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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科15巻10号

1961年10月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・77

原田氏病に見られた特異な経過を示す流動性眼底色素斑について

著者: 山本冴子 ,   佐々木徹郎 ,   西山義一

ページ範囲:P.1019 - P.1020

〔解説〕
 原田氏病の経過したあとに夕焼様の赤褐色眼底と共に,大小の黒色々斑の出現することは周知の事実である。この色素斑は脈絡膜炎の炎症消褪と共に著明になり,一旦発現すれば相当期間に亘つて不変である。
 然るに炎症の途中の一時期に於て(網膜剥離の消退する前の痔期),極めて流動性の黒色色素塊が乳頭附近に出現することがある。これは極めて一過性で,その出現,消失の時を明確に把握することが困難なほど瞬時に消長することがあり,しかも急速に網膜下を移動し,消失したあとには殆ど痕跡を残きない。かかる色素塊はその一過性,流動性から見て,破壊された色素が網膜下液と共に一ケ所に潴溜し,体位の変動その他の条件によつて速かに他に移動し,網膜下液と共に比較的急速に吸収されるためと考えられる。

綜説

Leukokoria (Pseudoglioma or Pseudoretinoblastoma)の臨床と病理

著者: 塚原勇

ページ範囲:P.1021 - P.1036

 網膜芽細胞腫Retinoblastoma (網膜神経膠腫Glioma retinae)と誤られやすい疾患の臨床と病理について述べてみたい。本稿の前半に於て,之等の疾患の主なものの臨床並びに病理組織学的所見の概略を紹介し,後半に於て,昭和26年から昭和35年迄の10年間に,教室でRetinoblastomaと診断して摘出し,事実は違つていた8例8眼について症例毎に述べてゆくこととする。

臨床講義

内頸動脈の動脈瘤による動眼神経麻痺

著者: 弓削経一

ページ範囲:P.1037 - P.1040

 頭蓋内の動脈瘤には,屡々眼症状が伴う。最近丸尾,小林の報告の中に示されている東大清水外科に於ける頭蓋内動脈瘤の,初発症状,並びに全経過中に於ける症状の集計にも,このことが,よくあらわされている(表略)。その中,片側性の頭痛と動眼神経麻痺との合併は,内頸動脈の動脈瘤に特徴的な症状として,古くから認められて来た。殊に近年,脳動脈写と,脳外科の進歩によりそれを実証する機会が多くなり,この症状に,益々信頼性が,もたれて来た。今日示すのは,その1例である。
 患者:58歳,女(外来,No.1474,入院,No.103,1961)。

臨床実験

原田氏病に見られた特異な経過を示す流動性眼底色素斑について

著者: 山本冴子 ,   佐々木徹郎 ,   西山義一

ページ範囲:P.1041 - P.1043

I.緒言
 最近2例の原田氏病患者を治療中,従来原田氏はじめ多くの報告に見られる,該患者の眼底色素斑とは,その形状や消長の経過が非常に異なる色素斑の出現を観察したので報告し,且つ,該色素斑の消失過程を伺い得ると思われる眼底写真を得たので図譜として供覧したい。
両例は共に高度の網膜剥離を生じ,又毛髪白変,内耳性難聴等の全身症状を伴う定型的な原田氏病の症例であつた。(第1〜4図は図譜参照)

白内障手術後の黄斑部病変に就て

著者: 松山道郎 ,   森博子

ページ範囲:P.1045 - P.1049

 白内障手術後に発現する黄斑部症状に就ては従来比較的等閑視されている感があり,欧米に於ては,D. Harrington,A.C. Hilding,J. Nicholls,R. Irvine,Robert B. Welch等の記載があるが本邦では寡聞未だその報告に接していない。
 我々も水晶体嚢外摘出後,著明な黄斑部浮腫と中心窠に一致して桜果実様赤色斑出現をみた症例に遭遇したのでここにその大要を報告して大方の批判を受けたいと思う。

