内皮の電子顕微鏡的研究

著者: 岩本武雄

ページ範囲:P.1143 - P.1148

緒言
 虹彩の前面を被う虹彩内皮16)Endotheliumcamerae anterioris16),Endothel (belag)3),ante-rior endothelium13)が果して人間に於て実在するものであるか否かは,古くから多くの人々によつて論ぜられて来た所であり,その検索の歴史はGraefe-SaemischのHandbuch15)やMöllen-dorffのHandbuch3)等に詳しく述べられている。
 Wolfrum14)によれば,他の動物に於て明らかに認め得るEndothelbelagが齧歯中類では不完全であり,人(成人)と或種の猿類には認める事が出来ないという。Lauber3)はMöllendorffのHandbuch der mikroskopischen Anatomiedes Menschenに於て,人間の虹彩に部分的なDeckzellenの存在を認めてはいるが,Wolfrumの所見を重視して,Endothelbelagに関してはやはり否定的である。鈎4)は周到な実験方法に基づいて,人間にもEndothelbelagの存在する事を主張している。これらの光学顕微鏡的検索に対して最近Tousimis and Fine10)11)は人間とrehsus monkeyについての電子顕微鏡的観察結果を報告した。

結膜炎,涙嚢炎の細菌学的研究—第1編 一眼科医院の急性結膜炎患者の細菌学的研究,特に塗抹標本検索を中心として

著者: 伊東正明

ページ範囲:P.1149 - P.1157

緒言
 従来眼科領域に於ても細菌学的検索は特に重視され,急性結膜炎患者の分泌物は先ず必ず塗抹標本をつくつてその菌検出を試み,菌の種類により一つ一つ薬剤を使い分ける習慣をつけられていた。近年になつて抗生物質の出現はその広範囲の有効スペクトルの為に常に多忙な外来診療では菌検査を省略して治療を行う習慣がつき始め,又それによつて特別不都合も認められない。
 私は化学療法剤が未だ充分普及していない時期に於て,某眼科開業医院外来に於ける急性結膜炎の分泌物を丹念に検査し,統計的に種々の観点から検討を加えた。

裂孔状瞳孔の1例

著者: 船坂圭之介

ページ範囲:P.1158 - P.1159

緒言
 裂孔状瞳孔は一名猫様瞳孔とも云つて,数多い眼球の先天性異常の中では極めて稀有なものとされて居り,1899年,Fehr氏の記載を嚆矢として今日迄大略60眼の報告を見るに過ぎない。
 最近私共は,片眼の典形的裂孔状瞳孔を有する1患者に遭遇したので,茲に報告すると共に,此が発生についても聊か触れてみたい。

緑内障の視野(第1報)

著者: 徳島邦子 ,   水垣勝代 ,   岡田隆子 ,   吹田りよ子

ページ範囲:P.1160 - P.1164

I.緒論
 緑内障の診断に就いて,視野の検査は非常に大きな役割を果している。緑内障の臨床的症状が少く,疑わしいような場合,又緑内障の原因に就いての考察や,治療方針の推定,外科的処置の必要性の有無,予後判定等の場合に他の所見や検査と関連して重要である。
 私共は緑内障の視野変化を,周辺視野計及平面視野計を用いて,1)正常又は軽度の周辺部視野狭窄のみ認めるもの。2)マリオット氏盲点部の視野欠損。3)狭窄著しく固視点部にのみ視野の残存せるもの。の3つに分類して報告する。1)は緑内障の視野の内で最も初期のものであり,2)はその中間,3)は末期の状態のものである。

