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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科14巻9号

1960年09月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会会誌

トラコーマ集団治療に関する研究—(第5報)各報の総括,考按及び結語

著者: 浅水逸郎

ページ範囲:P.43 - P.45

I.総括
 著者は第1報において集団治療,特に学校集団治療を中心として各種治療法の成績及び適応症に触れ,診断基準についても言及した。診断基準に関しては西欧の見解特にMac Callan氏分類,及びWHOの診断基準につき批判を加え,次いでトラコーマ委員会分類にも若干の考察を加えた。更に集団治療は之を運営する眼科医が充分に考察を加えないと,折角の治療も無効或は有害の場合も生じ,現在でも此等の治療に依り難治化,抗療化している患者も少くないので有効な治療法を検討した。
 第2報に於ては農村に於けるトの再発再燃を重視しその実体を調査し,此の再発等が農村ト減少の隘路であることを見出した。即ち農村トが減少しないのみか治癒し難い症例を生じ易い原因に関しては,第3報に於てその分析を行い,組織自体の難治性,抗生物質の耐性,ウイルスの変化,無批判的に行われるト手術等に関し述べ,特に後者はその大きな原因と考えられるので,その適応症及び後治療の重要性を強調した。

連載 眼科図譜・67

チスチン症(Fanconi症候群)における眼所見

著者: 浦山晃 ,   吉田冴子

ページ範囲:P.1341 - P.1341

綜説

眼科に於けるレントゲン診断並びに放射線治療

著者: 戸塚清

ページ範囲:P.1343 - P.1350

 眼科領域に於けるレントゲン診断,並びに放射線治療に就いて,簡単に常識的な事柄を色々申述べ,大方の御参考に供したいと思う。始めにレントゲン診断の事に就き少しく申述べる。
 先ず撮影用のレントゲン装置の事であるが,動脈撮影等を行う場合は別として,眼科では通例大線量の瞬間的撮影を行う必要はない。相当長い時間をかけても,頭部や眼球の固定,固視さえしつかりしていれば,小容量の装置でも立派な写真が撮れる。唯影像を鮮鋭ならしめる為には,焦点が小さいという事が必要である。理想をいえば,廻転陽極式の装置が適当であるが,之がない場合にはポータブルの装置でも結構良い写真が撮れる。なお最近では胸部等に対しては,高圧撮影法が推奨される気運が出て来たが,頭部の撮影等の場合には,現在迄の処,未だ従来の方法が一般には好んで行なわれている。

手術

網膜剥離に対する鞏膜短縮術(仮称Chamlin-Rubner法)の経験—予報.附 鞏膜短縮術の適応に関しての私見

著者: 塚原勇

ページ範囲:P.1352 - P.1360

 網膜剥離に対する鞏膜切除術(鞏膜短縮術,眼球短縮術,鞏膜切除短縮術)の効果が,はつきりと我国に於ても認められて来た事は,臨鉢眼科14巻3号の網膜剥離特集をみても之をうかがい得る。勿論この術式を行うことに慎重な人々と,積極的に適応をひろげて行う人々とがあるが,鞏膜切除術が,単純なるジアテルミー凝固法では救い得ない症例群に対して,何割かは有効である事は,大部分の術者の認めているところである。残された問題は,鞏膜切除術の適応をよりはつきりさせる事と,術式の改良及び本術式の有効限界を明かにする事であろう。
 私は昭和35年3月以降,1956年Chamlin及びRubnerが記載した方法1)(Lamellar under-mining)を採用し,之を私の鞏膜切除術に対する考えに則つて術式を若干改めた変法によつて鞏膜短縮を行つている。症例が少なく,術後観察期間も充分でないが,予報として報告し,あわせて鞏膜短縮術の適応に対する私見を述べる。

臨床実験

チスチン症(Fanconi症候群)における眼所見

著者: 浦山晃 ,   吉田冴子

ページ範囲:P.1361 - P.1366

 チスチン症とは,主として小児科領域で知られているひとつの代謝障害であるが,眼科医には殆んど知られることがなかつたために,眼科領域に登場するようになつたのは,つい1941年以来のことである。しかも眼所見に関するその報告は,今日まで僅か20余例に過ぎず,本邦に於ては,佐野氏が昭和27年小児科臨床誌上にて僅か触れたことがあるだけで,眼科誌上には未だ述べられたことがない。
 われわはここに最近遭遇した本症の1例を挙げて,眼チスチン症の存在に就ての注意を喚起したい。

