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雑誌目次

雑誌文献

臨床眼科15巻12号

1961年12月発行

雑誌目次

連載 眼科図譜・79

マルフアン氏症候群

著者: 山田酉之

ページ範囲:P.1203 - P.1204

〔第1例〕15歳.男
初診:昭和35年3月26日
主訴:両眼視力障害

綜説

眼組織におけるムコ多糖類研究の現状(2)

著者: 高久功

ページ範囲:P.1205 - P.1218

VI.角膜
1.角膜mpsの化学
 角膜のムコ多糖類は古くから研究の対象とされていたが,その詳細は比較的近年になつて漸く明らかになるにいたつた。
 古くMorner37)の研究で,角膜にmucinが存在すると報告されている。その後Levene, Lopez,Svarez38)は角膜からMucoitin—硫酸を分離したと述べた。1936年Kahrberg39)はMornerの方法を追試し,水解性硫酸基をもつたMucoidを単離したと報告し,一方Meyer40)もこれと同様な成績を得た。更に1940年Meyer7)等は角膜の50%尿素抽出液よりH-amine,H-uron酸,Acetyl基,水解性Sを略々等モルに含む物質を単離し,これに対するH-daseの態度又旋光度から,本物質はHyalurono硫酸(Mucoitin硫酸)であると述べた。

臨床実験

糖尿病性白内障の形態的特徴について

著者: 天羽栄作 ,   羽飼昭

ページ範囲:P.1221 - P.1226

I.緒言
 さきにわれわれは糖尿病患者の白内障の発生頻度を同年齢のドック入院患者の白内障の発生頻度と比較した結果,有意の差を以て糖尿病患者の白内障の発生頻度が高かつたことから,糖尿病は少くとも水晶体混濁を促進させるように作用していることが推察されるとして,此のことを報告した(日眼64巻3号)1)。然し如何なる混濁状態が糖尿病に特徴的であるかと言うと,多くの文献に見られる如くその形態は全く多彩である。若年糖尿病患者に急速に水晶体混濁が進行した場合は糖尿病が原因となつているとしても誤りはないが,中年以後の糖尿病患者に白内障を発見した場合に,之を老人性白内障とするか,糖尿病性白内障とするかは判断に迷う所である。故に今回は糖尿病性白内障の形態的特徴を明らかにしようとして,細隙燈顕微鏡を用いて糖尿病患者の白内障と,一般の老人性白内障の混濁状態を比較した。その結果,前嚢直下の微塵状混濁が糖尿病性白内障に特徴であると思われたので此所に報告して各位の御批判を仰ぎたい。

角膜脈波と心電図

著者: 山森昭

ページ範囲:P.1227 - P.1231

I.緒言
 前に新しい電気眼底血圧計を著者6)が発表したが,此度此に心電計を連結した。其理由は,測定に際して,搏動以外の運動が混入して生ずる杆荷重曲線の歪みを脈波から区別する為であるが,又此によつて角膜脈波が動静脈の何れによつて起るのかを知る事が出来たのでここに報告する。

脳底の血栓性静脈炎に併発した眼窩蜂窠織炎の1例

著者: 佐野七郎 ,   秋元正二 ,   武本信年

ページ範囲:P.1233 - P.1237

I.緒言
 炎症性静脈洞血栓症は,今日の化学療法を以つてしても,予後は尚楽観を許さない疾患である。臨床的には,多種多様を呈し,その原因を炎症性血栓と考えるのは,単に想像であるに過ぎない場合も多く,時に診断は極めて困難なこともある。又種々の抗生物質投与を行つても,耐性菌であつたり,時期を逸したりすれば,一時的な炎症の消退は見られても,脳栓塞,軟化,出血等の脳実質の循環障害によつて,重篤な予後を招来することも稀でない。私共は不幸死の転帰をとつた脳底の広汎な血栓性静脈洞炎及び脳栓塞に併発した眼窩蜂窠織炎の一例に遭遇し,且つ剖検所見を得たので報告しようと思う。