眼球後部血管の角膜脈波に及ぼす影響並びにその阻止について

著者: 川嶋菊夫

ページ範囲:P.1165 - P.1169

緒言
 著者はさきに角膜脈波に関する第1の問題として,其伝達時間測定時に於ける角膜の態度について報告した。今回は第2の問題として球後血管が角膜脈波に及ぼす影響について検討してみた。そもそも眼球後部血管の搏動により眼球が律動的に前後に運動する事は,Müller氏により述べられHelfrich,Tuyl両氏の研究により裏付けられた。続いて1930年Wegner氏により再び報告され,吾国でも宇津見,堀内両氏が眼窩plethysmo-graphを用いて此の運動を捉え,何れも眼動脈により生ずるものなる事を報告した。従つて今迄の慶大式電気眼底血圧計(MPR30V)により角膜脈波を描写する場合,前方より(眼窩開放端)眼球を圧追する故に当然この眼球後部血管の搏動による眼球前後運動の影響が這入つてくる事が想像される。従つてこの影響が如何なる形で這入つてくるであろうかと云う事は真の眼内血管による脈波を知る上に大切な事である。又この影響により生ずる脈波(変形波)を如何にしたら除去し得るやの根本問題を提起する事ともなるわけで,この問題の解決ありてこそ真の眼内血管による脈波を把握する事が出来,眼内循環の態度を正確に知る事が出来る。他方球後血管の状態を別の記録として取出し得る事が出来,茲に眼窩,眼内循環動態を解釈し得る尺度となる事が出来ると確信する。

Sintromの使用経験

著者: 三国政吉 ,   笛田孝雄 ,   田中幹人 ,   八百枝依子

ページ範囲:P.1170 - P.1178

 抗血液凝固剤療法の進歩に伴い,その製剤にも種々の改良が加えられて優れたものが沢山作られるようになつている。Cournarin系の製剤であるSintromもその一つであるが,今回藤沢薬品の提供をうけて網膜静脈血栓症,硝子体出血及び網膜色素変性症に対し試用の機会を得たので以下にその成績を報告する。

Sinomin-Na点眼水について

著者: 大石正夫 ,   石田一夫 ,   田中幹人

ページ範囲:P.1181 - P.1187

 新持続性サルファ剤の1つであるSinomin (5--methyl-3sulfanilamido-isoxazole)はSulfiso-xazoleの新誘導体で抗菌力並に抗感染力が強く,生体内における感染防禦力は高級サルファ剤の約2倍強力で毒性が少くSulfisoxazoleに比べて極めて高い有効血中濃度を長時間維持するため1日2回の,しかも少量の経口投与によりすぐれた臨床成績の得られることが各科から盛んに報告されている。
 このナトリウム塩であるSinomin-Naは無色針状結昌で水に易溶性の局所用製剤であるが,今回塩野義製薬からこの提供をうけて点眼水としての実験を依頼されたので得られた成績をここに簡単に報告する。

Predonine油性点眼液について/Decadronの使用経験—(その1)全身投与

著者: 浅山亮二 ,   三浦寛一 ,   上野一也 ,   植田謙二郎 ,   錦織劭

ページ範囲:P.1189 - P.1198

緒言
 眼科領域に於る各種ステロイドホルモンの使用は,全身投与の外に,懸濁液点眼,軟膏点眼,結膜下注射,球後注射等の形に於て局所使用が行われ,其の強力な抗炎症作用,抗アレルギー作用は既に万人の認める所となり,広く日常の診療に利用されている。この中,懸濁液点眼,軟膏点入の眼科的応用については既に浅山等の報告を含めて幾多の報告があり,更に結膜下注射,球後注射の応用についても可成の記載をみている。日常よく用いられる眼局所投与法としての懸濁液点眼,軟膏点入については,夫々長所と短所があり,この両者の中間を行く物として,既にCortisone,Tet-racycline等の油性点眼液の出現をみている。今回,我々は塩野義製薬よりPredonine油性点眼液の提供を受け,これの点眼による前眼部炎症性疾患の治療を試み,又これと共に家兎を用いて,馬血清によるアレルギー性虹彩炎に対するPredo-nine油性点眼液の治療効果,及びアイソトープを用いて油性点眼液と水性点眼液の結膜嚢内滞溜時間の比較を行つたので,其の成績について述べる。
 Predonine油性点眼液はβ-Octyldodecanolなる高級アルコールに,Prednisolone enanthateを溶解したもので,我々はその0.1%,0.25%及び0.5%溶液を使用した。

内分泌性眼球突出の治療上の2〜3の問題について

著者: 植村恭夫

ページ範囲:P.1211 - P.1215

緒言
 内分泌性眼球突出は,其の成因に関して現在尚多くの実験的,臨床的研究による解明が試みられているが,未だ仮説の域を脱する迄には至つていない。又,本症の治療は甚だ困難なものとされ,内科医,外科医,眼科医の屡々苦しめられる問題である。著者は本症の治療に関する2,3の問題に対し,臨床的,実験的研究を試み若干の知見を得たので茲に報告する次第である。