学童を中心に一農村に集団発生した流行性角結膜炎についての考察

著者: 須田栄二

ページ範囲:P.1367 - P.1372

緒言
 流行性角結膜炎は戦後我国各地に於いても狙獗を極めてから,最近はありふれた眼疾患として広く一般に浸潤して,都市のclinicに於いては散発性に見られるのが通例である。
 本症の病原が略々決定された今日は,病因についてもウイール学的に漸く輪廓が認識されるに到つたとはいえ,尚臨床的には鑑別診断,治療及び予防等について残されている問題も少なくない。

眼科領域に於けるβ線療法について—(その4)色素性乾皮症に併発せる角膜癌腫について(附,Au198腫瘍内照射法の応用)

著者: 植村恭夫

ページ範囲:P.1373 - P.1376

緒言
 眼科領域のβ線療法の対照となる疾患は,悪性腫瘍よりも寧ろ前報迄において述べた如き,翼状片,角膜潰瘍,春季カタル,角膜血管新生等の非悪性疾患が多い。これは一つには,β線療法の対照となる前眼部の悪性腫瘍の発生頻度が低いことにもよるのであろう。今回,著者は偶々色素性乾皮症に併発せる角膜癌腫の1例に遭遇し,これにβ線療法,Au198によるラヂオコロイド療法を試みる機会を得たので茲に報告する次第である。

網膜剥離眼に於ける眼圧調整機序の様相に就いて—(第3編)不安定試験の成績に就いて

著者: 森寺保之

ページ範囲:P.1379 - P.1383

 網膜剥離眼に於ける眼圧値はその約43%に於て,正常眼圧値より下降するが,症例の中には眼圧値のむしろ異常に上昇する例も認められ,必ずしも本症に於ける眼圧値は唯下降するとは一律に断じ得えない場合もある事は前報の統計的観察に依つて知り得たる所である。
 之の成因に就いては網膜に於ける剥離,類嚢脆変性巣等の病的変化が直接,或は間接に毛様体に影響する事による毛様体に於ける房水産生状態の異常が,当然眼圧値の変動を齎らす原因となると考慮されるのであるが,その異常が或時期に於ては眼圧の維持に,或時期に於いては之がむしろ異常に高眼圧に導き,遂には不安定性を招来するが如き結果となると考えられる。比の高眼圧は,Arrugaも云うが如く,特発性網膜剥離に於ては毛様体の炎症性反応或は刺激状態に由来する。又一面に於ては,毛様体の機能が極端に低下し,裂孔の存在による脈絡膜血管系への眼液の異常流出路の存在と相俟つて眼圧下降に向う事も当然想像される。そこで茲に,この裂孔の存在と,本症に於ける毛様体機能異常による眼圧変動との間に,不安定性と云う観点に立つて考察を加え,不安定試験を行い本症眼圧調整機序の様相を知る一助とした。

「やまかがし」による眼障害

著者: 鈴木玲之

ページ範囲:P.1384 - P.1387

緒言
 所謂無毒蛇とされている「やまかがし」の頸腺液の眼内飛入による眼障害例を経験したが,かかる障害の報告は本邦では12例にすぎず稀なものと思われるので報告しようと思う。

Cathomycinの眼科的応用

著者: 三国政吉 ,   大石正夫 ,   小林茂孝 ,   石田一夫 ,   田中幹人

ページ範囲:P.1388 - P.1395

 Novobiocin (以下Nbc)は1955年Wallick等により放線菌の一新種Streptomyces spheroidesの培養液から得られた酸性の抗生物質で,Cath-omycinはこの商品名である。
 Cathomycin Capsulesに用いられているのはNovobiocin 1ナトリウム塩で220℃の分解点を有する白色結晶性の物質で,水,エタノール,アセトン,ピリジン等に易溶,エーテル,クロロホルム,ベンゼン,酢酸エチル等に不溶で,100mg/cc水溶液のpHは7.5であると云う。

