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文献詳細

雑誌文献

臨床眼科14巻8号

1960年08月発行

文献概要

綜説

白内障手術の種々相—特に水晶体吸引術について

著者: 桑原安治1

所属機関: 1東京医大眼科

ページ範囲:P.1241 - P.1249

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緒言
 白内障は古くからある疾患であり従つて其の手術法も時代により異なり術式も種々様々なものがある。例えば角膜縫合の問題を取上げて見ても本邦に於ては戦前には私の知る限りに於ては原則として行つていたのは庄司義治先生のみであつたが戦後では大部分の眼科医は前置なり後置なり鞏角膜縫合を行つている。又水晶体摘出法の問題を顧みても戦前は殆んどの眼科医は嚢外摘出術を行い,僅かに市川清先生等数人の眼科医が嚢内摘出術を行つていたのに,戦後に於ては大半の眼科医は嚢内摘出術を行つている。この様に時代の進むと共に白内障手術の術式は漸次改良され増々良好の手術成績を得る様になつて来た。又一面より考えるならば良好な視力を得,円形瞳孔を保ち優秀な手術成績を得んが為めに患者は安静を強いられる。白内障の中でも特に老人性白内障に於ては近来鞏角膜縫合によつて絶対安静の期間が減少はしたが全く廃止するには至らず一定日数の絶対安静は必要とされている。
 老人に絶対安静を而も両眼繃帯をして暗黒として一定期間行うと全身的に種々の障害が起る。即ち幻聴,精神錯乱症等が起り病床の上にて暴れ又は起上つて歩き出す等の行為を行う為め安静は障害され予後は不良となる。又心臓機能の減退した老人は絶対横臥により心臓機能は更に低下して肺の血液循環が不良となり鬱血性肺炎を起し生命の危険に瀕する事がある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1308

印刷版ISSN:0370-5579

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