Central areolar choroidal atrophyと思われる1症例について

著者: 坂上道夫 ,   黒沢瑞子

ページ範囲:P.1238 - P.1240

I.緒言
 Central areolar choroidal atrophyについては1884年Nettleship氏がCentral senileareolar choroidal atrophyの名で60歳の婦人の両眼に乳頭から黄斑部一帯にわたり比較的限界の明瞭な脈絡膜萎縮を認めた事を報告して以来,1901年にはRetze氏が60歳の男子に,続いて1904年にはThompson氏が63歳の女子に同様な変化が認められた事を報告している。
 1935年に至りSorsby氏は2人の兄弟の眼底にCentral areolar choroidal atrophyを認めこの疾患の遺伝学的なものに注意を向けその後1953年Sorsby及びCrik氏等は本症を認めた4家系及び1935年に報告した2人の兄弟の家系について再び報告した。更にSandvig氏は1955年に4世代を通じて性に関係なく優性遺伝を示していると思われる1家系を報告し,なお1959年には2人の姉妹を含めた4例を報告している。又Ashton氏は1953年この疾患の唯一の死後剖見例を報告している。

Acromegaly兼糖尿病とRetinophiathia

著者: 小島克 ,   粟屋忍 ,   田辺竹彦 ,   新美勝彦 ,   渡辺郁緒 ,   桐渕惟義 ,   吉田則明 ,   桜井恒浪

ページ範囲:P.1241 - P.1245

 我々は,Acromegalyの発症後20年乃至30年の経過後糖尿病を発症し,数年の経過中に,Re—tinopathyを示した症例に遭遇したので,ここに報告したい。

脈なし病と網膜中心動脈枝閉塞症

著者: 小島克 ,   清水節子 ,   粟屋忍 ,   渡辺郁緒 ,   新美勝彦 ,   吉田則明

ページ範囲:P.1246 - P.1249

 我々は,最近脈なし病と診断入院加療中,中心動脈枝閉塞を併発した一例に遭遇したのでここに報告したい。

網膜剥離に対するDiurexの応用

著者: 徳田久弥

ページ範囲:P.1251 - P.1254

 利尿降圧剤として最も新しい製剤であるDiu—rexを網膜創離に試用したので,その結果を簡単に報告する。投与の対象は,網膜剥離5例,原田氏病2例であるが,ECKの特異型に起つた非常に強い結膜浮腫に顕著な効果を認めたので,併わせて報告する。緑内障に対する効果は,動物実験の結果と一緒に後日発表する予定である。Diurexは,1錠中に5—Chloro−2-4—dissulphamyl-tolu—ene50mgを含有する。
 その利尿作用は,内服後2時間位から発現し,ピークは6時間後に現われる。

網膜静脈血栓症のFibrinolysin療法

著者: 三国政吉 ,   木村重男

ページ範囲:P.1255 - P.1264

 Green (1887)次いでDastre (1894)が凝血塊が自然に融解して再び前と同様な流動性を回復することを発見して以来,この現象に対し多くの研究がなされている。そうして現在までに発熱,精神感動,激しい肉体労働,手術後その他各種疾患にこの現象のおこる場合があり,線維素溶解現象として知られている。一方線維素溶解酵素系を賦活して各種血栓栓塞症及びその他の疾患の治療に応用する試みはこれらの疾患に対し決定的な原因療法のなかつたことから近年多くの期待がかけられている。
 この目的で使用される薬剤の第1は血中のPl—asmin ProactivatorをActivatorに活性化することによつて線維素溶解現象を起すStreptok—inaseである。Streptokinaseは直接線維素溶解作用がなく,その効果が間接的であること,連鎖球菌感染によつて容易に抗体が出来やすいこと及び注射で使用した場合局所の反応が強いこと等からその使用には種々の批判があつたが,最近口腔粘膜を通して全身投与出来る製剤の出現によつて再び広く使用されるに至つている。

眼疾患に対するBTMP錠の使用経験

著者: 武田守久 ,   山下龍雄

ページ範囲:P.1265 - P.1269

I.緒言
 今回三共株式会社高峰研究所で,新に合成されたビタミンB1の誘導体S-Benzoylthiamine O—monophosphate (以下BTMPと略す)はビタミンB1のベンゾイル化及び燐酸エステル化によつて,効力を高め,安定性の増強を計つた製剤で,特に,従来のビタミンに比して消化管よりの吸収が極めて良好で,且つ血中濃度の持続性も大であり,各種臓器への移行率も大きく,無臭であり,Thiaminepropyldisulfideより優れていると云われている。
 私共は三共KKから本剤の提供をうけて,次の種の眼疾患に使用し,臨床実験を試みる機会を得たので,その成績を簡単に報告する。