6α-Chloroprednisoneの眼科的応用

著者: 宇山昌延 ,   植田謙次郎 ,   錦織劭

ページ範囲:P.1397 - P.1406

I.緒言
 副腎皮質ホルモンは抗生物質と共に今や医学各分野に汎く頻用されている薬剤と称して過言でない。
 1949年HenchがCortisoneをリウマチ性疾患に用いて劇的な効果を得て以来,その卓抜した効果はあまねく研究者,臨床医学家の注目する所となり,より少い副作用,より強力な臨床的効果を示す誘導体を求め新製剤の発表が相次ぎ,まことに斯界の寵児とされるに至つた。即ちCortisoneからDehydrogenation, Methylation, Haloge-nation, Hydroxylation等の方法を用いてHy-drocortisone,6α-Methylprednisolone, Tria-mcinolone, Dexamethasone等の製剤が生み出され各々優秀な効果が報告されている。最近6位をHalogen化したものが合成されているが動物実験で可成り強い抗炎症作用を示すことが報告されている。

Resochinによる春季カタルの治療

著者: 小口昌美

ページ範囲:P.1409 - P.1411

 春季カタルの治療に就ては古来幾多の薬剤が用いられている。近来副腎皮質ホルモンの登場によりコーチゾン等は春季カタルの治療に大いに期待され,且つ用いられている。併しホルモン剤は長期間使用したり又全身的に適用する場合の副作用等をも考慮されて来て,コーチゾン等の春季カタルに対する期待も幾分薄らいで来たと云うのが現状である。其処で他の治療法の必要が起つてくるのである。本病が結膜のアレルギー反応であることが確定的である現在,それに対する治療法は当然抗アレルギー剤の適用が先ず必要であると考えられる。抗アレルギー剤の使用に依り相当の治療的効果をあげているのも事実である。
 抗アレルギー剤として従来春季カタルに対して使用されて来たものは(1)交感神経興奮剤,これはアドレナリン,コカイン等の点眼である。(2)抗ヒスタミン剤,これはレスタミン等の点眼及び注射等,(3)ホルモン剤,これは主として副腎皮質ホルモンのコーチゾン等の点眼又は注射である。ホルモン剤としては此他にオバオルモンが用いられたことがある。これは春季カタルが青少年に多く女子に少いから何等かのオバホルモンと関係はないものかと云う考えから出発したものであるがその成果は余り期待出来ないようである。

興味ある経過をとつた眼窩内異物の1例について

著者: 野中杏一郎

ページ範囲:P.1412 - P.1415

緒言
 眼窩内に於ける異物の報告例は既に可成の症例を数えているが,併し乍らその中で,異物の長さが眼窩軸の長さ以上に達し,更に認むべき後遺症を残さずに治癒した症例は少い様である。偶々私は,巨大な鉄釘が眼窩内に刺入し乍ら,何らの後遺症も残さずに治癒した非常に稀な,そして幸運な症例を経験したので茲に報告する。

眼圧亢進時視覚系時値について—(第4篇)眼圧亢進時の"同感性電気刺激反応"(仮称)及び全篇の総括

著者: 柏井哲郎

ページ範囲:P.1416 - P.1422

I.緒言
 私は眼圧亢進時に於ける人眼視覚系統の時値の測定を行い,第I篇にて正常人眼に於ける閾値,時値の問題を,第Ⅱ篇にて正常人眼に圧迫負荷を行つた場合の閾値,時値の変化,第Ⅲ篇にて臨床例として各種緑内障の閾値,時値に就て考按した。
 本篇に於ては後述の如き理由から恐らく存在すると考えられる緑内障眼(急性鬱血性緑内障例)に認められた同感性電気刺激反応(仮称)の閾値及び時値に就て附述する。

搏動性眼球突出症による緑内障の1例

著者: 徳島邦子

ページ範囲:P.1423 - P.1425

 外傷性搏動性眼球突出症は,我国に於ても屡々報告されて居るが,それより緑内障を起した例は報告されて居ない。
 外国では1928年にHudeloにより強調された。H.Sattlerは1880年にこの様な搏動性眼球突出症106例中4例,C.H.Sattlerは108例中の1/8に発見し,Hudeloは1919年から1925年間に集めた64例中16例に緑内障を発見して居る。Sugarは1927年から1939年間に11例見たに過ぎないと述べ,最高眼圧は35mmHg (Schiotz)であり,又他の3例では突出眼の眼圧は,大体正常範囲内ではあつたが,健側眼よりも高かつたと言つて居る。