原発性緑内障の心身医学的観察

著者: 加藤謙 ,   松井瑞夫 ,   秋谷忍 ,   河本道次 ,   阿部正 ,   馬場礼子 ,   菊池正子

ページ範囲:P.1051 - P.1063

II.緒言
 眼科医が日常の診療に於て,遭遇する問題のひとつに,原発性緑内障に於ける眼圧の起伏,発作の襲来が,患者の情動体験に深く左右せられているのではないかと言う疑問がある。このことは従来の文献(後述)からも考えられるところであるが,眼科医は,患者の精神内界へ探究を試み,情動の機微に触れることに慣れていないために,その実情を明らかにし得ないことが多い。併し,時には発作と情動体験との関係が極めて密接且つ顕著であつて,眼科医にも容易に情況を把握することができる場合がある。著者の一人加藤も,かつてこのような症例を経験して,簡単に記載したことがある。この例は,老年の男子に緑内障の発作が屡々現われ,その発作は,患者がその息子と口論した夜に規則正しく現われた場合であつた。このような経験に伴なつて直ちに起る疑問は,次の如くである。
(1)緑内障の発作や眼圧上昇と情動体験との関係は,このような顕著な症例に限られるものであろうか?眼科医が日常接する平凡な症例は果して情動と無関係であろうか。

ラ環切目の方向性(2)

著者: 大江謙一

ページ範囲:P.1065 - P.1066

 ランドルト環視標は切目の方向によつて見え易すさが異るのをよく経験する。著者は本誌上(第15巻第2号)において,0.2ラ環の視認距離の測定成績から,直角と斜め方向,上方と下方,水平と垂直方向との間に有意の差を認めたことを報告した。その後ラ環切目の方向性について更に新知見をえたので述べてみたい。

結核性眼疾患に対するThiasin-INH2者併用及びThiasin-INH-SM又はKM3者併用療法の効果に就て

著者: 三国政吉 ,   大石正夫 ,   林日出人

ページ範囲:P.1067 - P.1075

 近時SM, PAS, PZA, INHなど一連の抗結核剤の併用により結核症に対し著明な効果があげられているが,Sulfisoxazole (以下SI)の抗結核作用は昭和28〜29年来斎藤,内藤らにより注目されたもので以来各所でSIのin vitro及びinvivoにおけるすぐれた抗結核作用が検討され且つ又実証されて来た。臨床的にはSI-INH併用法が行われ,特にSIが従来の抗結核剤と交叉耐性がない点から,他剤に耐性の結核患者にも用いられて好成績のことが数多報告されている。然しこれらの臨床使用成績の大部分は肺結核症に対するものである。
 私共は今回結核性眼疾患に対し本療法を試みてみる機会を得たので以下にそれらの成績を簡単に報告する。

Varidase Buccalの眼科的応用

著者: 三国政吉 ,   木村重男

ページ範囲:P.1077 - P.1083

 Varidase Buccalは非病原性溶血性連鎖球菌の産生する酵素のStreptokinase (以下SK)とStreptodornase (以下SD)との混合酵素製剤である。VaridaseはSKの持つ線維素溶解酵素活性作用とSDの持つデスオキシリボ核酸分解作用によつて創傷面の壊死物質並びに膿性分泌物を溶解することから,これらの除去のために従来局所的又は体腔内に注入して使用されていたものであるが,SKを静注或いは筋注によつて全身投与すれば,血中の線維素溶解能を増加せしめうることから,近年臨床的に線維素性炎症反応の緩解並びに血栓の溶解に利用されるようになつたものである。
 眼科領域におけるVaridaseの使用報告としては,Joseph M. Miller et al (1957), Paul Hur—witz (1959)等の報告がある。 Miller等は眼球を摘出した症例に抗生物質と併用して術後に起る浮腫の消槌に有効のことを記し,P.Hurwitzは網膜中心動脈塞栓,網膜中心静脈血栓,糖尿病性網膜症,慢出滲出性脈絡膜炎,虹彩毛様体炎,前房出血,硝子体出血,結膜下出血,皮下出血等41例に使用して好成績の得られたことを報告している。

