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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科15巻1号

1961年01月発行

雑誌目次

日本トラホーム予防協会会誌

Trachomaの診断基準,分類法(特に潜伏期,初発症候)に対する私見(中)

著者: 金田利平

ページ範囲:P.1 - P.4

トラコーマの初発症候
 A.本誌に記載してある様に瞼結膜,特に瞼板上縁から内外眼角部にわたる乳頭増殖,結膜円蓋に充血,混濁および顆粒を認めるが未だ顆粒の融合あるいは膠様化が明らかでないものをTr.Iというのに誰も異議はないでしよう。私も何の異議もなくTr.といつてよいと考えますがTr.IというのはTr.の第1期であり初期であるという意味がもられてある。即ちTr.の最初期がTr.Iであるという様に記載から判断せざるを得ないのです。果してTr.IというものはTr.の最初期なのでしようか。その前の病態というものがないのだろうか。私は次の二つの点について疑問がある。即ち,
 1前記Tr.IはTr.病原体が感染した場合不明の潜伏期の後に一夜にして前日迄は全く健康だつた結膜が翌日には上記の様に充血,混濁,顆粒,乳頭増殖が認められるものなのか,それともTr.病原体が感染すると潜伏期というものは全く不明で,一定していないで,個人により潜伏期が一定していないで昨日迄は全く健康な結膜だつたが今日は少しく充血し,明日は混濁が加わり其後月日のたつにつれ充血,混濁が強くなりそして顆粒が出来たり乳頭が増殖し前記Tr.Iとなるものなのだろうか。もしそうだとすれば発病してからどの位の月日を経てから顆粒が発生したり乳頭が増殖するものであり充血,混濁,顆粒,乳頭等は月日のたつにつれどの様に変化してゆくものなのであろうか。

連載 眼科図譜・71

Erythematodesに見られた眼底変化

著者: 小林守治 ,   鬼怒川雄久

ページ範囲:P.5 - P.6

〔図譜説明〕
症例:20歳女
初診:昭和35年3月11日

綜説

緑内障の診断と治療

著者: 河本正一

ページ範囲:P.7 - P.20

 緑内障には,多くの検査法がある。この検査によつて,患者に関する知見を豊かにし,診療をより完全にすることが出来る。私共は,最近数年間,東京警察病院を訪れた緑内障患者について,出来るだけ検査を行つて来た。ここにそのデータを診断と治療に分けて述べたい。ここには紙数の関係上,概略だけをのべ,図表も省略したので,詳しくは原著を見られたい。尚,ここに記す図表はすべて原発性緑内障で単性緑内障と鬱血性緑内障に限られ,牛眼,スタージ,ウェーバー病,続発性緑内障は含まれない。

手術

外傷後の高度外反症に対する皮膚移植の1例

著者: 百々隆夫 ,   荒木敬二

ページ範囲:P.23 - P.27

まえがき
 本症例は,交通事故により顔部より頭部にかけて広範囲に受傷し,前頭部より眉毛部にかけて既に前後3回の手術をうけたが,瘢痕性外反症を胎したために吾々の眼科を訪れたものである。
 形成手術は,形態的な損傷を治癒せしめると同時に,機能的な回復を求めることが大切な目的である。眼部における形成手術は,眼に特有な機能回復をはかるために,時としては形態的な不充分さを忍ばねばならぬことさえある。例えば,正面位に於て,瞼裂が左右つりあつたとしても,瞼の閉鎖が出来なければ,兎眼症による眼障害が早晩失明の危険を招く可能性のあることを考慮しなければならない。このような意味で,例えば顔面神経麻痺の兎眼症に対しては,左右の瞼裂に形態的不均等を来す結果になつても,瞼板縫合により瞼裂縮小術をおこなうべきである。

臨床実験

微少角外斜視について

著者: 弓削経一

ページ範囲:P.28 - P.32

 微少角斜視というのは,Small-Angle Strabismusのことである。之は,只斜視角が小さいということ以外に,興味ある特徴をもつている。又,この種の斜視から,斜視患者のもつ融像機能(異常融像)の実体をうかがうことが出来るので,興味は更に深い。然し,微少角斜視の報告者,例えば,Jarnpolsky3)4), Stanworth&da Cunha8)は,その報告に当つて,誰によつて初めて注意され,誰々によつて,斯々の議論が行われているという様にはのべていない。ここに何かもことしたものが,感ぜられる。斜視臨床の底に流れているわかりにくい問題という気がする。
 Jampolsky4)が,微少角斜視の特徴としてあげているのは,次の様なものである。但し,Jampolskyは,微少角内斜視についてのべたのである。