春季カタルに於ける角膜症状の綜合的研究

著者: 盧慈愛

ページ範囲:P.1426 - P.1444

緒言
 春季カタルはVon Arlt (1846)が始めて記載し,Saemischが始めて命名して以来,本疾患に関する研究が数外く発表されて来た。殊に結膜の臨床症状及び病理組織学的研究については枚挙に暇が無いほど多数の報告がなされているが,角膜症状については少数の症例報告があるのみで綜合的研究の発表は未だに為されていない。春季カタルの病因については大体に於て次の如き学説が有力視されている。即ち気候説(Panvers,Emmert, Plitt等),自律神経障害説(Angelu-cci, Bruno等),内分泌障害説(Lemoine, Lag-ranze等)アレルギー説(Seefelder, Krückma-nn, Weinstein,小口等)がある。現在に於いてはアレルギー説が大勢を占めている様な状態であるがアレルゲンについては花粉感作説が最も有力である。この様に春季カタルについての研究は非常に活溌であるが,春季カタルの角膜症状に就ての報告は小口教授の研究を除けば殆んど系統的な研究は無く,断片的な症例報告があるに過ぎない。しかも春季カタルは一種の炎症であり,従つて炎症性疾患である春季カタルに就ての研究は炎症と云う基本原則に従つてもつと系統的な研究がなされるべきであつて,個々の症例報告をもつて本疾患の綜合的研究と見做すべきものでは無い。

眼圧測定時の注視装置

著者: 呉耀南

ページ範囲:P.1445 - P.1448

 眼圧の測定は元来,非常にデリケートであつて,色々な因子により容易に左右される。これを正確に測ろうと思えば,先ず使用する器械そのものが基準に合つた,良好なものでなければならないことは勿論であるが,実際の測定に当つては,被検眼を出来る丈,正しい位置,状態に於て測定出来るように,眼球を固定させることが最も大切である。
 私は上述の目的で,最近一つの注視固定装置を製作し,之れを多数例の人眼について測定したので,併せてこの機会に発表し,大方諸賢の御批判を仰ぎたいと思う。

眼科新知識

細隙燈検査の基本

著者: 三井幸彦

ページ範囲:P.1449 - P.1454

 現在の眼科の診療に於て細隙燈顕微鏡検査程広い範囲で欠かすことの出来ない検査はない。従来暗室検査の代表的なものとして斜照法,徹照法,倒像(又は直像)眼底検査の3つが基本的な検査として欠くことの出来ないものであつた。併し現在ではこれらの検査は暗室検査のいわばSurveyとして行うに止まり,その結果を細隙燈顕微鏡によつて詳細に確認してはじめてより高次の診断がつけうるようになつた。又細隙燈顕微鏡検査は初心者と熟練者との差を従来の暗室検査よりずつと小さいものにちぢめてくれる。従来の暗室検査では初心者と熟練者とではその「読み」に非常に大きな差があつた。例えて言えば,非常な熟練者だけが充分の読みをすることが出来る。初心者は及第点に達するまでには何年もの経験を要し,充分読めるようになるには十年以上経験を要したと言える。細隙燈顕微鏡検査は数カ月で初心者を及第点に達せしめる。且つ従来の方法の及第点を6点とすれば,細隙燈顕微鏡検査の及第点は60点にたとえられる。したがつて細隙燈顕微鏡を用いれば,初心者も短時間に,非常な熟練者でも従来の方法ではとても出来なかつたような,高次の所見を読みとることが出来るようになる。
 細隙燈顕微鏡は一つの精密器械である。従つてその正しい使い方の基本を身につけなければこれを正しく使うことは出来ない。これに関しては次のような事実を考えてみる必要がある。現在電子顕微鏡の普及率は日本は世界の最高水準にある。

談話室

コンタクトレンズの歴史(1)

著者: 水谷豊

ページ範囲:P.1455 - P.1458

 日本に於けるコンタクトレンズ(以下コレと略す)の進歩発達は,最近に於いて目覚ましいものがあるが,コレの歴史に就いて承知している人は少いようである。コンタクトレンズを充分理解するためには,その歴史を知る事も忘れてはならない。著者は今迄の外国の文献から正確と思われるコレの発達史に就いて,御紹介しておきたいと思う。
 人眼を水中に入れると,新しい光学系が出来るという概念は,コレの光学の第一歩と考えられるが,この意味のコレの歴史は古い。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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