Kenacort-A Ointment Ophthalmicの眼疾患に対する効果

著者: 徳田久弥

ページ範囲:P.1085 - P.1087

 新しい副腎皮質ホルモン製剤であるトリアムシノロンの眼軟膏Kenacort—A ointment oph—thalmic (0.1%)を使用する機会を得たので,その効果について報告する。

銀海余滴

ある白内障手術患者からの便り(1)

著者: 山田酉之

ページ範囲:P.1063 - P.1063

 昨秋,長い白髯をたくわえた一人の老人が私共の病院を訪れた。
 右眼がモルガン白内障で光覚,左眼は初発白内障で視力0.2であつたので,右眼に嚢外摘出術を行つた。術後5日目より16日目迄前房出血が続いて大変気をもませたが,その後経過好転して,術後約4週間で矯正視力1.0を得,臨時に一応眼鏡を作つて退院した。

ドイツ眼科学会の座長席から

著者: 山地良一

ページ範囲:P.1087 - P.1087

 伝統に輝く第64回ドイツ眼科学会は,例年のようにHeidelbergにおいて,9月24日のBegrussungsabendを皮切りに,9月28日まで開催された。
 200名を超える外国からの参加者(日本からは7人)をみて,国際的な性格を帯び内容もまた溌刺たるもので,極東の一眼科医を瞠目させるに足るものであつた。

ドイツにおける運転免許証と眼科医

著者: 山地良一

ページ範囲:P.1098 - P.1098

 有名なAutobahnを含めて,すばらしい道路の新設,拡張が行われている。一方自動車の方はVolkswagen Benz. Opel. Taunusなど日に日に増産の一途を辿り,道路上には,これらの車が行交つていて外国車を見ることは極めて稀である。
 このように道路が発達し,車の数が増えてくると,当然問題となつてくるのは交通事故であり,その予防対策としての交通医学が必要となつてくる。これに対して自動車運転者の心理的,身体的条件の変化をきわめることを目的とした,交通医学が確立され,学会も独立し,立派な会誌を発行している。

私の経験

絶対単一視(別種双眼単一視)

著者: 舩石晋一

ページ範囲:P.1089 - P.1090

 双眼単一視の成立に就ては,多くの学者により,長年,多方面から,種々研究されているが,其教えの核心をなすものは「視物が,両眼網膜対応部に結像して初めて単一視される」と云うにある。此表現は直ちに「対応部以外に結像するもの全部が,悉く複視される」事を意味する。ところが実際には,複視に苦しむ様なことはない。何故,複視が現われないかに就ての研究は,網膜融像による双眼単一視のそれと同様,或いは,更に重要であろうと思い,之に就ての私の考察を述べて見たい。
 視空間で,視物の位置を見定めるには,先ず,其物の方向,即ち視方向を決めねばならない。此時,其方向の基点,即ち,自我中心的視方向中心が必要で,私は,之を探究して,幸に,其存在及び位置を確定する事が出来た。

談話室

斜視と弱視の臨床

著者: 井上正澄

ページ範囲:P.1091 - P.1098

 斜視と弱視の診断治療には外眼病や眼内病のそれとは幾分趣を異にした所がある。即ち診断は多面的であるし,効果ある治療を行うには第1に当事者として眼科医,オルソプチスト,患者の母親などは深い愛情をもつて斜視や弱視の子供を具体的に指導し,第二には飽きないように根気よく治療をつづけ,第3には器械類の構造を知つて使いこなし,第4には症例に適当した自宅練習をやらせるなどのことが肝要である。
 斜視と弱視の診断治療には共通点が少くないので,両者を併用することは眼科医にプラスする所でなれた看護婦や事務員などを指導すれば,オルソプチストやプレオプチストとして種々の検査や治療が出来る。本邦でもこのような技術員を使う眼科医が増加する傾向がある。

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眼科ニユース

ページ範囲:P.1099 - P.1099

第405回東京眼科集談会
日時昭和36年12月10日(日)午後1時半より
場所文京区湯島医科歯科大学講堂

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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