孤立性網膜嚢胞形成—(その2)両眼対側性網膜孤立嚢胞の一剖検所見例

著者: 新津重章 ,   浅水逸郎 ,   水野敏夫 ,   黒滝四郎

ページ範囲:P.1216 - P.1220

I.緒言
 前報にて記述せる如く,真性の所謂孤立性嚢胞は臨床的には検眼鏡により発見は困難であり(Leber),更にその組織検査の報告例も,真の孤立性嚢胞に関する限り稀である。我々は両眼に対称性の巨大な孤立性嚢胞を有する症例に接し,その組織像をも検索し得る機会に接したので報告する。

網膜中心動脈血圧の測定誤差及び正常値について

著者: 下山順司

ページ範囲:P.1221 - P.1225

I.緒言
 網膜中心動脈血圧(以下N.A.D.)に関する業績は洋の東西を問わず既に多くの報告がみられる。特にBailliartのOphthalmodynamometerの発表以来特にその進歩は著しいものがある。本邦に於ても植村・菅沼,長谷部の報告以来かなりの成績が報告されており,遂には植村教授の電気眼底血圧計の出現に至つた。その間測定装置もBailliart以後本邦に於ては慶大式,新大式,新慶大式等が発表されて改良されている。しかし現在一般臨床医の間では,その使用法の比較的容易な点でBailliartの装置が最も多く使用されているようである。
 このBailliartの装置による測定に於ては従来から各報告者により指摘されている如く,測定時に生ずる誤差がみられるのであり,これと共に各学者により報告された健康者の値もかなり広範囲に及んでおり,これは同一装置による測定に於ても前述の誤差も恐らく関係しているものと思われる。

尿素の緑内障臨牀応用—血液滲透圧と眼圧の関係

著者: 相沢芙束 ,   ,  

ページ範囲:P.1226 - P.1232

 血液滲透圧の変化により眼圧の上昇及び下降を惹起しうる事は,すでに古くHertel1)及びDueke-Elder2)の動物実験に証明された処である。此の臨床的応用としてはDyar & Mathew3)がOsmotherapyとして庶糖静注を緑内障高眼圧例に利用し,又Bellows4)等がSorbitolを利用して一応の効果をみている。庶糖では腎に対する毒性が考慮され5),臨床的応用価値は少く,又,Sorbitolも臨床的にはあまり利用されていないようである。文献的にはOsmotherapyに関係ある薬剤に就いて特に分子量,血液及び眼房水への分布及び血液内に於ける安定度等を考慮した研究はない。最近著者等は脳外科6)で使用されはじめている尿素を上述の見地より緑内障高眼圧例に使用し著効をみとめ,Arch. Ophth.7)に発表した処である。今回更に血液滲透圧変化と眼圧変化の相関関係について水,高張食塩水及び尿素を使用して臨床実験を行つたので報告する。併せて尿素の臨床応用について考按したい。

銀海余滴

人道的実験技術

著者: 桐沢長徳

ページ範囲:P.1187 - P.1187

 前号で私は「犬の豪華アパート」という短文を書いてその中で動物実験をする人の態度について考えてみた。所が,図らずも丸善の雑誌「学鐙」の最近号にのつている新刊書紹介の中に,Russell,Burchという著者(英人)が"the Principleof Human Experimental Tech-nique"という本を出していることが安東洪次氏によつて述べられている。その内容は動物実験に於ける根本原理を説いたもので「実験動物を平安から苦悩に至る精神状態の階段の,できるだけ上位の状態に動物を置くことが『人道的』というわけで,これによつてのみ正確な科学的成績が期待出来る」と述べて居り,丁度私が前項で抱いた感想を見事に裏付けている。
 この本の内容については私もまだ読んでいないので分らないが,動物の種々の環境がその生理的反応に及ぼす影響を詳しく説いてある由である。然し,私が今問題にしたいのは,その内容の詳細よりも,このような根源的な反省を日本の実験者が真剣に考えたことが果してあるだろうか,という点である。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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