手術

水晶体全剔出術に対するα—Chymotrypsinの使用について

著者: 須田栄二

ページ範囲:P.1271 - P.1278

I.緒言
 1957年Barraquer2)は牛膵臓より得たα—Chy—motrypsin (以下ACTと略す)がチン氏帯を撰択的に溶解する事を発見した。Barraquerはそれを水晶体の別出に利用し,1958年276眼についての実験で,白内障の全剔出があらゆる年齢層に可能であり,合併症も減じ,危険少く,経過も良好であると発表した。以来多数の追試が行われて,今日も尚多くの報告によつて,その価値が認められているが,その後,チン氏帯のみならず,他の眼組織,特に角膜及び硝子体膜にも障害を与えるとの発表が行われ,適応を限るべきであるという意見も現われている。
 ACTの使用によつて,白内障全別出術に進歩がもたらされたのは多くの人の認める所であるが,尚術式については人々の流儀があつて,何れの方法がよいとは言えぬ様である。

私の経験

回旋融像に就て

著者: 舩石晋一

ページ範囲:P.1279 - P.1281

 Synoptiscopeの両側図面に垂直線を描いて,両眼で之を見ると,融像は垂直線として見える。両線を回して,其上端が互いに遠ざかつても〔(+)回旋〕,近づいても〔(—)回旋〕或程度迄単一視が行われる。(+)回旋の時には,融像線は上端が前方(向側)に,(—)回旋では後方(手前)に傾いて見える。更に強く回旋すると,(+)(—)とも融像は限界に達して,線はX状に分離する。斯様にして高尾が測定した回旋融像範囲は,無調節時平均5.33〜6.36°,3.0D調節時4.28〜5.24°である。
 又,各眼6個の眼筋中4個が回旋作用を持ち,此運動に参加する事から見ても回旋融像に就ては更に研究する必要があり,且つ其余地があると思う。

談話室

Tubingen大学眼科の医局生活

著者: 山地良一

ページ範囲:P.1282 - P.1283

 朝は,霧の深く立ちこめた午前7時30分に,医局の生活が始まる。Horsaal (講堂)に医局の全員が集まり,抄読会をする。医局員が教授を中央にずらりと半円形に一列に座り,抄読者はその円の中心の位置に座って,文献を2つ位抄読する。主に教授が抄読者に抄読の途中であるいは後で,いろいろ尋ねたり,それに関連する事柄について話す。histologischなことは,HistologieのLabor (研究室)の主任であるOberarztのSeitz(Dozent)に尋ねたりする。
 ここにはHarms教授の下に,3人のOberarztがいて,前記のSeitzの他,optisches Laborを担当するMakensen,GlaukomのLaborを受持つHagerがおり,3人とも若く,何れもDozentでなかなか張切っている。

印象記

第15回臨床眼科学会の印象

著者: 桑島治三郎

ページ範囲:P.1284 - P.1288

 今年で15回を数える臨床眼科学会は11月12日の午前9時から東京都新宿区の厚生年金会館ホールで開催された。この学会は,周知のように春の日眼総会とはまた一風ちがつて,主に眼科の臨床方面に重点をおく学会として出発し,会員制をとらずに眼科医なら誰れでも参加しまた出題もできるということで門戸を開放し,例年11月の第2日曜日に東京で開催するという条件など,いわば肩のこらない学会であるという特徴に加えて,シーズン的にも地理的にも恵まれた条件もあつてか,全国的に眼科の人々の関心をあつめる年中行事のひとつに数えられるほど盛大な学会になつた。それだけに主催者がわの苦労も多くなつたことと察せられる。
 この臨床眼科学会で私の感じたままを簡単に記してみたい。あらかじめお断わりしておくが,私のききちがいや記憶ちがいの点があれば,無条件にお詫びすると共にいずれ発表される原著によつて訂正して頂きたい。

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眼科ニユース

ページ範囲:P.1289 - P.1289

第6回日本コンタクトレンズ学会総会
日時:4月8日(日)
場所:京都府立医大記念講堂

基本情報

臨床眼科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1308

印刷版ISSN 0370-5579

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