眼部真菌感染症並びにその治療に関する研究

著者: 林幹雄

ページ範囲:P.35 - P.54

緒言
 1929年Alexander Fremingによつて,Peni—cillineの抗菌作用が発見されて以来,多数抗生物質の誕生を見,広い範囲に亘つた臨床的応用に著しい効果を示すに至つたが,その反面に所謂菌交代現象としての真菌感染症が急激に増加を示し,臨床各科の領域に於てとくにその対策が学会の焦点となつている。
 この傾向は眼科領域に於ても同様で,1955年,花房1)は,副腎皮質ホルモン剤の使用増加と共に難治性の角膜炎——角膜に潰瘍を生じ,抗生物質の使用に抵抗して進行し,副腎皮質ホルモン剤の使用により更に増悪する——の増加したことを指摘して,本症は今まで病原菌としては,さしたる注意をもかえりみられていなかつた真菌の感染により発症したものであることを証し,この角膜真菌症は副腎皮質ホルモン剤の局所使用によつて,結膜嚢内に増加した真菌が,病原性を得ると同時に,局所組織の感染に対する感受性が高まるために誘発されるものであると報告して以来,特に重要視されるに至つた。

特異な外傷性内頸動脈瘤の1例—(その2)脳血管撮影からの症例

著者: 錦織劭 ,   大塚勝彦

ページ範囲:P.55 - P.60

I.緒言
 頭蓋内動脈瘤は稀な疾患ではなく,その頻度は,Martland1)によれば2.2%, Dial and Mau—rer2)によれば0.5%, Fearnsides3)は0.8%と報じている。脳腫瘍は剖検例の1.8〜2.0%にみられると言われているから,脳動脈瘤が脳腫瘍に比し決して少くない事が分る。
 しかしながら,脳動脈瘤は古くから成因的に,先天性,動脈硬化性,細菌性及び梅毒性の4つに大別され,中でも先天性と言われる嚢状動脈瘤が大多数を占めて,Dandy4)によれば,彼の経験例中,79.3%が先天性のものであったと言う。

網膜中心動脈血圧より見た起立性脳循環調節障害—主として起立性脳単独低血圧症について

著者: 本橋昭男

ページ範囲:P.63 - P.69

I.緒言
 起立性循環調節障害については,BradburyおよびLambryの報告以来今日までSchellong,Nylinその他多数の研究があり,最近では治療面でもすぐれた報告がある。これは眩暈,頭痛,眼精疲労または疲労感を主訴とする疾患で,従来神経性循環無力症,脚気,貧血,メニエール症候群またはノイローゼと見なされていたものの中には意外にこの疾患が多いものである。最近は複雑化した環境のためにわが国においてもその数が増えており,重要な問題の一つとして注目されてきている。さて,起立性循環調節障害のある場合は当然脳循環調節障害を伴うことは推測されるから,診断に重要な体位変換試験には全身血圧以外に網膜中心動脈血圧の変動を測定することが脳循環の状態を観察する最も手近な方法であろう。しかし,上記の眩暈,頭痛等を主訴とするものの中には,全身血圧の起立性低下を伴わずに網膜中心動脈血圧のみに認める特殊な起立性低血圧が存在することが,最近眼科領域において注目されている。起立性脳単独低血圧(L'hypotension cerebraleorthostatique isolee)または起立性網膜単独低血圧(L'hypotension retienne orthostatiqueisolee)という名称で呼ばれるもので,注意して観察すると意外に多いといわれている。

外斜視を伴う外傷性輻輳麻痺の1例

著者: 増田茂 ,   野近英幸

ページ範囲:P.70 - P.72

 脳炎後に発生する輻輳麻痺は珍らしいものではないが,外傷に基く輻輳麻痺は甚だ珍らしいとされて居る。更に外斜視を同時に来たしたものは更に稀である。私共は後頭部外傷後に発生し而も比較的急速に症状の消失した外斜視を伴う輻輳麻痺例を観察する機会を得,その発生機序に就いて柳か検討を行つたので茲に報告する。

コンタクトレンズ使用に際しての補助点眼薬(仮称Contesol)について

著者: 桑原安治 ,   太田安雄

ページ範囲:P.73 - P.75

緒言
 近来コンタクトレンズの使用が盛んとなるに従つて眼鏡を使用せずに良好な視力を得る事が出来,特に高度近視或は白内障手術後の無水晶体眼の患者に於ては掛け眼鏡で得られない良好な視力を得て喜んでいるものが多い。
 併し,半面に於て,医師の手を離れて自宅でコンタクトレンズのはめはずしを行う様になつた時,不慣れの為に角膜上皮剥離を生じたり,それ程でなくとも異物感が起つたり充血したり流涙があつたり或は脱落し易かつたり種々の不快な症状の起る事が少くない。

内分泌性眼球突出に関する研究—第1報甲状腺機能異常患者の血清による金魚の眼球突出反応に就て

著者: 植村恭夫

ページ範囲:P.76 - P.83

緒言
 甲状腺機能異常に伴つて発生する眼球突出は,甲状腺疾患の診断,治療方針の決定に重要な症状とされている。此の眼球突出は甲状腺疾患の治療法の進歩した今日に於ても最も難治なものとされ,他の症状の軽快若くは消失した後でも尚依然として残存し患者を苦しめることが少くない。内分泌性眼球突出は,甲状腺機能亢進に先立つて出現することもあるし,機能亢進が起つてから出現する場合もある。又,機能亢進が自然に,或は治療により減退した後で始まる場合もある。稀には甲状腺機能に異常がなくても起る場合がある。又,甲状腺機能低下に伴つて出現する場合もある。甲状腺機能亢進症(甲状腺中毒症)で眼球突出のないものがあることも周知のことである。時にはCusshing氏病,脳下垂体腫瘍の患者に軽度或は中等度の眼球突出をみることがある。此のような眼球突出の発生には,古来より臨床的,実験的に幾多の解明が試みられて来たが未だ不明の点が少くない。1941年,Friedgoodは脳下垂体前葉に特殊なOphthalmotropic Principleの存在することを示唆し,Dobyns等(1953-1954)も"Atlantic minow"なる魚を使つて,進行性或は重症の眼球突出の患者血清,脳下垂体抽出物により眼球突出の起ることを認め,Friedgoodの説を支持した。

角膜真菌症(Keratomycosis)の1例A case of keratomycosis

著者: 奥田観士 ,   大内円太郎

ページ範囲:P.84 - P.88

I.緒言
 角膜真菌症は1879年Leber1)が報告して以来,本邦に於ても20数例が報告されて居り,吉岡,木谷氏等2)は此について詳細なる統計的観察をなし,三井,花房氏3)はCortisone及び抗生物質の長期使用後に於て発生したる症例より,此等の使用は角膜真菌症を誘発する可能性のある事を述べている。
 著者等は,殆んど病原性を有しないとされているCephalosporium sp.による重症な角膜潰瘍の一例に遭遇し,Trichomycin (以下「T」と略す)の大量内服及び高濃度溶液の点眼により治癒せしめ得たので,此処に報告し諸家の御批判を仰ぎ度いと思う。

Decadronの使用経験—(その2) Decadron眼軟膏使用成績

著者: 浅山亮二 ,   白紙敏之 ,   宇山昌延 ,   錦織劭

ページ範囲:P.89 - P.96

I.緒言
 Cortisoneに始まる各種副腎皮質ホルモンの全身的及び局所的応用は,多くの眼疾患の治療に劇的効果を現し,特に其の強力な抗炎症作用・抗アレルギー作用は,既に広く万人の認める所である。初期に於て用いられたCortisone及びHy—drocortisoneは,水及び電解質代謝に及ぼす影響,血糖上昇作用,消化性潰瘍の誘発・悪化,血圧上昇及び精神作用等の副作用のため,現在では殆んど顧みられず,Prednisone及びPrednisoloneがこれに代つて広く普及し,眼科臨床に於ても全身投与及び局所使用の形で愛用されている現状であるが,此等とて尚,多少水分及びナトリュームの蓄積作用のある事は,周知の事実である。最近,Prednisone及びPrednisoloneより遙かに優れた抗炎症・抗アレルギー作用を有し,しかも副作用の極めて少いMethyl—prednisolone,Triamcinolone及びDexamethasoneが脚光を浴び,広く臨床に用いられようとしている。
 我々は,此等の内,Dexamethasoneである所の"Decadron"を万有製薬より提供され,その全身投与成績について,既に臨床眼科14巻7号に発表した。ここでは,局所投与の一つとして,Decadron眼軟膏(Dexamethasone眼軟膏)を,種々の眼疾患の治療に用いた成績について報告する。

シノミン点眼液(5—Methyl−3—Sulfanilamido-isoxazole)による眼疾患の治療成績

著者: 坂上英 ,   丸山光一 ,   今泉桂 ,   浜田幸子

ページ範囲:P.97 - P.101

I.緒言
 新サルファ剤シノミン(5—Methyl−3—Sulfanil—amido-isoxazole)はSulfisoxazole誘導体であり,従来使用されて来たサルファ剤に比し抗菌力が強く且つ長時間に亘つて有効血中濃度を維持する特長を有する極めて優れた薬剤である。内服薬として頻回投与の必要なく又注射薬としても抗菌力が強く,臨床各科に於て細菌性疾患の予防・治療に広範囲に使用され良好な使用成績を得ている。眼科領域に於ても,著者の1人丸山1)がSino—minの注射,内服による諸種眼疾患に対する効果について発表したのを始めとし,鈴木(宜)2),桐沢3),三国4),鈴木(一)5),大石6)等の諸氏が相次いでシノミンナトリウム点眼液の各種結膜疾患に対する臨床使用成績,抗菌力試験成績等について報告し,何れも従来のサルファ剤点眼薬に劣らぬ効力を有すること,極めて安定性のあること,局所に対する無刺激性並に長期間使用に際しても副作用のみられないこと等の長所をあげてその臨床使用を推奨している。これらの諸報告にみられる点眼液はすべて塩野義製薬の調製法に従つた4%もしくは10%等張液であるが,我々は本学薬学部掛見教授の処方7)による調製法の異つたシノミン点眼液を使用したので,敢てその使用成績を発表し御批判を仰ぐ次第である。

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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